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ジョン・クラカワー
集英社
¥ 1,260
(2007-03)
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★★★★(4/5)
−紹介文−
厳寒のアラスカに消えたひとつの命。
アメリカの地方新聞が報じたある青年の死は、やがて全米に波紋を呼んだ。恵まれた境遇で育った彼は、なぜアラスカの荒野でひとり死んでいったのか。
〜感想〜
映画の
【イントゥ・ザ・ワイルド】 を先に観たのだけど、クリス本人がどういう人物だったのか? もっと詳しく知りたくなってしまいました。
著者のジョン・クラカワーは、生前のクリスが旅で知り合った人たちの話や、クリスが彼らに出した手紙、クリスが残していた日記を紹介しながら、彼が辿った旅の軌跡を追っていきます。
そうやって紹介されている手紙や、クリスとかかわりあった人たちの話を読むと、彼自身にはどこか人を惹きつけるものがあったことが伝わってきます。
恵まれた環境に育ちながら、所持金を焼き払いほとんど身ひとつで旅に出たクリス。
行き倒れ状態になったり、嫌な思いもしたこともあったようなのだけど、彼の一番の目的 ― アラスカの荒野へ行き、自分の力だけで生きていく という決心を翻すことはありませんでした。
若い頃って誰でも、理想主義で、潔癖なところが多少なりともあると思うのだけど、クリスはそういった気持ちが人一倍強かったように思えます。 頭がよかっただけに、疑問に思ったことや、理不尽だと思えることに答えを求めずにはいられず、決して妥協をしない。
でも、そういう気性は、生きていくには辛いのではないでしょうか……
ただ、クリスは自分の殻に閉じこもりがちになるところはあるにしろ、人と積極的に関わり社交的に振舞うこともできたようです。旅の途中で出会った人々のほとんどは彼のことが好きだったようですし。クリスが無事に荒野から生きて戻る事ができていたら……どれほど魅力的な人物になっていたことか。
映画を観ていたときも感じたのだけど、クリスの失われた未来や、可能性のことを思うと残念でなりませんでした。
本作を読んだ事で、よりいっそうクリス・マッカンドレスの人物像が身近に思えたけれど、痛ましく感じる気持ちも強くなりました。
……若さというのは素晴らしいものですが、悲しいことでもあるのだな、と、そんなふうに思いました