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デクスター闇に笑う月/ジェフ・リンジー
ジェフ ・リンジー
ヴィレッジブックス
¥ 935
(2010-05-20)
Amazonランキング: 68100位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

昼はマイアミ・デイド郡警察で働く鑑識チームの好青年。
しかしながら、夜は血に飢えた連続殺人鬼―それがデクスター・モーガンの人知れぬ日常だ。
獲物は自分と同じ冷酷な殺人者たち。
だが彼の二重生活は、ある奇妙な事件を機に思わぬ方向へと転がりだす。
被害者は全身を切り刻まれて、生きたまま放置されたヒスパニック男性。
あまりの凄惨な現場にだれもが戦慄するなか、デクスターだけは見たこともない手口に好奇心をおぼえ、“公私”ともに犯人を追いはじめる。
やがて捜査関係者と犯人の意外なつながりが浮上し、第二・第三の被害者が…。(紹介文より)

前置き

本作は海外ではTVドラマにもなっている人気作品で、すでにシーズン4まで制作されているとか。
私もシーズン2まで観ましたが、これが……面白い
シーズン1は、大体原作をもとにしているんですが微妙〜にストーリーが違っています。 シーズン2ではほとんどオリジナルストーリーに
とはいうものの、デクスターというキャラそのものはいい味を出してて、なかなか魅力的
道徳観のあるシリアルキラーという異色のヒーロー、デクスター。
不思議な魅力についつい引きこまれてしまい、すっかりファンになってしまいました


〜感想〜

『デクスター幼き者への挽歌』 に続く2作目です♪

前作では、幼い頃に自分に起きた凄惨な出来事を思い出し、同じくシリアルキラーになっていた実の兄と再会。 実の兄がデボラをデクスターと一緒に殺そうとしたものの、際どいところでデクスターは”殺す衝動” を抑えて、”妹” を守ることを選びました。

そうして、兄は去りデボラはデクスターの本当の姿を知ることになったのだけど、デクスターが殺すのは法律ではさばけない悪事を働いている凶悪な犯罪者たちだけ、ということもうすうす察して、デクスターを受け入れます。

そうして、しばらくは平穏な日々が戻ってきたかと思ったのだけど、 ”類は友を呼ぶ” ということわざのとおり、かつてスナイパーとして活動し、人を殺したことのあるドークス刑事はデクスターにどこか油断できないものを感じ取ります。
そうして、デクスターの尻尾をつかもうと毎日尾行し始めて……

デクスターにしてみれば大迷惑。
折りしも、自分の中の”闇の獣” が騒ぎ出し、次の獲物を狩りに行きたい衝動に駆られるのだけど、ドークス刑事がついてくるせいで、迂闊な行動ができません。
そうして、デクスターは愛すべき一般市民(笑)を装うため、ガールフレンドのリタの家を毎日訪れるという作戦にでるのだけど、いつのまにやら、そんな ”普通” の生活が気にいってきて……

このまま、普通の人間になれるのかも?
なんて、一瞬思う場面もあるのだけど、もちろんデクスターには無理(笑)
段々と、”闇の獣” を抑えるのが辛くなってきます。
とはいえ、義理の父親のハリーから叩き込まれた ”ハリーの掟” はデクスターにとっては絶対で、辛抱強くドークス刑事が諦めるのを待ち続けます。

そうこうするうちに、両手両足が切断されて胴体だけにされながらも生きている人間が発見されるという事件が発生。 芸術的ともいえるやり口にたちまちデクスターは魅せられてしまいます。
……こういうところはやっぱり、シリアルキラーです
あまりにも尋常でない事件に流石の警察も恐怖に襲われるのだけど、ドークス刑事は犯人に心当たりがあるようで、一人の捜査官に連絡をとり彼が事件の指揮を取る事になります。
デボラは、彼の補佐として捜査に加わることに。

そうして、いつものごとくデクスターに協力を求めるデボラだったのだけど、ドークス刑事に付きまとわれているデクスターにしてみれば、それどころじゃないというのが本音。 それでも、やはり可愛い妹の頼みを断ることができず、ちょっとしたヒントを与えたりするのだけど、捜査の指揮をとっていた刑事が犯人の手に落ちてしまいます
彼と恋人同士になっていたデボラはほとんど半狂乱になって、なんとか彼を探し出してくれるようデクスターに頼み込むのだけど……。

”感情がない”
と、自分で言っているデクスターですが、人としての道徳観をしっかりとハリーに叩き込まれているので、デボラに対しては兄としての義務感をしっかりと持っています。 そしてほんの少しだけ愛着のようなものも感じているのかも? 自分から愛情をかえすことはできないけれど、デボラの愛情を失うのは嫌(笑)みたいで、デボラから頼みごとをされると断ることが出来ない様子が微笑ましかったです
(……でも、微笑ましいシリアルキラーって、どうなんでしょ?

とりあえず、デボラの頼みを聞き入れて探し始めるデクスターだったのだけど、ふと悪巧みを思いつきます。 犯人を知っているドークスにも協力してもらい、彼を囮として犯人をおびき出そう、と 
そして、ドークスが犯人を捕まえてデボラの恋人の行方がわかればもうけもの、最悪もし、ドークスが犯人を捕まえることが出来ず逆に捕まったとしても、それはそれでデクスターにとっての邪魔者が
消えるという嬉しい事態になるだけ。
……ちゃっかりしてますね

もちろんそんなデクスターの思惑をしっかり見抜いているデボラはいい顔をしません。 仕方なくデクスターは作戦が成功するように努力するのだけど……。

なんというか、デクスターのキャラってどうしても憎めないところがあって、ついつい、仕方ないなぁ、と苦笑して許してしまう自分が怖かったです
そうそう、怖いといえば……今回はデクスターにとって思いがけない喜びが待ってしました。
それは……ガールフレンドのリタの二人の子供たち。
リタとデクスターはちょっとした誤解から婚約することになって、デクスターはかなり困ってしまうのだけど、そんな気持ちを吹き飛ばす出来事が起こります。

リタの子供たちコーディとアスターは父親から虐待を受けていて心に深い傷を負っています。 そのことを知っているデクスターは子供たちにはことのほか優しく接していたのだけど、ある日、コーディを釣りに連れて行ったとき……デクスターは嬉々として魚にナイフを突きたてているコーディの姿を見ることに。
その姿に、ふと過去の自分と重なるところがあって、デクスターは ”もしかして?” と疑問を抱くようになります。
そうして、機会を見計らって確かめたデクスターは二人の子供が自分と同じだと確信。

リタとの婚約を続けられるかどうか悩んでいたデクスターは、コーディとアスターの二人の ”父親” になるためなら耐えられる、とすっかり観念するのだけど……。
リタに対してずいぶん失礼な気がしますが、義務感からとはいえ彼女に優しく接して大事にしている努力は認めてあげてもいいかもしれません

なにはともあれ、思いがけず自分と同じ子供たちを見出したデクスターは、かつて自分がハリーから教えを受けたように、コーディとアスターにも同じように教育を始める楽しみができました。
……でも、これって常識で考えればとんでもない状況なんですが、”ハリーの掟” を破らない限り善良な人々に手をかけることがない、とわかっているので少しだけ安心できるのかも?

とにもかくにも、とんでもないヒーローのデクスターの活躍は、まだ続いていくのは確かのようなので、彼が ”ハリーの掟” を決して踏み外すことのないよう信じたいと思います





 
| サイコミステリ | 19:43 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
デクスター幼き者への挽歌/ジェフ・リンジー
★★★★☆(4・5/5)

あらすじ

デクスター・モーガン。表の顔はマイアミ警察の鑑識技官であり、人当たりのよい好青年。だが裏の顔は――殺人衝動を抑えきれず、満月の夜に悪人を狩る闇の仕置き人だった!
あるときデクスターは、警察官である妹のデボラから、一滴の血も残っていないという奇妙な連続殺人事件の捜査を手伝ってほしいと頼まれた。殺人鬼の心理を知りつくすデクスターは、手がかりを猛追跡し真相に肉薄してゆくが、やがて犯人とのおかしなシンクロニシティが起こりはじめる。殺人者の正体はいったい? 次の獲物は?



〜感想〜

シリアル・キラーの名探偵 ……

いったい、どんな主人公なんだろう? と、ドキドキしながら読んでみたら、これがすっごく面白かった!!

主人公のデクスターは孤児で幼い頃の記憶が欠けているんだけど、そんな彼を引き取ったのは警察官のハリー・モーガン。モーガン家に引き取られたデクスターは平穏な毎日を過ごしていたんだけど、彼は成長するにつれてある衝動が動き出すのを感じるようになる。

……それはデクスター自身にも理解できない、殺人衝動。

その気持ちがよくないものだという自覚のあるデクスターは、衝動をできるだけ抑えるんだけど、その衝動の強さはどんどん増すばかりに。仕方なく、動物を殺すことでその衝動を和らげるんだけど、ある日、そのことを養父のハリーに知られてしまう。
二人きりでキャンプに行った時、ハリーに問いただされたデクスターは答える。

「ただ、そうしないではいられなかったんだ。 ”なにか” を感じるんだ。その ”なにか” のせいで、そうすることが魅力的に思えてくる……」

そして、彼が本当に殺したいのは動物ではなく人間だということも正直に答える。なぜ、実行しなかったかとさらに問いつめるハリーに
「父さんと母さんを失望させたくなかったから」

そう、このデクスターは殺人鬼となりうる人間でありながら、同時に道徳と倫理も持ち合わせてるんだよね。これはひとえに養父ハリーの教育の賜物なんだけど、そんなハリーも警察官という職業を長い間勤めてきたことで、必ずしも全てがはっきり白黒で片付けられるものじゃないってことを誰よりもよく知っているんだよね。そこで、ハリーはデクスターに告げる。

「− えらぶんだよ、……なにを……あるいは…… ”誰” を……殺すかをね」

そうして、成長したデクスターは「なにか」が自分のなかで動き出すのを感じると、周到に彼が自分をさして呼ぶ 「闇の乗客」 仲間を探し出し、計画を練り、決して証拠が残らないように細心の注意を払って自分の楽しみを味わうようになっていた……。

ここまで読むと とんでもなーいっ って思うよね?

でもね〜、さっきも書いたけどこのデクスターって彼なりの倫理観を持ってるの。彼がえらぶ相手は子供を殺し続ける神父だったり、とにかく人でなしの相手なんだよね。結局のところは類友なんだけど、そのことも彼自身よくわかってるの。それでも、ハリーの教育のおかげでやっちゃいけないこと、があるっていうこともちゃんとわかってるんだよね〜。

彼はハリーの教えどおり、普通の人間のように行動し、反応し、決して目立たないように演技することを常に心がけていて、自分には感情がないと思い込んでる。実際、ほとんど彼には感情というものが欠けてはいるんだけど、特定の人間だけには別なの。例えば義妹のデボラ。彼女のことはデクスターなりの基準だけど、ちゃんと愛情を感じてるはずなんだけど、そのことに自分自身では気づいていない。それに彼は子供が好きなんだよね。子供は特別な存在と思ってる。ところどころ、そんな風に感じるシーンがあって、それが感情だと思うよ、って思わずデクスターに教えたくなってしまった。

デクスターが何故、そういった衝動に襲われるのかは、彼の失われた過去に原因があるんだけど、この過去が現在のデクスターに影響し始めて、最後には彼は自分の存在のあり方そのものをかけた選択を強いられることになる。
すでに、モーガン夫妻は他界してデクスターは義妹のデボラと二人きりの家族なんだけど、このデボラは父親のあとをついで警察官になってるのね。デクスターは血痕の専門家として鑑識で働いてるの。これもハリーの教えの一つ。ちゃんとした職業につくこと。デクスターは「ハリーの法典」って名づけてるけど(笑)

そしてデボラはあのハリーの娘。彼女もまたデクスターの なにか に薄々感づき始めるんだよね。折りしも、世間では連続殺人事件が起きる。以前からデクスターに捜査の協力をしてもらっていたデボラは、今回の事件でも彼の協力をお願いするんだけど、デクスターはこの事件に彼自身が犯す殺人のやり方と奇妙に似通ったところがあることから、強く興味を引かれるようになる。そうして、デボラに協力しながら手がかりを辿っていくうちに、驚愕の事実に突き当たる。

最後の数ページは どうするのっ!? どうなるのっ!? どっちを選ぶのっ? デクスターッ!? って、ハラハラして気が気じゃありませんでした。
これは、オススメの作品です。

最後の最後でデクスター自身も自分に感情らしきものがあることを認識するんだけど、それがなんだか嬉しかったです。 続きが早く読みたいけど、続編は出るのかな?
ちなみに、この作品は<DEXTER>というタイトルで以前アメリカのケーブルTVでドラマシリーズ(第一シーズン全十二話)として放送されてたそうです。第二シーズンも製作中とだったとか(本書 小山正氏解説より)
DVD化されてほしいけど、無理かな〜。

<2010年7月26日 追加>
……と、思っていたらDVD化されて今では第三シーズンまで、出てますね〜 第二シーズンからは原作とは違ったストーリーになってますが、違った面白さがあって一度見るとハマリます(笑) 

つい最近、2作目 『デクスター 闇に笑う月』 が出たので早速読みました♪ 
ちょっと、驚きの展開というか、意外な人物がデクスターの後継者としてほのめかされていて、早くも3作目が気になるところです。 でも、また当分は待たなきゃいけないんでしょうね〜
| サイコミステリ | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark


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