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ジェフリー ディーヴァー
文藝春秋
¥ 1,950
(1999-09)
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★★★★☆(4.5/5)
あらすじ
ケネディ国際空港からタクシーに乗った出張帰りの男女が忽然と消えた。やがて生き埋めにされた男が発見されたが、地面に突き出た薬指の肉はすっかり削ぎ落とされ、女物の指輪が光っていた……女はどこに!? NY市警は科学捜査専門家リンカーン・ライムに協力を要請する。彼は四肢麻痺でベッドから一歩も動けないのだったが……(紹介文より)
前置き
映画の 【ボーン・コレクター】を見て、デンゼル・ワシントン演じるリンカーン・ライムが印象的でした。ただ、面白いとは思ったのだけどちょっと物足りない思いをしたのを覚えています。 そんなわけで、あまり期待せずに読み始めたのだけど……
面白すぎる〜っっ
最初のページから最後のページまで、一気に読みました。
こんなに面白かったなんて
今まで、知らなくて損した気分に。
でも、同時にこの後も2作目〜 が読めるんだと思ったら嬉しくてたまらなかったです
〜感想〜
かつて”世界最高の犯罪学者” と呼ばれた、元ニューヨーク市警の科学捜査本部長のリンカーン・ライムが主人公の本作。”科学捜査”を題材にした作品は多々あると思いますが、その中でもライムの存在は群を抜いていると思います。
過去に事故に遭い、第四頚椎を骨折したライムは首から下は完全な麻痺状態。
かろうじて動かせるのは左手の薬指と、首から上だけ。
そんなライムは自分の状態に絶望し、自殺をするための準備をしようとしています。
手を貸してくれる人物を見つけ出し、あとは話し合って実行するだけ……という時に、かつてのパートーナーで友人でもあったニューヨーク市警のロン・セリットー刑事が訪ねてくる。
そしてライムに助けを求めます。
誘拐された女性を探し出すために証拠を見てほしいと。
そんなことはまっぴらのライムは駄々をこねる(笑)のだけど、ついに興味を引かれ協力することに。自分の計画を一時棚上げして……。
最初から強烈な印象を与えるライムですが、正直人好きのするタイプとはお世辞にも言えません
でも、それを凌駕するほどの明晰な頭脳と観察能力の鋭さにあっという間に引きつけられてしまいました。
そして、犠牲者の第一発見者となったアメリア・サックス巡査。
彼女はライムに対しても辛辣な態度を崩さず、そんな彼女に新鮮さを感じ心を惹かれます。ライムはサックスを現場に向かわせ、自分の代わりに鑑識にかからせます。
また、その言い方がなんとも”嫌なヤツ”という感じなのだけど(笑)、時々思いやりのあるところもみせたりするので、一体、どういう人なの? と、ちょっと戸惑うことも。
サックスにしても、ライムに対する印象はあまりよくないようで、彼にたいしては腹の立てっぱなし
ライムに反発を感じながらも、捜査に関わることになったサックスだったのだけど、捜査が進むうちにライムとは不思議な絆を感じるようになっていく。
ライムもサックスに嫌味な口をききながらも、実は彼女に惹かれていて身だしなみを整えたり(笑)、ちょっと可愛い一面を見せてくれます。
そして、肝心の捜査といえば犯人は犯行現場に必ず次の犯行場所の手がかりを残していくことから、犠牲者が出る前に助け出そうと努力が続けられます。その甲斐があってとうとう被害者の救出に成功。ところが、そこへFBI捜査官のデルレイが横槍を入れてきて、ライムたちの手から事件そのものが取り上げられてしまう。
そしてライムは、棚上げしていた自殺の計画を進めようと……。
四肢が麻痺してしまい、動くこともできず、感じることもできない、そんな状態はとても苦しくて辛いことだと思います。それは、他の人間が想像する以上のものでしょう。
自殺を選んだライムの判断を責めることは誰にもできない、そう思います。
ただ、それでも身勝手ながら 生きていてほしい そう思うことも事実なわけで……。
ライムが最終的にどの道を選ぶのか?
事件の行方が気になるのはもちろんなのだけど、それ以上にライムがどうするのか?
そっちの方が気になって仕方ありませんでした〜
でもとにかくライムと仲間たちがくり広げる科学捜査のやり方にはワクワクさせられました。一つ一つ証拠が増えていくたびに犯人のこともわかっていって、その証拠をもとに、犯人の狙いや、行動を分析して追いつめていく様子の見事なこと
ライムを始め、彼に協力するセリットーやサックス、ライムの介護士のトムなど、登場人物たちが生き生きと描かれていて、あっという間に彼らの世界へ引き込まれていきます。最後まで一気にひっぱっていくストーリーの見事さとキャラクターの魅力にすっかり虜にされました(笑) 早く二作目を読みたいです
次は
『コフィン・ダンサー』 へ。