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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
「三匹のおっさん」とは…定年退職後、近所のゲーセンに再就職した剣道の達人キヨ。
柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲ。
機械をいじらせたら無敵の頭脳派、工場経営者ノリ。
還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!
腕に覚えありの武闘派2名、機械をいじらせたら無敵の頭脳派1名。かつての悪ガキが結成した自警団が、今日もご町内の悪を斬る! (紹介文より)
〜感想〜
親の代から続く剣道道場も開いていたものの、定年退職の時期に生徒たちもいなくなり道場も閉めることになるのだけど、還暦のお祝いに来た息子夫婦たちは早速、道場を自分たちが利用したいと言い出して……。
まだまだ隠居には早いと思っていたキヨにしてみれば、そんな息子夫婦の心根が情けないやら悔しいやら
そのまま、親友のシゲが営んでいる居酒屋へ行って愚痴を聞いてもらうことに。
でも、再就職先でトラブルが発生して孫も巻き込まれてしまいます。
孫の身が危険にさらされかけた時、キヨ、シゲ、ノリが颯爽と現われて……
キヨは剣術の達人、シゲは柔術家、ノリは機械の扱いのプロ、と三人ともヒトクセもフタクセもある人物。
息のあったやりとりで、鮮やかに孫を助け出します。
おっさんをなめるな(笑) とばかりにはりきる姿が可愛いカッコよかったです
この事件がきっかけで、孫のキヨに対する見方が変わります。
キヨ、シゲ、ノリたちは、この事件をきっかけに3人で“自警団”のようなことを始めることになります。
少しずつ、変わっていく孫がキヨと心を通わせる様子にほのぼのしたり、おっさんたちの胸のすくような活躍ぶりにワクワクしたり、と楽しく読める作品でした
あらすじ
「母さん死ぬな―」へなちょこ25歳がいざ一念発起!?
崩壊しかかった家族の再生と「カッコ悪すぎな俺」の成長を描く、勇気と希望の結晶。
逆境スタートの華麗なる変身劇!! やり甲斐とか、本当にやりたい仕事とか、言ってる場合じゃないし!!
自尊心ばかり高くて、怠惰でへたれな主人公が、ある出来事をきっかけに、立ち上がる。仕事を探して、働いて金を貯めるぞ。病気の母を助けるため、奮闘開始だ!!
父=商社勤務「経理の鬼」
母=重度の鬱病に罹る
姉=名古屋の病院に嫁ぐ
俺=二流大卒、入社3ヶ月で退社 (紹介文より)
〜感想〜
嵐の二宮くんが主演で、TVドラマにもなった本作ですが、ブームは下火になったようで(笑)、図書館でやっと借りることができました
TVのほうは観てないので、二宮くんがフリーターで、家を買うんだな、とタイトルまんまの話を想像してましたが、いざ読んでみると確かに家は買うけれど、そこに至るまでの話は結構シリアス
主人公の武(たけ)誠治はそこそこに名前が知られている大学を卒業し、これまたそこそこにいい会社に就職したものの、宗教色の強い研修にドン引きし、研修終了後にも会社になじめず「要領の悪いやつ」 というレッテルをはられてしまいます。
結局、三ヶ月で会社を辞めるのだけど、世間は誠治が思うほど甘くなく、次の就職がなかなか決まりません。 そのうちに、とりあえずバイトで食費を稼いで家に入れるようになるのだけど、そうなると逆にフリーターの気楽さに慣れて、就職活動にも身が入らなくなってしまいます。
以前は両親と一緒に食事をしていたのに、父親から説教されるのが嫌で、だんだんと自分の部屋で食事をするようになるのだけど、ある日、いつものように母親が部屋の前に置いてった食事がカップ麺に
就職活動に身が入らなくなった自分に対する当てつけなのかと、面白くない誠治だったのだけど、三食続いたところで我慢ができずに、母親に文句を言うために部屋を出ると……そこにいたのは結婚して家を出たはずの姉の亜矢子。
なぜ亜矢子がいるのか、不思議に思う誠治だったのだけど、母親が重度の鬱病になっているということを聞かされて……。
今まで何も気づかなかったことにショックを受ける誠治だったのだけど、亜矢子はさらにショッキングなことを話始めます。
今の家に引っ越してきてから二十年の間、町内の住人たちからずっと嫌がらせを受けていたこと、飼っていた猫を傷つけられたり、誠治と亜矢子の子供の頃にも嫌がらせをされていたことを聞かされて……
幸いにも(?)鈍い誠治は全く気づかずに今まで成長していただけに、寝耳に水の話にただただ驚くばかり。
姉の亜矢子はすぐに気づいていたということなのだけど、なら何故自分にも打ち明けてくれなかったのか、と聞く誠治に母親が 「せっかく気づいてないんだから、このままにしておいてほしい」 と母親に止められていたことを教えられます。
自分の知らないところで母親が苦しんでいたこと、それでも家族のために耐えていたこと、誠治を守ってくれていたこと、でも、とうとう限界を越えてしまい、重度の鬱病になってしまったこと、そういった事実を一気に知らされた誠治は途方にくれます。
そうして誠治の母親を治すための奮闘が始まるのだけど……。
これが並大抵の苦労じゃありません!
当たり前といえば当たり前なんですが、頼りになるはずの父親がこれまた困った人で…… 母親のことを 「心が弱いからそうなるんだ」 なんて心ない言葉を平気で口にしたりします。
もっとも、父親自身も妻がそんな状態になったことに対してショックを受けていて、せめてもの虚勢だったようなのだけど、誠治にしてみれば 「なんてことを言うんだ、このクソ親父」(笑) って感じですね
誠治自身の就活がうまくいかなかったことも原因の1つだったことから、反省して気持ちを新たにとにかく何とか就職を決めよう! と頑張り始めるのだけど、やっぱりそうそう簡単には決まりません。
母親の病気の原因が二十年()にわたる町内からの虐めなので、本当に完治させようとするならば今の家から引っ越しすることが最善の方法ではあるのだけれど、これまた簡単に次の家を購入する、というわけにはいきません。
父親は自分の趣味にはお金をかけるくせに、母親の病気を治すためにお金を出そうという気にはならないようで……
それなら、自分がなんとかしてやる
と一大決心して、とりあえず夜間の土木工事のアルバイトでまずは100万円をためようと目標を決めます。
そうして始めた夜間のきついアルバイトだったのだけど、意外にも誠治はやめることなく頑張ります。
そうして一生懸命働く姿に、仕事仲間のおじさんたちも何かと声をかけてくれるようになります。 誠治も最初はおじさんたちにたいして侮る気持ちを持っていたのだけど、そんな気持ちもすっかりなくなって母親のことを打ち明けて父親の困った態度について相談したりするようになります。 すると、やはり年の功というのか自分では思いもつかない答えを返してくれて、どうしようもない父親だと思っていたけれど、父親なりに辛い思いをしてることがわかってきます。
そうなると、一方的に父親を責める気持ちもなくなってきて、少しずつ自分のほうから父親に歩み寄るように。 父親はそれなりの会社に勤めていて ”経理の鬼” という異名まで持っている仕事ではなかなかのやり手。
そこで誠治は父親に就活のアドバイスを求めることにします。
すると、やはり社会人として長年働いている人生の先輩なだけあって、一つ一つが的を射ていて……。 最初は、「相談してあげてる」 つもりだった誠治だったのだけど、相談が終わる頃にはすっかり父親を見直すことに(笑)
いざというときには、父親の紹介で就職することもできるのだけど、そこまではまだ甘えたくないということもあって、とりあえずアドバイスに従って夜間のアルバイトを続けながら、改めて就活に力を入れることになります。 そうこうするうちに、目標の100万はとっっくにたまり、さらに夜間のアルバイトでの真面目な仕事ぶりが認められ、正社員にならないか、という嬉しい誘いが
同時期に就活のほうでも、望んでいた職種ではダメだったものの、別の部署ではどうかというこれまたありがたい申し出が どちらを選ぶべきか悩む誠治だったのだけど、父親にも相談しながら ”家を買う” という最終的な目標をかなえる条件を満たしているほう、ということで夜間のアルバイトをしていた会社を選びます。
ここからレベルアップ(笑)した誠治の、今まで以上の活躍が始まります。
ここまでくると、最初の頃のダレた誠治の姿はどこへやら
責任感があってやる気があって頼りがいのある、”デキるヤツ” に生まれ変わった眩しい(笑)誠治の姿にほれぼれ
最初の頃のまったく頼りにならなかった誠治が、母親のことを思って一生懸命頑張って確実に成長していく姿と、家族としての絆を取り戻していく様子が感動的でした 清々しい気持ちになって、自分も頑張ろう、そう思わせてくれる素敵な話でした♪
★★★★(4/5)
あらすじ
成南電気工科大学機械制御研究部略称「機研」。
彼らの巻き起こす、およそ人間の所行とは思えない数々の事件から、周りからは畏怖と慄きをもって、キケン=危険、と呼び恐れられていた。
これは、その伝説的黄金時代を描いた物語である。
既にサークルの域は出た。活動内容もそうだが、集う人間の危険度が、だ。ヤバイ奴らが巻き起こす熱血青春ドタバタ劇。理系男子って皆こんなに危ないの?(紹介文より)
〜感想〜
電気工科大学に晴れて入学した元山は、なんとなく気が合って仲良くなった池谷と “機械制御研究部” の部長、上野から勧誘されます。 人当たりのいい上野とは正反対の無口で強面の副部長、大神にひるむものの工具や設備が桁違いに整っていることにつられて、とりあえず仮入部をすることに。
ところが部活動をするうちに、実は大神よりも上野のほうが常識外れのとんでもないトラブルメイカーだということがわかります。
仮入部期間が終わり、サークルの紹介イベントで上野はグラウンドで爆破デモンストレーションを実行
あまりの危なさに、結局入部したのは十人未満
もちろん、その中には元山と池谷も残っていて、機械制御研究部……略して “キケン”(危険)での、波乱万丈(笑)の部活動が始まります
とにかく、すべてがサークル活動 の域を超えている “キケン” での様々な出来事に翻弄されながらも、楽しそうに成長していく部員たちの姿が面白かったです♪
本当に、楽しそうなので読んでいて羨ましくなるほどでした
学生生活をもういっぺんやり直したいと思いました〜
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
父の転勤に同行せず、神楽坂の祖母と暮らすことを決めた中学二年生の望。
包丁も持てない祖母は面倒くさがりで、気が強くて、決して世話好きには見えない。
でも「お蔦さん、お蔦さん」と誰からも頼られるような、不思議な吸引力を持っている。
そんなお蔦さん目当てに人が集まってくるから望も何かと忙しくて…。
お蔦さんや学校のみんなに振り回されつつも少しずつ成長していく望の、あたたかくて少しだけ波乱のある爽やかな日常。(紹介文より)
〜感想〜
主人公の滝本望は中学二年生なのだけど、滝本家では曾祖父の代から男が料理を作る、というふうになっていて、望も代々伝わるレシピをならい一通りの料理を作れるようになっています。
そんな滝本家なので、望の父親の転勤が決まったときまっさきに心配したのは、祖母のお蔦さんの食事がどうなるのか、ということ
そこで、中高一貫の学校に通っていることもあって、望が残り祖母の家で一緒に暮らすことにします。 そうして、神楽坂の祖母のお蔦さんとの暮らしが始まるのだけど、ちょっとした事件が次から次へと起きて……
望とお蔦さんを中心に繰り広げられる、ご近所さんたちとの人情あふれるやりとりにほのぼの
望が悩んだり喜んだりする様子に、自分が中学生だった頃のことを思い出したりなんかもして懐かしい気持ちにさせてくれる作品でした
★★★★(4/5)
あらすじ
どうしようもない人々が醸し出す、得体の知れないエネルギーが溢れている大阪ミナミ。
社会の底辺でうごめく人々の愚かなる振る舞いや、おかしな言動が町を彩っている。
主人公は、夢を失いつつ町工場で働く中年男と恋人に見捨てられそうになりながらスナックで働く若い女。
八方ふさがりに見える二人は、周りの喧噪をよそに、さらに追い込まれていく。
ところが、冬のある夜、通天閣を舞台に起こった大騒動が二人の運命を変えることに…。(紹介文より)
〜感想〜
孤独な一人の中年男性が朝、目を覚ます場面から話が展開していくんですが、最初からなんともいえない哀愁が漂っていて、何だか落ち着かない気分にさせられます。
何でなんだろう?
と、思わず考えこんでしまったんですが、その理由に気づいた時はちょっとショックでした。
なぜなら、その男性が感じている気持ちや孤独感は自分でも感じたことがあったからです。 でも、こういう気持ちは特別なものではなくて、誰でも一度は感じたことがあるんじゃないでしょうか?
例えば、親元を離れて都会で一人暮らしを始めた若者。
単身赴任をしているお父さんや、子供たちが巣立って手持ち無沙汰になってしまったお母さん、等等。
そして、もう一人の主人公の恋人と別れそうになっている若い女性。
恋愛をしたことのある女性なら、彼女の気持ちも理解できると思うのだけど、ただ、ちょっと男性に頼りすぎの性格をしているので人によっては少しイラつくこともあるかもしれません
それでも、彼女の孤独感や絶望感には共感することができるかと思います。
孤独な中年男性と同じく孤独な若い女性。
一見なんの接点もないかに思える二人なんですが、話はこの二人の生活を交互に描きながら進んでいきます。
この二人の生活の様子はリアリティがあって、実際にこんなふうに暮らしている人はたくさんいるんだろうな、と思わされます。 そしてその中には自分の一部があてはまるような気も……
何となく、流されて生きてる。 働かないと食べられないから嫌な仕事でも我慢して続けてる。
自分の本当の気持ちを打ち明けられる友達がいない。 恋人に捨てられた。
自分がいなくなっても誰も悲しまない。
と、挙げればきりがないんですが、こういったことを1度でも思ったり、経験した人にはこの作品はかなり共感できるんじゃないかなと思います。
正直、読んでいるうちに憂鬱になったりもしたんですが、でも、最後まで読み進んでみると……。
意外な感動が待ち受けていました。
中年男性と若い女性の繋がりが明かされ、そしてその事実が一人の人間を救うことになります。 その時の場面では感動的なのに思わず ぷぷっ と笑っちゃうんですが、でも人と人との不思議な結びつきに胸が温かくなってちょっと幸せな気持ちになりました
人は一人でも生きていけるかもしれないけれど、やっぱり誰かと一緒にいるほうがいい。
そう思える作品でした
★★★★☆(4.5/5)
あらすじ
「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた―記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。
博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。
数字が博士の言葉だった。
やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。(紹介文より)
〜感想〜
交通事故に遭い、記憶が80分しかもたなくなってしまった数学博士。
そんな博士のもとへ通い、家事をすることになった家政婦の ”私”
博士にとって、”私” は毎日が初対面の家政婦。
そんな私に博士が必ずするのは、数字に関する質問で……。
毎日数字に関する博士の説明を聞くうちに、段々と家政婦の”私”も数式に興味を持つようになっていきます。 それは博士の独特の表現方法とわかりやすい説明のおかげでもありました
読んでいて数式が出てくるとつい、頭が混乱してしまうんですが、なんとなく数式の面白さはちゃんと伝わってきました
とにかく、博士の記憶は80分しか持たないので、仕事をするうえで気をつけなければならないことが色々と出てきます。 買い物に出ても、必ず80分以内の戻ってくるとか、博士が覚えていないことは口にださないようにして、あたかも今がはじめてのこと、のように振舞うとか。
それは、なんとも悲しくて切ないことなんですが、同時にとても優しい気持ちにもしてくれました。
博士に対して自然に振舞う家政婦の”私” とその息子の ”√”(ルート)の思いやりと優しさが、心に染み入る温かい作品でした
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
死神の千葉の仕事は、不慮の死を迎える対象=人間を事前に調査し、「可」、「見送り」 のどちらにするかを判定すること。7日間の調査の後に下す判定だったが、千葉が下すのはいつも 「可」 ばかり。ところが、今度の対象の藤木一恵に関しては勝手が違ってしまい……。
前置き
この作品も映画で観たのが先でした
金城 武 演じる”死神”の千葉の飄々としてつかみ所のないキャラがなんともいえず、魅力的だった 【Sweet Rain 死神の精度】 。もっと彼のことが知りたくなって、本作を読む事に。でも、もっと千葉のことがわからなくなっただけでした
〜感想〜
『死神の精度』
大手電機メーカーに務めている苦情係の女性の調査を割り当てられた死神の千葉。
彼女の予定された”死”を 「可」 にするか 「見送り」 にするか……それを決めるのが千葉の仕事なのだけど、彼が下すのはいつも「可」ばかり
とはいえ、これは千葉に限ったことじゃなくて、死神たちは大抵ろくに調査もせずに「可」の報告をしています。その点、調査をするだけ千葉は真面目な死神なのかも
死神たちが現れるのはあくまでも”不慮の死”を迎える人間の前だけで、病気とか自殺が原因の死にはかかわりません。その違いは千葉にとっては大事らしく、一緒にしてほしくない、と変なプライドを持っている様子が可笑しかったです 人間にしてみれば、どんな理由でも違いはないのだけど。
今回の千葉の調査の対象は、「死んでしまいたい」と口に出す、疲れきったOL。
最初から ”可” にしようと決めていた千葉だったのだけど、実は彼女には音楽の才能があることがわかって……ミュージック大好き!の千葉は「見送る」ことにする。
……結構アバウトですね
『死神と藤田』
今度の対象者は兄貴分の敵討ちをしようとしているヤクザ。
情報提供者として対象に近づく千葉なのだけど、相変わらず飄々としている彼に相手が戸惑う様子が可笑しいです
死神になってから長いのかな? と思うのだけど、人間のことは未だによくわからないようで、ちょっとした言い回しもそのまま受け止めてしまうものだから、とんちんかんな会話になることも
相手がヤクザでも全然お構いなしの千葉と、そんな彼に毒気を抜かれた対象者とのお互いを認め合ったような雰囲気が不思議な感じでした
『吹雪に死神』
吹雪に閉じ込められた洋館に起きる殺人事件。
刑事の親子、若い女性、料理人、年配の夫婦。
その場所に対象者がいることから、迷子になったふりをして紛れ込んだ千葉だったのだけど……次々に人が殺されていくものだから、成り行きで探偵役をすることに
なんといっても 腐っても死神(?)笑 なので、人が死んでもどうってことのない千葉なのだけど、周囲の人間にとってはそういうわけにもいきません。同じように振舞おうとしながらも、時々ボロをだす様子に思わず苦笑しちゃいました
『恋愛で死神』
ブティックで働く青年が今回の調査対象。
彼は片思い中なのだけど、その相手の女性はたちの悪いストーカーにつきまとわれていたことから、彼女を守ろうとします。その青年と知り合いになって調査を始めていた千葉も、青年につきあうことになるのだけど……。
ちょっと切ない話でした
『旅路を死神』
母親を包丁で刺し、さらにもう一人を殺したばかりの青年にカージャックされる千葉。
ところが、その青年こそが今度の千葉の調査対象者。怯えない千葉に拍子抜けする青年なのだけど、自分の目的地まで千葉に車を運転させることに。
そうして、死神と殺人者 の奇妙な旅が始まります。
ほんのちょっとだけ、人間らしさを感じさせる千葉が新鮮でした
『死神対老女』
今度は七十歳ながらも美容師として現役の老婆が調査対象。
ところが、この老婆はたちまちのうちに千葉の正体を見抜きます。
死を恐れない老婆に感心すると同時に気安さを感じる千葉。
そして、老婆は千葉に頼みごとをする。
それは奇妙なもので……。
珍しくタジタジとなる千葉が面白かったです
実は老婆と千葉は以前にも会ったことがあって、最後のほうで千葉はそのことに気づきます。それは『恋愛で死神』で、対象者の青年が恋していた女性。
彼女のその後の人生がわかって、ちょっと嬉しかったのだけどその内容には悲しい気持ちになりました[:がく〜:]
老婆の人生を聞いた千葉は、調査部(死神たちに指令を出す部のようです)は何を基準に対象者を選んでいるのか?
ミュージック以外にはこだわらない彼が、初めて疑問に思います。
でも、結局そのへんのことはわからずじまい……。
いつかもっと深く掘り下げて続編を出してほしいものです
最後の最後で、いつも雨ばかりを見ていた千葉がとうとう青空を見ることができます。
彼が青空を見て感動する様子に感動(笑)しました
青空を見たことで、ひょっとしたらこの先千葉に変化が訪れるかもしれない。
そんなふうに思いました
★★★★(4/5)
あらすじ
(四) 会長室篇 上 ……「空の安全」をないがしろにし、利潤追求を第一とした経営。御巣鷹山の墜落は、起こるべくして起きた事故だった。政府は組織の建て直しを図るべく、新会長に国見正之の就任を要請。恩地は新設された会長室の部長に抜擢される。「きみの力を借りたい」。国見の真摯な説得が恩地を動かした。次第に白日の下にさらされる腐敗の構造。しかし、それは終わりなき暗闘の始まりでしかなかった……。
(五) 会長室篇 下 ……会長室の調査により、次々と明るみに出る不正と乱脈。国民航空は、いまや人の貌をした魑魅魍魎(ちみもうりょう)に食いつくされつつあった。会長の国見と恩地はひるまず闘いをつづけるが、政・官・財が癒着する利権の闇は、あまりに深く巧妙に張りめぐらされていた。不正疑惑は閣議決定により闇に葬られ、国見は突如更迭される――。勇気とは、そして良心とは何かを問う壮大なドラマ、いよいよ完結へ!
〜感想〜
『沈まぬ太陽(三) 御巣鷹山篇』 で遺族係として覇権された恩地はある日、現場から呼び戻され遺族に対して補償問題を話し合う係へと移される。大切な家族を失った遺族にしてみれば、お金の話をすぐに受け入れられるはずがない。罵倒され、追い返されることもしばしばある中で、持ち前の誠実さと粘り強さで遺族からの信頼を得ていく恩地。
そんなある日、日本航空の組織内部を一新しようと、新会長が就任される。新会長の国見は稀にみる清廉な人物で、会社内の問題点を洗い出し改善しようとするのだけど、恩地を部長として抜擢した事で国見自身も中傷にさらされるようになってしまう。
国見と恩地の奮闘にもかかわらず、とうとう不正疑惑は闇に葬られてしまい……。
腹たつーっっっ
ここまで、腐りきってしまった自分にどうして気づかないのか?
恥ということを知らないのか?
とにかくムカムカ、ムカムカして……
腹立ちがおさまらなかったです
恩地にしても、国見にしてももっと報われていい人たちなのに、逆に酷い目に合わされてしまっている理不尽さは、とても納得できるものではありません。
でも、そういうことがまかり通ってしまう……なんて、恐ろしいんだろう、と思いました。
読んでいると度々、無力感に襲われてしまいます。
恩地と国見のすることをことごとく邪魔をする上層部の人間達に対しては、怒りを通り越して呆れるばかりになってしまいました。欲にかられた彼らの浅ましさには本当にうんざりします
正義はないのか? と、思わず真面目に問いかけたくなったほど。
幸い、最後には少しだけ希望を持つことができたので、ホッとしたけれど……。
とても考えさせられる作品でした
★★★★(4/5)
あらすじ
十年におよぶ海外左遷に耐え、本社へ復帰をはたしたものの、恩地への報復の手がゆるむことはなかった。逆境の日々のなか、ついに「その日」はおとずれる。航空史上最大のジャンボ機墜落事故、犠牲者は520名――。凄絶な遺体の検視、事故原因の究明、非情な補償交渉。救援隊として現地に赴き、遺族係を命ぜられた恩地は、想像を絶する悲劇に直面し、苦悩する。(紹介文より)
〜感想〜
『沈まぬ太陽(一)(二) アフリカ篇』 で味わった十年の苦しみから解放されやっと本社へ戻ったものの、いわゆる「窓際族」と呼ばれ、出世とは縁のない立場に追いやられていた恩地。
相変わらず、上層部からの風当たりは強かったが、異国の地で一人孤独に苛まれていた日々を思えば、家族と共にいることで気持ちは大分違っていて……。
そんなある日、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起きる。
恩地は、乗客の遺族係として現地に赴き彼らの世話をするよう命じられる。
遺族たちの憤りと悲しみが痛いほど伝わってきて、読むのが辛くなるほどでした。「ひょっとしたら助かっているかもしれない」 そんな一縷の望みにすがり、自分の娘、息子、妻、夫、母親、父親、大切な家族の無事を祈る姿は本当に痛ましく、そんな遺族の思いを踏みにじるような企業のやり方に怒りをおぼえずにはいられません
人の命を預かることの重みをいつのまにか忘れ、すべてをお金で片付けようとする彼らの姿は見苦しいばかりです
そんな上層部から突然、遺族係として派遣された数人の社員たち。その中には恩地も含まれているのですが、彼らは遺族たちの怒りの矢面に立たされます。
ひたすら、耐えて誠実に対応していこうとする彼らの姿に救われる思いがしました。
とはいえ、遺族の方たちの苦しみと悲しみが無くなるはずもなく……その姿には涙がでることも度々でした
次は 『沈まぬ太陽(四)(五) 会長室篇』 上下へ。
★★★★★(5/5)
あらすじ
(一) アフリカ篇 上 ……広大なアフリカのサバンナで、巨象に狙いをさだめ、猟銃を構える一人の男がいた。恩地元、日本を代表する企業・国民航空社員。エリートとして将来を嘱望されながら、中近東からアフリカへと、内規を無視した「流刑」に耐える日々は十年に及ぼうとしていた。人命をあずかる企業の非情、その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命――。(紹介文より)
(二) アフリカ篇 下 ……パキスタン駐在を終えた恩地を待ち受けていたのは、さらなる報復人事だった。イラン、そして路線の就航もないケニアへの赴任。会社は帰国をちらつかせ、降伏を迫る一方で、露骨な差別人事により組合の分断を図っていた。共に闘った同期の友の裏切り。そして、家族との別離――。焦燥感と孤独とが、恩地をしだいに追いつめていく。そんな折、国民航空の旅客機が連続事故を起こす……。(紹介文より)
〜感想〜
あまりの理不尽さに開いた口がふさがりませんでした。
理屈や道理が通らず、非常識が常識になってしまっている環境……当たり前のなんでもないことが、許されない不条理に、ムカムカ腹がたちっぱなしでした。
いったい彼らは何を考えているんだろう?果たして、同じ人間なんだろうか? とまで、思ってしまいました。
無理やり組合の長にされてしまった主人公の恩地は、自分が望んでなったわけではなかったのに、誠実に組合員のために義務は果たしていきます。そのために、会社の上層部からは煙たがられるようになってしまうものの、彼らにおもねることはなく、やるべきことをやっていきます。でも、そんな誠実さが仇になり、報復人事とも呼ぶべき辞令が下されます。
中近東、アフリカ、パキスタン……今度こそ、と思うたびに裏切られ、とうとう10年にも及ぶ島流し状態に。 いったい一人の人間にここまで、苦しみと犠牲を強いる権利が会社にあるのか?
”会社” という組織の後押しがあることで、 ”人” が ”人” に対して何故、ここまで無情になれるのか……心底、恐ろしいと思いました。
それだけに、10年近くも耐え続けた恩地の不屈の精神には頭が下がります。なんていう強靭な精神の持ち主なのか……理解のある妻の支えもあったにしても、何も無いところから自分なりのリサーチをもとに営業活動をしながら、新規顧客の開拓までするバイタリティがまた凄い。
ところが、またしても会社によって恩地は窮地に追い込まれる。
飛行機が墜落したことで、せっかく築き上げた信用も崩れ、顧客が離れていってしまう。流石の恩地も焦燥感を拭うことが出来ず、久しぶりに会った妻は狩りに慰めを求める恩地の様子に、荒んだものを感じ危機感を覚えるのだけど……。
恩地と離れて暮らす妻も苦労してます。
息子と娘の二人の子供を日本でしっかり育てながらも、父親の長い不在が子供たちに影響を及ぼすことは避けられず、息子は一時的に学校へ行かなくなってしまいます。でも、そんなことを遠い異国の地にいる夫に伝えて心配をかけることはできません。
何も問題がない振りを装いながら、少しでも夫が楽になるように心を配る様子に妻の鑑だと思いました。
そして、ついにそんな二人の苦労がついに報われる時がきます。
組合仲間の一人が恩地の窮状を公の場で明らかにしてくれたのです。そのことから世間に波紋が広がり、とうとう会社は恩地を本社へと呼び戻すことになります。
ここまで、本当に長かった
これで、苦労が終わるわけではないけれど、とりあえずはホッとしました。
帰国してから恩地を待ち受けているのはどんな事態なのか?
次は 『沈まぬ太陽(三) 御巣鷹山篇』 へ。