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キャサリン コールター
二見書房
¥ 940
(2003-07)
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★★★★(4/5)
あらすじ
被害者はみな廃屋に組んだ迷路を歩かされ、舌を切り取られていた…… 七年前サンフランシシコを震撼させた猟奇連続殺人。かつてこの事件で姉を失ったレーシー・シャーロックはFBI捜査官になったいまも密かに犯人を追い続けていた。そんななかボストンで再び同様の事件が!シャーロックは敏腕捜査官サビッチの協力を得て犯人を追いつめるが、封印した過去を解き放ち、みずから迷路の入口に立とうとしているとは気づくはずもなかった……(紹介文より)
前置き
作者のキャサリン・コールターについて少し。
彼女は歴史もののロマンス − ヒストリカルロマンスで一躍注目浴びた作家さんです。ハーレクイン、MIRA文庫からも続々と作品が出ているので、ロマンス好きの方はこちらもどうぞ読んでみてください
〜感想〜
”シャーロック”
この名前を聞いた人はほとんど全員が、”彼” を思い浮かべると思うのだけど、彼の子孫だとか、親戚だとか、そういう設定ではありません(笑)
ヒロインのシャーロックは姉を連続殺人鬼 ”ストリングキラー ”に殺された過去を持っています。その過去のトラウマから逃れられない彼女は姉を殺した犯人を捕まえるためにFBI捜査官になることを選びます。そして、アカデミーの最終試験で試験官の一人だったディロン・サビッチに優秀さを買われ、シャーロックは彼が担当する犯罪分析課で捜査官として働くことになる。
ディロン・サビッチ ― 彼はコンピューターを駆使してかつてない犯罪者割り出し方法を編み出した、伝説的な人物。
本当ならシャーロックはプロファイラーとしてFBIに勤めることを望んでいたのだけど、実際の業務のあまりの過酷さに挫折。諦めて、おとなしく銀行強盗を追うつもりだったシャーロックにとってサビッチからの誘いは思いがけないものでした。
これで、姉の事件を追う事ができると喜ぶシャーロック。ところが、このサビッチは切れ者で一筋縄ではいかない人物。彼にばれない様に姉の事件を追い続けるシャーロックはある日、姉を殺した連続殺人鬼が7年の歳月を経て、殺人を再開したことを突き止める。
シャーロックはサビッチに嘘をついて、こっそり事件を調べようとするのだけど……。
そんなシャーロックの行動はサビッチには最初から、お見通し
サビッチのパスワードをこっそり手に入れて極秘情報にアクセス、さらに嘘をついていたシャーロックに怒り心頭に達したサビッチだったのだけど、辞める覚悟をした彼女にサビッチは気持ちを汲んで事件の調査に同行するように伝えます。
そうして、新たな連続殺人を止めるため、姉を殺した犯人を捕まえるため、シャーロックとサビッチの二人は協力して捜査をすることに。
いわゆるプロファイラーものとはちょっと違ってて、ディロン・サビッチが独自に編み出したコンピュータープログラム”MAX”(マックス)によって、犯人を割り出していきます。この MAXは細部まで割り出してくれる優れもの。 でも、そこまで突き止めるためには、やっぱり人間が集めた情報がものをいいます。
データを入力するのはあくまでも捜査官たち。
そして、そのデータをもとに人間が気づかなかったことをMAXが突き止めてくれる、という仕組みです。
面白いのが、このMAX はなぜか、時々性転換
して マクシーネ になっちゃったりもします(笑) なんの意味があるかというと、意味はないらしい
そんな優れもののMAXがありながらも、シャーロックの捜査はなかなかはかどりません。なぜかというと、ボスのディロン・サビッチは切れ者で頼りがいのあるナイスガイで、シャーロックとサビッチはお互いに惹かれあうようになるのだけど、それが面白くない元カノの同僚に嫌がらせされたり、あろうことか情報をリークされて捜査の足を引っ張られてしまうから。
そのほかにもシャーロックに家に戻ってきてほしい父親の ”FBIを辞めなさい”攻撃
や、姉の夫だった義兄からの”結婚してくれ”攻撃
等々、事件以外のことで頭を悩まされる羽目になるシャーロック(気の毒…
)
もちろん、シャーロックは捜査を優先するのだけど、彼女自身も命を狙われたり何度も襲われて怪我を負う事態に。そんな彼女に対して保護欲を刺激されたサビッチはますますシャーロックに惹かれていって……。
ロマンス
を絡めながら、ハラハラドキドキのミステリが楽しめます
このサビッチとシャーロックはこれから先の作品にも、ちょくちょく登場します。<FBIシリーズ> ということで、この二人の周囲の人間が主役として変わっていくのだけど、名前だけとか、捜査に協力したりとかで顔を出し、その度に二人の近況がわかるのも楽しみの一つです
次は
『袋小路』 へ。
サビッチの妹リリーが主役です。