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グレッグ・ルッカ
文藝春秋
¥ 2,800
(2007-08)
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
ロンドンの地下鉄を業火が襲った ― テロリストが主要三線に同時にガソリンをまき、火を放ったのだ。死者は三百名以上。直後に届けられたのはイスラム過激派HUMの犯行声明だった。 イギリス政府は報復計画を練り始めた。そして組織の宗教指導者ファウドの暗殺が決定された。実行におもむくのは秘密情報局主席特務官、タラ・チェイス。
卓越した殺しの才能を持つ美貌の暗殺者。
ファウドを暗殺すべく中東へ潜入した彼女は、しかし、この任務が大いなる危険を招くとは想像もしていなかった。
国際政治の論理が冷酷な牙を剥き、味方さえ失ったチェイスが銃とわずかな友を頼りに、血路を切り開く− 。(紹介文より)
〜感想〜
テロリストへの報復として暗殺を命じられた特務捜査官のタラ・チェイス。
単独で中東に潜入し、任務を遂行したチェイスだったのだけど、その後国際事情が変わり彼女の身が危険にさらされることに。
あろうことか、暗殺を命じた張本人の政府が冷たい国際倫理をもとにチェイスの身柄を敵方に渡すことを決定する。そうなった時にチェイスを待っているのは敵の報復のみ。残酷な死は免れないことは必至。そのことを知った上司のクロッカーは、チェイスを逃がそうとするのだけど助け出すことまではできず、チェイスは頼りにできるのは自分だけということを思い知らされる。
自分が忠誠を誓った国から裏切られる羽目になったチェイスに残されたのは、そもそもの原因を取り除くという強硬手段だけ。だが、それは一人では不可能なことから元の上司で唯一人チェイスが心から愛した相手でもあるトム・ウォレスに助けを求め、二人で再度中東へ潜入するのだけど……。
主人公のチェイスは特務捜査官という肩書きを持っているのだけど、この肩書きはどうやら”暗殺者” と同じ意味をもつようです。そしてチェイスは凄腕で上司のクロッカーからは絶大な信頼を寄せられているのだけど、クロッカーのさらに上の上司はこの特務捜査官の存在をいまひとつ軽んじているようなところも。
そのせいで、クロッカーと上司は何かと対立することもしばしば。
今回、チェイスがパーフェクトに任務を遂行したにも関わらず、逆に政府から生贄として敵に渡されようとした時にも上司と対立してクロッカーはチェイスを守ろうとします。
そういう、スパイとしての駆け引きめいたやりとりはクロッカーが請け負っているような感じです。
チェイスもそういうゲームを心得てはいるようなのだけど、どちらかというと行動の人という感じで、抑えるべき時でも感情のままに振舞うこともあったりして、意外に癇癪持ちみたいです
そんなチェイスなのだけど、ウォレスのことは無条件で信頼していて、彼と共に敵の基地へと潜入していきます。
ところが、戦闘中チェイスは思いがけない人物に出会い、気を散らされてしまう。そのちょっとした隙をつかれ、チェイスはウォレスを失ってしまうことに……。
抜け殻状態になってしまったチェイスが、この先どうするのか?
気になる結末でした〜