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ディーン・クーンツ
早川書房 ¥ 1,050 (2010-04-30)
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52372位
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★★★★(4/5)
あらすじ
心の平静を求め、シエラネヴァダ山脈にある修道院に滞在していたオッド・トーマスは、12月の深夜、ボダッハ“悪霊”を発見した。
ボダッハの出現は大惨事が起きる前触れとなるため、彼は調査を始める。
だが修道士がひとり忽然と消え、さらに顔のない修道士や想像を絶する怪物が現われる。
猛吹雪の中、修道院で暮らす子どもたちを守ろうと闘うオッドの前に、やがて驚くべき真相が!(紹介文より)
〜感想〜
『オッド・トーマスの受難』 に続く3作目です。
前作の事件のあと心の平穏をもとめ、しばらく修道院での生活を送ることにしたオッドでしたが、その平穏な暮らしが破られる日がやってきます。
雪が降るのを眠らずに待っていたオッドは、窓の外に ”ボダッハ” の姿を見つけてしまいます。 いつもならば、見ないふりをするのだけど今回は何故か衝動的に ”ボダッハ” の後を追うことに。
そうして、追っていたボダッハが向かったのは、修道院で暮らしている障害のある子供たちが眠っている部屋
ボダッハ が現れるのは大惨事が起きる場所だけ。
オッドは子供たちの身に怖ろしいことが起こるのだと確信して、事前に食い止めようと決心します。
修道院長には自分の ”霊が視える” 能力のことを打ち明けていたオッドは、ボダッハが現れたことを報告して、とにかく大惨事が起きるのを食い止める努力をすると伝えます。
そうして、オッドは何が子供たちの身に起きるのか?
”霊的磁力” の導きを手がかりに、原因を調べ始めるのだけど……。
今回はオッドにとって、嬉しくも辛い出来事が起きます。
それは、事件に巻き込まれて死んでしまった永遠の恋人ストーミーが、ある子供の口を借りて話しかけてきたこと。 ストーミーもまた、子供たちに起きる悲劇を止めようとヒントをオッドに示してくれるのだけど、この時のオッドの気持ちを読むと切ないやら悲しいやらで胸が痛くなりました
いつも思うことですが、オッドの純粋さや優しさに際限はないのかな、と。
普通の青年なのに、にじみでる善良さ、とでもいうんでしょうか? 彼の醸し出す雰囲気にはなんともいえない不思議な気持ちになってしまいます。
今回、オッドを助ける修道院の人たちも同じようで、進んでオッドに協力して危険に立ち向かっていってくれます。 しかも、今度の相手は ”魔物” のような存在で……。
いったい、どこからソレは現れたのか?
何故、子供たちを殺そうとするのか?
修道院の中には怪しげな人物も紛れ込んでいて、果たして敵なのか味方なのか、判断がつかなかったりするんですが、オッドとその謎の人物がかわす会話はどこかユーモラスで、なんだか面白かったです
最後にはオッドは皆の協力のおかげで犯人を止めることができるんですが、今回の事件で修道院すらも安息の場所ではないことを実感することになります。
再びピコ・ムンドの町へ戻ることを決心したオッドだったのだけど、途中で ”霊的磁力” が動き出し……。
次に、オッドを待っているのはどんな運命なのか?
4作目へと続きます 次の作品が待ち遠しいです。
そうそう、1作目からオッドについていたエルヴィス・プレスリーの霊が本作でとうとう次の世界へと旅立ちました。 ストーミーが死んだ時も、オッドのそばにいて慰めてくれていた優しいエルヴィス・プレスリーは今回も何かとオッドを笑わせようとしたりしてさりげなく支えになってくれてます。
そんな彼にあえなくなるのは寂しいですが、代わりに(笑)今度は フランク・シナトラ の幽霊がオッドのそばに現れて……
こういう成り行きって、ちょっと楽しいですね
エリオット・パティスン
早川書房 --- (2004-02-26)
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エリオット・パティスン
早川書房 --- (2004-02-26)
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★★★★★(5/5)
あらすじ
親友の僧ローケシュとともに巡礼の旅から戻る途中、元中国経済部主任監察官の単道雲は、秘密抵抗組織プルバの男と出会い、人里離れた隠れ寺に連れて行かれた。
そこで単は奇妙な依頼を受ける。
チベットの奥地にあるヤプチ村に“石の目”を安置してほしいというのだ。
だが、旅立ちの準備をしている時、魔神のようなものに襲われ、プルバの男が死亡してしまった。
単はローケシュや隠れ寺にいた人々と直ちに出発するが…。(紹介文より)
〜感想〜
『シルクロードの鬼神』 の事件を解決したあと、親友のローケシュと巡礼の旅にでた単道雲(シャン・タオユン)は、強制収容所にいたときに知り合ったプルバの男ダクテから不思議な依頼をうけます。
かつて、中国軍によって神像から奪われた ”石の目” を単の手でもとに戻してほしい、と。
何故自分に? と不思議がる単だったのだけど、 「純粋で徳の高い中国人の手によってもどる」 とお告げがあったことを教えられます。
そのお告げを聞いた高僧ゲンドゥンは、その ”中国人” が単のことだとすぐにわかります。 すでに単のことは ラマ僧を守っている中国人、チベット人の力になっている中国人、と噂になっていることもあり、ゲンドゥン師の言葉は村人たちにも受け入れられ、ダクテが軍から取り戻した ”石の目” をもとの神像へ戻すよう単に依頼がきたという次第だったのだけど、単は責任の重さに戸惑うばかり
そんな単の気持ちとは裏腹に、にゲンドゥンもローケシュも彼にならやり遂げられる、と確信しています。 そうして、”石の目” をもとの場所に戻す旅に出る前にする儀式の準備を始めるのだけど、いざ儀式が始まったその時、依頼してきたダクテが現れ、そのすぐ後に正体不明の何者かが彼に襲い掛かり単の目の前で殺されてしまいます
いったい、何故ダクテは殺されたのか?
単のもと捜査官の血が騒ぎはじめるのだけど、優先しなければいけないのは”石の目” を戻すこと。 単はゲンドゥンとローケシュ、護衛とともに旅立ちます。
ところが、どうしてもダクテの死が忘れられず、旅の途中で犯人を突き止めようと調べ始めるのだけど、そのせいで ”石の目” を戻すという役割に気もそぞろになってしまいます。
そんな単の気持ちを察したローケシュは自分たちが持って行く、と言い出すのだけど、その言葉を聞いて単は改めて気持ちを引き締めることに。
そうして旅を続ける単だったのだけど、途中でゲンドゥンが姿を消したり、”石の目” を奪いかえそうとする軍に追われたり、正体不明の何者かが再び現れたり、と、何がなにやら
事態はかなり入り組んでいくことになります。
でも、そうやって事態が入り組めば入り組むほど単にかかわってくる人々との繋がりも深くなっていって、心を通わせていくようになります。
敵対していたはずの中国人がチベットの少女と関わる事で、忘れていた優しさを思い出して友情を結育むようになったり……今回は思わず涙がぽろり というような場面がいくつかありました。
単を主人公としたシリーズは本作で3作目になりますが、今までの中で一番入り組んだストーリーで、じっくり読まないとちょっと混乱するかもしれません
でも、それ以上に心に響く話でもあるので興味を持たれた方は読んでみてください
苦労の末に、単が役目を果たした時は静かな感動を味わいました。
悲しい気持ちと嬉しい気持ちとが混じって複雑でしたが、それでも最後は笑顔で読み終えることができる作品でした
エリオット パティスン
早川書房 --- (2002-02)
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エリオット パティスン
早川書房 --- (2002-02)
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804066位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
強制労働収容所から非公式に出所した元中国経済部主任監察官の単道雲は、チベット山中にある仏僧の隠遁所に身を寄せていた。
そこで彼は高僧から依頼を受けた。
劉という名の女性教師が殺され、僧がひとり行方不明になったので、北に行って調査してほしいというのだ。
収容所で親友になった男や高僧とともに単は出発するが…(紹介文より)
〜感想〜
『頭蓋骨のマントラ』 で、殺人事件の捜査を通じて軍の責任者と心を通わせた単道雲(シャン・タオユン)は、彼の温情で非公式ながら強制収容所から出所することができます。 その後チベット山中にある隠遁所で平穏な毎日を過ごしていたのだけど、単の師でもある徳の高い高僧から一人の女性が殺され、彼女を静めなければならないと言われ急遽旅立つことに。
自分ひとりで、旅立つと思い込んでいた単は高僧ゲンドゥンと親友の僧ローケシュまでもが、一緒に旅に出ると知ってなんとか思いとどまらせようとするのだけど、二人の決意は固くて……。
ゲンドゥンは僧たちを導く立場でもある大切な存在で、実際に世間へ出たのは前回の事件の時に単と知り合った時が初めて
外の世界がどんなに残酷で悲しみにみちているのかを知らないだけに、単は生きた心地がしないのだけど、ラマ僧としての信仰心の導くまま己の身の危険を顧みず人々のために行動します。 それは、決して特別なことではなくてゲンドゥン師にとっては、自然なことだったりします。
単の親友のローケシュも、同じで……単が二人の安全を確保しようと四苦八苦する姿に共感してしまって、同情せずにはいられませんでした
そうして、殺された女性の住んでいた場所へ辿り着いた単たちを待っていたのは、子供たちが殺されている、という怖ろしい知らせ。
しかも、単たちが来る、ということも何故か人々に知られていて……。
女性の死と子供たちが殺されている事件に関わりがあるのか?
単は再び捜査官としての能力を発揮して詳しく調べることになるのだけど、二人の僧侶は相変わらずわが道をゆく、という状態で…… 信仰心の導くまま、ふらっと姿を消しちゃったりします ……その度にあたふたする単が気の毒でした
二人の身を心配しながらも、一刻も早く真相を突き止めて子供たちが殺されるのを防がなくてはならないんですから
とはいえ、実はローケシュにも子供たちが殺されるのを防がなくてはならない事情がありました。 犯人に狙われている子供たちの中にはローケシュが探している子供も含まれていて、その子供と言うのがトゥルクと呼ばれる ”転生する僧” でローケシュの前世からの親友でもあったのです
なんとか、その子供を救おうとするローケシュだったのだけど……。
今回はチベットを離れた土地で単は捜査をすることになるのだけど、相変わらず ”中国人” ということで彼を敵視する人々もいて、信頼されるまでに時間がかかります。
”チベット人を助けている中国人” と一部では有名になっているとはいえ、だからといって中国に酷い目に会わされている人々が簡単に単を受け入れるのは難しく、スパイではないのか? と疑われたり、暴力を振るわれたり、と結構苦労しています。
それでも、単はいつものように自分を弁護することなく、ただ自分のやるべきことをし続けます。 実際、単自身も中国政府には酷い目に合わされているので、彼を敵視する人々の態度が理不尽に思えるんですが、単が自分の口から言わない限りそういったことは相手にはわかりません。
もっと、自分を弁護してもいいんじゃないのかな? と、ちょっとじれったくも思えるんですが、でもやっぱり真心や真摯な態度というのは伝わるものなんですね
最初は敵視していた人々も最後のほうでは単に信頼を寄せるようになっていきます。
そうして、気がつけば様々な人たちが単を手助けするように。
……単って本当に不思議な人だとしみじみ感じました。
それにしても、チベットのラマ僧たちの信仰心の深さを知れば知るほど、尊敬の念を抱かずにはいられません。 彼らの優しさや善良さを少しでも見習うことができればいいな、と思いました
事件の謎をおっていく様子も面白いけれど、それ以上に単が関わる人々がくり広げる人間ドラマに感動しました
次は 『霊峰の血』 です。
エリオット パティスン
早川書房 ¥ 693 (2001-03)
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509467位
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エリオット パティスン
早川書房 ¥ 693 (2001-03)
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★★★★(4/5)
あらすじ
中国経済部の主任監察官だった単道雲(シャン・タオユン)は、大物が絡んだ汚職事件を追及したことから北京を追われ、今はチベットの奥地、ラドゥン州の強制労働収容所で苛酷な日々を送っていた。
ある日、作業現場で男の首なし死体が発見された。
折悪しく州の検察官は不在、しかも司法部の監査が入る予定になっていた。
困惑した州の軍最高責任者は単に事件の解決を命じるが…(紹介文より)
〜感想〜
中国とチベットとを舞台に、かつて中国でエリート捜査官として活躍していたものの、大物政治家の絡んだ汚職事件を追求したことで一転、政治犯という立場に落とされてしまった単道雲(シャン・タオユン) が、囚人の身でありながら殺人事件の捜査をする、という一風変わったストーリーなんですが、これが面白かった
恥ずかしながら、中国のこともチベットのこともよく知らないので、最初は状況を把握するのに戸惑いました。
なので、中国がなぜチベットのラマ僧たちを弾圧するのかが、今ひとつぴんとこないところがありました。 現実に罪をおかしていない人物も収容所に囚人として囚われているのが納得いかなくて……
どうやら、政治的なことが絡んでいることはわかったのだけど、収容所の囚人たちが些細なことで罰を受けて死んでいくのが当たり前、という状況には寒々とした気持ちになりました
そんな過酷な収容所の中でも、ラマ僧たちは仏教への信仰を捨てることがなく、その姿には胸をうつものがありました。
もとは北京の優秀な捜査官だった単(シャン)は、政治犯としての濡れ衣を着せられて徹底的に拷問を受け身も心も破壊された状態で、強制収容所に送られたのだけど、収容所の囚人達はほとんどがチベットの人々で、中国人である単は彼らにとっては歓迎すべからず人物。
ところが、そんな単を看守の更なる暴力から身を挺して庇う僧侶が現れます。 その僧侶はラマ僧たちのなかでも得の高い人物で、他の僧たちからは尊敬と愛情を一身に集めている人物でもありました。 その時から、単は他の囚人たちから受け入れられ、その僧のおかげで少しずつ心の均衡を取り戻すようになっていきます。
そうして、単は収容所で4年の年月を過ごすのだけど、その年月の間にラマ僧たちの決して揺るがない信仰心を目の当たりにすることで、自分自身も変化していきます。
単にとって、収容所の自分が属する404部隊の囚人たちは大切な仲間になるのだけど、ある日、道路の建設作業中に、頭のない死体が発見されます
このことが、単自身にも404部隊にも思いがけない災いをもたらすことになります。
もと捜査官だった単に軍の最高指揮官から捜査をするように、との命令が下るのだけど単にとっては昔を思い出すことは苦痛でしかありません。 優秀な捜査官だった単に捜査をさせることによって、事件が表ざたになる前に早急に解決することが狙いだったようなのだけど、被害者が監察官だったことがわかり、さらには現地で作業をしているアメリカ人たちまで関わってきて事件は複雑な様相を帯びてきます。
折りしも、死体の発見された現場では ”魔神” が現れたとの噂まで流れ出してきて……
中国では、とにかく ”政治” が全てらしくて、殺人事件が起きても大事なのは真相を突き止めて犯人を捕まえることではなく、 ”政治的に辻褄をあわせること” のようです。
なので、単に捜査を依頼した責任者も最初はそういったことを望んでいたみたいなのだけど、単の捜査が進むにつれて事はそう簡単にはいかないことがわかってきます。
単自身も、とっとと事件を解決して一刻も早く404部隊の仲間たちのもとに戻りたいのに、事件がややこしくなっていくのと同時に404部隊の仲間たちにも危険がふりかかる事態に
いったい、犯人は何者で何が目的だったのか?
捜査の妨害を受けながらも、単はひたすら真犯人を求め続けます。
その姿はゆるぎないもので、尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。 物静かながらも、決して諦めない、そんな単の姿は収容所の看守の心にも変化を及ぼします。
なんといっても、単が囚人であることに変わりはないので見張り兼護衛として一人の看守が単と行動を共にすることになるんですが、その看守も最後には単に仲間として認めることになります。
そうやって立場をこえて、心を通わせていくようになる様子が感動的でした
とにかく、”自由意思” というものが認められず、”政治” が優先される世界で人々がどれだけ酷い目に合わされているのか、が単の捜査を通じて伝わってくるので、読んでいて辛くなるときもあるんですが、でも同時に、そんな酷い状況の中でも人々が心を通わせていくことができる、立場をこえて分かり合えるときがある、ということも描かれていたのがよかったです
殺人事件の捜査については、チベットの仏教の教えが深い関わりをもっていて、そういった教えのことがわかったのも面白かったです。 もちろん、全部が全部理解できたわけではないんですけど(笑 )
いずれにしても、チベットという神秘の国がもつ雰囲気と、どこか人をひきつける単の不思議な魅力に、すっかり引き込まれてしまいました
このあと、単がどんな道を行くことになるのか?
次の 『シルクロードの鬼神』 で確かめたいと思います
ディーン・クーンツ
早川書房 ¥ 1,029 (2010-01-30)
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164055位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
ドッグ・レスキューとして虐げられた犬の救護に情熱を傾けるエイミーは、その夜、恋人のブライアンとともに不思議なゴールデン・レトリーバーを助けた。
同じ夜、ある邪悪な男女が、長年追い続けた獲物を捕える罠をついに完成させようとしていた。
因縁で結ばれた二組の男女の運命の岐路に、突如現われた黄金の犬が起こす奇跡とは?(紹介文より)
〜感想〜
ドッグ・レスキューのエイミーは、ある夜、虐待されているゴールデン・レトリーバーを助けるのだけど、そのゴールデン・レトリーバーは何故か以前からエイミーを知っているような素振りを見せます。
エイミーもまた不思議な絆を感じるのだけど、それがどうしてなのかはわかりません。
一方、エイミーとともにゴールデン・レトリーバーを助けた恋人のブライアンもまた、不思議な感覚を覚えます。 ゴールデン・レトリーバーの目の不思議な印象が忘れられず、気づけば無我夢中でスケッチをし始めて……。
助けたゴールデン・レトリーバーにニッキーと名前をつけて、自宅に連れ帰ったエイミーはニッキーの振る舞いに、過去のある出来事の記憶を呼び起こされることになるのだけど、ニッキーと一緒に過ごせば過ごすほど不思議な感覚に襲われるようになっていきます。
不思議なゴールデン・レトリーバーのニッキーとの出会いによって、エイミーとブライアンは思いがけない運命へと導かれていくことになります。
そして、ニッキーとの出会いはこれから先二人に起こる奇跡の始まりでもありました。
エイミーとブライアンの他にもう一組のカップルの話も並行して進んでいくんですが、この二人がどんな関わりがあるのかが少しずつ明らかにされていくにつれて、エイミーとブライアンの過去にどんなことがあったのかもわかってくるのだけど、それにつれて増していく緊迫感にドキドキしました。
そして、ニッキーの正体がわかったときは……温かくてちょっと切ない気持ちに
同時に静かな感動を味わいました。
人にとって犬というのは、喜びと愛情を与えてくれる存在だな、としみじみと思わされる作品でした。
★★★(3/5)
あらすじ
褐色の肌、漆黒の髪、さまざまに変化する瞳。
秀でた容姿と確かな手腕を持つウィンストン・ガラーノは、二十年前の老女殺害事件を再捜査するよう命じられる。
だが、彼が動き出そうとした矢先に、脅迫と不吉な予言がなされる。(紹介文より)
〜感想〜
主人公のウィンストン・ガラーノはひと目をひく優れた容貌と高いIQの持ち主の捜査官。 そんな彼がどんなふうに事件を解決するのか、楽しみだったのだけど……まず事件そのものがあまりパッとしない
というのも彼が任されたのは迷宮入りになった二十年前に起きた老女殺害事件の再捜査。
それでも、その当時より発達した科学捜査を利用して謎を解き明かしていく、という展開になればそれなりに楽しめたかな、と思うのだけど、その事件をガラーノが調べる前に彼に再捜査を命じた上司が何者かに自宅に侵入され殺されそうになり、自宅を訪ねたガラーノが上司を助けて彼はそちらの事件のほうに関わることになってしまいます。
そうして迷宮入りの事件のほうはガラーノの指示を受けながら彼の友人のサイクスが調べることに。
IQが高く美貌の捜査官。
普通だったらこれだけで、ワクワクさせられるんですが今ひとつガラーノという人物の魅力が伝わってこなくて……性格も普通だし(笑) おばあちゃん思いのところは好感が持てるけど、せっかくのIQの高さも捜査にはあまり生かされていないのももったいなかったです。
あとがきを読んでみると、そもそもニューヨークタイムズに15週にわけて連載されていた小説だとか。 そのせいなのかな? とりあえず読者に受けそうなキャラにしたけれど、その人物像に深みをつけ加えるところまでいかなかったような、そんな印象を持ちました。
迷宮入りの事件と上司の事件と2つの捜査をすることになるけれど、謎を解き明かしていくワクワク感もなく、真相がわかったときも、「ふ〜ん」 とあっさりとした感想に
『検視官シリーズ』 のスカーペッタに続く新ヒーローの登場か? と期待していたんですが……。
魅力的な新ヒーローになる要素はあるのに、ガラーノという人物に”命を吹き込む”ところまでいかなかったのが残念でした。
ディーン・クーンツ
早川書房 ¥ 1,029 (2009-10-30)
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42311位
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★★★★(4/5)
あらすじ
死者の霊が見える青年オッド・トーマスのもとに、知り合いの医師の霊が現われた。
霊に導かれて彼の家に行ったオッドは、医師の死体を発見する。
そして医師の養子でオッドの親友のダニーがいないことを知った。
彼は誘拐されたのか?家に潜んでいた男にオッドは襲撃されるが、友人の警察署長が駆けつけ、難を逃れた。
やがてオッドはダニーの行方を追い始める。
だが行く手には死の危機が!(紹介文より)
〜感想〜
『オッド・トーマスの霊感』 で運命の恋人ストーミーを亡くしたオッド・トーマスは、仕事や仲間たちを懐かしく思いながらも、英雄視されることに耐えられず、ひっそりと静かな暮らしをしていたのだけど、ある夜ピコ・ムンドの住人のドクター・ジェサップが部屋を訪れます。
……霊となって
オッド・トーマスはドクター・ジェサップの家に向かうことにするのだけど、すでに悪い予感がしています。案の定、彼の家に着いたトーマスが見たものは、何者かに殺されたドクター・ジェサップの無惨な姿 そして、ドクター・ジェサップの養子でトーマスの親友でもあるダニーの姿はなく、彼が誘拐されたことに気づきます。
ダニーは骨がもろくなる病気 ”骨形成不全症” を煩っていて、ちょっした衝撃でも骨折してしまい、場合によっては命取りにもなりかねません。
トーマスはすぐにポーター署長に連絡をします。
ポーター署長はトーマスの ”霊感” のことを知っていて、なおかつ彼のことを親身に気にかけてくれる友人でもあります。
トーマスの連絡を受けたポーター署長はすぐに警官を向かわせてくれるのだけど、家の中にはまだ犯人の一人が残っていて……。
ダニーの行方をつかもうと家の中を調べていたトーマスは不意をつかれてテーザー銃で電気ショックくらってしまいます 動けなくなったトーマスにさらに襲いかかろうとする犯人だったのだけど、そこへ警察が到着。 犯人は動けないトーマスをおいて逃げ出します。
ポーター署長以外には自分の能力を知られたくない、と思っているトーマスはしばらくそのまま隠れることに。 その後、テーザー銃の影響も薄れて何とか動けるようになったトーマスはポーター署長の指示した待ち合わせ場所へ移動。 ダニーを誘拐したのはドクター・ジェサップの亡くなった妻の元夫サイモンだと見当をつけて、待ち合わせ場所に現れたポーター署長とともにダニーを探すことにします。
トーマスの能力は、霊を見ることのほかにも色々あって、そのうちの一つは捜しているもの(人)を見つけることができるというもの。 この能力のことをトーマスは ”霊的磁力”と呼んでいます。 ただ、この能力の困ったところは自分の思い通りには働かないこと
うまく働けば、トーマスが思い浮かべている人物のところへ自然にたどり着くことができるのだけど、全然働かないことも時々あって……。
残念ながら今回は思うようには働かなくて、とりあえずダニエルの捜索は中止することに。
そうしてポーター署長と別れたトーマスだったのだけど、その後また霊感が働いて……ダニーを探すのはトーマス一人でやらなければならないのだとわかります。
そうしてトーマスは霊感の導くままダニーを探しにいくのだけど、その途中見知らぬ女性から携帯に電話が入ります。 ポーター署長を待っている時にかけてきた女性と同じことに気づいたトーマスは、最初の電話も間違い電話ではなかったことに思い当たるのだけど、その女性のいっていることはトーマスには理解できないことばかりで……。
そのうち、女性はダニーを捕らえていることをほのめかし、彼を傷つけると脅しをかけてきます。 さらには、トーマスの能力のこと知っていることを明かし、日没までにダニーを見つけないと彼の両足を折る、9時までに見つけないと両腕も折る、さらに一人でこなければ顔もぼこぼこにしてやる、と恐ろしいことを言って電話を切ってしまいます。
どうやらダニーが誘拐されたのは、自分に関係があるらしい、と嫌な予感がするトーマスなのだけど、とにかくダニーを見つけることが先決。”霊的磁力”の導くままトーマスはダニーの元へとたどり着くことができます。 ところが、ダニーは椅子に縛り付けられ、その場所から動けば爆弾が爆発するようにセットされていて……
とりあえず、すぐ爆発することはないことからトーマスはダニーに事の真相を尋ねるのだけど、やはり犯人の目的はトーマスだったことがわかります。
犯人の正体は、やはり電話をかけてきた女性だったのだけど、その女性ダチュラは常軌を逸している危ない人物。 自分には人にはない力があると信じきっていて、トーマスの霊を見る能力に異常なほど興味をしめし、自分に霊を見せてほしい、と迫ります。
それは不可能だと言うトーマスの言葉を信じず、とにかくやれ、の一点張り。
ダニーの爆弾の起爆装置をなんとかして手に入れるために、トーマスはやむを得ずダチュラの言うことに従うふりをするのだけど……。
とにかく、ダチュラには言葉が通じないのが怖かったです
自分の聞きたいこと以外は決して受け入れようとせず、気に入らないことを言う相手は殺してしまう……恐ろしい女性です。
そんな相手に今回、トーマスは親友のダニーを助けるために、かなり大変な目にあっています。
ダチュラの手下のマッチョ二人を相手に、銃撃戦あり、川の激流の中での格闘あり、と大奮闘なんですが、最後の最後で相手を倒したものの深手を負い、激流の中とうとうトーマスは力尽きてしまいます。
そうして、一度トーマスは死んで しまうんですが、何故か、怪我が浅い傷程度にまで治り、気がついた時にはピコ・ムンドのカフェにたどり着いていて……。
いったいトーマスに何が起きたのか
霊が見えるトーマスにとって死後の世界は身近なもの。
ストーミーを失って一時は生ける屍状態にまでなってしまいましたが、友人たちの支えと、「ふたりは永遠に離れられない」 というカードの言葉通り、いつか自分が死んだときにストーミーが待っている、と心の底から信じることで、精一杯生き続けることを決めたトーマスでしたが、今回やっと彼女のところへ行けると喜んだのもつかの間。
何者かの意図によって連れ戻されてしまったことで、深い悲しみに襲われます。
……まだ、”その時” ではないのだと納得したものの、やはり悲しいことに変わりはなく……
なんというか、オッド・トーマスという人物そのものが ”善意” で形作られているというか……彼の言葉、行動に時々胸が痛くなったり、泣きたくなったり……彼の友人たちもそんなふうに感じるらしく、今回の事件でトーマスはしばらく修道院で暮らすことを選ぶのだけど、そのことを知ったポーター署長は
「彼がいなくなったらおれたちはどうしたらいいのかわからん……」
と、半ば呆然とつぶやきます。
そんな言葉がでてくるのも、何となくわかるような気がしました。
とはいっても、トーマスが修道院で暮らすのは彼の気持ちが落ち着くまでの一時的なこと。その後、トーマスがどういう生き方を選ぶのかはこれからの作品を待つしかいないのだけど、あとがきを読んでみたら本シリーズはあと2作あるようなので、トーマスが本当の安らぎを得るにはまだ試練を受けなければならないようです。
あまり、ひどい目に遭わせないでほしいと思うのだけど、作家のクーンツ氏はまだまだこんなものじゃない、というようなことを言ってたらしいので(こちらもあとがきからの情報です)、今回以上につらい目にあわされるのかもしれません。
……次を読むのが待ちきれないですが、同時に怖いような気も
『オッド・トーマスの救済』 第三弾、記事UPしました♪(H22年10月15日)
ディーン・クーンツ
早川書房 ¥ 1,050 (2009-03-31)
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177595位
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★★★★(4/5)
あらすじ
オッド・トーマスは南カリフォルニアの町ピコ・ムンドに住む20歳のコック。
彼には特異な能力があった。
死者の霊が目に見え、霊が伝えたいことがわかるのだ。
ある日、オッドは勤務先のレストランで悪霊の取り憑いた男を見て、不吉な予感を覚える。
彼は男の家を探し出して中に入るが、そこで数多の悪霊を目撃した。
そして翌日に何か恐ろしいことが起きるのを知るが…(紹介文より)
〜感想〜
霊が視えるという特殊な能力を持っているオッド・トーマス。
普通なら、そんな能力を厭いそうなものですが、オッドは自分の能力を ”贈り物” と呼んで霊が助けを求めれば望みを叶えようと親身になって行動する、という優しくて純粋な青年です。
彼にはストーミーという ”魂の伴侶” (ソウルメイト) の恋人がいて、コックとしての仕事にも満足して充実した暮らしをしていたのだけど、ある日オッドが働いているレストラン<ピコ・ムンド・グリル>に一人の男性が食事にきたときから、彼の運命は思いがけない方向へと動き出すことになります。
その男性客の周りにはオッドが ”ボダッハ” と呼ぶ他の人間には見えない黒い影がつきまとっていたのだけど、この ”ボダッハ” が現れる場所では必ず凶悪な事件が起きて死者がでることを過去の経験から知っていたオッドは、その男が危険人物だと気づきます。
そうして、オッドはその男が何者で、何を企んでいるのか? を調べ始めるのだけど……。
オッドの ”贈り物” は、強力な磁力のようなもので、それを感じたら ”事件” が解決するまでオッドは行動をせずにはいられなくなります。
もし、そういったものを嫌だと無視したとしても、逆に ”事件” のほうからオッドに近づいてきて決して逃れることはできません。
オッド自身はそのことをよく知っていて、例え危険があることがわかっていても、悲劇を阻止するために行動し続けます。 なによりも、をオッドが ”贈り物” をもらったのは、そうするためなのだと彼自身が信じているので、決して嫌々ではなく”霊的磁力”の導くままに事件を解決しようとします。
そうして、要注意人物の男性客を調べるうちに、彼が大勢の人を殺すような計画をたてているようだとわかります。オッドは、彼の計画を阻止しようとするのだけど、その間にも ”ボダッハ” はピコ・ムンドの町へ続々と集結し、その数は数百にまで膨れ上がります。
オッドのよき理解者で友人でもある警察署長や、恋人のストーミー、父親のようにいつも見守ってくれているリトル・オジー、レストランのオーナーのテリといった、オッドの ”贈り物” のことを知っても変わらない態度で友人としてつきあいのある人々の助けや励ましを受けて、調べを続けていくオッドだったのだけど、当の相手が殺されてオッドの部屋のバスルームに何者かが運んでくる、という異常事態が発生
どうやらオッドを犯人にしたてあげようとしているようなのだけど、オッドは先手を打って死体を移動させます。この出来事があったことで、黒幕は別にいることに気づいたオッドだったのだけど、さらに、調べに協力してくれていた警察署長が何者かに銃撃されて、瀕死の重体を負うという事件が起こり……。
オッドが真相に近づくにつれて、嫌な予感も増してくるようになっていきます。 彼が何よりも避けたいのは恋人のストーミーの身に危険がおよぶこと。 彼女に事件が起こる可能性のある場所と時間を避けるようにお願いするものの、ストーミーは聞き入れてくれません。
不安に駆られながらもオッドはストーミーの気持ちを尊重するのだけど……。
この当りで嫌〜な予感がしたんですよね
お願いだから、ストーミーが犠牲になりませんように、と祈りながら読んでました。
とりあえずオッドは苦労しながらも事件が起こる場所を突き止めて、事前に悲劇をくいとめようとします。 その矢先に、銃を無差別に発砲する男が現れて……。
果たしてオッドは、怖ろしい惨劇を止めることができるのか?
とにかく、オッドが ”贈り物” を使うことで霊や人々を救おうとする姿が感動的でした。 一見普通の好青年という感じなんですが、実際もほんとうにいい人なんです オッドの純粋さとひたむきさには、切なさを感じるほどでした。
それだけに最後の結末には……
このあと、オッドがどうやって生き続けていくのか?
心配でたまりません
次の 『オッド・トーマスの受難』 では、どんな事件が待ち受けているんでしょう。
★★★★(4/5)
あらすじ
キリストの聖杯をめぐる事件から数年が経ち、ハーヴァード大で教鞭を執る静かな生活を送っていたラングドンに、旧友から連絡が入る。フリーメイソン最高位の資格を持つスミソニアン協会会長ピーター・ソロモンからで、急遽講演の代役を頼みたいという。会場である連邦議会議事堂に駆けつけるが、そこにピーターの姿はなく、切断された右手首が……薬指には見覚えのある金の指輪。フリーメイソンの紋章をあしらったその指輪は、ピーターのものに間違いない。ピーターを人質に取ったというマラーク(悪霊)と名乗る謎の男は、ラングドンに“古の門”を探せと命じる。ピーターの右手の指先に施された独特の刺青が“古の門”の先にある“古の神秘”を指し示す図像であることにラングドンは気付く。誘拐犯マラークの目的は、この恐るべき力を持つとされる“古の秘密”を手に入れることにあるのは明らかだった。ラングドンは駆けつけたCIA警備局長サトウと共に、まずは、“古の門”の捜索に乗り出すのだが・・・・・・。(紹介文より)
前置き
『ダ・ヴィンチ・コード』 『天使と悪魔』 に続くラングトン教授シリーズ3作目です
時間的な順番は 『天使と悪魔』 → 『ダ・ヴィンチ・コード』 になるんですが、映画化された順番は逆でした(笑)
2作とも読んだときに、”天使〜” の方が面白いのに、なんぜこちらのほうを先に映画化しなかったのかな? とちょっと不思議に思ったのを覚えています。
なんといっても、本シリーズは情報量が並ではなくボリュームのある作品なので、映画ではちょっと物足りなかったり、逆に情報が足りずに意味がわかりにくかったり、といったこともありましたが、それでもトム・ハンクス演じるラングトン教授は感じがよかったし、謎解きもそれなりに楽しめました
個人的にはやはり 【天使と悪魔】 のほうが映画でも、面白かったと思ってますが、いずれにしてもなかなか見応えのある作品ではありました。
今回の3作目ではどんな謎をラングトン教授が解き明かしていくのか? ワクワクしてます
〜感想〜
今回ロバート・ラングトンが関わるのは世界最大の秘密結社と言われているフリーメイソン。 どんな組織なのかはよく知らないのだけど、あまりいいイメージを持っていませんでした。
ところが、本作を読んだことで、そんなかん違いもすっかりふっとぶました
ラングトンの旧友で恩師でもあるピーターはフリーメイソンの最高位の資格を持っている人物なのだけど、ある日そのピーターから急遽講演の代役を頼みたいとの連絡が入ります。 突然のことではあったものの、なんと言ってもピーターは恩師で父親がわりといってもいいほどの存在。 ラングトンは引き受けることにして、彼の元へと駆けつけるのだけど……。
いざ、ラングトンが着いてみるとそんな講演は予定されていない、と言われて……。
そこでラングトンは自分に連絡をしてきたピーターの秘書に再度連絡をとるのだけど、すると秘書が演技をやめて自分が偽者だという事を明かします。
そうして、ピーターを拉致したことを伝え、彼を助けたければある ”謎” を解き明かせと言われます。
その謎を解き明かせるのはラングトンだけなのだと。
ところが、そんなふうに言われた当のラングトンにはさっぱり心当たりがありません 相手にそういうのだけど、聞く耳を持たず……。 謎の答えを得るためにピーターが導く、という言葉を残して電話は切られてしまいます。
その後、連邦議会議事堂で騒ぎが起こります。 駆けつけたラングトンが見たののは、切り落とされたピーターの腕
そして、その手には刺青が彫られていてその絵柄がラングトンが解かなければならない謎への最初の手がかりとなるのだけど……。
今回、犯人が捕えているのはラングトンの個人的な友人ということもあって、彼が感じる危機感はいつも以上に強かったように思います。
おまけに、犯人がほしがっている情報はラングトンにとっては”比喩”にすぎず、実際に役に立つものではない、と思い込んでいるものだから謎解きをするにも今ひとつノリが悪いというか(笑) 戸惑う様子のラングトンがちょっと気の毒でした
ところが、謎解きが進むにつれて段々と犯人が信じていることが本当のことだとわかってきます。 そすいてラングトンは自分が今まで考えていたことが違っていたことを知るようになるのだけど、その真実はあまりにも意外なもので……。
科学と宗教がいつも以上に密接に絡み合っている話になっていたのだけど、フリーメイソンが信じている信条(定義?)が詳しく語られていくうちに、結構共感できる内容だということがわかってきました。ちょっと意外な感じでしたが、狂信的な信者が登場していなくて話に入りやすかったです
すでに、本作も映画化が決まっているとのこと。
今回のラングトンはシリーズ中で最大のピンチを迎えていましたが、どちらかというと地味な謎解きがメインなので映像にするには結構難しい作品なんじゃないかな、と思ったりしました
★★★★(4/5)
あらすじ
科学捜査の天才リンカーン・ライムのいとこアーサーが殺人の罪で逮捕された。
自分はやっていない、とアーサーは主張するも、証拠は十分、有罪は確定的に見えた。
しかしライムは不審に思う―証拠がそろいすぎている。
アーサーは罠にかかったのではないか?そうにらんだライムは、刑事アメリア・サックスらとともに独自の捜査を開始、同様の事件がいくつも発生していることを知る。
そう、姿の見えぬ何者かが、証拠を捏造し、己の罪を他人になすりつけ、殺人を繰り返しているのだ。
犠牲者を監視し、あやつり、その人生のすべてを奪い、収集する、史上もっとも卑劣な犯罪者。
神のごとき強大な力を持つ相手に、ライムと仲間たちはかつてない苦戦を強いられる…。(紹介文より)
〜感想〜
<リンカーン・ライムシリーズ> 8作目です
エクササイズの目覚ましい効果で今ではライムの右手には感覚が戻り完璧にではないけれど動かすこともできるようになっています。
アメリア・サックスとの仲も順調で、一時は自らの命を絶とうとまで思い詰めていたのが嘘のように幸せそうなライムの姿にうれしくなりました
とはいえ、偏屈&頑固ぶりは健在で(笑)、いったん捜査が始まると、嫌な奴ぶり を発揮してくれます。 もっともそんなライムをサックスがさりげなくフォローしているので、以前ほど嫌な感じはしなくなってるんですけどね。
今回、ライムは以前に手がけた 『ウォッチ・メイカー』 事件でまんまと逃げおおせた犯人リチャード・ローガン(もちろん偽名)を別件で追跡しているのだけど、その途中でいとこのアーサー・ライムが殺人罪で捕まったとの連絡を受けます。
証拠はすべてそろっていて、疑いの余地のない事件だと聞かされるリンカーン。
そこへアーサーの妻のジュディが彼に助けを求めて訪ねてきます。
このアーサーとは疎遠になっていて、リンカーンが事故にあってからは一度も訪ねてきたことがなかったのだけど、ジュディの話を聞いてリンカーンはとりあえず事件の詳細を調べることにします。
そして、どうも ”証拠が揃いすぎている” ことに不自然さを感じ、リンカーンは真犯人が別にいるのでは? と思い、過去ににたような事件がないかどうかを調べます。
”盗み” ”証拠が揃いすぎている”
”匿名の電話が入る”
”いずれも無実を訴えている”
すると、2件ほどあてはまる事件が見つかり、手応えを感じたリンカーンはリチャード・ローガンの事件から手を引いて、アーサの事件を本格的に調べることにするのだけど、なんといってもアーサーはリンカーンのいとこ。
個人的なつながりがあることで、警察に再調査を頼むにはまだ根拠も証拠もたりません。
そこで、とりあえず以前にも協力してくれた仲間たち、メル・クーパー、ロナルド・プラスキー、に協力を頼み独自の調査を開始。
そうして調べていくうちに、真犯人の恐ろしさが明らかにされていきます。
犯人=”五二二号”は、自分がおかした犯行を無実の人間に被せるということを、何度も繰り返しており、なぜか他人には知り得ない情報を手に入れ、その情報を利用してほかの人間を破滅に導くことに喜びを感じる人物らしいことがわかってきます。
買った覚えのない家のローンの請求が届いたり、払ったはずの家賃が滞納に変わっていたり、いつのまには破産していたり
自分の知らないところで、人生が破壊されていく……いったい、どうやって情報を手に入れて操作しているのか?
サックスは濡れ衣を着せられた人々に ”靴” という共通点があることに気づきます。 そこで、靴の販売元から顧客情報が漏洩されたのではないか? と確認をとるのだけど、話を聞くうちに ”データマイナー” から情報を手に入れたのでは、と教えられます。
”データ・マイナー” ってなに?
と、さっぱりわからなかったんですが、名前のとおり ”情報サービス会社” ということで、顧客の個人情報や購入履歴、住居、車、クレジットカードの利用履歴、ありとあらゆる情報を採掘して、集めた情報を分析して販売する。
そういった会社らしいんですが、……これって怖いですよね
自分の知らないうちに色んなデータが勝手に集められてるんですから。
リンカーンたちが突き止めたのはそういった会社の中でも最大手の<SSD>という会社。
早速、犯人の手がかりをつかむためにサックスとプラスキーを向かわせるのだけど……。
今回の犯人は情報を操作するというなんとも厄介な相手で、リンカーンたちの情報を手に入れて思いがけない反撃にでてきます。
いつの間にか、ロン・セリットーが麻薬常習者になっていて停職処分になったり、サックスの車がローン未払いで押収されたり、プラスキーの妻のジェニーが移民にされてたり等々、捜査チームの面々に意外な方向から攻撃をしかけてきて……。
読んでいて、とにかく”情報” の持つ力って、恐ろしい……とつくづく思わされました
リンカーンたちがかなりの苦戦を強いられたのは無理もないです。
とはいえ、犯人を捕まえるのに最終的にものをいったのはリンカーンたちが地道に集めた ”物的証拠”。
このことに、ちょっとだけ救われたような気がしました
濡れ衣をきせられたアーサーですが、今までリンカーンの口から彼の存在を聞いたことがありません。 どうやら、過去に二人の間で諍いがあったようで……今回の事件によってそんな二人の間に変化が訪れることになります。
最後のほうでは、ほのぼのした気持ちになりました