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タイム・ラッシュ 天命探偵 真田省吾(1)/神永 学
神永 学
新潮社
¥ 1,050
(2008-03)
Amazonランキング: 14271位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

目の前に現れたのは、透き通るような白い肌をした、車椅子の美少女。殺人を夢で予見する超能力があると言い、「被害者を事前に探し、救って欲しい」 と依頼する。 記憶に残る現場をPCで探し、携帯で指示をだす彼女。ひたすらバイクを走らせる俺。このミッションは遂行できるのか?(紹介文より) 

前置き

以前、 『心霊探偵 八雲シリーズ』  にハマりましたが、そうなるとやっぱり他の作品も読みたくなるというもの それで、本作を手にとってみたんですが、主人公の真田は悲劇的な過去を持ちながらも飄々とした雰囲気を漂わせている人物。 八雲とはまた違ったタイプで面白かったです


〜感想〜

殺人を予知夢で見てしまう車椅子の美少女の志乃は、夢を見るたびに何とか殺人を防ごうとするのだけど、結果はいつも同じ……防ぐことはできず殺人は起きてしまいます。

今回の夢は、少女が事件の巻き添えをくって車に跳ねられて死んでしまう、というもの。 今度こそ、防ごうと志乃は事件現場に向かうのだけど、同じ頃、事件の捜査をしている警察、調査を依頼されていた探偵が事件現場へとそれぞれ向かっていました。

志乃は、事件現場に来た少女を一度は遠ざけることに成功するのだけど、その場に忘れ物をした少女が戻ってきてしまいます。 そして車が少女に迫り……。
絶望に駆られる志乃だったのだけど、その時バイクに乗った青年が現れて……。 
その青年は自分の乗っているバイクを少女に向かっていた車にぶつけるという大胆な行動に そうして、少女は青年のおかげで助かります。

今回も、少女を助けられなかったと自分を責めていた志乃は、青年のおかげで少女が助かった場面を見て、驚きます。
今までは、どうやっても救うことができなかったのに、何故、今回は?
何が違うのか?
そう、考えた時に夢に現れていなかったのは探偵の青年の存在。
そこで、志乃は彼が鍵だと一縷の望みをかけて次の予知夢を見た時、彼に依頼をすることにします。

探偵の名前は真田省吾。
実際に ”予知夢” のことを話しても相手がすぐ信じてくれるはずもありません。 そこで志乃はもっともらしい理由をつけて、ある少女を探し出して監視してほしい、と伝えるのだけど、真田はそんな志乃の理由を信じることができません。
そこで、本当の理由を言うように迫ります。

真田にごまかしはきかない、と悟った志乃は自分が予知夢を見ること。 依頼した少女が殺される運命にあること。 そうならないよう彼女を守ってほしいこと。 をありのまま伝えることに。
最初は半信半疑だった真田だったのだけど、志乃が一番最初に見た予知夢の話を聞いて、心当たりがあった彼は志乃を信じることに。

実は、真田と志乃には深い関わりがありました。
そのことが、志乃が見ている予知夢の謎を解く鍵にもなっています。

なにはともあれ、志乃を信じることにした真田は彼女の依頼を果たすため、行動を起こすのだけど事態は予想以上に深刻なものになっていきます。
探偵事務所の所長が撃たれ、予知夢で見た少女は拉致されてしまいます
少女を救うために、志乃は改めて夢で見た場面を思い出し場所を特定しようとするのだけど……。

人の死を予知する志乃の辛さを受け止めて、彼女の力になりたい、と助けようとする真田の優しさが胸にしみました
一見、無関係に見えた真田と志乃が実は深い関わりがあったことがわかり、明かされた内容にはびっくりしましたが、同時に、ああ、と納得。
これから先の真田と志乃の関係がどう発展していくのか、ワクワクします



| さすぺんす | 19:51 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス−神の手にはあらず(4) 完/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2009-11)
Amazonランキング: 8816位

JUGEMテーマ:読書

★★★★★(5/5)

あらすじ

死亡肝移植によって一命をとりとめた大川が拒絶反応を起こし、再手術のため台湾へ来る。
当麻は翔子もまた病魔に侵されていることを告げ、自らメスを執った。
最愛の翔子と共に生きるため、古巣の甦生記念病院へ戻る決心を固める当麻。
しかし病魔は静かに翔子の体を蝕んでいた…。(紹介文より)

〜感想〜


『孤高のメスー神の手にはあらず(3)』 で、甦生記念病院が売りに出されることになりましたが、名乗りを上げたのは ”鉄心会” というところ。
”鉄心会”の責任者は以前から当麻のことを高く評価していて、台湾の博愛医院まで当麻に甦生記念病院に戻ってきてほしい、という誘いを伝えるために人を派遣してきます。

痴呆が進む父親のことはもちろん、甦生記念病院には思い入れがあることから、心が揺れる当麻だったのだけど、気になるのは恩人でもある博愛医院の設立者の王氏のこと。
とりあえず、当麻は自分を信じてついてきてくれた矢野のこともあるので、彼の試験結果がはっきりするまで、鉄心会への返事を保留させてもらうことに。

鉄心会にしてみれば、当麻はどうしてもほしい人材。
彼の願いを聞き入れてしばらく待つことにします。

ところが、そうして矢野の試験結果がでるまでの間に、大事件が起こります

かつて当麻が生体肝移植を手伝った近江大学の実川から大川町長に拒絶反応が起きて重体だという連絡が
再度、生体肝移植をするために妻の頼子と娘の翔子の検査をしたところ、二人ともドナーになれない、と言われた当麻は不吉な予感におそわれます。 
案の定、実川から翔子の左腹部に異常が見られると告げられて……

実川から大川町長の手術の協力を依頼された当麻はある決意を胸に秘め、大川町長の再度の肝移植と、翔子の手術を台湾の博愛医院で続けてすることに。
折りしも、矢野の試験結果がわかります。
あいにくと矢野結果は不合格だったのだけど、再度チャレンジすることを前向きに考えている矢野の態度に深く感謝するとともに感動した当麻は、矢野と共に甦生記念病院に戻る決意を固めます。

大川町長と翔子の手術を終えたら日本に戻り、限りのある翔子との時間を悔いのないように過ごそうと

恩人の王には申し訳ないと思いながらも、大事なのは翔子のこと。
自分の決意を伝えることにするのだけど、その前にまずは大川町長の肝移植手術と翔子の手術を終わらせなければなりません。
そして、当麻は二人の手術の前に大川と妻の頼子、翔子の3人の前で ”本当の婚約” をしたことを報告します。
実は、以前翔子が台湾にきたときに二人だけで内緒の婚約をすませていたのだけど、翔子の両親への報告はまだでした。

当麻の報告を聞いて大川も頼子も大喜びで、これで後顧の憂いなく手術に挑むことができます。
そうして近江大学の実川医師の協力も得て、二つの手術は無事に終了。
ただ、残念なことにやはり翔子の症状は完治は難しいところまで進行していて……

当麻のことだから、きっと翔子も助けられると思っていたのだけど、翔子を襲った病魔はすでに転移していて手術をしても完治は無理という状態にまでなっていました
……こんなのって、あり!?
と、腹が立つやら泣きたくなるやら

大元の病巣は取り除いたものの、癌は血管にまで浸食しリンパ節にも転移していた状態。
最悪なのは、翔子が冒された癌は、放射線治療も薬物療法も効かないものだということ。
翔子の両親の大川町長と頼子にはそのことを告げるのだけど、翔子自身には詳しいことは告げないことにします。

そして当麻は王に父親の痴呆のこと、翔子のこと鉄心会からの誘いのことを打ち明けて、甦生記念病院に戻る許しを乞います。 もちろん、王は当麻を引き留めるのだけど、事情を考えると無理強いもできず……当麻自身にとってもつらい話し合いになってしまいましたが、当麻と矢野は日本に戻ることができました。

その後手術から回復した翔子と当麻は結婚式を挙げます。
幸せそうな翔子の様子を読みながらも、先に待ち受けている運命がわかっているだけに、思わず泣きそうに  
とはいえ、しばらくは幸せな結婚生活を送ることができたので少し救われた気持ちになりました。

最後のほうでは翔子は甦生記念病院のホスピスに入るんですが、そこで他の患者たちに勇気を与えていく姿には感動せずにはいられませんでした。
そしてそんな翔子を最後まで愛して支える当麻の姿には

たくさんの人々を救ってきた当麻が、何故愛する人を救えないのか?
翔子の場合は、病巣が転移していてそれは当麻が手術で切り取ってもすでに手遅れという状態でした。 もし、もっと早く発見できていたら……ひょっとしたら当麻は翔子を救えたかもしれない。
そう思うとなんともやりきれない気持ちです

しまいには作者の大鐘さんにまで文句を言いたくなってしまって
翔子を当麻が助けてめでたしめでたし、そんな結末でもいいのに……と、つい恨みがましい気持ちになってしまいました。

とはいえ、当麻と翔子に起きたことは実際に現実にあることだとわかってもいます。
たとえどんなに愛する人たちを救いたいと思っても、どうすることもできない。
……絶望、怒り、悲しみ、どれほど辛い思いをすることか

本作で、当麻という人並みはずれた名医にすら愛する人を救えなかった。
そんな結末にすることで、よりいっそう現実味が増したことも確かでした。

ただ同じく身内を亡くしている私としては、やっぱり物語の中だけでも奇跡を起こしてほしかったな〜、と。
当麻と翔子の幸せな一生を見たかったです



 

| さすぺんす | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス−神の手にはあらず(3)/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2009-11)
Amazonランキング: 9023位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

恩師・羽島から自らの癌手術に立ち合って欲しいとの依頼を受け、久しぶりの日本で手術に臨んだ当麻。
かつてのライバルとのわだかまりも消え、心地よい一献を傾ける。
一方古巣の甦生記念病院では、盲腸の手術中に起こった麻酔事故で患者が脳死状態に陥ってしまう。
患者の弁護士と外科医長・荒井は激しく対立、ついに訴訟問題に発展してゆく―。(紹介文より)

〜感想〜

『孤高のメスー神の手にはあらず(2)』 では仕事でもプライベートでも順調な日々をすごしていた当麻でしたが、本作では様子が変わり始めています。

まずは恩師の羽島がガンに冒され、当麻に執刀してもらえないか、と打診されたことから始まって、父親に痴呆の気配が漂い始めたり、匿名の告発によって当麻と矢野の台湾での仮免許での勤務が問題になったり……

一方、日本の甦生病院では言動に異常が見られるようになった島田院長はアルツハイマーだとわかったものの、外部に知られないように隠し続けます。 そんな困った状況につけ込むかのように自分勝手な振る舞いに及ぶ荒川医師。そうするうちに彼はとんでもないミスをおかしてしまい、そのミスが訴訟問題にまで発展。
当麻がいなくなったことで、病院の経営状況はとりかえしがつかないほど悪化していたのだけど、この訴訟問題が甦生記念病院にトドメをさすことになってしまい、病院そのものを売りに出す方向へ

……島田院長がアルツハイマーになったことも、甦生記念病院がぼろぼろになってしまったことも残念でなりませんでした  

当麻が手がけた恩師の手術は無事に成功して、以前、わだかまりのあった同級生とともに恩師の手術をしたことで、お互いに過去のいきさつを流して穏やかな気持ちで語り合うことができました。
そんなちょっとしたいいことがあったものの、匿名の告発によって仮免許の問題を早く解決しなければいけなくなります。

王氏は当麻のことを息子同然に思っていて、自分が生きているうちは勤め続けてほしいと思っています。 並外れた当麻の実績から幸いにも例外として認められることになるのだけど、矢野は台湾の試験を受けて資格を得なければ残ることはできないと言われ……甦生記念病院にいたときから当麻の部下として働き、台湾にまで着いてきてくれた矢野に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

でも、ありがたいことに矢野はどこまでも当麻に着いていくと決めていて、試験を受けることを快諾してくれます。
……ここまで信じてついてきてくれる人は滅多にいないんじゃないでしょうか。
矢野のひたむきさに当麻と同じく感動しました

今回は当麻のことよりも、甦生記念病院の話がちょっと多い感じになってますが、翔子と二人だけの婚約 をしたり、矢野がお見合いをしたりと、医師としてよりも一人の男性である当麻個人としての環境の変化が起こり始めているように思いました。

何はともあれ、甦生記念病院がどうなっていくのか?
そのことによって当麻の人生も変わっていくと思います。
次の 『孤高のメスー神の手にはあらず(4)』 (完) では、どんな結末が待っているんでしょうか。




| さすぺんす | 19:45 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス−神の手にはあらず(2)/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2009-10)
Amazonランキング: 12794位

JUGEMテーマ:読書

★★★☆(3.5/5)

あらすじ

当麻は台湾でも着実に評価を高め、日々多くの患者が訪れていた。
そんな折、台湾の国際外科学会に、彼が日本を去る一因を作った反当麻の急先鋒、徳武が顔を見せ、不穏な空気が流れる。
一方、当麻を失った病院では、医療の質が落ち、患者の数は減るばかり。
経営が悪化する中、島田院長の言動に明らかな異変が現れ、事務長らは追い込まれて行く…。(紹介文より)

〜感想〜

『孤高のメス−神の手にはあらず(1)』 で、亡くなった母峰子の知人王(ワン)氏の建設した ”博愛医院” で働き始めた当麻でしたが台湾でも彼の名声は日々高まっていきます。
充実した毎日を過ごしている当麻だったのだけど、王氏の甥の恩師が博愛医院を訪問する旨の連絡が入るのだけど、実はこの恩師は当麻が日本を去る一因を作った徳武医師

そのことを知っている王氏は、当麻に知らせないまま徳武医師が訪問するのを断ろうとします。 とはいえ、仮にも甥の恩師をすげなく断るのは流石に気がひけます。
当麻のことを徳武に知られないよう適当な理由を作って断ろうとするのだけど、その前に徳武自身が台湾の国際学会の参加者の中に当麻の名前を発見てしまい……。
徳武のほうから当麻の存在を知ったことで、断りをいれてきます。

とりあえず、ホッとしたものの王氏はふ、と、 「この先、当麻はどうするのか?」
このまま博愛医院で働き続けてくれるのか、それとも1年ほどで日本に戻ってしまうのか?

そんな疑問に今さらながらおそわれます。
王氏にしてみれば、いつまでも当麻にいてほしいというのが本音。

ただ、このまま台湾で働き続けるとなれば、台湾での医師としての資格を改めてとらなければなりません。 
さらに、翔子のこともあります。
彼女は当麻のいる台湾で暮らすことを承諾してくれるのか?
それとも日本を離れることはできないだろうか……。
当麻にとって翔子はすでに将来を共にする女性になっているようで、先のことを決めるには翔子のことも考えずにはいられくなっています。
とはいえ、今のところはすぐに先のことを決めなければいけないというわけでもないので、とりあえずは現状維持といった感じです。

医師としての仕事は相変わらず順調で台湾の学会での発表も成功をおさめ、恩師の羽島と再会したり、前作で当麻を訪ねてきた大塩医師とも再会したり、と懐かしい面々とも旧交を温めることができました。 その後も一度日本に戻り、翔子と会って当麻の家族と一緒に過ごしたり、翔子の親友に紹介されたり、と幸せに向かって着々と進んでいってます

一方、甦生病院のほうはというと……。

病院内では、新しく雇った荒井医師が好き勝手な振る舞いをするようになっていて、スタッフたちや患者たちの評判はよくありません。
来院患者の数も減り、段々経営が困難になってきています。

さらには、島田院長に異変が起き始めていました
もの忘れがひどくなり、奇妙な言動をするようになっていて、本人には全く自覚がありません。
いったい、島田院長に何が起きているのか?
破滅の予感を感じながら、次の 『孤高のメス−神の手にはあらず(3)』 へ続きます


 

| さすぺんす | 19:52 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス−神の手にはあらず(1)/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2009-10)
Amazonランキング: 9445位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

前人未踏の脳死肝移植を成功させながら激しいバッシングにあい、病院を辞した当麻鉄彦。
彼を守りきれなかった病院からは次々と医師が去り、経営に暗雲が垂れこめる。
一方当麻は、後を追ってきた矢野とともに、台湾で患者の命を救い続けていた。
そんな折、日本での手術が絶望的になった「エホバの証人」の癌患者が一縷の望みで当麻を訪ねてくる…。(紹介文より)

前置き

『孤高のメス(1)−外科医当麻鉄彦』 に続くシリーズです。
第二部、という感じですね
前作の結末は、なんとなく中途半端な印象があったのでまた続きを読むことができるのは嬉しいです♪ 当麻がまたどんな神業をみせてくれるのか、楽しみでもあるけれど、やっぱり気になるのは 翔子との仲(笑)
お似合いの二人だと思うので、やっぱりちゃんとゴールインするところを見てみたいものです

〜感想〜

『孤高のメス(6)−外科医当麻鉄彦』
 で、まだ法律で認定されていない”脳死肝移植”を手がけた当麻はマスコミからのバッシングにさらされ、院内でも近江大学から派遣されている医師たちの当麻に対する妬みが一気に爆発。
島田院長に自分たちをとるか当麻をとるかの二者択一を迫り、島田院長は当麻にある程度妥協をするよう話すのだけど、でもそうしたら患者に対して今までのように全力で治療に当たることができなくなる事態が起きる可能性があります。

それだけは受け入れられない当麻は、結局甦生記念病院を去ることを決意。
少し前から、今は亡き当麻の母親峰子の知人である王(ワン)文慶(ウェンチン)から台湾の”高雄博愛医院”で外科医として働いてほしいという誘いを受けていたこともあり、心機一転、今ではほとんど弟のような気持ちを抱くようになった矢野医師も一緒に連れて行き、台湾での新しい生活を始めることに。 
そうして当麻は台湾でも患者に対する誠実な態度と神業的な手術で、人々の尊敬と信頼を寄せられるようになります。

一方、当麻の去った甦生記念病院では……。
島田院長が思っていた以上に当麻がいなくなった影響は大きく、尊敬できる医師がいなくなってしまった、と失望した数名の病院スタッフが後を追うように辞めていって……

当麻と矢野の抜けた穴を埋めようと近江大学の実川教授を始め他の大学病院にも新たな医師の派遣を依頼するものの、脳死肝移植の影響で当麻の後に外科医として赴任することに尻込みされてしまいます。

やむを得ず、医療関係専門の求人誌に広告を出してやっと、問い合わせの電話がきたと思ったら当麻がいるなら働かせてもらいたい、というありさま
ほとほと困り果てる島田院長だったのだけど、荒川という医師が応募してきます。
ただ、この荒川医師も人格的にはあまり芳しくない印象。
今一つ気は進まないながらも、背に腹は変えられず外科の責任者として働いてもらうことにするのだけど、やはりトラブルが起きて……。

島田院長の苦労する姿が気の毒でした
医師として患者のためになることを考えているのに、大学病院とのしがらみで思うように身動きできないのがもどかしさが伝わってきました。 

今回、大塩という若い医師が登場してるんですが、彼は是非とも当麻のもとで学びたいと思って一度、甦生記念病院を訪ねています。
どこか当麻を連想させる大塩をみて、島田院長はほしい!と思うんですが、残念なことに外科の長となる予定の荒川とは相性が悪く、彼を雇うことができませんでした。

どうも、島田院長は間が悪いというか……要領が悪いというか……。

大塩のほうは当麻が戻ってきたらまた声をかけてください、と至ってさばさばしたもの。
現在の職場で経験を積んでいくのだけど、やはり当麻以上の医師はいなくて、物足りない思いをさせられます。

そんな時直腸癌の女性患者を看ることになるのだけど、この女性は細田かよ子といい、”エホバの証人”の信者で輸血は絶対にしない、という堅く決意しています。
手術をするためには輸血は必要不可欠。
大塩の再三の説得にも首を縦に振らず拒否し続けます。
そこで、大塩は当麻が何人ものエホバの証人である患者の手術を手がけていたことを思いだし、夫に当麻のことを伝えます。

島田院長が大塩医師を見て当麻を連想したのは当たっていたようで、腕はまだ未熟ではあるけれど患者に対する態度はかなり良心的で、信頼できる人物だと嬉しくなりました。 
そんな大塩医師の助言を受け入れた夫と細田とともに台湾の当麻のいる博愛医院を訪ねて、手術を受けることになります。
このことが縁で当麻と大塩はこのあとも交流を続ける事に。
どうやら、いい師弟関係になりそうな感じです

そんなふうに当麻は台湾で充実した毎日を送ることになりましたが、彼が去ったあとの甦生記念病院は……
これから先、台湾での当麻と甦生記念病院と両方の話が並行して進んで行くようなので、最終的にはまた何らかの形で当麻が関わることになるのかな、と思います。

次は 『孤高のメス−神の手にはあらず(2)』 です。


| さすぺんす | 21:56 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(6)−外科医当麻鉄彦(完)/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-04)
Amazonランキング: 4429位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

前人未到の脳死肝移植を成功させた当麻は、達成感に身を震わせた。
しかしそれは激しいバッシングの始まりでもあった。
院内の医師からの抗議、県警からの査問、肝移植研究会の除名勧告など予想外の出来事が起きる。
理解者だった島田院長も、近江大が医師派遣停止の通達をするや支え切れなくなる。
孤立を深めた当麻は、ついにある決断を下す―。(紹介文より)


〜感想〜

『孤高のメス(5)−外科医当麻鉄彦』 で、大川町長の脳死肝移植を成功させた当麻だったのだけど、極秘の手術を突き止めた新聞記者の上坂によって世間に公表されてしまいます。
近江大学の実川医師の生体肝移植でも大騒ぎだったのに、当麻が手がけたのはまだ日本では認められていない ”脳死肝移植”。

マスコミのバッシングはもちろんのこと、警察まで乗り出す事態に
それでも当麻はいつものごとく患者第一の姿勢を崩さず、マスコミのバッシングにも態度を変えません。
ところが、近江大学から派遣されている医師たちの妬みが一気に表面化し、島田院長は 「当麻をとるか、自分たちを取るか」 の二者択一を迫られます。
当麻の理解者で後押しをしてくれていた島田院長もマスコミの激しいバッシングと、近江大から医師を派遣するのをやめる、という脅しにとうとう当麻を庇いきれなくなってしまいます。

そこで、島田院長はとりあえず謝罪文を公表するように言うのだけど、当麻にしてみれば何故謝罪をしなければならないのか、とても納得のできるものではありません。

さらには、今後の甦生記念病院での医師としての治療行為にも制限がかけられる事態にもなりかねない。 それだけは当麻にはどうしても受け入れることができません。
当麻は甦生記念病院を去ることを決意します。

慌てたのは島田院長
「なにも、そこまで……」 と思っていたようなのだけど当麻の決意はかたく、引き止める島田院長に感謝しながらも、すでに当麻は去ることを決めていました。
最後には島田院長も当麻の決定を受け入れます。
そして当麻は以前から誘われていた今は亡き母峰子の知人だった台湾人の王(ワン)が設立した”高雄医院”で働くことにするのだけど……。

当麻のように素晴らしい医師を手放すなんて島田院長はバカなことをしたものです
近江大から派遣されてくる医師たちはプライドばかりが高くて、腕は二流という人物ばかり。
病院を経営する立場からすると頼らざるを得ない、というのは気の毒だとは思うのだけど、後々のことを考えると島田院長は判断を誤ったな、と思わずにはいられませんでした。

当麻が甦生記念病院を辞めることをしった病院スタッフたちの動揺は激しく、彼がやめるなら自分も……、というスタッフが何人か出てきます。
当麻の部下として勤務してきた矢野医師も彼と一緒に台湾へ行くことを決意。
……甦生記念病院が傾いていくのが目に見えるようで辛かったです
島田院長は良心的で尊敬できる人物なのに、これから先かなり苦労することになるような気がします。

一方、当麻は台湾へ行くことを決めたことを翔子に伝えていました。
肝移植手術の時に、”とりあえず” ということで婚約はしたものの、当麻にとっては嘘の婚約のようで納得できなかったらしく、一度解消して新たに自分の方から気持ちが決まったら申し込みたい、と正直な気持ちを話し、同時に今ままで話さなかった、亡くなった兄のこと、かつての婚約者武子のことを翔子に打ち明けます。

そんな当麻の話を聞いて翔子は感極まります。
武子のことを忘れない当麻でいてほしい、と。
……できた女性ですね

そうしてお互いの気持ちを確かめあい、当麻は翔子を残し台湾へと旅立ちます。
果たして台湾で当麻を待ち受けているものは?

『孤高のメス−神の手にはあらず(1)』 (全4巻) へと続きます。

ただ、感想はすぐには載せずしばらくはまた違う作品のを載せていく予定です
※載せました♪(H22年4月6日(火))


 
| さすぺんす | 21:33 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(5)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-03)
Amazonランキング: 8042位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

卜部大造が急死した。
すぐに後任の教授選が始まり実川も名乗りを上げる。
折しも、実川のもとに脳死肝移植の依頼が飛び込んだ。
成功すれば間違いなく教授の座を射止められるが、失敗すれば万事休すだ。
一方、当麻の身辺も慌ただしくなる。
翔子の父大川町長は肝硬変が進んで危篤に陥った。
当麻は肝臓移植が救命し得る最後の手段だと告げるが…。(紹介文より)

〜感想〜

『孤高のメス(4)−外科医当麻鉄彦』 で、実川の上司にあたる卜部教授と思いがけず少しだけ心を通わせた実川ですが、その後卜部教授が急死。

次の教授が誰になるのか?
近江大では熱い教授選が始まることになります。

一方、当麻のほうはというと……。
甦生記念病院に新たにホスピス病棟が誕生。
島田院長の熱意によって実現した病棟ですが、完成記念セレモニーでの演説によって周囲の人々もホスピス病棟が果たす役割に期待が膨らみます。

前作で当麻が手術をした蘭医師もこちらのホスピスで過ごすことになるのだけど、ホスピスの看護婦に一目ぼれしてしまいます。
そうなると、少しでも長生きしたいと思うのはやはり人情というもので……。
当麻に肝移植ができないものか、と訊ねるようになるのだけど、残念ながら願いむなしく亡くなってしまいます。

死後に蘭の妻から当麻は彼が書いた手紙を受け取るんですが、その手紙の内容に思わず泣きそうになりました。
人の死というものはやはりどうしようもなく悲しいものだと改めて思いました。

母親の峰子の死に続いて世代を超えて友人になった蘭医師の死。
当麻には辛いことが続いてしまいましたが、追い討ちをかけるかのように順調に交際を続けている翔子の父親が危篤状態に
当麻は肝移植でなら助けることができると言うのだけど、実川医師の生体肝移植の記憶はまだ新しく、島田院長はGOサインを出すことができません。
失敗すれば非難されることは必至。

しかも、今回当麻がやろうとしているのは ”脳死肝移植”
この時点ではまだ脳死は ”死” と法律では認められておらず、場合にはよっては ”殺人” の罪に問われることもありえます。
もちろん、世間に与える影響も計り知れません。

とはいえ、父親が助かるならどんなことをしても助けたい。
娘である翔子がそう思うのも無理はないことで……当麻に脳死肝移植を依頼します。
折りしも甦生記念病院の看護婦、浪子の恩師が事故で脳死状態になった息子をドナーとすることに同意して、他の人たちを助けてほしいと申し出てきて……。

最初は近江大学病院の実川に話を持っていったのだけど、実川は今ひとつ乗り気ではない様子。
そこで、浪子は当麻に恩師を紹介して彼女の望みを伝えます。
恩師は当麻の人柄に感銘をうけて、できれば彼に肝移植をお願いしたいと願います。

その後、実川医師が正式に断ったことから、当真は翔子の父親の肝移植をすることを決意。
当真の淡々としながらも、”患者を助けたい” という思いを受け入れた島田院長は全面的に彼のバックアップをすることに。
ただ、実川医師の時のような騒ぎは避けようと、極秘に手術をすることにします。
さらには、万が一もれた時のために翔子と当麻に”仮”の婚約までせてしまいます
フィアンセの父親を見殺しにできなかった。 と、理由があればまだマシ、という考えだったらしいのだけど、当麻はあまり気が進まなかったようです

とはいえ、手術をすることはもはや決定されました。
あとは実行あるのみ  手術が開始されます。

ところが、極秘だったはずの手術を実川医師の時にも関わった新聞記者が嗅ぎつけて……。
手術は成功したものの、マスコミに知られたことで大騒ぎになってしまいます。
果たして当麻の運命は?

次の 『孤高のメス(6)−外科医当麻鉄彦』 へ続きます。
ちなみに、”外科医当麻鉄彦” 編の完結巻になります。


| さすぺんす | 23:09 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(4)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-03)
Amazonランキング: 10635位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

実川は一躍マスコミの寵児となり、母親と一緒に映る幼児の元気な姿が新聞を賑わした。
だが喜びも束の間、容態が悪化していく。
この手術の成功に定年後のポストがかかった卜部教授は、最悪の結果となった場合、当麻の手術に原因があったと発表しろと実川に言い渡す。
折しも幼児の心臓が停止した。
果たして、この小さな命を救うことはできるのか(紹介文より)

〜感想〜


『孤高のメス(3)−外科医当麻鉄彦』 で近江大の実川の依頼により生体肝移植のドナーの手術を終えた当麻は、母親の危篤の報を受けて熊本へと急行するのだけど、たどり着いたときすでに母親は還らぬ人に。 一方、その頃無事に移植を終えた実川は周囲から惜しみない賞賛を浴びていて……。
実川との状況の対比がますます当麻の悲しみを強調しているようで、何とも心が痛みました

そのまま熊本に残って、峰子の葬儀をする当麻だったのだけど、葬儀のあと台湾人の王(ワン)文慶(ウエンチン)という人物が近づいてきます。
彼はかつて当麻の母峰子に助けられたという話をし始めて……。
そうして、話は王が現在建設中の病院のことへと移っていくのだけど、個人で建てるとは思えないほど規模の大きな病院だということがわかってきます。

峰子から当麻のことを聞いていた王は当麻に自分の病院で働かないか、と誘われるのだけど……。

とりあえず母親の葬儀を終えた当麻は湖西町へ戻り甦生記念病院での勤務に戻ります。
すると戻った当麻を前作で知り合った蘭(アララギ)医師が訪ねてくるのだけど、用件はなんともやりきれないものでした。

蘭自身が大腸癌になってしまったのです。検査の結果、すでに肝臓に転移していることがわかり、残念ながら完治は不可能で……
自らも医師の蘭はせめて一年持たせたいと、淡々と自分の望みを当麻に告げます。
……尊敬できる医師なのに、こんなことになるなんて、と悔しい思いを押さえられませんでした。

一方、生体感移植を成功させた実川にも暗雲が立ちこめ始めます。
患者の容態が少しずつ悪化の途をたどりはじめて……。
一転マスコミは実川のバッシングにまわります。
実川はなんとか患者を助けようとするのだけど、拒絶反応が起きてしまい手のほどこしようがなくなってしまいます。

上司の卜部は、母親の危篤のことで当麻が動揺し手術に不手際があったことにしろ、と言い出す始末。 さすがに実川はそんな恥知らずなことはしなかったけれど、卜部の態度には呆れるばかりでした。

ほとんどすべての責任を負わされた状態になった実川ですが、見苦しくいいわけをするわけでなく淡々と毎日を過ごしていく姿に潔さを感じました。
ただ、実川はこれからが踏ん張りどころです。 気の毒だけれど、しばらくは周囲から責められる状態が続きそうです。

そして当麻は……。
蘭医師の手術は成功して、本人の望み通り一年〜は持つ見込みで、とりあえずは一安心というところなのだけど、野本の部下の渡瀬医師が甦生記念病院を辞めることになり、またもや外科医が不足状態に。

あ、ちなみに野本医師も 『孤高のメス(2)−外科医当麻鉄彦』 で辞表をだして去っています。
その後どうなったのかは不明です

当麻も実川も生体肝移植を手がけたことで、一躍有名になってしまいましたが、これから先の二人にどんな影響を及ぼすことになるのか……それがわかるにはもう少し待たなければならないようです。

次は 『孤高のメス(5)−外科医当麻鉄彦』です。


 

| さすぺんす | 21:22 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(3)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-03)
Amazonランキング: 68178位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

実川の上司である卜部教授は、頑として生体肝移植を認めなかった。 だが定年後のポストに不安を覚えていた卜部は、手術が成功すれば有名国立病院の院長に推挙するというある人物との裏取引により態度を一変させる。
かくして幼児の手術にゴーサインが出され、極秘に本邦初の生体肝移植が始まる。
当麻も駆けつけるが、そのとき母危篤の知らせが……(紹介分より)

〜感想〜

『孤高のメス(2)−外科医当麻鉄彦』 で母親が脳腫瘍だと診断された当麻は地元の病院での治療は、かつてフィアンセを為すすべもなく亡くした経験から受け入れることができず、自らの職場である甦生記念病院での治療を望みます。

いくら当麻が優秀な外科医とはいえ脳外科は畑違い……少し自信なげな当麻が新鮮でした。 
やはり身内に対しては冷静なままでいるというのは難しいようです。
とりあえず、無事に母親の手術も終わり一息つけた当麻だったのだけど、肛門が専門のアララギ医院から紹介状をもった患者が送られてきて……。

今まで登場した主な医師たちはほとんどが間違っても命を預けたいとは思わないような、とんでもない人たちばかりでしたが、実川医師に続いて今回登場した蘭(アララギ)医師は当麻に似たところがあるような感じです

蘭医師が送ってきたのは大腸癌の疑いのある青年。
当麻の所見も同じで手術をすることになります。 蘭医師立ち会いのもと難しい手術をいつものように神業的なやり方で成功させるのだけど、そんな当麻の腕前を見て心の底から手放しで賞賛する蘭医師の姿が清々しかったです。

……やっぱり、医師というのはこういう人物でなくては!!
本シリーズの読みどころは、色々な病気の治療方法や手術方法が詳しく描かれているところですが、今回は肛門専門の医師ということで痔の治療方法が描かれていました。
どうしても恥ずかしさが先にたってしまう病気ではありますが、場合によっては大腸癌などの時もあるので、おかしいなと思ったら早めに治療に行ったほうがいいことがよくわかりました。 
蘭医師は当麻とも気があうようなので、これから先もつきあいが続きそうな気配がします

一方、のびのびになっていた実川医師の生体肝移植の問題が急展開を迎え、一転手術をする方向へと話が進んでいきます。
実川医師はかねてから打診していたように、当麻にドナーのほうの手術を受け持ってくれるよう依頼してきます。

もともと当麻が肝移植の技術を身につけたいと思ったのはフィアンセだった宮原武子を劇症肝炎で亡くしたことが理由でした。
この当麻のフィアンセの宮原武子が今一つ謎の人物だったんですが、当麻が彼女とどうやって知り合ったのか、どんなふうにお互いの気持ちを通わせるようになったのか、が少しずつ明らかにされています。
時代が少し前ということもあって、なんとも奥ゆかしい恋愛 が描かれているんですが、でも、当麻と武子がお互いを大切に想っている様子が伝わってきて、優しく温かな気持ちにさせられました。
当麻が10年たった今でも武子のことが忘れられないのもよくわかりました。

そんな過去があるだけに、当麻にとって肝移植手術はちょっと特別なものになっています。

とはいえ、少しずつ当麻の心が癒されていたことも確かなようで、前回お見合いをした大川翔子は当麻にとって少しずつ大切な存在になってきています。
武子の時と同じように奥ゆかしい恋愛の様子が微笑ましくて、暖かく見守りたいと思いました 当麻に想いを寄せている病院スタッフ京子や浪子には気の毒ですけどね

で、話は戻りますが(笑)近江大の卜部教授のゴーサインが出て、急遽生体肝移植をすることになり、当麻は実川教授の依頼通りドナーの肝臓摘出手術を受け持つことになります。

ただ、”肝移植”自体が日本ではほとんど成功例がないことから、極秘で行うことになるのだけど、実川をライバル視している長崎という医師が彼を陥れようとマスコミへ情報をリークしてしまいます。

そこから始まる大騒ぎ
はからずも当麻も巻き込まれることになるのだけど、とにかく自分のやるべきことをやるだけ、と相変わらずクールです

ところが、手術の前に母親峰子の容態が急変したという連絡が入ります。
心配でたまらなかったものの、ドナーの手術を止めるわけにはいかず、手術が終わり次第すぐ駆けつけることができるように、飛行機の手配をするよう病院のスタッフに頼み、気持ちを切り替えて手術に挑みます。

さすがの当麻も母親の身が心配で動揺を押さえきれず最悪の事態を迎えるのでは……、と心配だったんですが、そんな心配はあっさりと吹き飛ばしてくれました。
見事にドナーから肝臓の一部を摘出して、実川へ無事バトンタッチすることに成功します。
いつもの当麻なら実川の手術が終わるまで見守るのだけど、今回は実川の進めもあってドナーの手術が終わった時点で退出して母親の元へと急ぎます。

果たして当麻は母親の臨終に間に合うのか? 
次の 『孤高のメス(4)−外科医当麻鉄彦』 へ続きます。


| さすぺんす | 19:24 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(2)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦
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¥ 600
(2007-02)
Amazonランキング: 27888位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5) 

あらすじ

当麻の評判は日ごとに高まった。
そんな時、近江大の実川助教授から二歳の幼児の「肝臓移植」を手伝って欲しいと頼まれる。
一か八か、残された方法はそれだけだった。
快諾する当麻だが、抜け駆けは許さんとする他の外科医の妬み、手術の失敗を恐れる大学病院の保守的な壁にぶつかってしまう。
風前の灯となった生命を前に当麻達の苦闘が始まる。(紹介文より)


〜感想〜

 『孤高のメス(1)−外科医当麻鉄彦』 で、第二外科の野本の部下として勤務していた青木医師が十二指腸潰瘍の破裂で緊急に手術をすることになります。

青木も近江大学の医局の人間なので、内心当麻に師事したいと思っていても、そんな願いが叶うわけもなく、かなりのストレスがかかっていたようで……。
せめて野本が当麻の半分でも腕がよくて患者のことを思うような医師だったら良かったんですが、正直こんな人物を医師とは呼びたくない、といいたくなるような人物なので青木が倒れたのは無理もない、と思いました

結局すったもんだの末に青木は野本ではなく当麻に執刀してもらうことにするのだけど、野本はそんな青木の態度に腹を立てて、島田院長に代わりになる医師を近江大から送ってもらうよう頼みます。
そのまま青木は復帰させず大学に戻そうという魂胆なのだけど、彼の代わりにきた渡瀬という医師がこれまたハズレで……。

それでも、島田院長は渡瀬医師を気が進まないながらも受け入れざるを得ません。
そして回復した青木は近江大には戻りたがらず、なんとか甦生記念病院に残れないかと当麻に相談するのだけど、やはり大学とのしがらみで青木を残すことはできないと言われます。
そこで、当麻は自分がかつて学んだ関東医科大にいる恩師に青木を紹介することにするのだけど、あいにくと空きがなくとりあえず研修医という形で受け入れられます。
これで青木のことはひとまず安心。

とこrが渡瀬という新メンバーを迎えた外科は、そういうわけにもいかず……
野本と似たり寄ったりのいい加減な勤務態度にたちまち失望させられることになります。

そんな第二外科の医師とは大違いの当麻はいつものように淡々と自分のやるべきことを果たしていきます。
ある日病院のスタッフが事故で救急車で運びこまれるのだけど、患者の娘もまた看護婦で当麻の手術に立ち会いと申し出ます。
そして当麻の手術する姿を目の当たりにした患者の娘、浪子は甦生記念病院で働きたいと言い出して……。
当麻の手術は成功したものの、あまりにも怪我がひどすぎて残念ながら数日後に浪子の母親はなくなってしまうんですが、当麻のミスではないことはよくわかっています。

一番の理由はやもめになった父親の面倒を見ることなのだけど、当麻のそばで働きたい、という理由も少し入ってるんじゃないかな、と思います。
当麻に密かに思いを寄せる病院スタッフは何人かいますが、浪子もその一人になりそうな感じです

とにかく、いろんな患者さんが次から次へとやってきます。
それぞれの患者さんのことをすべて書くのは不可能ですが、そうやって当麻の元に訪れた患者さんたちの病状や、治療方法、手術の様子 が詳細に描かれているのが読みごたえがあってためになりました

今までのところ、当麻以外で尊敬できる医師はあまり出てきてはいませんでしたが、今回は近江大学病院の助教授を務める実川医師という人物が新たに登場しています。

この実川は野心的ではあるものの、外科医としての腕前は一流です。
患者に対してはビジネスライクな態度をとりますが、それは逆に自信の現れだと、患者さんには頼もしくうつるようで。
実際、当麻ほど患者さん第一ではないけれど、それでも十分信頼できる人物です。
そんな実川と当麻は初顔合わせをすることになるのだけど、実川は話題の人物の当麻とあって彼の医師としての並外れた才能に気づき、あっというまに同好の士として親しみを感じるようになります。

そうして実川は自分の抱いた疑問を当麻にぶつけます。
「なぜ、あなたほどの力量の持ち主が片田舎の民間の病院に引っ込んでいるのか?」 と。

その実川の問いに当麻は自分の胸のうちをあかします。
その話の途中で思いがけずかつて結婚を考えていた女性を劇症肝炎で亡くしたことも語られています。 飄々としてつかみ所のない当麻も恋愛をしたことがあるのか!! と、
ちょっと……いやかなり(笑)驚きました。

でも、そんな当麻の過去を知ったことで彼の医療に対する真摯な態度に納得するものがありました。兄とフィアンセという大切な人を二人も亡くした経験が今の外科医としての当麻を作ったんだな、と感慨深いものがありました。

そうして当麻と語り合った実川は、実は”生体肝移植”を考えていると打ち明け、実際に執刀する時には当麻にも手伝ってもらいたいと持ちかけます。
もちろん当麻が断るはずはありません。
その時には手伝うことを約束してその場をあとにします。

こんなふうに仕事ではかなり充実した毎日を過ごしている当麻ですが、私生活でも変化が訪れます。
甦生記念病院のある湖西町の大川町長が当麻の評判を聞いて自分の娘の婿にと思い立ったようで、島田院長のもとにお見合いの話をもってきます。
島田院長は当麻にそれとなく打診するのだけど、フィアンセを亡くしてすでに10年がたつものの、未だに彼女のことが心に残ってる当麻はそんな気持ちにはなかなかなれません。

でも、そんな当麻を島田院長は穏やかに説得。
当麻はとりあえず会ってみることにします。
そうして会った翔子は穏やかで清楚な女性で、澄んだ瞳でまっすぐ自分を見つめる彼女に当麻は心惹かれるものを感じて……。
どうやら、おめでたい成り行きになりそうな気配です

と、ほのぼのしたのもつかの間、突然当麻の叔母から彼の母親の峰子の様子がおかしいと連絡が入ります。 故郷の熊本にに飛んで帰った当麻だったのだけど、峰子を診断した医師から脳腫瘍だと告げられてしまいます
当麻は自分がそばで面倒を見ることができるように、峰子を甦生記念病院へ連れて戻るだけど……。

果たして峰子の治療は可能なのか? 
次の 『孤高のメス(3)−外科医当麻鉄彦』 へ続きます。

| さすぺんす | 18:38 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark


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