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アリス・シーボルド
アーティストハウス
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(2003-05-23)
Amazonランキング:
5308位
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★★★★(4/5)
あらすじ
ある冬の日、少女は殺された。
けれど、少女は天国から愛する家族を見守りつづける。
「みんなのこと大好きだから、ずっとそばにいるから、だから…」
いつもと変わらぬ学校からの帰り道、家に帰れば大好きな家族が待っているはずだった。
けれど近道をするために通ったトウモロコシ畑で悲劇は起こった。
近所に住む男に、14歳の少女スージーはレイプされ、殺されてしまったのだ。
愛する娘の死に、家族は静かに崩壊していく。 父親は犯人を追うことだけに人生を費やし、娘を守ることができなかった罪の意識から母親は家を出ていってしまう。 妹と幼い弟は、姉の“影”を感じ、自分の存在に不安を募らせる。
そのすべてをスージーは天国から見守り、けっして聞こえることのない声を愛する家族にかけつづけていた。(紹介文より)
〜感想〜
2010年1月末から公開予定の映画
【ラブリーボーン】 の原作です。
若干14歳の少女がレイプされ殺される……。
なんとも痛ましい内容なんですが、その後、殺された少女スージーは天国へいき、愛する家族の姿を見守っていく、という心癒される話でもあります。
ただ、残された家族にとっては受け入れることのできない悲劇です。
スージーの遺体は犯人によって発見されないような状態にされたことから、警察の捜査は遅々として進まず……血痕が発見されたり、スージーが身につけていた衣類の一部が発見されたり、とちょっとした手がかりは見つかるんですが、スージーの遺体を発見することも、犯人を特定する手がかりも見つけることができません。
そうなると警察の熱意も段々と薄れていってしまって……。
そんな時、スージーの父親は犯人と思われる人物を突き止めます。
ただ、それはあくまでも自分だけの印象で、 ”勘” でしかありません。 それでも、警察を信じていた父親は、自分の考えを担当の捜査官に話すのだけど、捜査官は真面目には受け取ってくれず……
そこで、業を煮やした父親は自分で犯人の証拠を手に入れようとするのだけど、ちょっとした誤解からティーン・エイジャーたちに暴力をふるおうとしたと周囲から思われてしまいます。
スージーを深く愛していた父親にしてみれば、とにかく犯人を捕らえて裁きを受けさせたいというのは当たり前のこと。 それなのに、周囲の人々は段々と彼を疎み始めるようになっていきます。
そして、母親はというと……。
娘が殺された、という事実を受け入れることができず、スージーに関わる出来事に無関心になってしまいます。 まるで、娘が殺されたことは大したことではない、とでもいうように
そんな母親と父親の間に少しずつ溝ができ、あっという間に修復不可能なまでに大きくなり……母親は家を出て行ってしまいます。
残された父親はスージーのことを忘れられず、スージーの妹のリンジーと弟のバックリーを愛しながらも心はいつもスージーを求め続けます。
リンジーとバックリーは、そんな両親を見ながら自分たちなりに気持ちの整理をしなければなりませんでした。 特にリンジーは、スージーが殺された、という意味を十分に理解できる年齢だったことから、立ち直るまでに苦労がありました。
バックリーは、まだ幼かったことで深刻な打撃は受けなかったのだけど、ただ、成長していくにつれて父親がいつまでもスージーのことを思い続けていることに、理不尽さを感じることはありました。
もちろん、バックリーもスージーを愛してはいたものの、父親がスージーの思い出すら自分ひとりの胸にしまいこもうとする態度に傷つかずにはいられなくて……。
そうやって家族が破綻していく様をスージーはすべて天国から見続けます。
スージーにできるのは、ただ見守ることだけだから……。
家族が苦しみ姿を見て悲しみ、リンジーが成長して恋人ができたことを喜び、弟のバックリーの側によりそい、父親に声をかけて慰める。
そのスージーの姿のなんといたいけなことか……
最初の頃こそ、犯人に対しての復讐心を抱いていたスージーだったんですが、時間がたつうちにただ家族が幸せになることを願うようになっていきます。
とにかく、スージーがあまりにもいい子なので読んでいてしょっちゅう泣きそうになりました。 こんな悲劇はあってはならない、そう強く願わずにはいられなかったです。