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★★★★(4/5)
あらすじ
江戸から金比羅代参で讃岐国を訪れた九歳の少女ほうは、丸海の港で置き去りにされ、たった一人見知らぬ土地に取り残される。
幸い、丸海藩の藩医・井上舷洲宅に奉公人として住み込むことになった。
そして半年―、この丸海の地に幕府の罪人・加賀殿が流されてくることに。
海うさぎが飛ぶ夏の嵐の日、加賀殿の所業をなぞるかのように不可解な毒死や怪異が井上家と丸海藩を襲う…。(上…紹介文より)
井上家を出て、引手見習いの宇佐の世話になっていたほうは、舷洲の斡旋によって加賀殿が幽閉されている涸滝屋敷に下女として住み込む。
二十日あまり過ぎたある夜、涸滝屋敷に曲者が侵入、逃げ込んだ部屋で、ほうは加賀殿とはじめて顔を合わせる。
そして、ほうは加賀殿の部屋へ手習いに通うようになる。
丸海藩の内紛が起こるなか、“悪霊”と恐れられた男と無垢な少女との魂のふれあいが…。(下…紹介文より)
〜感想〜
妾の子として厄介者扱いされていた9歳の少女 ほう は、思いがけない運命の導きで讃岐国で暮らす事になります。 ほう を奉公人として受け入れた丸海藩の藩医である井上家の主人の妹琴絵は、ほうに字を教えたり、優しく接してくれる思いやり深い女主人。
ほうの名前の ”ほう” は 阿呆 の ”呆” だと嘲られ、厄介者扱いされてきたほうにとっては、琴絵に仕える暮らしは夢のように幸せな日々だったのだけど、ある日、琴絵が毒を飲まされ殺されてしまいます
犯人は琴絵の友人だったはずの娘
ほうが目撃していたことで、すぐに捕まるかに思えたのだけど何故か琴絵の死は”病死”として片付けられてしまいます。 丸海藩の存続をを左右する理由から、事件を公にできないことが理由だったのだけど、ほうにそんな理由がわかるはずもなく……犯人の娘の姿を見かけて逆上して襲い掛かってしまいます。 そして、そのことが原因でほうは井上家を出る事になり、引手見習いの宇佐としばらくの間暮らすことに。
ところが、ある日ほうは突然幕府の罪人として丸海藩あずかりになっている ”加賀殿” の下女として仕えることになります。
”悪しき者” として忌み嫌われ恐れられている加賀殿をほうもまた恐れるのだけど、加賀殿は何故かほうには心を許すように。
そうして、ほうと加賀殿は心を通わせるようになるのだけど……。
なんというか……他人の思惑に翻弄されるほうの姿が痛ましく、切なく感じるんですが、同時にそんんなほうのいじらしい姿に癒される……という不思議な気持ちになりました。
「こいつが悪人!!」 と言い切れるような人はいないんですが、一人一人それぞれが、ちょっとだけ弱かったり、自分勝手だったりします。
そうして、自滅していく人もいれば、殺されてしまう人もいて……。
自分一人の力ではどうすることもできない。
そんな状況の中でくり広げられる人間ドラマに腹がたったり、悲しくなったり……感情的に結構くるものがあって、最後には思わず泣いてしまいました
切なくて悲しくて、でも、愛おしい そんな気持ちになる作品でした。