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和田 竜
小学館
¥ 1,575
(2009-10-28)
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207823位
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★★★★(4/5)
あらすじ少年が、左構えの銃を手にした瞬間、世界は変わる。
一五五六年。 戦国の大名がいまだ未成熟の時代。
勢力図を拡大し続ける戸沢家、児玉家の両雄は、もはや開戦を避けられない状態にあった。
後に両陣営の命運を握ることになるその少年・小太郎のことなど、知る由もなかった――。 (紹介文より)
〜感想〜勢力争いを続ける戸沢家と児玉家。
戸沢家には 林 半右衛門 、児玉家には 花房 喜兵衛 という勇士がいるのだけど、面白いことにどこか似ているところがあります。
半右衛門は三十郎という養育係に育てられたのだけど、この三十郎の育て方はもし失敗しても決して叱らず逆に誉めるというやり方。
人によっては甘やかされた坊っちゃんになりかねないところですが、幸いにも半右衛門にはあっていたらしく、自分に自信を持つ堂々とした武士に成長しました。
オマケに曲がったことは大嫌いで、卑怯な真似は間違ってもできないという真っ直ぐぶり
しかも、戦いぶりも文句のつけようがないので、人々には慕われています。
一方、花房 喜兵衛もそんな半右衛門と同じ気性の人物で、二人はお互いに認め合ってよきライバルとして戦いをくり広げることになります。
喜兵衛が勝つときもあれば、半右衛門が勝つときもあって、そんな二人の楽しげともいえる様子が面白かったです
とはいえ、お互いの目的は勝つこと。
そのためには、どんな手でもつかおうという動きもあって……。
半右衛門がひょんな偶然で出会った、小太郎という少年の存在が戦いの行方を大きく左右することになります。
いつも笑みを浮かべて、村の少年たちにもばかにされている小太郎でしたが、実は彼には秘密がありました。 それは左構えの銃を手にした途端、まるで神のごとく姿が豹変し標的に百発百中させることができるというもの。
小太郎の祖父はそのことを隠し、平和に普通の暮らしをさせようとしていたのだけど、半右衛門に小太郎の秘密を知られてしまいます。 最初の頃こそ、半右衛門も小太郎の優しさを知って、戦いに巻き込まないようにしようと考えたものの、やはり小太郎の腕を埋もれたままにしておくにはあまりにも惜しくて……。
そうして、半右衛門は今まで決してしなかったことをしてしまいます。
”嘘をつき、だます” という卑怯な真似を
この時から半右衛門の心は閉ざされてしまうんですが、でも、そのおかげで小太郎を戦に引きずりこむ成功。 あっという間に戸沢家が優勢になっていきます。
ところが、児玉家もまた小太郎を自分の軍に引き込もうとしたことで、戸沢家の態度は豹変。 小太郎に濡れ衣を着せて殺そうと図って……
あまりにも勝手なやり口に腹がたったんですが、その時半右衛門がとうとう立ち上がります。 自分のおかした罪を受け入れ、小太郎への償いをする。
そう心に決めた半右衛門は、すべてをふっきって行動をおこすのだけど……。
確かに半右衛門のしたことは卑怯なことだったんですが、でも、そうしなければならなかったのが気の毒でした
小太郎も半右衛門も、可哀相でした