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ダレン・シャン
小学館
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ダレン・シャン
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★★★★(4/5)
あらすじ
主人公のジェベルは、やせっぽちの少年だ。
彼の住む町では、死刑執行人がとても名誉ある地位にある。
ジェベルは父のあとを継いで死刑執行人になるため、奴隷のテル・ヒサニと試練の旅に出かける…。
ジェベルと奴隷テル・ヒサニの試練の旅は続く。
危険な旅、苦難の道。
はたして日の神サッバ・エイドの元にたどりつけるのか、非情に徹して無敵の力を得ることができるのか…。勇気とは、愛とは、友情とはなにか!?(紹介文より)
〜感想〜
町長の次に ”死刑執行人” が名誉のある地位で人々からの尊敬を一身に集めているという、ちょっと変わった町ワディ。
ワディの町では ”強さ” が重視されていて、死刑執行人の次には戦に優れた戦士が憧れの対象になっています。 その他の商人や教師などは軽んじられているのだけど、死刑執行人の息子であるジェベルは、残念ながら戦士になるには体格に恵まれずやせっぽちのまま
それでも、 ”死刑執行人” の息子という人々から注目されている立場から、父親の跡を継ぐか、それが無理でもせめて戦士になりたい、と希望を持っています。
ところが、ある日父親が死刑を実行したあとで、二人の兄に一年後の競技会で優勝したほうに跡を継がせると町中の人々がいる前で公表します。
自分の名前が言われなかったことで、ジェベルは町中の人々の前で恥をかかされてしまうことに。 そうして、ジェベルは恥辱を抱えてこれから先の人生を生きて行かなければいけない、と絶望に駆られるのだけど、そんなジェベルを慰めてくれたのが幼馴染のバスティーナ。
バスティーナは、奴隷が処刑されるたびに悲しみ涙を流すという心優しい少女。 でも、そんな優しさはワディの町では理解されず、ジェベルも幼馴染としてそれなりに大事に思ってはいるものの、バスティーナのことを変わってると思っています。
ジェベルはバスティーナの慰めを受け入れず、自分も一年後の競技会に出場すると言いはるのだけど、どう頑張ってもジェベルが優勝することはありえません。
バスティーナは必死にジェベルを思いとどまらせようとするのだけど、つい、口を滑らせて失言をしてしまいます。
「火の神サッバ・エイドだって、あなたを強くすることはできない」 と。
ところが、この一言でジェベルは逆に希望を見出すことになります。
火の神サッバ・エイドの ”試練の旅” を成功させて ”無敵の力” を授けてもらえばいい、と。
”火の神サッバ・エイド” とはワディの町で崇められている神で、この神がいる北の果てツバイガート山まで自力で歩いてたどり着くと、”無敵の力” を授けられるという言い伝えがあるのだけど、実際に成功した人間はほとんどいません。
それだけ危険な旅なのだけど、ジェベルにとってはそれだけの危険をおかすだけの価値があります。
必死に止めるバスティーナをよそにジェベルは、決心を固め旅に出るための準備を始めます。
ところが、初っ端から困った問題がでてきます。
この ”試練の旅” には最後に自分の変わりに、火の神サッバ・エイドに命を捧げて犠牲をはらう存在が不可欠なのだけど、ジェベルには変わりに犠牲を払ってくれる友人も奴隷もいません。 そこで、奴隷を探すことにするのだけど……。
ワディの町では身分の高いジェベルはそもそも奴隷たちの住む地域になじみがなく、どうやって探し出していいのかもわかりません。 それでも、とりあえず奴隷たちのいる地域に行くと父親の友人とばったり遭遇。 自分が ”試練の旅” に出るために奴隷を探していることを打ち明けると、父親の友人は心当たりがあると言って、一人の奴隷のもとへジェベルを連れて行きます。
その奴隷はテル・ヒサニといい、奴隷らしくなく教養がありジェベルにたいしても卑屈な態度は見せません。 そのことがジェベルには気に入らないのだけど、テル・ヒサニは妻と子供たちが自由になることと引きかえにジェベルの変わりに犠牲になることを承知します。
そうして、ジェベルと奴隷のテル・ヒサニの ”試練の旅” が始まるのだけど……。
身分を鼻にかけるジェベルと奴隷のテル・ヒサニの関係は良好とはいえず……ワディの町をそれまで出たことのないジェベルにとってはすべてが慣れないことばかり。
逆にテル・ヒサニは他の国のことも知っていて、なるべくジェベルを危険から遠ざけようとするのだけど、「奴隷の言うこと」 なんか聞けるか、とジェベルは反抗します。
そんなジェベルの態度を軽蔑しながらもテル・ヒサニは家族の自由のために、黙々と自分の役目を果たそうとするのだけど、そんな彼の態度がまたジェベルには癪にさわります。
そんな二人ですが、旅の途中で様々な危険にあうことで少しずつ信頼し始めるように。 生まれ育ったワディの町以外の習慣や住民を知ることで、ジェベルはワディの町の特殊さを段々と認識するようになるのだけど、生まれた時から教え込まれた習慣や考え方を捨てるのはやはり難しく、テル・ヒサニに対しても友情を感じるようになりながら、そんな自分の変化を受け入れることがなかなかできません。
そうこうするうちにテル・ヒサニとはぐれ、ジェベル自身が奴隷の立場に置かれる羽目になって……
傲慢で同情心を持たず、奴隷を同じ人間だと思っていなかったジェベルが ”試練の旅” に出る事で、少しずつ変化して成長していく姿が頼もしかったです。
奴隷のテル・ニサニとの友情を育んでいく様子には温かい気持ちになりました。
でも、二人が友情を深めていくたびに、旅の終りに待ち受けている運命が意識されて……ジェベルは、本当にテル・ヒサニを犠牲にするのか?
気になって仕方なかったんですが、いざその時がきたときジェベルが選んだのは……。
思わずもらい泣きしそうになりました
テル・ヒサニの友情とジェベル自身の思いやりの心のおかげで、火の神 サッバ・エイドはジェベルに ”無敵の力” を授けてくれました。
”試練の旅” の本当の意味を知らされたジェベルは自分の ”無敵の力” を人々のために役立てることを決意します。
そうして、ワディの町に戻ったジェベルはある行動に出るのだけど……。
”試練の旅” に出た最初の頃とは段違いに成長したジェベルの姿に感動しました
ほとんどの人間が自分の敵という状況の中で、意志を貫いてくじけなかったジェベルは偉かったです