★★★★(4/5)
あらすじ
江戸有数の廻船問屋の一粒種、一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的な殺しが続き、一太郎は家族同様の妖怪たちと事件の解決に乗り出すことに。若旦那の周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲い……。(紹介文より)
<娑婆気 (しゃばけ)> … 俗世間における、名誉・利得などのさまざまな欲望にとらわれる心 国語大辞典 『言泉』(小学館) より (本文中より抜粋)
〜感想〜
生まれつき病弱な、一太郎は5つの時に祖父から二人の子供を紹介されます。その二人の子供は実は妖なのだけど、寝たきりでろくに遊び相手もいなかった一太郎にとっては、遊んでくれるという二人が妖でも全然気にならない。そうやって一太郎のもとへやってきた二人の妖は ”犬神”= 佐助 、”白沢”=仁吉 と人間の名前を名乗り、廻船問屋の手代として常に一太郎の傍にいるようになる。
そして時は流れ、一太郎も今では17歳。相変わらず病弱で、生死の境をさまようこともしょっちゅう。そのために、両親も二人の妖、佐助と仁吉も一太郎がくしゃみ一つでもしようものなら、上を下への大騒ぎをするほどの過保護ぶり。実際に何度も死にかけている一太郎の体の状態を思えば無理もないのだけど、調子のいい時でも過保護ぶりは変わらないことから、一太郎にしてみればうんざりしてしまうことも確か。
彼なりに、周囲に心配をかけるのが心苦しく、「いっそ、死んでくれたら」 と、思うのが普通じゃないんだろうか? と一人で思い悩んだりもしてます。そんな時、一太郎は”ある事”を知り、妖たちにも内緒で一人で夜に出かけます。ところが、その帰りに人殺しを目撃してしまい、命からがら逃げ出すものの後ろから人殺しがどんどん迫ってきて……。
何とか、妖の ふらり火 を呼び出して、助かったものの、夜の外出が佐助、仁吉の二人にばれて大目玉を食らう羽目に
妖たちと一太郎とのやりとりが面白いです
特に、幼い頃からずっと一緒にいた犬神と白沢は一太郎にとっては兄のようなもの。
そして犬神と白沢の二人にとっても、一太郎は守り続けなければならない大切な存在。実際、一太郎以外の人間はどうでもいいようで、彼に危害が加えられようものなら優しげな風貌はあっという間に豹変しちゃう
一太郎も守られるだけの弱い存在じゃなく、芯は強くいざという時は肝が据わっていて、仁吉が危ない目に会った時は自分の身を顧みず助けようとします。そんなふうに、妖と一太郎が互いを大事に思い合う様子が微笑ましくて、胸がほんのりと温かくなります
仁吉と佐助以外の妖も「大好きな若旦那」を助けようと、犯人を突き止めるための手がかりを摑もうと頑張ります。色んな妖が出てきますが、”若旦那”が本当に好きなのがよくわかります。でも、何故、一太郎の周りにだけ妖たちが当たり前のようにいるのか? そして、犯人が一太郎を執拗に狙うのは何故なのか?
それは、実は一太郎の出生の秘密に関わりがありました。
なんと、一太郎は……
と、いうことで、気になった方は是非、本作品を読んでみてください(笑)
とにかく、妖たちと若旦那一太郎の心温まるやりとりが面白いですよ〜
次はシリーズ2作目
『ぬしさまへ』 へ。