汀 こるもの
講談社 ¥ 864 (2010-11-03)
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420897位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
「完全犯罪テクで悪人を始末せよ」裏活動に精を出す醍葉学園“推理小説研究部(通称・完全犯罪研究部)”が学校爆破事件で廃部に。
平和が訪れると思いきや、懲りない部員たちは密かに裏活動再開!イジメ、オカルト、猫殺し、父親殺害計画…続発する事件を解決するべく最恐女子高生・杉野更紗たちがアブナイ正義で大暴走!元顧問・由利千早にもありえない災いが。(紹介文より)
〜感想〜
前作 『完全犯罪研究部』 に続く2作目です。
前回、爆発騒ぎまで起こしてしまい、廃部に追い込まれてしまった“完全犯罪研究部”の部員たち。
でも、懲りずに裏で勝手に活動を再開するのだけど、前回の事件でそれぞれ何かがふっきれてしまったのか、その活動は 「ちょっと待てーッ!!」と言いたくなるようなアブナイものばかりで……。
由利先生は退職に追い込まれ、顧問は彼女の不倫相手でもある藤田に引き継がれたものの、部員たちの行動が変わるわけもなく、今回もとんでもない事態へと発展していくことに
実は一番アブナイ杉野は、どうやら古賀が気に入っているようで、何かと彼をそそのかして人を殺させようと裏で画策()
そんな2人に振り回される他の部員たちと元顧問の由利。
未だにやはり古賀のことを気に掛けている由利は、そんな古賀を止めようと奔走するのだけど……。
相変わらず、部員たちがとるハチャメチャな行動にあきれるやら驚くやらでしたが、でもやっぱりそんなとんでもなさが面白くて……
今回は古賀が色んな意味でふっきれてしまって、部員たちすらも恐怖する(笑)行動をとっているのだけど、それでも身体を張って止めた由利の姿がカッコよかったです。
それにしても、この部員たちっていったいどこまで行くんでしょうね
¨彼らの行く末が心配です
推理小説研究部 というとミステリ好きの集まりなんだろうな、と思ってしまいますが本作の部員たちはそんな可愛いレベルではありません
それぞれ、とんでもない特技を持っていて、事件を解決するどころか逆にかき回してとんでもない大騒ぎに変えてしまうという……なんともはた迷惑で危ないヤツラだったりします。
顧問の女教師由利は振り回されっぱなしで、中でも気になるのは数ヶ月前に転校してきた古賀という男子生徒。 複雑な事情がありそうで、謎めいた雰囲気を持っているだけでなく、「人を殺したい」とすぐ口に出し、しかも本気で言っているから恐ろしい
他にも、姉を殺されてから姉と同じ振る舞いと格好をするようになった杉野更紗や、体格は貧相でもサバイバル経験豊富で戦術思考にも長けている東城、ミステリ好きの佐竹、手先が器用で爆弾から個民家のジオラマまで作れちゃう川崎、と、トラブルを起こすには十分すぎるほどの条件が整ってます
姉を殺した犯人を見つけ出すことを決めている杉野や、影のある古賀を中心に物騒な事件が次から次へと起こり始めるのだけど、顧問の由利は何度か危ない目に遭う羽目に、最後のほうでは殺されかけるという……教師ってこんなに危険な職業だったのか と、叫んじゃいました。
由利自身も不倫をしていて、清廉潔白とはいえないのだけどでも、基本的には常識的な大人で心の優しい女性。
なので、どうしても危なげな古賀をほうっておくことが出来ず、何かと気に掛けて部員たちの暴走も止めようとするのだけど……。
どうやら古賀は 『TANATOS』シリーズ(記事のUPはしてないですが、こちらも個性的な面々がそろっていて怖面白いシリーズです)で、美樹と真樹たちの話の中で語られていた事件の関係者らしく、ちょっとだけ真樹が顔を出してたりしてなんだか嬉しかったです
古賀を始めとする部員たちが繰り広げる大騒動には驚くばかりでしたが、でもそのハチャメチャぶりが面白くて、どこまでやるんだろう……、っていう最後のほうまでドキドキ感がありました。
謎めいた古賀の過去も最後には明かされて、部員の中で一番とんでもないのも彼だということがはっきりして……この後の彼らの活躍(?)ぶりに期待したいです。
次の 『動機未だ不明』 に続きます
パトリシア・C・リーデ
東京創元社 ¥ 2,940 (2011-09-29)
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793026位
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パトリシア・C・リーデ
東京創元社 ¥ 2,730 (2010-09-29)
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あらすじ
魔法の森の奥深く、広いポーチと赤い屋根のこざっぱりした灰色の家に、ちっとも魔女らしくないはみだし魔女のモーウェンと、黒以外のあらゆる毛色の九匹のネコが平和に暮らしていた。
ところが、魔法の森の平穏もつかのま、魔法使い協会が、森の要である、王の魔法の剣を盗んだことが判明。
これは放っちゃおけぬとばかり、モーウェンとネコたちは、魔法の森の王妃シモリーン、魔術師テレメイン、ドラゴンのキング、魔法でロバになったウサギもいっしょくたに、魔法の剣を求めて旅に出る。
可愛くて元気なファンタジー・シリーズ第三弾。
〜感想〜
『消えちゃったドラゴン<魔法の森2>』 に続く3作目です。
前作で、めでたく結ばれたお姫様らしくないお姫様シモリーンと王様らしくない王様メンダンバーでしたが、平和なときは長くは続かず……またもや魔法使いたちが陰謀を企みます。
いち早く異常に気づいたのは最初から何かとシモリーンを助けてくれた魔女モーウェンで、本作では彼女が主人公になって活躍します。 モーウェンを助けるのは彼女の使い魔の9匹()の猫たちなのだけど、それぞれ個性的で魅力たっぷり
思わずにやりとするようなやりとりが楽しかったです。
今回もまた悪企みをしているのはお馴染み(笑)の魔法使いたち。
本当によくもまあ懲りないもんだ、と呆れちゃいますが、今回はちょっと一味違っていて魔法の森の要でもある、メンダンバーが持っている”魔法の剣” を盗むという大胆なことをやってのけます。
魔法の剣を使えるのは、王であるメンダンバーだけではあるものの、ある程度時間がたつと森の魔法の力が剣から洩れてしまい、魔法使いたちにも利用できるようになってしまうことから、モーウェンたちは剣を取り戻すために、手がかりを追って旅にでます。
ただ、メンダンバーが魔法の森から出てしまうと守りの魔法が解けてしまうことから、彼は城に留まることになります。 シモリーンは妊娠しているので、メンダンバーとしては彼女にこそ残ってほしかったのだけど、おとなしく言うことをきくはずもなくシモリーンとメンダンバーは別行動をすることになります。
そうして魔女のモーウェンと猫たち、魔術師テレメイン、シモリーン一行は剣の行方を追って行くのだけど……。
やはり、トラブル続き
それでも、気心の知れた者同士のチームワークの良さでトラブルの数々を切り抜けて、魔法使いたちから剣を取り戻すことに成功します。
ところが城に残ったメンダンバーに思いがけない危機が……
ドラゴンたちの協力で魔法使いたちを城から追い出すことはできたものの、城の周りに見えないシールドが張られ誰も城の中に出入りをすることができなくなってしまいます。
閉じ込められたメンダンバーはどうしているのか
心配でいてもたってもいられないシモリーンだったのだけど、唯一シールドを破ることができる魔法の剣を扱えるのは魔法の森の王の血筋を引くものだけ。
どうすることもできず、シモリーンたちはお腹にいる赤ちゃんに望みをかけることになります。 子供が成長して魔法の剣に認められていつかメンダンバーを救うことを願い、シモリーンはその時まで魔法の剣を隠し、自分も魔法使いたちに見つからないようにひっそりと暮らすことに……
さすがに魔法使いたちもやられっぱなしではいられなかったようで今回はシモリーンたちも苦戦することになりました。
果たして、メンダンバーを救い出すことができるのか
次の完結巻 『困っちゃった王子さま<魔法の森4>』 に続きます。
パトリシア・C・リーデ
東京創元社 ¥ 2,520 (2009-08-28)
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パトリシア・C. リーデ
東京創元社 ¥ 2,100 (2008-06)
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615283位
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リンダーウォール王国の末の姫シモリーンは、お姫さまらしくするのが大嫌い。
剣術、ラテン語、経済学に魔法にお料理と、夢中になるのはお姫さまにあるまじきことばかり。
隣国のめちゃくちゃハンサムな(だけの)王子と、あやうく婚約させられそうになり、城出を決行。
ところが、飛び込んださきは…なんとドラゴンでいっぱいの洞窟だった。
押しかけ“囚われの姫”になってしまった型破りなお姫さまが、ドラゴンやうさんくさい魔法使いを相手に大活躍!可愛くて元気なファンタジー(紹介文より)
〜感想〜
リンダーウォール王国のお姫さま、シモリーンは小さい頃からお姫さまらしいことには興味がなく、剣術を習ったり、魔法や政治を学んだり、とちょっと型破りなところがあったのだけど、そのことを危惧した王様とお后様は”結婚させてしまおう” とハンサムだけがとりえ(笑)の王子様との婚約を勝手に決めようとします。
そのことを事前に知ったシモリーンは、たまたま出会った蛙 からの助言で今の境遇から抜け出す手助けをしてくれそうな相手のいる場所へと向うことに。
そうして、たどり着いた場所は……なんとドラゴンたちの棲んでいる洞窟
驚くシモリーン姫の前で、彼女をどうするかドラゴンたちは話し合うのだけど、中には食べようというドラゴンもいて……
そんなドラゴンたちの様子を見て、食べられてはたまらない、とシモリーン姫は自ら ”囚われの姫” になることを申し出て、家事、掃除等々をなんでもやると自分を売り込みます(笑)
すると、雌ドラゴンのカズールがシモリーン姫を気にいったらしく、めでたく()カズールの”囚われの姫” としてドラゴンの洞窟で暮らすことになるのだけど……。
本シリーズの物語全体に漂う雰囲気というか世界観が、思わずくすっ と笑っちゃうようなほのぼの感で、素直に楽しかったです
例えば……
ドラゴンに浚われたお姫様を王子様、あるいは勇者がドラゴンを倒して助け出しその後は結婚してめでたしめでたし
っていう話が世間の常識になっていて、「囚われのお姫様」 や 「王子様」 「勇者」 が何人もいたりします
他にも蛙にされた王子様が何匹もいたり(笑)、お姫様は巨人に浚われるときの悲鳴のあげ方を学ばなきゃいけなかったり、と色々な御伽噺が一つになった世界という感じで、読んでいて思わずにやり、とさせられるエピソードも織り込まれていて最初から最後まで楽しむことができました
ヒロインのシモリーン姫は、そんな御伽噺の中の典型的なお姫さまとはちょっと違っていて、自分で考えて行動する活動的なお姫様。
そんなお姫様なので、顔がいいだけ(笑)の王子様との婚約を嫌って飛び出して、自らドラゴンの囚われの姫になったりしちゃいます。
しかも、剣術も魔法もお料理もしっかりできるやり手なので、あっという間にドラゴンのカズールにも気にいられて、”囚われ” というよりも、住み込みの助手のような感じに
窮屈だった王宮暮らしよりもよっぽど快適だと、シモリーン姫もすっかり ”囚われ生活” が気にいってしまいます。
とはいっても、シモリーン姫の国ではそんなこととは思いもよらず、次から次へと ”囚われの姫” を救おうと王子様やら勇者やらが来るわ来るわ(笑)
いい迷惑のシモリーン姫は、彼らをあの手この手で追い返すのだけど中には諦めの悪い相手もいて 少しでも煩わしさをなくすために、救出お断りの看板をたてようとドラゴンの洞窟を出るのだけど、そこで魔法使いの会長と偶然出会います。
なんとなく胡散臭い印象の会長に不信感を抱くのだけど、案の定、ドラゴンたちに対してよからぬ企みをしていることがわかります。
シモリーン姫はわざと頭の軽いお姫様を演じてどんな企みをしているのかを探るのだけど、そうこうするうちにドラゴンの”キング”が殺されてしまい……。
”囚われの姫” 仲間(笑)のお姫様と石にされた王子様、魔女と協力して魔法使いの悪だくらみを阻止しようと活躍するシモリーン姫がカッコよくてステキでした
魔法使いたちの思いがけない弱点には笑っちゃいましたが、ほのぼのした結末で温かい気持ちで読み終えることができました
シモリーン姫が次はどんな活躍を見せてくれるのか。
ワクワクします
次の 『消えちゃったドラゴン<魔法の森2>』 に続きます。
少女は、しがみつくようにして、崖をのぼりつづけた。
油断すれば、滝はたちまち少女を払い落とし、はるか下の岩にたたきつけるだろう。
からだ全体が悲鳴をあげていた。
岩のくぼみから、指先がはずれかけたが、もう気にしなかった。
少女はそのまま目を閉じて、ゆっくりと指先から力を抜いた―老龍ダンザから贈られた地図は、いったい何を意味していたのか。
少女が探し求めた龍の楽園は、果たして実在するのだろうか。(紹介文より)
前作で、老ドラゴンのダンザの夢により導きでドラゴンたちの ”楽園” の存在を知ったピンは幼龍のカイデュアンと共に、暗号で記された地図を解いて旅立つはずだったのだけど、皇帝リュウチャの追跡を逃れるため、一時的にリュウチャの姉の嫁ぎ先の国でかくまわれることになります。
リュウチャと違い、その国の皇帝や人々はドラゴンのカイを利用しようとすることもなく、ピンとカイは平穏な毎日を送ることができます。そうしてあっという間に1年以上が過ぎるのだけど、ピンとカイがいることを知ったリュウチャが兵士を率いて攻めてきて……
幸いにも退けることができたものの、ピンは旅立つ時がやってきたことを自覚します。
そうして、ピンとカイはドラゴンの楽園を目指して、ダンザが伝えてきた暗号を解きながら目的地へと向うのだけど……。
旅の途中で、カイとピンを助けてくれたドラゴン・キーパーの末裔のジュンが今回も2人を助けてくれます。すっかり成長したジュンに驚くピンだったのだけど、彼の助けでドラゴンの楽園へと無事たどり着くことに成功
これで、カイが安全で幸せに生きていくことができる、とホッとするピンだったのだけど、たどり着いた”楽園”は廃墟となっていて、そしてそこには白骨化したドラゴンの遺体が山のように積まれていて……
あまりの光景に呆然とするピンとカイだったのだけど、そこへ突然ドラゴンが現われてカイを浚っていってしまいます 咄嗟のことにどうすればいいのかわからなくなるピンだったのだけど、とにかくカイの身を案じたピンは”ドラゴン・キーパー”としての能力を使って、カイのあとを追うことに。
するとまたもやドラゴンが現われて、今度はピンが捕まってしまいます。
そうして、連れて行かれた場所には数匹のドラゴンと、ドラゴンたちに囲まれて守られているカイの姿が。 ホッとするピンだったのだけど、カイ以外のドラゴンたちはピンに対して警戒心と敵意を抱いているようで、意思の疎通もできません。
最初は居心地の悪い思いをするピンだったのだけど、そのうちにドラゴンたちが何故そんな態度をとるのかがわかってきます。 ピンたちが辿りついた楽園に起きた惨劇は、人間が招いたことでした。そのことがあってから、ドラゴンたちはたとえ ”ドラゴン・キーパー”だとしても心を許さないようになったようで……
それでも、ピンはカイを守るために側に居続けることを選ぶのだけど、ドラゴンのうちの1匹がカイに激しい敵意をぶつけてきて、ついには父親のダンザを侮辱したことに怒ったカイが戦いを挑む羽目になってしまいます。
そうして繰り広げられる激しい戦いの中で、思いがけずカイの本当の姿があらわにされます。
戦いの中でカイの鱗が七色に輝くという変化があったのだけど、それはカイが大人になったときに ”王”になるという証で、苦戦の末に勝利を手にしたカイは他のドラゴンたちから今まで以上に大切な存在として扱われるようになります。
ピンの存在も受け入れられるようになるのだけど、そうして暮らすうちに今ではすっかり他のドラゴンたちの気持ちもわかるようになったピンは、彼女を受け入れてはいるもののこのままずっと一緒に暮らすことはできない、と思っていることを感じ取ってしまいます。
そしてピン自身も、このままずっとただ1人の人間としてドラゴンたちと暮らし続けても幸せにはなれないことに気づきます。
カイがピンにとってかけがえのない存在であることには変わりはないけれど、お互いにとってどうすることが一番幸せなのか を考えたピンはカイと離れることを決心します。
もちろん、カイは嫌がるのだけれど本当はカイも薄々感じていたようで、最後にはピンの決心を受け入れることになります そうして、”最後のドラゴン・キーパー” としての務めを終えたピンは、人々が暮らしている土地へ1人戻るのだけど……。
何も知らない奴隷だったピンが、一人前のドラゴン・キーパーとして、1人の人間として、大きく成長した姿が感動的でした
達成感のある清清しい結末がよかったです
太陽が雲に隠れた。
少女の首すじの毛が急に逆立つ。
その男が、頭をおおっている布をめくると、少女はひざからくずおれそうになった。
その男―死霊使い(ネクロマンサー)は、やはり生きていたのだ。
少女は、自分の手に託された、幼い龍の命を思う。
邪悪な力を持つ死霊使いから、小さな龍を守りきることができるのか…。
〜感想〜
『ドラゴン・キーパー?<最後の宮廷龍>』 に続く2作目です。
キャロル・ウイルキンソン
金の星社 ¥ 2,310 (2006-09-15)
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442559位
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〜感想〜
幼い頃に奴隷として売られた少女ピンは、怠けものの主人ラオに代わって宮廷で飼われている龍の面倒を見る羽目になったものの、甘えることもなくいつになってもなつくことのない龍に愛情を抱くことはできませんでした。
そのため、面倒を見るのもおざなりになり、ある日、与えた食事を食べようとせずそっぽを向いた龍に腹を立て、その食べ物を自分とペットとして可愛がっているネズミのファと分け合って食べてしまいます。
そして、そのすぐ後に飼っている龍二匹のうちの一匹が死んでしまいます
自分がもっとちゃんと面倒を見ていたら、こんなことにはならなかったのではないか、と後悔の念に駆られるピンだったのだけど、龍が死んだことを皇帝が知り罰せられることを恐れた主人のラオは、龍を弔うことなくそのまま食料として酢漬けにするというとんでもない行動にでます。
本来ならば宮廷龍は、幸運をもたらす神獣だったのだけど時代がたつにつれて、そういったことが忘れられて今では龍の身体を薬にしたり、食料にしたり、といったふうに利用されるようになってしまっています。 そんな扱いを受けていたせいで宮廷に昔は十数匹いた龍も今ではとうとう最後の一匹に
そんな状況の中で、ピンは自分がちゃんと世話をしなかったせいで龍を死なせてしまったという罪悪感から、残された最後の龍の世話を親身になってするようになるのだけど……。
その時からピンは思いもよらない運命へと導かれていくことになります。
かつてはドラゴンたちを守り世話していたという ”ドラゴン・キーパー”と呼ばれる人々がいました。 彼らはドラゴンたちの世話をするうちに、未来を予知するようになったり、”気” を操れるようになったり、と特殊な能力を身につけるようになっていきます。
本当ならピンの主人のラオが ”ドラゴン・キーパー” として、そういった能力を持ちドラゴンたちを守り世話をするはずだったのだけど、何故かラオには特殊な能力がまったくなくドラゴンたちへの愛情もありません。
ところが、ピンが心を入れ替えて親身にドラゴンの世話をするようになると、不思議な予感を感じるようにあり、ドラゴンの言葉が聞こえるようになります。
ドラゴンの名前はロン・ダンザといってかなり長生きをしているようで、少しずつピンに対しても心を許してくれるように。
ところがある日、ドラゴンを捕まえて生計を立てているドラゴンハンターの魔の手が伸びてきて、ピンは心ならずも、ダンザを助けてラオの元から一緒に逃げ出すことになります。
そうして、始まったダンザとの旅はピンにとっては何もかもが初めてのことばかり
しかも、何故かダンザは死んだ龍が残した美しい模様の玉 にこだわり、その玉を海へ持っていかなければならない、と頑なに言い続けます。 一応、ダンザはひどい主人から自分を救い出してくれた恩人でもあることからピンはダンザの言うとおり、玉を大事に抱え海へと向うのだけど……。
ドラゴンハンターの執念深い追跡、少年皇帝との出会いと友情、”ドラゴン・キーパー” としての目覚め、等々、様々な出来事をピンはダンザとともに乗り越えていきます。
そうして数々の困難を乗り越えてダンザとピンは目的地にたどり着きます。
ダンザの目的地は、人間がいない ”蓬莱島”という場所。 残り少ない時間を心穏やかに暮らしたい、とダンザはピンに別れを告げるのだけど、最後にダンザはピンに大切なものを託します。
その大切なものとは……ダンザとピンが大事に守っていた美しい模様の玉から孵ったドラゴンの赤ちゃん
ダンザと何度も助けてくれたネズミのファと別れに悲しみながらも、”ドラゴン・キーパー” としてピンはダンザの大切な赤ちゃんドラゴン、”カイデュアン” を育てることを決意します。
どうやって育てていけばいいのか、これからピンはどうやって生きていけばいいのか、不安をたくさん抱えながらも、ピンは1人前へ進むことになります。
何も知らなかった少女が困難を乗り越えて成長していく姿が感動的でした
この先ピンが赤ちゃんドラゴンのカイデュアンとどう生きていくのか
次の 『ドラゴン・キーパー?<紫の幼龍>』 へ続きます。
藤木 稟
角川書店(角川グループパブリッシング) ¥ 700 (2011-01-25) コメント:バチカン奇跡調査官?<サタンの裁き>/藤木 凛
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あらすじ
美貌の科学者・平賀と、古文書と暗号解読のエキスパート・ロベルトは、バチカンの『奇跡調査官』。
2人が今回挑むのは、1年半前に死んだ預言者の、腐敗しない死体の謎。
早速アフリカのソフマ共和国に赴いた2人は、現地の呪術的な儀式で女が殺された現場に遭遇する。
不穏な空気の中、さらに亡き預言者が、ロベルトの来訪とその死を預言していたことも分かり!?「私が貴方を死なせなどしません」(紹介文より)
〜感想〜
『バチカン奇跡調査官?<黒の学院>』 に続く2作目です。
前作では平賀の天才的な頭脳の冴えで、“奇跡” の真相を解き明かすことができましたが、平賀にとっては本当の“奇跡”に出会えなかった、と気落ちする結果となりました。
今回は、亡くなってから1ヶ月たっても生きたままの状態を保たれている遺体についての調査をすることになります。
実際に現地について調べ始めてみると、まるで生きている時と同じように身体は温かく死後硬直もなし、というまさに奇跡としか思えないような状態で……
さらに、生前は“預言者”としても有名だった人物で、ロベルトと平賀のことも事前に予言されていたことがわかります。
ただ、その予言はロベルトが恐ろしい死を遂げるという不吉なもので
さすがに不安な気持ちになるロベルトだったのだけど、平賀を心配させないように気にしていない態度をとります。
ところが、実際に毒蛇に咬まれたり、邪悪な何者かの気配が周囲に漂ったり、と次から次に危険な目にあい、ロベルトは少しずつ追い詰められていきます。
そうして、ロベルトの行動は怪しげなものになっていきます。
平賀はロベルトをなんとか助けようとするのだけど、しまいには平賀すらも遠ざけるようになります。
いつもはロベルトが平賀をフォローしてくれるんですが、今回は平賀が逆にロベルトをフォローしていて、2人の絆が今まで以上に深まる話になっています。
ロベルトの秘められた過去も関わってきて、意外な真相が解き明かされることになったのが面白かったです。 読み応えのある内容でした
今回、まるで聖人のような人格者として登場した美貌の神父が実は黒幕だったんですが、最後のほうではまんまと逃げおおせたので、この先、ロベルトと平賀の手ごわい敵として再登場しそうな感じです。
平賀のことを気に入っていたようなので、ロベルトと彼との間で熾烈な平賀争奪戦が繰り広げられることになるのかもしれません(笑)
藤木 稟
角川書店(角川グループパブリッシング) ¥ 860 (2010-12-25) コメント:バチカン奇跡調査官?<黒の学院>/藤木 凛
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あらすじ
天才科学者の平賀と、古文書・暗号解読のエキスパート、ロベルト。
2人は良き相棒にして、バチカン所属の『奇跡調査官』―世界中の奇跡の真偽を調査し判別する、秘密調査官だ。
修道院と、併設する良家の子息ばかりを集めた寄宿学校でおきた『奇跡』の調査のため、現地に飛んだ2人。
聖痕を浮かべる生徒や涙を流すマリア像など不思議な現象が2人を襲うが、さらに奇怪な連続殺人が発生し―。(紹介文より)
〜感想〜
バチカンの“奇跡調査官”
なにやら、この言葉だけで“神秘的”な感じがします
主人公は古文書の暗号解読を専門とするロベルト神父と天才科学者の平賀神父。
ロベルトは地に足のついた常識的な青年なのだけど、
平賀は日常生活のあれこれはまったく苦手で、礼服を箪笥から探し出せなかったり、一つのことに集中すると他のことは何もかも忘れたりとという、1人にしておくと心配な典型的な天才タイプ(笑)
そんな平賀を可愛い(笑)と思っているロベルトが何かと彼の面倒を見て、平賀もそんな優しくて頼りがいのあるロベルトを慕っているのだけど、ある日2人が属している “聖徒の座” の上司(?)サウロ司教からある寄宿学校で起きた “奇跡” を調査するよう言われます。
未だに “奇跡” に出会ったことのない平賀は期待に胸躍らせるのだけど、どうやら教会内での権力争いの要素も絡んでいるようで……。
さらにはサウロ司教は “悪魔” にも気をつけるようにと忠告をします。 サウロ司教は自身も実際に悪魔と遭遇しエクソシストとしても経験豊富な人物で、悪魔の恐ろしさを誰よりも知っています。
そんな人物から真剣に忠告をされたのに、平賀はそのことすらも楽しみにしてしまって……どこまで真面目なのか
判断に困るところですが、本人は至って真面目のつもり(笑)
ロベルトはちゃんと平賀のそういうところもわかっていて、上手くフォローに回ります。 本当に息のあったいいコンビで、2人が一緒にいる場面ではほのぼのしました
とはいえ、“奇跡” の調査は一筋縄ではいきません。
本当に “神の御業”なのかどうか?
あらゆる角度から検証することになるのだけど、ロベルトと平賀が向った修道院では複数の“奇跡”が起きていて、さらには殺人事件まで発生するというとんでもない事態に
怪しげな修道僧や、聖痕の顕れる学生等々、数々の謎をロベルトと平賀は解き明かすことができるのか?
ロベルトと平賀がそれぞれの特技を生かして、謎解きをしていく様子が面白かったです
次は 『バチカン奇跡調査官?<サタンの裁き>』 です。
さて、本作のタイトル ”ちょちょら” とはいったいどういう意味なのか
作者の畠中恵さんの作品のタイトルは、ちょっと変わった可愛らしい言葉が多いですが、意味は何となくわかるようなわからないような。。。(笑)微妙なところがあります。
(そんなふうに思うのは私だけかもしれないですが) でも、ちゃんと本文中にわかりやすく意味が載っているので、江戸語(?)の知識が増えるのが嬉しかったりします
というわけで、”ちょちょら” とは。。。
「弁舌の立つお調子者。 いい加減なお世辞。 調子のよい言葉」 東京出版 江戸語辞典より (本文より)
という意味になります。
本作の主人公、間野 新之介は出来のいい兄が自害してしまい、思いがけず ”江戸留守居役” を引き継ぐことになってしまうのだけど、この江戸留守居役 というのは、世間ではあまりよい噂のない役職だったりします。
その噂とは、 ”藩の財政を傾けるほどに金を使い、豪遊の限りをつくす” とか、”盛り場などで騒ぎを起こす迷惑な輩” 等々。
実際に何もわからないまま、留守居役になった間野も、最初は同じ組の先輩留守居役たちにからかわれたり、いじめられたりであまりよい印象を持っていませんでした。
ところが、少しずつ職場になれていくうちに実際に目に見えている行動には裏の意味があることがわかってきます。 ただの意地悪に思えていた先輩たちの行動も、実は間野に留守居役としての振る舞い方や考え方を教えてくれていたことにも気づき始めて……。
万事にそつがなく、出来がよかった兄がなぜ自害に追い込まれたのか
真相もわかってくるのだけど、その真相は藩の存続に関わるもので、失敗すれば間野自身もまた兄と同じ運命に追い込むものでした
藩の存続をかけて間野は自らの命をかけて奔走するのだけど……。
小さい頃から出来のよい兄と比べられて軽んじられていた間野が、ひねくれることなく素直に兄を尊敬して慕っていて、江戸留守居役を引き継いだあとも、ひたすら自分の役目を全うしようとする姿に感心しました。
最後まで諦めずに頑張りとおして、最初の頃の頼りなさはすっかりなくなった間野の成長ぶりも感動的でした ひょっとしたら、シリーズになるかも? と思う終わり方だったので、ちょっと期待してます
西尾 維新
講談社 ¥ 1,155 (2007-12-04)
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49834位
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虚刀流・鑢七花と奇策士・とがめによる伝説の完成形変体刀蒐集の旅は、否定姫の腹心・左右田右衛門左衛門の所有する最後の一本―炎刀『銃』を前に、最期にして最悪の試練を迎えていた―。
容赦なく、迷いのない“弾丸”に貫かれたとがめを、七花は果たして救うことができるのか―!?
西尾維新と竹が描く、時代活劇絵巻。
とある歴史の物語―これにて終幕。
刀語、第十二話の対戦相手は、否定姫腹心にして元忍者、左右田右衛門左衛門(紹介文より)
〜感想〜
『刀語 第十一話<毒刀・鍍>』 に続く12作目、『刀語 第十二話<炎刀・銃>』 最終巻です。
前作で、”否定姫” の右腕、左右田右衛門左衛門によって、完成形変体刀最後の1本 ”炎刀・銃” で撃たれたとがめでしたが、撃たれた場所は的確に急所にあたり致命傷を負ってしまいます。
ついさっきまで和やかに話していたとがめが気づけば血まみれで地面に横たわっている……七花は現実を受け入れることができずしばらく呆然として動けなくなってしまいます。
そんな七花に何の感情も見せず、淡々と言葉をかける左右田右衛門左衛門。
とりみだしたまま、左右田右衛門左衛門に向っていく七花だったのだけど、あっさり退けられてしまいます。 そして、「奇策士に別れを告げるだけの時間は残っている」 と言い、その場から立ち去っていきます。
左右田右衛門左衛門に復讐したいという気持ちを抱きながらも、七花はとがめの側へ行くのだけど近くに行くと傷の深さがはっきりとわかり、本当にとがめは助からないということを思い知らされて……。 子供のように泣き崩れる七花だったのだけど、死に掛けている張本人のとがめは逆に不思議な落ち着きを見せます。
そうして、とがめは七花に衝撃の事実を打ち明けます。
はじめからとがめの父親を処刑した七花の父親の六枝(むつえ)を許すつもりはなかったと
すべてが終わったら二人で旅を続けるというのも、七花に対して抱いている暖かい感情もすべては復讐という目的を遂げるための ”策” にすぎず、最後には七花を殺すつもりだったのだと
とがめが自分を置いて死んでしまうということにただでさえ、ショックを受けているのにそのとがめからさらに追い討ちを掛けられた七花はすっかり打ちひしがれてしまいます
そもそも七花にとって、とがめは絶対の存在で彼女の命令ならばそれがどんな内容でも従うつもりです。 たとえ、それが 「死ね」 という命令だとしても……。
それだけに、どうしても七花は ”何故 ” という気持ちが押さえ切れません。
子供のように泣きながら問いかける七花に、とがめはそもそもの旅の始めからの想いを淡々と語り始めます。でも、そんなふうに七花を突き放すように話し、”策” だ ”道具” だと口にしながらも、七花に対して抱いた感情も、語りかけた言葉も ”本物”だったのだと打ち明けてくれます
ただ、どうしても復讐を諦めることができなかっただけで……。
……もう、なんでそんなふうにしかできないんだろう、と悲しいやら切ないやら
しかも七花が子供のように泣き叫ぶものだから、なおさら痛ましくて……。
実は、なんとかとがめが助かるんじゃないか、と多少の期待はあったのだけど、そんな甘い期待が叶えられる余地は全然なくて……。
七花ととがめの別れの場面は涙なしでは読めませんでした
一方、左右田右衛門左衛門にとがめを排除させた ”否定姫” は、12本の完成形変体刀を手に入れ、彼女自身の目的を叶えるために尾張幕府の中枢へと近づき行動を起こします。 ”否定姫”の最終的な目的は先祖の伝説の刀鍛冶士四季崎から続く願い、”歴史を変える” こと。
実際、ほとんど成功していて ”否定姫” が仕上げをする、というところまできていたのだけど、そこへ七花が単身乗り込んできて……。
果たして七花の目的は
左右田右衛門左衛門への復讐か、それともとがめの遺志を受け継いで叶えようとしているのか……。
すべての枷を解かれた七花のとんでもない ”強さ” に惚れ惚れ
12本の刀を手に入れるためのそれぞれの戦いで得た経験を生かして、最後に七花の前に立ちはだかる12人の敵を、次々に倒していく様子は圧巻でした。
長くて短かった七花ととがめの旅。
二人に関わってきた”真庭忍軍” ”否定姫” ”左右田右衛門左衛門” ”完成形変体刀の持ち主たち” 等々、様々な出会いを重ねて、七花ととがめが得たものとは
切ないながらも、少しの救いと希望のある結末でした