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金門橋 /アリステア・マクリーン
アリステア マクリーン
早川書房
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(1988-06)
JUGEMテーマ:読書


★★★☆(3.5/5)

あらすじ

重要な会議に向かっていたアメリカ大統領とアラブの国王を乗せた護送車が襲撃される。鮮やかな手口で、あっという間に護衛たちを無力化した武装集団のリーダーは、ピーター・ブランソンといい、犯罪者の世界では有名な男だった。ブランソンの目的は、人質たちの身代金として三億ドル、さらにはサンフランシスコの観光名所である金門橋そのものの身代金として二億ドルという途方もないものだった!

〜感想〜

大統領とアラブの国王の誘拐という大胆な犯行を実行した集団のボス、ブランソンは周到で緻密な作戦を立てることにかけては、他に類がないほど完璧な人物。
今回の計画もいつもどおりに、スムーズに運ぶかに見えたのだけど……

ブランソンにとっては、FBIの腕利き捜査官ポール・リブソンが身分を偽って記者団の中に紛れ込んでいたことが運のつき。リブソンは冷静にブランソンの弱点を見抜き、彼の計画を阻止するために、弱点を利用してブランソンの計画を揺るがせていく。

何かがおかしいことに気づくブランソンだったのだけど、リブソンの慎重な行動によってその”何か”を突き止めることができず、自分の計画に対する自信があやうくなっていく。それでも、持ち前の用心深さと勘のよさでリブソンが怪しいと気づきはじめ、彼の行動を監視するのだけど、それもリブソンには予想のうち。
のらりくらりと、巧妙にブランソンの疑いをはぐらかしていく。

ブランソンはその頭脳明晰さと、周到な準備と計画のおかげで今まで一度も捕まったことがない、という事実のおかげで自分に対して絶対の自信をもっていたのだけど、リブソンによってその自信が少しずつ突き崩されていく。
本当に必要な時以外は人を殺さずにすませることを基本としていて、さらに女性だけは絶対に傷つけない、という、ある意味紳士的(?)とも言える人物だったのに、リブソンのじわじわと追いつめるやり方に、そんな態度もできなくなっていってしまう。

限られた状況の中でブランソンを追いつめていくリブソンのやり方に感心します。

でも、ちょっとブランソンが気の毒になってしまいました。
「金門橋を爆破する」 と脅迫した時に、同席していた市長が逆上してブランソンに殴りかかるのだけど、その時に、「わたしの間違いだった。彼の夢を踏みにじってしまった」なんて、思いがけず反省する言葉を言ったり。
女性だけは絶対傷つけない、とか。
とんでもない犯罪者なのだけど、なんとなく憎めないところがあったせいかもしれないですたらーっ

| アドベンチャー | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
傷ついた純情/ダイアナ・パーマー
JUGEMテーマ:読書


★★★★(4/5)

あらすじ

「男を信じるなんてばかなことは、もう二度としない」

唯一の身寄りである祖母が心臓発作を起こし、グレイスは隣人のガロン・グリヤに助けを求めた。ガロンはベテランのFBI捜査官で、つい最近この小さな町ジェイコブズビルに引っ越してきたばかりだ。無口で大柄な男性を前にして、グレイスは今までに経験したことのない気持ちを抱き始める。(裏表紙より)

かわいい前置きかわいい

このダイアナ・パーマーも大人気のロマンス小説家です。
ダイアナ・バルマー、ダイアナ・ブレインという名でも何作か出してます。
特徴は純情なヒロインと鬼畜野郎(笑)のヒーローという組み合わせで、ヒーローのあまりの鬼畜ぶりに、心底腹が立つこともしばしばひやひや 
しかも、勝手な思い込みでヒロインに辛くあたって、後で自分の勘ちがいだったことに気づくという迂闊さですたらーっ 
でも、そんなどうしようもないヒーローでも、「惚れた弱み」で、ヒロインは彼を許してしまう。 私だったら、許さん(笑)と、思いつつも、勘違いに気づいた後、一生懸命ヒロインの機嫌をとろうとするヒーローの姿に、ついにやけてしまいます猫2 そんなふうに誤解がとけるまでは、ヒロインが辛い思いをしちゃいますが、誤解が解けた後はかなり甘い恋人に豹変するので、苦労のしがいはあるのかもしれませんたらーっ

作品のほとんどは、ジェイコブズビルという架空の町が舞台になっており、登場人物は誰かかれか繋がりがあります。ひとつひとつの作品は独立していますが、そういった繋がりを辿って読んでいくのも楽しいですよウィンク


〜感想〜

ヒロインのグレイスには謎がつきまとっています。
ジェイコブズビルの住人は彼女の秘密を知っていて、グレイスに対しては優しく思いやり深く接して暖かく見守っているのだけど、ヒーローのガロンは新参者でグレイスの事情を知らず、自分が知っている女性を基準にしてグレイスを判断してしまう。
女性に対しては冷めた見方をするガロンはグレイスが男性に対して脅える様子も不自然にしか見えず、他人に頼りにされるのもまっぴら、だと思っていることから、グレイスに対しては冷たくそっけなく振舞うのだけど……。

ある日、グレイスの祖母が心臓の発作を起こしたことで二人の関係に変化が訪れます。係わり合いになりたくない、と牽制するガロンだったのだけどふと、自分の妻と息子を亡くした時のことを思い浮かべ、グレイスに力をかそうと思いなおします。
そうして、思いがけずグレイスと一緒に過ごすことになったガロンは、グレイスの純粋さと優しさに触れ急激に彼女に惹かれていくようになる。

一方、グレイスもまた最初こそ感じが悪かったガロンだったのだけど、実は思いやりのある優しい男性だということに気づき、同じようにガロンに惹かれていく。グレイスが男性を恐れるのには理由があるのだけど、ガロンに対しては自然に振舞えるほど心を開いていきます。

そんな二人の様子を見たジェイコブズビルの住民は、グレイスの事情を知っていることからことさらに喜び二人に注目するように。ところが、ガロンはそのおせっかいな態度が気に入らず、グレイスに惹かれながらも彼女を拒絶してしまう。
グレイスが、ガロンに心を開き彼を愛したことがどれほどの奇跡だったのかを、知らないまま……。

ガロンの人でなしーっちっ
と、かなり腹立たしい思いをさせられます。
ガロン自身にも心の傷があって、人を愛することに臆病になっているのはわかるのですが、それにしても、そこまで言うか!? っていうくらい、キツイ言葉をグレイスに投げつけます。
もう、本当にしばらくはガロンにはムカムカしっぱなしでした〜。

グレイスも一度はガロンを愛したのだけれど、彼のあまりの恐ろしい態度にすっかり臆病になってしまいます。そんな二人を見ていたジェイコブズビルの住人たちの怒りの烈しいこと!
一旦は町の住人たちに受け入れられたガロンは、一転、総スカンを食らわせられます。
思わず「ざまーみろ」と言いたくなってしまった心の狭いわたし(笑)

そんな住人たちの態度に後悔しながらも、自分の非を認めないガロン。ところが、自分が受け持っている少女連続殺人事件の手がかりを追っていくうちに、衝撃の事実を知る事になります。それは、グレイスの過去に関わるもので……。

グレイスの謎の一つを知ったガロンは心を入れ替えて、彼女の信頼を取り戻そうと行動を起こします。でも、一度ひどく傷つけられた相手にすぐ気を許すことができるはずもなく、少しずつ、もとの関係を取り戻していくものの、最初の頃のような無条件の信頼の眼差しと愛情をグレイスから寄せられることはなく、ガロンは惨めな思いを味わいます。
このへんになると、ちょっと可哀相と思わないでもなくなってきます(笑)

グレイスのほうはといえば、ガロンを愛しながらも彼の心の傷を知っていることで、素直に愛情を示すことができなくなっています。さらには、ガロンに内緒にしている自分の秘密のこともあって……。

と、こんなふうに一筋なわではいかない二人の恋ですが、誤解しあってすれ違う二人の姿にじれったい思いをさせられながらも、最後の数ページでそんな思いもどっかへ飛んでいきました(笑)
勇気があって優しくて思いやりがあって愛情深いグレイス。
彼女が幸せになれてとても嬉しかったですラッキー

ちなみにヒーローのガロンにはキャッシュ・グリヤという弟がいます。
彼の恋の詳しい話は 
『若すぎた妻』-PS37 → 『愛に裏切られても』-PS42 
を読むとわかりますよ〜ラッキー 
ガロンと同じく……、ひょっとしたらガロン以上の頑固者(笑)ですけど、魅力的なヒーローです猫2

| ハーレクインロマンス | 14:47 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
風神秘抄/荻原 規子
荻原 規子
徳間書店
¥ 2,625
(2005-05-21)
Amazonランキング: 62981位

JUGEMテーマ:読書


★★★★(4/5)

あらすじ

板東武者の家に生まれた十六歳の草十郎は、腕は立つものの人とまじわることが苦手で、一人の山で笛を吹くことが多かった。平安末期、平治の乱に源氏方として加わり、源氏の御曹子、義平を将として慕ったのも束の間、敗走し京から落ち延びる途中で、草十郎は義平の弟、幼い源頼朝を助けて、一行から脱落する。そして草十郎が再び京に足を踏み入れたときには、義平は、獄門に首をさらされていた。絶望したそのとき、草十郎は、六条河原で死者の魂鎮めの舞いを舞う少女、糸世に目を奪われる。 彼女の舞には不思議な力があった。引き寄せられるように、自分も笛を吹き始める草十郎。舞と笛は初めて出会い、光り輝く花吹雪がそそぎ、二人は互いに惹かれあう。だが、その場に、死者の魂を送り生者の運命をも変えうる強大な力が生じたことを、真に理解したのは糸世だけだった。ともに生きられる道をさぐる草十郎と糸世。二人の特異な力に気づき、自分の寿命を延ばすために利用しようとする時の上皇後白河。一方、草十郎は、自分には笛の力だけでなく、「鳥彦王」という神の末裔であるカラスと言葉を交わすことができる異能が備わっていることに気づく。そうして、とうとう草十郎と糸世を悲劇が襲い、糸世は草十郎の元から消えてしまう。その時から、草十郎の糸世を捜し求める長い旅が始まった……。(
紹介文より)


かわいい前置きかわいい

 『空色勾玉』   『白鳥異伝』   『薄紅天女』  に続く4作目です。
流れは汲んでいますが、独立した作品として楽しめるので<勾玉シリーズ>を未読の方でも楽しめると思います。わーい

〜感想〜

自分を生んだ時に亡くなった母親の形見の笛だけがなぐさめだった草十郎。
そんな彼が初めて慕ったのが源氏方の義平。孤独だった草十郎は心の底で変わり者の自分を受け入れてくれる人を求めていたのだけど、義平の人柄に惹かれた草十郎は、ふと、幼い頃に笛を吹いていた自分にカラスが話しかけてきたことを思い出す。 

「そのまま笛を精進すればいつか御曹子に出会うだろう」 という言葉に義平こそが”御曹子”だと思い込む草十郎。そして、義平にどこまでもついていこうと決心する。ところが、負け戦になり義平の弟君を逃すため盗賊と一人戦った草十郎は義平と離れ離れになってしまう。そのまま命を落とすかに思えたのだけど、何故か盗賊の頭は草十郎を助け一味になるよう誘いかける。義平と離れ離れになった草十郎は無気力になってしまう。
そんな時、草十郎に話しかけてきたのがカラスの 「鳥彦王」

鳥彦王は人間の童子の姿をした神様の血筋を引く”豊葦原を真に支配する存在”だと告げ、その一貫として無視できない人間を理解するために修行の旅にだされるのだと説明する。そして、人間を理解するための対象として選ばれたのが草十郎なのだと。。。
”御曹子” とは鳥彦王のことだったのねたらーっ

「カラスがしゃぺってる……ひやひや
と最初は呆然とする草十郎だったのだけど、明るくて年上の兄のような喋り方をする鳥彦王をすんなりと受け入れるようになっていく。実際、この鳥彦王って草十郎にとっては初めての友達と言ってもいいくらい。笛を吹いている時の草十郎は周囲の全てに共鳴し、聞こえてくる音を吹き鳴らすことだけに意識を持っていかれてしまって、”自分” あるいは ”我” というものを放棄しています。
周囲に対して心を閉ざすことで、自分を守っている草十郎にとってはそれが当たり前のこと。でも、そんな草十郎が、鳥彦王、糸世と巡り会うことによって、どんどん変わっていく。

何よりも影響を与えるのは糸世なのだけど、草十郎を孤独から救い出したのは鳥彦王だと思います。鳥彦王と草十郎の会話を読んでると、草十郎はまるっきり子供扱い(笑)で、ほのぼのした雰囲気に思わず笑顔になっちゃいます。
それに、人間のことを学ぼうとしている鳥彦王が時々惚けたことを言うのも面白いわーい

そしてある日、草十郎は運命の出会いを果たします。
何故か草十郎の笛と共鳴しあう舞を踊る少女糸世。
彼女と出会った時から、草十郎は自分の笛が強大な力になり得ることを理解しはじめるようになっていく。>でも、この二人の最初の出会いの印象はイマイチ(笑) 草十郎は”二度と会いたくない” と思い、糸世は”朴念仁”呼ばわりたらーっ
 
そんな二人だったのだけど、いつしか惹かれあい共に生きることのできる道を探し始めるようになっていく。でも、二人が一緒にいることで生み出される強大な力は、野心的な上皇の注意を引いてしまい……。

初めての恋に突っ走る(笑)草十郎に対して、危険が迫っていることを把握している糸世は、草十郎と別れることを決意する。ところが、そんな糸世の決意を草十郎は受け入れず、上皇の願いを叶えて対等の立場に立てば二人で生きられると思い込んでしまう。
……草十郎の気持ちもわからないでもないんだけど、いつの世も現実的なのは女なのね、としみじみ思ってしまったひやひや

そうして、二人を悲劇が襲う。
予想外の事態にうろたえてしまった草十郎を救うため、糸世が別の世界へと飛ばされてしまう。糸世を失った草十郎は生ける屍状態にポロリ
そんな状態態の草十郎に喝を入れたのが、皮肉なことに上皇の部下のはずの男。彼は草十郎を嫌いながらも、糸世には心酔していたことから草十郎を救い出す。
その男のおかげで、草十郎は糸世が死んでいないことを確信し、別の世界から糸世を救い出そうと決心する。ほとんど不可能にも思える、草十郎の行動に呆れながらも付き従う鳥彦王。そして、その旅で草十郎は今まで知らなかった、人の温かさに触れていく。

草十郎と糸世の恋物語がメインなのだけど、同時に孤独な少年だった草十郎の成長物語でもある本作。最後はちょっと悲しいけれど、とっても幸せで嬉しい気持ちになれましたわーい オススメの作品ですウィンク

| ふぁんたじぃー | 19:37 | comments(2) | trackbacks(0)|- pookmark
薄紅天女/荻原 規子
荻原 規子
徳間書店
¥ 2,310
(1996-08)

JUGEMテーマ:読書


★★★★(4/5)

あらすじ

東の板東の地で、阿高(あたか)と同い年の叔父藤太(とうた)は双子のように十七まで一緒に育った。だがある夜、藤太と言い争いになり飛び出した阿高の前に蝦夷たちが現れる。そして阿高に告げた……あなたは私たちの巫女、明るい火の女神の生まれ変わりだ、と。母の面影に惹かれ、蝦夷の国へ向かう阿高を、藤太と仲間たちは必死で追う。そして「私は阿高を捜しにきた」と語り、追跡に加わる都の少将坂上田村麻呂(さかのうえたむらまろ)の真意とは……? 
一方、西の長岡の都では、物の怪が跳梁し、皇太子安殿巫女(ひつぎのみこ あてのみこ)が病んでいた。兄を救いたいと思いつめた十五歳の皇女苑上(そのえ)は、少年に身をやつし「都に近づく更なる災厄」に立ち向かおうとするが……。(紹介文より)


〜感想〜

 『空色勾玉』  『白鳥異伝』  に続く<勾玉シリーズ> 3作目ですニコニコ
今回は、二つの異なる場所で物語が進んでいきます。

闇(くら)の末裔の阿高が、いかにして自らの成り立ちを受け入れていくのか。
前2作では、主人公の少年を支え導いていくのはもう1人の主人公のヒロインだったのですが、今回阿高を導いて心の支えになるのは同じ年の叔父の藤太です。
いつも一緒で双子のように育った二人の心の結びつきは、恋人の入る余地がないほど(笑)ところが、そんな日々にも終わりを告げるときがやってきてしまう。
藤太が一人の女性に心から惹かれ、今までのように一時的な相手ではないことに気づいた阿高は、藤太が自分から離れていってしまうと不安に襲われる。
そして、藤太が阿高に”ある事”を隠していたことを知り、裏切られた気持ちになった阿高は感情のまま郷を飛び出していってしまう。
自分を迎えに来たという蝦夷たちとともに。

そんな阿高を心配した藤太は郷の仲間たちと追っていく。
やっと追いついたとき、阿高は自らの出生の秘密を知ったことで力に目覚め、変わり果てた姿になっていた。もう阿高ではない、と言い聞かせる周囲の言葉を受け入れず、藤太は一人阿高のもとへ。そして……。

やはり、二人の絆はとても強く、阿高は藤太のおかげでもとの自分を取り戻すことができます。そして藤太と阿高は「都に跋扈している魑魅魍魎を退治してほしい」という田村麻呂の依頼に応え、仲間たちとともに都へと向かうのだけど……。

一方、都では輝の末裔の苑上(そのえ)が兄を助けたいと思いつめていた。
弟皇子に自分の身代わりになるよう言い聞かせ、少年の振りをして都から旅立つ苑上。
ところが、苑上も悪霊に狙われる羽目に。
必死に逃げている途中、不思議な馬に出会い助けられる。
なんとか逃げ切り我にかえると、馬ではなく人間の少年がそばにいることに戸惑ってしまう。そう、その少年こそ、都の悪霊を退治するために来た阿高だったのです。

じゃじゃ〜ん(笑)
二人の運命の出会いってやつですねわーい

女の子にはそっけなく、色恋沙汰はまだまだ早い、というほどお子ちゃま(笑)な阿高ですが、苑上が初めて会った時に少年の身なりをしていたことから、自然に接するうちに心を許すようになります。後で、苑上が女の子だとわかっても態度が変わらず、藤太の次(笑)に大切な存在に。そして、苑上の願いを知ったとき、彼女の望みをかなえようとするのだけど、そんな阿高を災いだと決め付け滅ぼそうとする人物が邪魔をして……。

苑上のほうが阿高より精神的に大人なので、好きだと気づくのは苑上が先なのですが、阿高が兄に害を為す可能性にも気づいてしまい、かなり葛藤しています。
前2作を読んでても思ったのですが、男の子の分も女の子が悩んで苦悩してるんですよね〜たらーっ 稚羽矢も小倶那も阿高も、鈍すぎるひやひや
とはいえ、最後にはしっかり成長して頼もしくなってくれるので、苦労のしがいはあるんですけどね(笑)

さて、今回の主人公の阿高と苑上はいったいどんな結末を迎えるのでしょう?

お子ちゃまだった阿高が、最後のほうでみせる毅然とした態度に思わず惚れ惚れしちゃいました〜ウィンク

次は  『風神秘抄』  へ。

| ふぁんたじぃー | 19:00 | comments(4) | trackbacks(0)|- pookmark
白鳥異伝/荻原 規子
荻原 規子
徳間書店
¥ 2,625
(1996-07)

JUGEMテーマ:読書


★★★★☆(4.5/5)

あらすじ

双子のように仲睦まじく育った遠子(とおこ)と小倶那(おぐな)。だが、小倶那は<大蛇の剣>の主となり、勾玉を守る遠子の郷を滅ぼしてしまう。 「小倶那はタケルじゃ。忌むべきものじゃ」 という大巫女の託宣に、遠子は彼を倒すために勾玉を連ねた「死」の首飾りを求めて旅立つのだが……(紹介文より)

かわいい前置きかわいい

 『空色勾玉』  で、結ばれた狭也(さや)と稚羽矢(ちはや)。
その二人の子孫は世を統治する大王となっているのですが、人の世で生きるには輝(かぐ)の血をひく大王の気性は烈しすぎるため、<水の乙女>の血筋の子孫たちはそんな大王を静め慈しむ役目を担っていました。
本作のヒロインの遠子は闇の氏族で、小倶那は輝の血を引く大王の息子です。
この小倶那の血が二人に悲劇をもたらすことになり、小倶那と遠子は運命に翻弄されていくことになります。


〜感想〜

捨て子だった小倶那は育ての親の娘の遠子とは双子のように仲睦まじく、いつも一緒でお互いの気持ちがわかるほど心が通じ合っています。
お互いにとってかけがえのない存在の二人だったのですが、ある日小倶那は都からきた皇子に気に入られ、彼に仕えることに。嘆き悲しむ遠子だったのだけど、彼女もまた巫女になるために旅立つことになる。
必ず会いに来ると言う小倶那の言葉を信じ、遠子もまた彼に会うまで今の自分のままでいることを誓います。そうして二人は離れ離れに。

小倶那にとっては、遠子だけが自分を無条件で愛してくれる存在。
捨て子だった小倶那は、他の人たちが優しくしてくれても、彼らにとって自分が一番の存在ではないことを嫌というほど思い知らされています。
それだけに、遠子は本当に特別で小倶那にとっては誰よりも何よりも大切な少女。

一方、遠子のほうはといえば、頼りない小倶那をほうっておけず、自分が守ってやらなければ!と思いこんでいます。
小倶那の代わりに喧嘩したり、怒ったり、泣いたり。
それはまるで、自分の感情を表に出せない小倶那の代わりをしているかのよう。そんな二人だったから、お互いの存在を心の中で感じ取れるほど結びつきも強くなっています。

ところが、そんな二人を恐ろしい運命が襲う。

小倶那を都に連れ帰った皇子が大王に対して謀反を起こし、小倶那は皇子を逃すために身代わりとなる。
負傷し捕らわれた小倶那は殺されそうになるのだけど、そこへ大王の妹姫が現れ、死んだと思わされていた自分の息子だと告げる。
そして小倶那は大王の血を引く御子で、さらには<大蛇の剣>すら操ることができる稀有な存在だと知らされる。

大王の御子として謀反人の皇子を征伐するために派遣される小倶那だったのだけど、皇子を兄のように慕っていたことから、何とか彼を助けようとする。そんな小倶那を蔑み嘲笑する皇子。
実は小倶那を連れ帰った皇子は薄々彼の血筋に気づいていて、追われる身になった時、小倶那が身代わりとして死んでくれることを期待していたと言う。
皇子の本音を聞かされ、殺されそうになったとき、小倶那は無意識のうちに<大蛇の剣>を振るってしまう。

その時から全てが狂い始め、遠子とともに育った郷を自らの手で滅ぼす事態に陥る。そして、小倶那は自分と遠子の二人を繋いでいた絆を自ら手放してしまい……。

一方、郷を滅ぼされた遠子は小倶那が絆を断ち切ったことを感じて案じていた。
皇子の謀反に巻き込まれ傷ついた小倶那を心配していた遠子は、彼が負傷したものの生きているということを知って喜ぶのだけど、その後で小倶那が自分の郷を滅ぼしたことを知らされる。大巫女の託宣を受け、小倶那を倒そうと決心する遠子。
変わってしまった彼を殺して初めて”わたしの小倶那”を取り戻せるのだと思いつめて……。

そのためには、それぞれの地に散らばっている巫女が守っている5つの勾玉のうち4つを集めなければならない。「死」をもたらすには4つの勾玉があればいいということを教えてもらった遠子は、同じ巫女の血筋の菅流(すがる)とともに、勾玉を求めて長く困難な旅に出る。
そして、苦労の末にとうとう4つの勾玉を揃えた遠子は、一人小倶那の元へと向かうのだけど……。

十二歳の時に別れ、4年の月日を経て出会った小倶那は、覚えているとおりのままの姿で……
途方にくれたように遠子の名前を呼び見つめるばかり。
意を決して剣を突き立てたものの、致命傷にはならず止めを刺すこともできない。そうして遠子は思い知る。

自分は小倶那を殺すことはできないのだ、と。
その時、”自分にしかできない”と思いつめ、一心不乱に追ってきた行動が全て無駄だったと悟り、遠子の心は砕け散ってしまいます。
後に残ったのは、「小倶那が好きだ」 
という、ただそれだけの、純粋な気持ちだけ。
自分への不甲斐なさと小倶那への愛情とに絶望しながら、遠子は小倶那を一人残し姿を消してしまう。

残された小倶那は遠子の帰りを待っていた菅流に見つけられ、何故か怪我の手当てを受けることに。想像していたよりも幼い小倶那に戸惑いながらも、菅流は遠子という共通点ゆえに一緒に行動することになる。
遠子に出会って、ずっと彼女を求めていたことを再認識した小倶那は、菅流に遠子を探すように頼む。今では、かつて二人を繋いでいた絆を否定することもせず、また遠子の存在を感じとれるようになった小倶那。
でも、今度は遠子のほうが小倶那を締め出していて。
頼みの綱は遠子の存在を察知することのできる菅流のもつ勾玉だけ。

遠子が諦めず小倶那に会いにきてくれたように、今度は小倶那が遠子に会いに行く番。

とはいえ、二人が出会っても全てが解決するわけでは、もちろんなくて……。
とにかく、遠子と小倶那の恋は前途多難。
小倶那を守るために自殺までした母親の霊が、嫉妬のあまり遠子を殺そうとしたり、小倶那の御子としての地位を狙っている敵が彼の命を奪おうとしたり。

最後の最後まで、ハッピーエンドを迎えるのか悲劇に終わるのか、やきもきさせられっぱなしでしたたらーっ 読み応え十分のラブストーリーです。
そう、ラブストーリーなんですよね〜(笑)
<勾玉シリーズ>の中では、私の一番のお気に入りです猫2

次は  『薄紅天女』  へ。
| ふぁんたじぃー | 22:21 | comments(2) | trackbacks(0)|- pookmark
空色勾玉/荻原 規子
JUGEMテーマ:読書


★★★★(4/5)

あらすじ

輝(かぐ)の大御神(おおみかみ)の双子の御子である照日王(てるひのおおきみ)と月白王(つきしろのおおきみ)と、闇(くら)の氏族とが烈しく争う戦乱の世に、闇の巫女姫と生まれながらも、光に惹かれ愛する少女狭也(さや)。神殿に縛められ、かつて大御神の妻であった闇の女神の夢を見ていた<剣の主>稚羽矢との出会いが、狭也を不思議な運命へと導いていく……。(紹介文より)


かわいい前置きかわいい

<勾玉シリーズ>の第一作目です。
このあと、  『白鳥異伝』    『薄紅天女』    『風神秘抄』  へと続いていきますが、どの作品から読んでも、支障はありません。でも、わたし的には 『空色勾玉』 と 『白鳥異伝』 は続けて読んで欲しいですウィンク


〜感想〜

かつて仲睦まじい夫婦だった男神と女神は地上のすべてを生み出し慈しんでいた。ところがある日、女神は火の神を産み、その時の火傷がもとで黄泉の国へと旅立ってしまう。男神は怒りと悲しみのあまり火の神を斬り捨て、女神を取り戻すために黄泉の国へと下りていくが、女神の変わり果てた姿を見て地上へと逃げ帰っていく。
それ以来男神と女神は争うようになり、地上で男神は輝の大御神と呼ばれ、黄泉の国の女神は闇の女神となり、二人の神は憎しみ争うようになった。

少女狭也は闇の女神を敬う一族の<水の乙女>と呼ばれる巫女でもあるのだけど、幼い頃に輝の大御神を敬う村へ孤児として引き取られていたことから、輝の御子である月白王を慕うようになる。そんな狭也の前へ、闇の女神を敬う一族が狭也を迎えに現れる。一族に戻り、輝の大御神と戦うように告げる彼らに逆らい、狭也は月白王のもとで采女として仕えることを選ぶ。誘われるまま、御子の住んでいるまほろばの都へと旅立つ狭也だったのだけど……。

”輝の大御神”が生み出したニ神 <照日王> と <月白王>
照日王は大御神の右目から、月白王は左目から生まれ、烈しい気性の照日王は、父である大御神の望みをかなえることがすべて。父神が地上に降臨し地上を統べることができるように、闇の女神に仕える一族を容赦なく滅ぼしていく。
対照的に月白王は、烈しい気性を秘めながらも父神の本当の望みを冷静に推し量っていく。だからこそ、<水の乙女>の狭也の存在に惹かれるようになるのだけど、結局のところ、狭也は報われない気持ちを抱えることになる。なぜなら、月白王が本当に望んでいるのは照日王だということに気づいてしまうから。

絶望に襲われる狭也は、都に来たことを後悔し始め自らの出自を自覚していくようになる。自分は闇の氏族なのだと。そう自覚した時、一族の一人である鳥彦が形代(かたしろ)として、生贄にされることを知った狭也は闇の氏族として行動することを決心する。ところが、向かった先の部屋には鳥彦ではなく<大蛇の剣>を静める役目を担うという、大御神の末子、稚羽矢(ちはや)が鎖に繋がれて座していた。

狭也と稚羽矢の運命の出会いです。
稚羽矢は、姉神と兄神とは違う目的で父神の鼻から生み出された末子で、その目的ゆえに彼だけが父神を滅ぼすことのできる力を持っています。そのことを知っていた照日王は、稚羽矢に自身の意思を持たせないように閉じ込め、人前にさらさないようにしていました。ところが、そこへ現れたのが狭也。

彼女と出会った稚羽矢は初めて外の世界へ出たいと思うようになる。
そうして、少しずつ自分の意思を持ち始めた稚羽矢は狭也のために、闇の氏族と協力して姉神と兄神と戦うことに。

狭也と稚羽矢は二人の神に勝つ事ができるのか?
稚羽矢に託された使命とは何なのか?
そして、父神の本当の目的とは……?

神とはいえ、やはり感情を持っています。
ただ、その感情は人間のものとは比べようもないくらい苛烈なもの。
さらに、不死で完全な存在である彼らには、すべてが一度きり。
”許す”ということは絶対になく、一度間違えば”死”でしか贖うことができない。

そんな存在と戦い続けることは、人間にとってはあまりにも荷が重過ぎます。
でも、どんなに抵抗しようとも最後には滅びるばかり、と絶望しかけた時に現れたのが狭也と稚羽矢です。狭也は闇の女神に仕える一族で稚羽矢は輝の大御神の末子。本来なら敵同士になるところですが、運命に導かれて出会うべくして出会った二人は惹かれあい、お互いにかけがえのない存在になっていきます。

そんな狭也と稚羽矢が最後にはどんな結末を迎えるのか?
一刻も早く知りたくて、最後までページをめくる手を止めることができませんでした〜たらーっ

日本神話とか興味ない、という方でも十分楽しめる作品だと思いますわーい 最初の数ページを乗り切れば(笑)、後は狭也と稚羽矢(もちろん他の登場人物たちも)が、ぐいぐいと引っ張っていってくれますよ〜ウィンク

次は  『白鳥異伝』  へ。

荻原 規子
徳間書店
¥ 1,785
(1996-07)

| ふぁんたじぃー | 22:11 | comments(4) | trackbacks(0)|- pookmark
ぬしさまへ/畠中 恵
JUGEMテーマ:読書


★★★★★(5/5)

あらすじ

きょうも元気に(?)寝込んでいる、若旦那一太郎の周囲には妖怪がいっぱい。おまけに難事件もめいっぱい。幼馴染の栄吉の饅頭を食べたご隠居が死んでしまったり、新品のはずの布団から泣き声が聞こえたり……。でも、こんなときこそ、冴える若旦那の名推理。ちょっとトボケた妖怪たちも手下となって大活躍。ついでに手代の仁吉の想い人まで発覚して……。(裏表紙より)

かわいい前置きかわいい

前作  『しゃばけ』  で祖母が齢三千年の大妖怪で自分も妖の血を引いていることを知った一太郎。さらに、異母兄の存在も知ってなんとか兄と会いたいと思いつめていましたが……。本作はそんな一太郎と妖たちの後日談になっています。

〜感想〜

『ぬしさまへ』 

妖の兄やの一人仁吉は眉目秀麗でもてもての色男です。
町を歩けばたちまちのうちに袖の袂は付文でいっぱいになるほど。
ある日、その付文のうちの一つを送った娘さんが殺されてしまい、仁吉に疑いがかかってしまう。心配した一太郎は早速妖たちの力をかりて犯人探しにのりだします。

『栄吉の菓子』

一太郎のほとんど唯一の友達と言っていい、お菓子屋の跡取り栄吉。
彼のつくる菓子は、一生懸命作れば作るほど珍妙な味になってしまうという代物。本人が一生懸命なだけに、素直に 「まずい」 とは言えず、できるだけ栄吉の作った菓子を買ってたべるようにしている一太郎ですが、ある日、栄吉の作った菓子を食べてご隠居が死んでしまう。後で、誤解だったとわかったものの、一度たった噂はなかなか消えず親戚一堂に責められる栄吉は身の置き所がなく、一太郎の家へしばらく避難してきます。
そんな栄吉を心配した一太郎は、いつものごとく妖たちの助けで犯人探しをすることに。

『空のビードロ』

一太郎の異母兄、松之助が一太郎に会う直前の話です。
ある日、奉公先の女主人の可愛がっていた猫が殺される。
もともと優しい主人ではなく、その事件のことで奉公人たちに当たり散らすようになり、松之助もあらぬ疑いをかけらてしまう。そこへ、主人の娘が現れて彼を庇い、優しい言葉をかけてくれる。感謝する松之助だったのだけど、実はそれは異母弟の一太郎へ取り入るための計算した演技で……。
それまで、人の優しさや思いやりにあまり触れたことのなかった松之助にとっては、娘の言葉はとても嬉しくありがたいものだったのに……。
そのことを知った時、松之助の心の中で何かが壊れてしまう。
そして、松之助はネズミ捕りの薬を懐から取り出し井戸へ向かおうと……。

と、目に留まる物がありました。
それはたまたま拾った青いビードロ。
落とし主に渡そうと思っていたものの、何故か手放せずに持っていたそれを、月にかざしてじっと見つめる松之助。
その美しさそのものに、心が同化していくような不思議な感覚に包まれ、松之介は正気に戻ります。

一太郎の父でもある長崎屋の主人は松之介を認めず関わろうとしておらず、そんな父親の態度をもどかしく思っていた一太郎は、内緒で兄に会おうとしていました。ところが、殺人事件に巻き込まれたりタイミングがずれたりしてなかなか会う事ができず、すれ違う二人。でも、そんな二人を知らず知らずのうちにある物が結び付けていました。 そう、松之介の恐ろしい衝動を止めた青いビードロです。

この後、追い討ちをかけるかのように松之介は火事に巻き込まれてしまうのですが、とうとう二進も三進もいかなくなった彼は、長崎屋を訪ねることを決心します。そして、やっと兄弟は会うことになるのですが……。
最後はちょっと泣きたくなりましたポロリ 
でも、悲しいのではなくて嬉しくてホッとしたからなんですけどねたらーっ

人の縁というのは不思議なものだな、と、しんみりさせられました。
この短編集の中では、この作品が一番のお気に入りですラッキー

『四布の布団』

寝込むことの多い一太郎のために少しでもいいものを、と新しい布団を頼んだものの、届いたのは夜になると女の声で泣きだすというとんでもない代物。若旦那に甘甘の兄や二人の怒ること怒ること。さらには、甘甘甘の父親藤兵衛も怒り出し、布団を納めた先へ文句を言いに行く始末。少しでも穏便に済まそうと同行した一太郎だったのだけど、そこの主人の恐ろしいことと言ったら並じゃない泣き顔
布団を縫った奉公人に害が及ばないように庇うつもりだったのに、主人のあまりの迫力に庇う前に気を失ってしまう(笑)
途端に大騒ぎをする父親と兄やたち。
とりあえず、寝かせようと部屋に案内してもらおうとすると、その部屋にはなんと死体があって……。
結局、寝込むことになってしまった一太郎なんだけど、泣き出す布団と死んだ男のことが気になり、犯人探しに乗り出します。


『仁吉の思い人』

大妖の祖母からおくられてきた二人の妖、犬神、白沢のうちの一人仁吉(白沢)の失恋話です。

いつものように(?)寝込んでいる若旦那を心配する二人の兄や仁吉と佐助。ところが、今回はかなり具合が悪いらしく、薬を飲むこともままならない様子。すっかり慌てた二人は、何とか飲んでもらおうと褒美でつろうとするのだけど、一太郎はどうしても受け付けない。
そこで、佐助はこんなことを言い出した。

「とっておきの話をしてさしあげます。仁吉の失恋話なんですけどね」

慌てる仁吉をよそに、俄然、興味を引かれた一太郎は気力を奮い起こし、何とか薬を飲み込んだ。 そんなに、知りたいのね(笑)と、ちょっと笑ってしまいましたたらーっ
そんな若旦那の姿に苦笑しながらも、約束だからと仁吉は自分で話し始める。

仁吉の普段からのモテモテぶりを知っている一太郎にしてみれば、彼が振られたということがどうしても信じられない。
興味が湧くのも当たり前なのかも(笑)
実は、仁吉の失恋話は一太郎にも関わりがあります。
結局のところ、一太郎と二人の妖は出会うべくして出会ったんだな、と、納得するものがありました。やっぱり、人(妖?)と人との繋がりっていうのは面白いですラッキー


『虹を見し事』

ある日、起きてみると環境が変わっていた。
……驚きます[:ふぅ〜ん:]

いつもなら、どちらかが必ず傍にいる二人の兄やが、今朝はどこにもいない。そして、過保護すぎるほど甘甘だったのに、そのそぶりもしなくなる。
昨日まではいつもどおりだったのに、突然、全てが変わっている。
何よりも、いつも一緒だった妖がいなくなってしまっていることが、どうしても信じられない。

普段から、甘えることをよしとしない若旦那でも、突然の二人の兄やの態度の変化には戸惑うばかり。でも、そのおかげで一太郎は気づきます。これが当たり前なのだと。
なんとも寂しい心持になるものの、とにかく慣れなければ、と頑張る一太郎がいじらしく思えますポロリ ところが、そのうち妖たちが姿を消したものの、”何か”は、いることが感じられ、しかもその何かは一太郎に害を為そうとしているらしい。さらには、自分が言ったことが現実になったり、と、どこかチグハグな出来事が起こり始める。

さては、これは他人の夢の中なのか、と、一太郎は手がかりを探し始めるのだけど……。今回は妖たちの手助けがないので、寂しい思いをする一太郎が可哀相でした[:がく〜:]
妖たちがいなくなっちゃうのか? と、読んでいてドキドキしたのだけれど、妖たちがいなくなったのには、ちゃんと理由があって最後にはいつもどおりに若旦那の周りに現れたときにはホッとしましたわーい やっぱり、若旦那の周りには妖たちがいなきゃね猫2


| ふぁんたじぃー | 11:47 | comments(2) | trackbacks(1)|- pookmark
十七年後の真実 上下/ノーラ・ロバーツ
JUGEMテーマ:読書


★★★☆(3.5/5)

あらすじ

長い冬に向かうアラスカ。先住民族が「白き偉大なるもの」という意味でつけた北米大陸最高峰のデナリ(マッキンリー)の麓にある人口六百人の田舎町ルナシーに、ネイトは警察署長として赴任してきた。大自然に抱かれた田舎町はボルティモア市警察時代に同僚を殉職させ、心に傷を負ったネイトを癒してくれる場所と思われた。だが、登山者が氷河で遭難し、救助の過程で胸にピッケルを刺された男の死体が発見される。十七年前に失踪したと思われていたパット・ギャロウェイは殺されていたのだ!そして、十七年の沈黙を破り、殺人者は動き始めた……。(裏表紙より)

かわいい前置きかわいい

作家のノーラ・ロバーツはロマンス小説の女王とも呼ばれています。
とはいえ、ロマンス小説の女王は私的にはたくさんいて(笑)、リンダ・ハワード、ダイアナ・パーマー、アイリス・ジョハンセン・ジェイン・アン・クレンツ等々。挙げればキリがないんですが、その中でもロバーツの作品は群を抜いて多数訳されているのではないでしょうか。
そして彼女の作品は甘いだけのストーリーではなく、傷ついたヒロイン、あるいはヒーローが、それでも人に対する優しさをなくさず、その傷や痛みを克服して幸せになる、という、人が生きるために必要な大切なものを描いているように思います。
なので、主人公の気持ちに共感しやすく、彼女(彼)らが愛する人を見つけ幸せを摑んだときには、一緒になって幸せな気分に浸ることができます。
そんなわけで、ロマンス小説を読んでみようかな、と思ったときにはオススメの作家さんの一人ですウィンク ヴァンパイアや、妖精、タイムトラベラーなど、様々なジャンルの作品があるので、どれから読んでいくのかを選ぶ楽しさもあると思いますラッキー


〜感想〜

相棒を自分のせいで死なせてしまったと自らを責めさいなむネイト。
彼のせいではないという周囲のなぐさめの言葉も彼には届かず、自分だけに見える真っ黒な暗い穴に心が日に日に沈んでいくことを自覚したネイトは、心機一転、それまで勤務していたボルティモアの警察署を辞め、新天地のルナシーへ警察署長として赴任することを決心する。

ルナシーへ到着したネイトは、アラスカの壮大な大自然に圧倒されながらも、美しい光景に少しずつ気持ちちが上向いていくことに気づく。そうして、警察署長としての務めを手探り状態で、こなしていくうちにルナシーの住民たちにも受けいれられ始める。ところが、ふとした瞬間に、心は暗い穴へと戻っていってしまう。そのうち、そのまま暗い穴から出てくることができなくなるのではないか、と、諦めを感じ始めるネイトなんだけど、そんな時、一人の女性と出会う。

ネイトが寝泊りしているロッジの女主人シャーリーンの娘のメガンに、ネイトは不思議と気持ち引きつけられていく。メガンもまた、悲しい目をしているネイトに興味を引かれ、彼を笑わせてあげたいと思う。そして、二人は恋人同士に。

縛り付けられることを嫌うメガンと、傷つき感情が麻痺してしまっているネイト。

そんな二人が、お互いにかけがえのない存在になっていく様子に、読んでいるこっちが照れくさくなっちゃったりもするんだけどたらーっ、それ以上にホッとして嬉しくなりますニコニコ 

でも、そのままハッピーエンド、というわけにはいきません(笑)

ある日、遭難者の捜索に向かうことになったメガンとネイトは、無事に高校生達を発見したものの、アイスピックで殺されて氷付けになっている死体をも発見することになる。驚くべき事に、”アイスマン”と呼ばれ、一躍ニュースになったその死体の男は、なんとメガンの父親だったのだ。母親と自分を捨てて出て行ったと思っていた父親が、実は殺されていたことを知り、真相を知りたいと思いつめるメガン。

ネイトは、管轄外を理由に捜査に加わる事ができず、独自で捜査を始めようとする。そして、第二の殺人が……。

ルナシーに溶け込み始め、メガンという恋人もできて少しずつ癒されていたネイトだったのだけど、捜査を進めるうちにルナシーの住民の中に犯人がいることに気づいたことで、住民たちとの関係が険悪な雰囲気になっていってしまう。
ネイトを選んで招いた町長すらも、彼に腹を立てる始末で…ひやひや
でも、それで諦めるようなネイトじゃありませんイヒヒ
こう、と思いこんだらわが道を行く彼は、誰を怒らせようとも捜査を続けていきます。
そして、追いつめられた犯人はネイトとメガンの命を狙い始め……。

ネイトとメガンの恋の行方も気になりますが、殺人者が誰なのか? 怪しい人たちが何人にもいる(笑)ので、最後まで犯人の見当がつかなかったです。正体がわかってしまえば、 ”ああ、確かに” と、納得できたんだけどたらーっ

最後のネイトと犯人の対決シーンには、ちょっとワクワクしちゃいましたわーい


| ロマンティックサスペンス | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
しゃばけ/畠中 恵
JUGEMテーマ:読書


★★★★(4/5)

あらすじ

江戸有数の廻船問屋の一粒種、一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的な殺しが続き、一太郎は家族同様の妖怪たちと事件の解決に乗り出すことに。若旦那の周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲い……。(紹介文より)


<娑婆気 (しゃばけ)>  …  俗世間における、名誉・利得などのさまざまな欲望にとらわれる心  国語大辞典 『言泉』(小学館) より (本文中より抜粋)

〜感想〜

生まれつき病弱な、一太郎は5つの時に祖父から二人の子供を紹介されます。その二人の子供は実は妖なのだけど、寝たきりでろくに遊び相手もいなかった一太郎にとっては、遊んでくれるという二人が妖でも全然気にならない。そうやって一太郎のもとへやってきた二人の妖は ”犬神”= 佐助 、”白沢”=仁吉 と人間の名前を名乗り、廻船問屋の手代として常に一太郎の傍にいるようになる。

そして時は流れ、一太郎も今では17歳。相変わらず病弱で、生死の境をさまようこともしょっちゅう。そのために、両親も二人の妖、佐助と仁吉も一太郎がくしゃみ一つでもしようものなら、上を下への大騒ぎをするほどの過保護ぶり。実際に何度も死にかけている一太郎の体の状態を思えば無理もないのだけど、調子のいい時でも過保護ぶりは変わらないことから、一太郎にしてみればうんざりしてしまうことも確か。

彼なりに、周囲に心配をかけるのが心苦しく、「いっそ、死んでくれたら」 と、思うのが普通じゃないんだろうか? と一人で思い悩んだりもしてます。そんな時、一太郎は”ある事”を知り、妖たちにも内緒で一人で夜に出かけます。ところが、その帰りに人殺しを目撃してしまい、命からがら逃げ出すものの後ろから人殺しがどんどん迫ってきて……。

何とか、妖の ふらり火 を呼び出して、助かったものの、夜の外出が佐助、仁吉の二人にばれて大目玉を食らう羽目に泣き顔

妖たちと一太郎とのやりとりが面白いですわーい
特に、幼い頃からずっと一緒にいた犬神と白沢は一太郎にとっては兄のようなもの。
そして犬神と白沢の二人にとっても、一太郎は守り続けなければならない大切な存在。実際、一太郎以外の人間はどうでもいいようで、彼に危害が加えられようものなら優しげな風貌はあっという間に豹変しちゃうひやひや

一太郎も守られるだけの弱い存在じゃなく、芯は強くいざという時は肝が据わっていて、仁吉が危ない目に会った時は自分の身を顧みず助けようとします。そんなふうに、妖と一太郎が互いを大事に思い合う様子が微笑ましくて、胸がほんのりと温かくなりますラッキー 

仁吉と佐助以外の妖も「大好きな若旦那」を助けようと、犯人を突き止めるための手がかりを摑もうと頑張ります。色んな妖が出てきますが、”若旦那”が本当に好きなのがよくわかります。でも、何故、一太郎の周りにだけ妖たちが当たり前のようにいるのか? そして、犯人が一太郎を執拗に狙うのは何故なのか?

それは、実は一太郎の出生の秘密に関わりがありました。
なんと、一太郎は……びっくり

と、いうことで、気になった方は是非、本作品を読んでみてください(笑)
とにかく、妖たちと若旦那一太郎の心温まるやりとりが面白いですよ〜ラッキー
次はシリーズ2作目  『ぬしさまへ』  へ。
| ふぁんたじぃー | 18:00 | comments(4) | trackbacks(1)|- pookmark
レッド・ハンド /スティーヴン・ウッドワース
スティーヴン・ウッドワース
ソフトバンククリエイティブ
¥ 840
(2006-09-23)
JUGEMテーマ:読書


★★★★(4/5)

あらすじ

死者の魂と交流できる特殊能力をもつ通称〈ヴァイオレット〉の一人、ナタリー。彼女は同じ能力を持つ仲間たちと離れて静かな生活を送っていたが、少年による両親殺害の真相を暴くため、ふたたび危険な世界へ! (紹介文より)

〜感想〜

『ヴァイオレット・アイ』 に続く2作目です。

ダンを失った<ヴァイオレット>連続殺人事件から6年後。
ナタリーは”北米交霊協会”から抜け出し、フリーの霊媒として娘のカーリーと静かに暮らしていた。そう、ダンはナタリーに大切な贈りものを残してくれていたのだ。

だが、カーリーもまた<ヴァイオレット>であることから、”北米交霊協会”は執拗に彼女を協会の学校へ入れるようにとつきまとい、常時ナタリーには3名の人間が交代で見張りについていた。ナタリーが隙を見せた途端、娘を奪い取ろうと虎視眈々と狙っているのだ。

ある日、友人の地方検事補イネスが訪ねてくる。彼女が現在取り掛かっている殺人事件に不審を感じ、ナタリーの協力を求めてやってきたのだ。協会から派遣された<ヴァイオレット>の証言に怪しいところがあると感じたイネスは信頼のおけるナタリーに霊を招いてほしいと依頼する。だが、娘のカーリーとの静かな生活を乱されたくなかったナタリーは一旦は断るのだが……。

6年前に連続殺人犯にダンを殺されてしまったものの、彼の忘れ形見の可愛い娘カーリーを授かり、静かな生活を送っていたナタリー。<ヴァイオレット>であるナタリーは本当の意味でダンを失うことはありませんでした。時々訪れて(ノッキングして)くるダンと生前と変わらず話すことができ、彼の愛情を感じることもできる。それに、カーリーも<ヴァイオレット>だから、娘も父親のダンと話すことができ。変則的だけど幸せ家族と言えなくもない?たらーっ

ところが、ナタリーには一つの心配事が。
ダンの様子に段々と変化が起き、”何かに呼ばれているような気がする” と言いはじめる。

<ヴァイオレット>はほとんどの霊を呼び出すことができるんだけど、稀にどうやっても呼び出せない霊がいて、それらの霊は<向こうの世界>に行ってしまった、と考えられています。その<向こうの世界>がどんな所なのかは全く知られておらず、ただ、そこへ行った霊は二度と戻ってこないということだけがはっきりしている。それを知っているナタリーは別れの予感に脅えながらもダンとの絆を失わないようにしようとするのだけど……。

今回、ナタリーには問題が次から次へと降りかかってきます。
娘カーリーを奪おうとする”北米交霊協会”やら、母親の精神を壊し破滅に追いやった殺人者やら、絶縁状態だった父親が和解を求めてやってきたり。

カーリーの<ヴァイオレット>としての能力の訓練のことでも頭を悩ませなきゃいけないし。それまでは、カーリーは身体に勝手に入り込んでくる霊を追い出せず、父親のダンを呼んで助けてもらっていたのだけど、実は、このことが最後に重要な役割を果たすようになっています。でも、この時点ではカーリー自身にとってはあまりよくないことだとナタリーはやめるように言い聞かせる。

娘のこととダンとの別れのことに頭を悩ませながらも、イネスからの依頼の事件を調べていくナタリー。そして、母親を破滅に追いやった殺人犯が関わっていることを突き止める。その男の目的は<ヴァイオレット>の1人を利用し、最終的にはナタリーを手に入れること。抵抗するナタリーだったんだけど、カーリーを誘拐され要求をのむ以外どうしようもなくなってしまう。その時ナタリーは最後の手段として、ある人物を自分の中に呼び寄せる。その人物とは犯人の最も恐れている人物で……。

今回ナタリーは大切な人を失ってしまいます。でも、それと同時に新しい人たちと新たな絆を結ぶことにもなり、読み終わった後には哀しみとほんの少しの希望とが残されます。このシリーズは5作目まで出ているそうなので、これから先ナタリーがどうやって生きてくのか、どんなふうに変わっていくのか、彼女の今後が楽しみです。
日本でも順調に翻訳されるといいんだけどな〜ニコニコ

| パラノーマル | 18:15 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark


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