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★★★★(4/5)
あらすじ
ローム王国行きの船上。
ゲルスタン事件で知り合った少女、ミュリエルの故郷を訪問するという気楽な旅に心弾ませていたキャサリンは、偶然駆け落ち話を聞いてしまう。
ロマンス小説のような一場面に、不思議な興奮を覚えた彼女だったが、まさかこの小さなエピソードをきっかけに、大がかりな宝石盗難事件に乗り出すことになるとは思わなかった!お馴染み四人の用心棒に加えて、宿敵(?)アンジェラも登場、絶好調のシリーズ第3作。(紹介文より)
〜感想〜
『レディ・ガンナーの大追跡』 (上下)で、親しくなったアナザーレイス<鰐>のミュリエルの故郷を訪問したキャサリン。
純粋に観光と友人との再会を楽しむはずが、またもや事件に巻き込まれてしまいます。
船上で偶然聞く羽目になってしまった駆け落ち話だったのだけど、その相手の女性はなんとミュリエルの親友エレオノーラだったことがわかります。 そして彼女の相手は父親に昔から使えている右腕的存在で……。
彼女達の駆け落ちを止めればいいのか、応援すればいいのか、悩むキャサリンだったのだけど、エレオノーラから自分の婚約者自身が駆け落ちを進めてくれている、ということを聞き、二人の駆け落ちを応援する事にするのだけど……。
エレオノーラたちが駆け落ちした直後、王家に献上するはずだった宝冠が盗まれたことがわかります。二人にすっかり騙されたのだと激怒したキャサリンは、ミュリエル、アンジェラ(レディ・ガンナーの冒険の時のライバルです) と後を追う事に。
二人の居場所を突き止めて問いつめるキャサリンだったのだけど、二人は無実だということがわかります。そうして、やっと気づきます。 エレオノーラの婚約者がクセモノだったのだと。
そうとわかったらキャサリンを止める者は誰もいません(笑)
いつものごとく、愛用の銃を手に今度はエセ婚約者を追いつめていきます。
用心棒四人組も、もちろん登場してます。
前回で、ミュリエルがダムーの婚約者だということが明かされたのだけど、残念ながらこの二人の間には深い溝があります。
ダムーは大の爬虫類嫌い
これは理屈もなにもなく、ただただ生理的に受け入れられない というものなのだけど、ミュリエルにはそれがどうしてもわからない。 ダムーもミュリエル自身が嫌いなわけではないので、強く彼女をはねつけることもできず、ひたすらミュリエルが理解してくれることを願っている状態。
この二人の平行線のやりとりは、周囲で見ている人たちにとっては喜劇でもあり悲劇でもあるようです これから先、ミュリエルがダムーの理由を受け入れることはあるんでしょうか …… <蛇> のヘンリーがミュリエルに密かに想いを寄せているようなので、結局最後には上手く収まるところに収まるような気もするけれど、それまではダムーの困惑振りを楽しめそうです
用心棒四人組とキャサリン。
彼らの付き合いは、まだまだ続きそうです
彼らと関わることによって、アナザーレイスの知り合いもどんどん増えていっているので、将来的にはキャサリンが人間とアナザーレイスの間の架け橋になるのかもしれませんね
次は 『レディ・ガンナーと二人の皇子』 へ。
★★★★(4/5)
あらすじ
ウィンスロウ家のお嬢様キャサリンは、旅先で知りあった風変わりな用心棒四人組に魅せられ、そのひとり、「蜥蜴」のベラフォードの似姿を、美術の授業で描いてみた。
しかし、彼ら用心棒たちの、動物に形態変化する能力に注目していた、秘密結社がこれに気づいたから、さあ大変。
キャサリンは、自らの不注意がひき起こした大騒動に、父親が止めるのを振りきって、ふたたび飛び出した!痛快無比のアドヴェンチャー・ストーリー第2弾。(上…紹介文より)
〜感想〜
『レディ・ガンナーの冒険』 で、用心棒四人組の変身した美しい姿が忘れられず、美術の授業でベラフォードの姿を描いたキャサリン。
ところが、その絵がある秘密クラブの興味を引いてしまう。
その秘密クラブの目的は 「奇抜なもの」 をそれぞれが持ち寄り披露するというもの。
仲間のうちで一番印象深いものを持ち寄った者が勝者となって賞賛されることになるのだけど、今回そのクラブのメンバーの題材は 「変化するインシード」
そもそも ”インシード” (異種人類と人間との混血の呼び名です) とは変化しないのが世間での常識。 その常識を覆すのが、キャサリンが知りあった4人組のダムー、ケイティ、ベラフォード、ヴィンス。 ヴィンスだけは純血種なのだけど、他の3人はインシードでありながら全員変身します。
しかも、その姿はとても美しくて印象的
彼らのそんな姿を見たキャサリンが思わず絵にしたくなる気持ちもわかります。
ところが、その絵がベラフォードの身を危険にさらすことになってしまい、キャサリンはベラフォードを助けるために彼らのもとへと向かいます。
そうして始まるドタバタ劇。
いつものことながら、トラブルメーカーでもあるキャサリンは周囲を巻き込んで、痛快な活躍をみせてくれます。 悪者を懲らしめるところなんかは、本当にスカッとしました
今回は、異種人類(アナザーレイス)の <狐の人> <獅子の人> 等々、色々な種族が登場するので、彼らの種族ならではの逸話や習慣などを知ることができたのも楽しかったです
とはいえ、そんな楽しい場面ばかりというわけにもいきません。
人間とアナザーレイスとの間には種族間での深刻な対立もあることから、一部の人間はアナザーレイスを劣った人種だと誤った認識を持ち、平気で彼らを傷つけたり殺したりすることもあります。
そんな、とんでもない人物にキャサリン自身もアナザーレイスだと勘ちがいされ、怖ろしいことに狩りの対象として殺されかける事態に陥ってしまう
いくらしっかりしているとはいえ、まだ14歳の少女。
理想を持ち、現実の醜い真実を知る機会のなかったキャサリンは、そんな人間たちがいることにショックをうけます。 自分と同じ人間が下劣な振る舞いを平気ですることができることが、なかなか信じられません。
そうして、同じく囚われていたアナザーレイスの少女ミュリエルと協力してなんとか脱出したキャサリンは、怒りを爆発させます。
本当に酷いことをしていたので、キャサリンにやっつけられたときには、「ざまーみろ」 と、ちょっと思ってしまいました。
”人間” と ”アナザーレイス”
種族が違えば、考え方も習慣も違うのは当たり前なのだけど、その違いを受け入れるのが難しいのはわかる気がします。 その違いを少しずつでも受け入れて認め合って、いつか本当の意味で平和に共存できるようになればいいのにな、と、ちょっと真面目に考えたりもしました。
なにはともあれ、今回のキャサリンの冒険は ”人間” と ”アナザーレイス” について深く考えさせられるものになったようです。
一団と成長した次のキャサリンの冒険は次の 『レディ・ガンナーと宝石泥棒』 で
★★★★(4/5)
あらすじ
「お嬢さま、もう無理です!追いつかれます」「大丈夫よ。
みなさんがついているじゃないの」ウインスロウ家の娘、キャサリンは、ここに至って、ようやく用心棒たちに声をかけた。
ことの始まりは一通の手紙。
隣国の幼なじみに危機が迫っていると聞いたキャサリンは、侍女ひとりと、風変わりな四人の用心棒を連れて旅立ったのだが…破天荒なお嬢さまと、動物の姿に変身できる不思議な人々が織りなす、ファンタスティック・ストーリー登場。(紹介文より)
前置き
作者の茅田 砂胡さんといえば、真っ先に思い浮かべるのはやはり 『デルフィニア戦記シリーズ』 でしょうか。確かデビュー作にあたると思いましたが、出版社が倒産かなにかされて、2作目くらいで出版が中止されたのを覚えています。
「こんなに面白い作品なのに、もったいない!!」
と、かなり残念な思いをさせられましたが、幸いにも中央公論社さんから再出版された時には、とても嬉しかったです 今では、押しも押されぬ人気作家さんですが、そんなこともあったな、とふと思い出しました
〜感想〜
バナデスの貴族の娘キャサリン・ウィンスロウは、若干14歳でありながら一本筋のとおったカッコイイ女の子。そんな彼女のもとへ、幼馴染少年が危機に陥っているとの手紙が届きます。
義理堅く友情に厚いキャサリンは、早速幼馴染を救うために侍女のニーナを連れて、彼のもとへと旅立ちます。
ところが、暴風雨の発生で足止めされてしまい、じれったい思いをしていたところに16歳くらいの少女から声をかけられる。
ケイティと名乗った彼女は、用心棒と道案内を申し出てきて……。
本作の世界はちょっと面白い設定になってます。
私たちと同じ普通の人類の他に新たな人種と遭遇していて、彼らは 「異種人類(アナザーレイス)」 と呼ばれ、人間の姿だけでなく動物の姿にも変わることができる驚きの存在。
初めて彼らに会った人類はかなり驚愕した模様
そんな最初の衝撃的な出会いを経て、今ではそれぞれお互いの存在を受け入れている状態。
…… なのだけど、いつの世も自分とは違う存在を受け入れることのできない人間はいるもので、そういった一部の人間たちはアナザーレイスを排除しようと無謀な攻撃をしかけたりしています。
もちろん、攻撃をうけたアナザーレイスは反撃します。
すると、人間達の代表はそのことでアナザーレイスの人たちに文句をつけずにはいられないらしいのだけど、でもね〜、これって自業自得。
勝手に攻撃をしかけて反撃されたら、反撃するほうが悪いというなんて、馬鹿にも程があります。
裏を返せば、「抵抗しないで黙って殺されろ」 って、言っているのと同じことなんですもの。
アナザーレイスたちにしてみれば、「何わけのわかんないこと言ってんだ?」
ってことになっちゃいますよね。
で、人間側にしてみれば彼らの言うことが正しいとわかっていても、やはり 「傷つけないでほしい」
とお願いすることしかできなくて……
そんなふうに、 ”人類” と ”異種人類” との間には目には見えない深〜い溝があるのが現状。
もちろん、アナザーレイスとの共存を望んでいる人類もたくさんいます。
その中の一人がキャサリンの父親。
彼はなかなかの人物で、自分の目で見て判断することをキャサリンにも教えていて、その教えをしっかり守っているキャサリンは偏見に惑わされることなく、アナザーレイスたちと接することができます。
そして、今回の幼馴染を救うための旅に同行することになったのがインシードと呼ばれる、アナザーレイスと人間の混血のケイティ、ダムー、ベラフォード、ヴィンス の四人組。
ケイティは<猫>、ダムーは<ごちゃまぜ>、ベラフォードは<鳥、爬虫類>、ヴィンスは<???> となかなか個性豊かな面々。
幼馴染を救いに行くだけの旅だったのに、何故かキャサリンの命を狙う輩も登場し、いつのまにやら大冒険が始まります。
キャサリンとアナザーレイスの血をひく4人組みがくり広げる、ハチャメチャな騒動にすっかり引き込まれてしまいました 四人組の素性には、謎が絡んでいるみたいなのでこの先の展開で、彼らの正体がどんなふうに明かされていくのか、そのへんも楽しみです。
今のところ、シリーズとして第四弾まであるようなので、順次読んでいくつもりです
次は 『レディ・ガンナーの大追跡』 上下 へ。
アルジャナン ブラックウッド
東京創元社 ¥ 1,218 (2009-01-28)
Amazonランキング:
20824位
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★★★★(4/5)
あらすじ
ロンドンの医師サイレンスのもとには超自然現象に悩むさまざまな患者が訪れる。
奇怪な謎に挑む“心霊博士”の冒険。
屋敷の悪霊に取り憑かれた作家、前世の記憶から猫の町に引き寄せられた男、旅の途中で30年ぶりに母校を訪れ黒魔術に引きずり込まれた商人、激しい恋情のすえ驚愕の人狼事件を経験した青年…英国を代表する恐怖文学の巨匠による人気連作全6作を完全新訳で贈る。(紹介文より)
〜感想〜
富福階級の紳士でもあるジョン・サイレンスは、「食べることに困らない人間には医者になる義務がある」 という信念から医師になった人物。
困っている人間がいれば、何をさしおいても手を差し伸べようとするサイレンスは、患者からも治療費をもらうことはない人格者でもあるのだけど、ただちょっと普通の人と変わったところが……。
それは、彼が診るのは心霊現象や奇怪な超常現象に悩まされている人たちだけだということ。
若い頃にそういった事柄に関しても修行をつみ、普通の医者では ”単なる精神病” と片付けられそうな症状もサイレンスはしっかり原因を突き止めて、可能な時は症状を治してくれます。
そんな一風変わったサイレンスの評判は巷では噂になり、気がつけば不可思議な現象に悩まされた人物は彼を頼ってくるようになっています。
そうして、サイレンスが出くわした6つの事例が本作では語られています。
『事例一 霊魂の侵略者』
ユーモア作家がある日を堺に、ユーモアの才能をなくし逆に身の毛がよだつような悲劇を書くようになり、そのことを知った妻の友人がサイレンスを訪れます。
彼女の話を聞いたサイレンスは、早速その作家のもとを訪ねて話を聞く事に。
そうすると、家に憑いていた何かが原因だということが話を聞くうちにわかってくる。 そこでサイレンスは自分の頼りになる協力者、飼い猫のスモークと愛犬のフレイムを伴ってその”何か”と対決しようとするのだけど……。
協力者が飼い猫と愛犬というのが、面白かったです
サイレンスの思いやりのある態度にも好感がもてました。 こういうお医者さんなら心の底から信頼できそうです
『事例二 古の妖術』
目立たない、どちらかというと内気なヴェジンという男性が偶然降り立った町で遭遇した不可思議な現象が語られています。
ふと何気なく降り立った町なのに、何故かヴェジンは懐かしいような、まるで故郷に帰ってきたかのような気持ちに襲われます。 自分のすべてが町の様子や住民達に満足し、このまま留まりたいとまで思うようになるのだけど、同時に心のどこかで恐怖も感じている自分を自覚したことから、「何かがおかしい」 と気づき始めます。
そうなると、全てが怪しく見えてきて、住民たちが何か大きな秘密を隠しているよう、そんな気持ちにもなってきます。そして、ヴェジン自身にも何かの決断を迫っているような空気も流れ始め……。
果たして、ヴェジンが経験したことは現実だったのか、それとも単なる空想だったのか?
サイレンスが最後に種明かししてくれるのだけど、ヴェジンのことはサイレンスには助けることのできないケース。
そのことに悲しむサイレンスが印象的でした。
『事例三 炎魔』
今回はハバードという人間の助手が同行してます。
どうやら彼にちょっとした”能力”があるようで、本人に自覚はないのだけどサイレンスの手助けをすることに。
依頼主は家を相続した退役軍人。
兄が変死し、家の周囲でも不可思議な現象が起こることからサイレンスに助けを求めてきたのだけど、サイレンスは彼の話を聞いて怪現象の原因に思い当たります。
それは、自然の四大精霊のうちの 「火の精霊」 でした。
そこでサイレンスはその 火の精霊を鎮めようとするのだけど……。
なかなか手強い相手で、流石のサイレンスも余裕があまりありませんでした
いつも冷静で落ち着いているので、なんだかちょっと新鮮だったかも
『事例四 秘密の崇拝』
プロテスタントの学校に通っていた人物が卒業後、懐かしさのあまり訪ねたことで事件が起こります。
学生の頃の思い出というのは知らず知らずのうちに美化されてしまうものなのかもしれません。
今回のハリスも、辛い思い出があるにも関わらずすぎてしまえば、すべていい思い出に変わるのか優しく懐かしい気持ちを抱きます。
そうして、学生の頃の教師に校内を案内されながら思い出話にふけるのだけど、そうするうちに、何となく教師の態度がおかしいことに気づきます。 時々、妙に邪悪な表情をかいま見せることがあって、段々と楽しかった気持ちも消え、不安な思いにかられるようになっていくのだけど、すでに時遅くハリスは……。
信仰というのは、思いがけない状況で育まれることもあるようです。
ハリスの神への信仰心を育てたのは、学校での生活だったのだけど、実はその学校の真の信仰の対象は悪魔でした 物事には色んな見方があるけれど、ハリスが学生時代に真相に気づかなかったことは彼にとってよいことだったようです。
今回サイレンスは最後に活躍します。
相変わらず、全てを見透かしているような彼に感心しました
『事例五 犬のキャンプ』
『事例三 炎魔』 で、助手をつとめたハバードが再登場します。
サイレンスと離れてキャンプを楽しんでいたハバートだったのだけど、そのキャンプで知りあった内気な青年と生き生きとして魅力的な少女のちょっと変わった恋愛の顛末が描かれています。
内気な青年は少女に自分の気持ちをなかなか打ち明けることができず、その様子は見ているほうが思わず同情したくなるほど。 温かい気持ちで見守っていたハバードだったのだけど、そんな時キャンプで正体不明の動物が出現し始める。
どうやらその動物は少女につきまとっているようなのだけど……。
一途な恋心というのは、時にはとんでもない事態を引き起こすようです。
動物の正体は青年の気持ちが具現化したものだったのだけど、それをどうやって解決するのか?青年と少女の恋は悲劇に終わるのか?
全てを見通しているサイレンスはちゃんとした解決策を示してくれます。
ところが、少女の父親が余計な真似をしてしまい……。
ちょっと、ハラハラしました
『事例六 四次元空間の虜』
異次元の世界へ入り込むことになってしまった男性の話です。
サイレンス自身もそういった実験をしていたことから、患者の恐怖や話している内容をよく理解できるのだけど、同時にそういった状況になる前に実験を止めてしまったサイレンスにしてみれば、そんな患者の状況がちょっと羨ましい気持ちにもなります
なので、患者の症状を治すのがもったいない、と思ってしまうのだけど、困っている人を助けたい、力になりたい、と、他人に対して常に善良な思いを抱いているサイレンスは、以前自分が実験を止めた時の方法を教えることにします。
ところが、その方法を教えている最中に患者が再び異次元へと入り込み始めて……。
最後に、何となく残念そうな態度をとるサイレンスがおかしかったです
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
国家主導で開催される、世にも怖ろしいサバイバル・ゲーム。
勝者には名誉と金、敗者には凄絶なペナルティ。 棄権不可。
全国民が固唾を呑んで見守る中、政府に選出された十組のペアは、自らを賭して闘った。
「パパは僕のために生命を懸けるのが下らないって言うの?」。
愛情、友情、信頼、絆―脆弱なモラルを破壊する。(紹介文より)
前置き
『そして 粛清の扉を』 がデビュー作の黒武 洋さん。
あまりにもとんでもない内容に、かなりビックリしたのだけど、同時に彼のほかの作品も読みたくなりました。これから順次他の作品の感想を載せていく予定です
〜感想〜
またもや、とんでもない内容でした
ネット社会が確立され、学校の授業も仕事も自宅にいながらできるようになった近未来。 個人主義が当たり前になり、人間関係も希薄になり少子化は進むばかり。
このままでは、「日本」 そのものが無くなってしまう危機感から、政府は様々な法律を作り上げています。
月に一度は 「家族団欒」 の日をつくり、家族の絆を深めさせるための”ファミリー法”なんてものまである始末。違反したときにはしっかり罰せられるというんだから、ちょっと呆れてしまう。とはいえ、そんな法律まで作らざるを得ないくらい、本当に人間同士の関わりが希薄になっているということもあって、そんな状況を打開しようとある日政府は大規模なゲームの開催を計画。 そのゲームの名前は
”メロス・ゲーム”
名前のとおり、「走れ メロス」 そのもののゲーム内容で、出場するのは二人一組のベアで、それぞれ ”メロス” と ”セリヌンティウス” の立場になり、小説のようにセリヌンティウスを助けるためにメロスが戦うというもの。
そして、メロスが負けた場合にはセリヌンティウスがペナルティを受けることになる。
ゲームは レヴェル1 から レヴェル5 まで。
レヴェル1からレヴェル4 までのペナルティは精神的なものなのだけど、最終レヴェルのペナルティは ”死”
まさに、命がけのゲームになるのだけど、すべてのゲームを勝ち抜いた時には 100億円の賞金が与えられ、年間ごとに決まった金額が支給されることなる。
ただし、”絆” が壊れた時には、賞金はその時点で打ち切り。
そう、この ”メロス・ゲーム” は、愛情や友情、親子愛などを再認識させて、絆を強めるためのもの。 相手は、夫婦、親子、恋人、友人、会社の同僚等々、様々な関係の人たち。ゲームに勝つには、それぞれの ”絆” を最後まで信じて貫きとおすこと。
…… これが、かなり難しい
どんなに結びつきが強そうに見えても、いざ、お互いのことを考えると結構知らなかったりします。さらには、相手の命が自分次第という強烈なプレッシャーにも耐えなければなりません。
高校生の 牧 文典 は、変わり映えのない毎日に嫌気がさして、現実を壊したいという思いから”メロス・ゲーム” に応募するのだけど、まさか本当に自分が選ばれるとは思っていませんでした。 ところが、ある日政府から 「おめでとうございます!」 と選ばれたことを伝える使者が現れて……。
そんなこととは知らない父親は文典が自分と一緒に出場するように書いていたことに驚きます。文典の家庭も家族同士の会話もなく、それぞれが好きなように生活していて親子関係が希薄だったのだけど、このゲームに参加することによって父親と息子の絆が少しずつ深まっていくことになります。
その変化の様子に面映いような、くすぐったいような気持ちになるのだけど、同時に何だか温かい気持ちにさせられました。
とはいえ、そんなほのぼのした展開とは裏腹にゲームの内容はかなりシビア。
というか、ペナルティが想像以上に厳しいもの。
ちなみにレヴェル4までのペナルティはというと……。
メロスがサイコロをふり、そのサイコロの出た目に書かれている身体機能をセリヌンティウスから奪うというもの
”視” ”聴” ”嗅” ”味” ”両手” ”両足”
…… 怖ろしいですよね
メロス と セリヌンティウス はその時々で入れ替わっているので、お互いのどちらがペナルティを受けるのかは、その時のゲーム次第。
メロスになったほうが変わりに罰を受けたいと言っても、それはルール違反になるために叶いません。ただ、ペナルティを受けて身体機能を失った出場者については、一生涯政府が生活を保障してくれることになっているので、多少は救いがあるといえるかもしれません。
とはいえ、いくら生活が保障されるとはいっても、五体満足でいたいというのが当たり前の気持ちです。
ゲームに敗れたときには見苦しい姿をさらしてしまう組があったり、そうかと思えば潔く受け入れる組があったり、と生々しい人間ドラマがくり広げられます。
そんな彼らの姿に涙したり、胸が痛くなったり、やりきれない気持ちになったり、と、結構、感情が揺さぶられました。
今回のゲーム出場者は全部で 10組。
レヴェル1 ではお互いのことをどれだけ知っているのか、の筆記試験。
レヴェル2 では一般常識。
レヴェル3 ではメロスが指定された場所から動かずにずっと立ち続けるというもの(もちろん、色々な妨害がされることになっています)
レヴェル4 では、あるアクシデントが起きて不戦勝になりそのまま2組はレヴェル5 の決勝戦へ進みます。
このゲームの内容は、小説の「走れ メロス」 と同じように、お互いのためにただひたすら走り続けるというもの。それぞれ離れた場所からスタートし、先にお互いのパートナーと出会ったほうが勝ち、といたってシンプルなもの。
とにかくゲームの主旨はあくまでも ”絆” を強めること。
なので、”勝つこと” を目的にしてゲームに挑むと、逆にそれが命取りになることもあります。どれだけ相手のことを思えるか、どれだけ相手のために頑張れるか、それがゲームに勝つための重要な鍵になっていきます。
とにかく、一方で人と人との絆にじ〜んと、させながら、一方では厳しいルールを容赦なく実行するので、気持ちのUP DOWN が激しかったです
最後は感動したんだか、やりきれないんだか、自分でもよくわからない複雑な気持ちでした
★★★★(4/5)
あらすじ
プロジェクトシティ―それは本格的な宇宙移民を目指す『進化計画』のために作られた、赤道直下の洋上に浮かぶ巨大な人工島だ。
そんなシティでパトロール部隊員として働く田中隆が、ある事件で身柄を拘束した奇妙な山伏の持ち込んだ石の力で、戦国時代の日本へと飛ばされてしまう。
そこで隆は、僧侶のような格好をした老人や生死の境をさまよう巨大な鬼と出会い、成り行きから宇宙滅亡の危機を未然に防ぐための計画に身を投じることになるのだが…。(紹介文より)
〜感想〜
『星虫』 で、主人公の氷室友美&相沢広樹のクラスメートで、星虫が宇宙へ還るまで二人と共に行動した田中隆が主人公です。この時の隆は何だか頼りない感じだったのだけど、あれから3年後の今は 「プロジェクトシティ」 で、プロジェクトに携わっている人たちの警護を立派に勤めています。
その姿は見違えるほど …… 思わず ”大人になったねぇ! と感涙(笑)
時間的には 『星虫』 の3年後で 前作の 『鵺姫真話』 の直前になっています。内容としてはサイドストーリーという感じです。”鵺姫” が地球へ逃れてくるまでの話も語られているので、本作は『鵺姫真話』 と一緒に読んだほうがよりいっそう楽しめると思います。
ということで(笑)、過去へと飛ばされた田中隆なのだけど、そこで彼は不思議な老人と巨大な鬼の姿をした死にかけている異星人と出会います。嘆き悲しんでいる鬼に理由を聞くと、近いうちに 「銀河が滅びる」 という、とんでもないことを聞かされて……。
隆が、なんとか防ぐことができないのかと鬼に尋ねると、ある一人の人間を見つければ 銀河だけは救えるかもしれない、と教えてくれるのだけど、地球はやっぱり滅びる運命で…… ショックを受ける隆だったのだけど、せめて銀河だけでも救いたいと願い、鬼と共にその人物を探すことに。
そう、その人物とは前作 『鵺姫真話』 の主人公だった川崎純 のこと。
実は隆と純は一度だけ顔を合わせたことがあるのだけど、鬼は名前までは知らずその人物が現れた場所が漠然とわかるだけ。なので、隆は村人たちに話を聞きながら旅をするほかなかったのだけど、その旅の途中で一人の少女に出会います。
その少女は、純とは深い関わりがある少女だったのだけど、これまた、隆にはそんなことがわかるはずもなく…… 結構、すれ違いが続くのでもどかしかったです
その後も何だかんだと騒動に巻き込まれながらも、やっと少女と純が知合いだということがわかり、これで銀河が助かる、とホッとしたのだけど……。
ことは、そう簡単には運びませんでした。
協力者だったはずの鬼が、何故か純を殺そうとします。
実は、鬼は隆に全てを話したわけではなくて、彼なりの思惑がありました。
それは……。
<星虫ワールド>(と、勝手に呼んでます) も、本作で終りです。
『星虫』 『イーシャの舟』 『鵺姫真話』 と、それぞれの作品は独立しながらも、一つの大きな世界を作り上げていたんじゃないかな、と思います。
本作は、いわばその大きな世界で散りばめられていた謎や不思議に対しての回答のようなものなので、ネタバレにならないように感想はあいまいにさせてもらいました。
氷室 友美 という一人の少女から始まった夢は、人類すべての夢へと変わりました。その夢を叶えるのは決して楽なものではないけれど、それでもきっと大丈夫!
そんなふうに、明るい気持ちにさせてくれる素敵な作品でした。
四作とも、「環境問題」 もテーマとして織り込まれているので、環境問題についても気持ちを新たにさせてくれます。 やっぱり、一人一人が意識して努力することが大事なんだな、と、再認識。 少しずつでもいいから、環境にいいことをしていきたいと思いました
★★★★(4/5)
あらすじ
姫森神社の御神木は樹齢四百年を超える楠で、地元の子供たちはこの木に宿る 「鵺姫様」 に二十五年の寿命を差し出せば、どんな願いも叶えてもらえると信じていた……。 ある夜、高校生の川崎純は姫森神社の境内で、小学生の男の子が巨大な生首に追いかけられているのを目撃する。 耳のあたりからコウモリの羽をはやした生首 ― それは、まさに絵巻物に描かれている鵺姫そのものだった。 一体、この少年は鵺姫に何を願ったのか? そして巻き込まれた純の運命は ― !?(紹介文より)
〜感想〜
『イーシャの舟』 で、天邪鬼イーシャの親友になった川崎純。
彼女は神童といっていいほど頭脳明晰な少女だったことから、 『星虫』 で触れられていた地球全体を巻き込んだ 「プロジェクト」 に参加。
氷室 友美のよきライバルのパイロット候補として充実した毎日を送っていたのだけど、ある日極端に視力が落ちてしまい、パイロットとしての訓練を受けることができなくなってしまう。
自分に対しての自信を無くしてしまった純は、プロジェクトから離れ実家へと戻ることを選ぶ。数ヵ月後、すっかり家での生活にも慣れた純だったのだけど、どこか物足りない気持ちがするのも事実。
そんな時、実家の姫杜神社にまつわる 「姫神様」の伝説を真に受けた一人の少年が願いをかけたことから 「鵺姫」 の生首が出現。
生首に追いかけられてパニックに陥った少年が純のもとへとかけてきて……。
気がつけば目の前には金色に光る一面の草原が広がっていた。
そして側には中学生くらいの少年がおり、前方からは鵺姫の生首を頭にのせて小学生の男の子が近づいてくる。この男の子こそが、この事態を招いた張本人なのだけど本人にも何がどうなったのかはさっぱりわからない。
どうやら、鵺姫が少年の願いを叶えたらしいのだけど……。
純の家の姫杜神社に伝わる鵺姫の伝説そのままの時代にいることに気づいた純は、もとの時代に戻るためにあらゆる可能性を探っていきます。
「プロジェクト」から離れてすっかり覇気をなくしていた純が、少しの油断が命取りになる戦国時代で少しずつ以前の自分を取り戻していくことになります。
そして、純と一緒に行動することになった二人の少年。
一見、無関係に見えるこの二人の少年が先々純にとって重要な意味を持つ存在になっていきます。「鵺姫」の伝説の真実に気づいた時、純は苦渋の選択を強いられることになります。
『星虫』 『イーシャの舟』 と続いた<星虫ワールド> 、それぞれの主人公たちの物語はとても面白くて、読み終わったあとには元気をもらったような気がしました。
前2作に比べると、いささか暗いムードが漂っているような気がしたので、主人公の川崎 純 がどんな結末を迎えるのか? ドキドキしました
でも、話が進むにつれてどんどん前向きに強くなっていく純の姿にすっかりひきつけられて、最後には 「こういうことだったのか!」 と、納得
見事に辻褄の合っているストーリーに、爽快な気分を味わいました
次は本作のサイドストーリーの 『鵺姫異聞』 です。
多分 <星虫ワールド> の完結巻でもあると思うので、どんな結末がまっているのか楽しみです
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
天邪鬼伝説が残る『入らずの山』に、産業廃棄物処理場が作られることになった。
ある満月の夜、その建設現場の近くをライトバンで通りかかった宮脇年輝は、側溝にポルシュを脱輪させ立ち往生している美女・加賀山和美を助けた。
和美の目の前で五トンもの車体を軽々と持ち上げる年輝―それを見た和美は、すがる思いで年輝にある頼み事をする。
その結果、年輝は峠の天邪鬼に取り憑かれてしまうハメに―!?(紹介文より)
〜感想〜
『星虫』 で、歴史的大事件として語られている未確認飛行物体の発見。それはどんなふうに起こったのか? 発見した女性はどんな人物だったのか? そのことが本作を読むとわかります。
とはいえ、主人公は彼女ではなくて彼女と関わりのある「不幸の塊」のような男性、宮脇 年輝という人物です。
彼は、孤児で一人の裕福な老婆に引き取られて成長したのだけど、その老婆がとんでもない偏屈でケチでまるで鬼のような存在。
また、年輝にしてもいるだけで不運を引き寄せるのか、次から次へと不幸を招きよせ、今では億単位での借金を抱えている状態。
その借金を老婆が立て替えてくれたものの、しっかり返してもらうと朝から晩まで休む間もなく雀の涙ほどの賃金で働かされて……。そんな状態の時に出会った、加賀山 和美。
彼女は実は年輝とは深い関わりがある女性なのだけど、彼女はそのことを知りません。
その和美の頼みを聞いて、彼女が教えてくれた場所に荷物を取りに行ったのが年輝の運のつき
妖怪の天邪鬼にとりつかれる羽目に
はじめは夢かと思った年輝だったのだけど、どう見ても現実の存在の”ソレ”は年輝につきまとい、側を離れようとはしません。まるで、小さい小鬼のような”ソレ” を天邪鬼だという友人の言葉に年輝も納得。
最初の驚きを通り越してみれば、妙に愛嬌もあって可愛らしく感じられてしまい、とうとう年輝は天邪鬼のイーシャを育てることにします。
…… 豪胆というか、無謀というか、タダモノではないですね
そうして一緒に暮らしてみると、情が湧いてくるのは当然のこと。
トラブルメーカーの天邪鬼に困ることは度々あるものの、初めてできた ”家族” に辛い毎日も苦にならなくなっていく。
生活は楽にならないながらも幸せを感じていた年輝だったのだけど、イーシャに取り付かれる原因になった和美が彼を好きになったことから、その幸せに影がさしていくことに。
人間とは違って、成長が早いイーシャは年輝を好きになるのだけど、同じく彼を好きな和美にとってはイーシャはとんだ邪魔者。イーシャが起こした事故のおかげで年輝の抱える借金が増えたことを知っていた和美は、イーシャにそのことを知らせて彼女を責める。
それを聞いたイーシャは自分が年輝の重荷になっていると思い込み、彼の前から姿を消すのだけど……。
この年輝はと〜っても怖い顔をしているのだけど、気持ちは温かくて何処までも広い心の持ち主。 実際にこんな人がいたら、恋人にしたいと思うような男性です。
そんな彼が、”家族” として愛したイーシャだったのだけど、彼女がいなくなってそれ以上の存在だったことに気づきます。
そうして、イーシャを探しに旅に出るのだけど、実は彼女は意外な場所に隠れていました。 なんと、鬼のような老婆の家で家事見習いをしていて……。
この老婆、実はイイ人だったようです
お互いに想いながらもすれ違った年輝とイーシャが再び出会えるのはいつになるのか?
じれったい思いをするのだけど、そのあと事態は意外な方向へと進んでいきます。
実はイーシャの正体は天邪鬼ではなくて……。
彼女の正体を知った年輝はある決意をするのだけど、またもや彼の不運が発揮されて二人は再度離れ離れになってしまう。
…… 不憫
結局最後には、もうどーにでもしてっ(笑)
と、言いたくなるくらいラブラブ になるのだけど、それまでがすれ違ったり、誤解したり、と、もどかしい思いの連続でした
なので、最後にやっと年輝が幸せになったときには、ホッとしました
この先、若干イーシャの尻に敷かれそうな感じではあるけれど(笑)、めでたしめでたし。でよかったです
次は 『鵺姫真話』 です
★★★★(4/5)
あらすじ
21世紀末、中国が開発した異次元間転移装置ハイパーフェーズにより、異世界への道が開かれた。だがその装置は未完成で、なぜかピッツバーグだけが魔法が支配するエルフホームに転移してしまった。
ティンカーは、そのピッツバーグでスクラップ業を営む、18歳の天才少女。
ある日、魔法の狛犬に襲われた一人のエルフを助けたことから、地球・エルフホーム・オニヒダの三世界にまたがる奇想天外な大事件に巻きこまれることに。
サファイア賞受賞作。(紹介文より)
前置き
作者ウェン・スペンサーの作品 『エイリアン・テイスト』 を先に読んだのですが、この作品が一風変わった世界観と設定がなんとも面白かったので、彼のほかの作品も手にとってみました。。
で、感想はというと …… やっぱり変わってる(笑)
そして面白い この作家さんは、要チェックかもしれません
〜感想〜
21世紀末に中国が開発した異次元間転移装置。
なんとも驚くべき発明なのだけど、実は未完成 だったことから、ちょっとしたおかしな事態に。
ピッツバーグだけが魔法が支配するエルフホームへと移動させられることになり、二ヶ月に一度一日だけ地球の元の場所に戻るという、奇妙なことになっているのだけどそのピッツバーグに暮らしている ”ティンカー” と呼ばれる少女が本作の主人公になります。
若干18歳ながもスクラップ屋を営んでいて、機械に関することにたいしては天才。
エルフホーム以外では魔法が使えない、という常識もティンカーには通用せず、自分で開発した機械に”魔法”をストックして、シャットダウン後の地球でも使えるようにしちゃうんだから恐れ入る。
ちなみにシャットダウンというのは二ヶ月に一度一日だけピッツバーグがエルフホームから地球に戻る現象のことです。
いつものごとくスクラップ屋で働いていたティンカーだったのだけど、そこへ ”魔狼” に追われている一人のエルフをみつけます。そのエルフはよりにもよって、数年前にティンカーの命を救った ”ウィンドウルフ” と呼ばれる男性エルフ。
しかも、困ったことに命を助けられた時に命の債務をほどこして魔術をかけられた相手。この魔術は、ウィンドウルフが死ねば結び付けられているティンカーも死んでしまうという、とんでもないしろもの。
気が進まないながらも、ティンカーはウィンドウルフを助けに向かうのだけど……。
それが、ティンカーを三つの世界を巻き込んだ大規模な争いに導くことに
自らも怪我を負いながらも何とかウィンドウルフを助けたティンカー。
ところが、ウィンドウルフは瀕死の重傷で、しかも間の悪いことにシャットダウンと重なってしまい、魔法のきかない地球へ戻るというありがたくない事態に。
それでもティンカーは自分で作った機械を使って、ウィンドウルフを癒そうとするのだけど、そんなウィンドウルフをまたもや正体不明の何者かが殺そうと追ってきます。
いったい、何者がウィンドウルフを殺そうとしているのか?
ティンカーにとっては命の恩人だけでなく、自分の運命も一蓮托生の相手。
何とかウィンドウルフを守りきり、無事にエルフホームへと戻ったものの、今度はエルフホームで治安を取り締まる機関 EIA に拘束される羽目に。
幸いにも途中で意識を取り戻したウィンドウルフの言葉のおかげで誤解はとけて、解放されてひとまず安心したのも束の間。
……次から次へと予想しない事態に追い込まれていくティンカー。
知らない間にウィンドウルフと結婚してたり、恋人としてウィンドウルフと甘い時間を過ごした翌朝にはエルフに変身してたり
”エルフ” と ”人間” では、習慣も違うし考え方も違います。
その違いがウィンドウルフとティンカーの意思の疎通を複雑にしてしまいます。
同時に、その行き違いが読んでいるほうにしてみれば面白くて仕方ない ティンカーには気の毒なのだけど
そんなこんなで、いつの間にやらエルフホームでの重要人物でもあったウルフウィンド<風を支配する狼>と結婚したティンカーは、エルフホームで思いがけない運命を課せられることになり……。
ティンカー自身にもちょっとした秘密があって、彼女の存在そのものが ”エルフホーム” ”地球” ”オニヒダ” の世界にとってなくてはならないものになっていきます。 独特の世界観の中でユーモアあふれる展開に笑ったり、ハラハラしたり、と、楽しく読むことができました。
ティンカーの人を惹きつける魅力に、気がつけば引き込まれてました〜
続編もあるようですが、現時点ではまだ翻訳はされていないので、いつものように続編が出ることを期待してます
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
愛するセレニアに会うために、地下の国ミニモイに戻ったものの、小さな体のまま閉じ込められてしまったアーサー。一方、闇の帝王マルタザールは、まんまと地上に這い出し、念願の大きな体を手に入れた。
恐るべき容貌をあらわにし、いよいよ世界征服を開始する!崩壊の危機が訪れた人間界に、アーサーは戻ってくることができるのか―?(紹介文より)
〜感想〜
『アーサーとマルタザールの逆襲』 で、マルタザールを逃がしてしまったアーサー。
自分は小さい体のまま戻れなくなってしまい、マルタザールを止めることはできないかと思えたのだけど、祖父の書斎に体を大きくする薬があることを思い出します。
そこで、アーサーは小さな(2mm)の体のまま、地上へと戻り祖父の書斎まで辿りつことするのだけど……これがまた大変!
前回と同じくセレニア王女とベタメッシュ王子が一緒なのは心強いものの、セレニアのきかん気ぶりが始まって…… いくら愛していてもね〜、こんなに口やかましかったら100年の恋も醒めるかも(笑)
とはいえ、アーサーはそんなことないみたいだけど
一方、地上へでたマルタザールは体長2メートル以上の大きさに。
しかも怖ろしさまで倍になったよう
地上の征服を企んでいたマルタザールは、早速行動を開始しはじめて……。
今回はアーサーとマルタザールの対決は地上になります。
小さいアーサーと大きいマルタザール。
この不利な状況でアーサーたちがどうやって、マルタザールを止めるのか?
それは前作でアーサーが助けた蜂の存在が大きな鍵を握っています。
両親、祖父母、蜂たちの助けを借りてアーサーはマルタザールに立ち向かっていくことになるのだけど、この両親がまたちょっと変わってます。
アーサーを大切に思っていることはわかるのだけど、よかれ、と思ってやったことが逆にアーサーをピンチに陥れることになるので、そのとんちんかんぶりが可笑しかったです
何はともあれ、元の体の大きさに戻ったアーサー。
いよいよマルタザールとの対決が始まるのだけど、敵もさるもの。
大きくなる薬を手に入れていたマルタザールは自分の部下も同じように大きくしていて、アーサーは苦戦を強いられることになる。
そして、とうとう追いつめられてしまったアーサーは……。
結構、最後の最後までハラハラさせられますが、それもまた楽しかったです
ワクワクしながら単純に楽しめる作品でした