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西條 奈加
新潮社
¥ 540
(2008-09-30)
Amazonランキング:
108445位
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★★★★(4/5)あらすじ
近未来の日本に、鎖国状態の「江戸国」が出現。
競争率三百倍の難関を潜り抜け、入国を許可された大学二年生の辰次郎。
身請け先は、身の丈六尺六寸、目方四十六貫、極悪非道、無慈悲で鳴らした「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守だった!ゴメスに致死率100%の流行病「鬼赤病」の正体を突き止めることを命じられた辰次郎は―。(紹介文より)
〜感想〜
時は二十一世紀も半ば。
人々は月への移住も始めています。
ところが、そんな時代に一部の人たちが日本の中に昔の江戸をそのまま再現し、しかも 「国」 として独立を宣言。 公式には認められなかったものの、何故か日本は弱気で諸外国には日本の ”属領” として通しながらも、日本の中では「国」として認めることに
なんとも奇抜な発想ですが、でもこの設定が結構面白いんです
すでに、江戸が国として名乗りをあげてから数十年がたっているのだけど、”鎖国” 状態の江戸に入国するのは至難の業。
でも、日本育ちの辰次郎は三百倍の競争率をくぐり抜け、あっさり1回目の抽選で入国を許可されます。
実は辰次郎はもともと江戸の生まれ。
5歳まで江戸で育っていたのだけれど、理由があって両親とともに出国して20歳の今まで日本で暮らしていました。そんな辰次郎が江戸に帰国することになったのは、余命いくばくもない父親のたっての頼みが理由でした。
鎖国 をしている江戸では厳しい決まりがあって、江戸入りした人間が一度出国したら二度とは戻れません。 辰次郎の父親はどんなに帰りたくても無理なことから、せめて変わりに、との父親の頼みを断れなかったことから、今回の辰次郎の江戸入りとなりました。
辰次郎自身も出国はしたものの、もともとの生まれは江戸。
ということは、一度は帰国も可能です。
そうして辰次郎は江戸へと入国するのだけど、そこで待っていたのは辰次郎自身が思いもかけない事態で……
江戸へ入国した人たちにはそれぞれ後見人がつきます。
その後見人のもとで江戸での暮らしを立てて行く事になるのだけど、辰次郎の後見人は……
気質の荒さと性根の悪さで、冷酷無比、極悪非道、厚顔無恥と噂の高い
裏金春のゴメスと呼ばれる長崎奉行
しかも、女だというのだから二重の驚きです
江戸で何故長崎奉行? と思うかもしれないけれど、この呼び名は場所ではなくて、勤めの内容が同じなことが理由です。
何はともあれ、江戸で長崎奉行ゴメスの手下として、働くことになった辰次郎だったのだけど、実は辰次郎がたった1回の抽選で江戸に入国できたのには理由がありました。
江戸に住んでいた頃に辰次郎がかかった死の病 ”鬼赤痢” の治療の手がかりを得るために、ゴメスが裏から手を回していたのです。
ところが肝心の辰次郎には江戸にいた頃の記憶がさっぱりありません。
生存者0の”鬼赤痢” にかかり、ただ一人生き残った辰次郎。
何故、彼は助かったのか?
それがわかれば、治療方法もわかります。
辰次郎は自らの記憶を取り戻すため、”裏金春” の兄貴分たちと手がかりを追い求めていくのだけど……。
とにかく、この辰次郎の親分(笑)のゴメスのキャラクターが強烈でした
”怪獣” という呼び名がぴたりとくる人って、なかなかいませんものね
ちなみに本名は 馬込(まごめ) 寿々(すず) と、見かけとは裏腹に可愛い名前です
そして、奉行所の兄貴分たちは、甚三(じんざ)、木亮(もくすけ)、寛治(かんじ)、菰八(こもはち)、辰次郎がくるまで一番の下っ端だった 良太(りょうた)の5人と、ゴメスの片腕になる地蔵の頭と呼ばれる十助 です。 この十助は辰次郎の父親が江戸にいた頃の親友で、辰次郎の幼い頃のことを知っている人物でもあります。 そのせいか、辰次郎を優しく見守ってくれてます。
そして、もう一人。
辰次郎と一緒に江戸入りした松吉。
時代劇マニアだった松吉は、あっさりと江戸に馴染んで何かと辰次郎を助けてくれます。
果たして辰次郎は記憶を取り戻し、”鬼赤痢” の治療法を突き止めることができるでしょうか?
結構、登場人物たちそれぞれクセがあって個性的なんですが、ゴメスの印象が強烈すぎて彼らの影が薄く感じられるところが凄かったです(笑)
次は第二弾 『芥子の花』 です