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★★★☆(3.5)
あらすじ
「私を成仏させてください。」
浪人中の榊原久馬の家にいる美しい幽霊・小夜は辻斬りの五人目の犠牲者だった。
自分の仇を討ってくれと家に現れた彼女は、久馬の母とも意気投合し、彼の身の回りの世話もするようになる。
だが、小夜は怨みを捨てず、仇を討てねば、榊原一族を呪い殺すという(「影女房」より)。(紹介文より)
前置き
菊池 秀行 さんといえば、「魔界都市新宿」シリーズ、「ヴァンパイアハンターD」シリーズ などの作品のイメージが強いので、時代小説もあると知ってちょっと驚きました
ちなみに、私は 「トレジャーハンター八頭 大」 シリーズも好きでした。 当初のタイトルは ”エイリアン〜 ” というのだったので、初めて手に取った時はSFものだとばかり思い込んでいて……。実際はSF、オカルト等々色々な要素をたっぷりと含んだ胸踊る冒険小説だったのを覚えています。
……読んだのはかなり昔でしたが、こんなに面白い小説があるんだ!? と、衝撃を受けたことだけは今でも忘れていません。
そんな菊池 秀行 さんの時代小説ですから面白くないわけがない
というわけで、かなりワクワクしながら読みました
それで、感想は、というと……。
〜感想〜
短編集になっていて、9つの物語が語られています。
「影女房」
「茂助に関わる談合」
「這いずり」
「千鳥足」
「帰ってきた十三郎」
「子預け」
「似たもの同士」
「稽古相手」
「宿場の武士」
それぞれ、なんともいえない趣のある語り口で、読み終わった時にはもやもやとした後味の悪さを感じたり、憐れに思ったり、悲しかったり……、と様々な感情を味わされました。
この中で、ホッとしたのは 「影女房」 だったのですが、自分を殺した相手を成敗して成仏させてください、とつきまとう女の幽霊と、幽霊につきまとわれた浪人との、微妙な男女の感情の機微、とでも言うんでしょうか……そんなのが伝わってきて切なくなりました。
最後のほうで浪人が強がって別れの台詞を告げるところがまた、悲しかったです
菊池 秀行さんの別の作品 「風の名はアムネジア」 とか、「ヴァンパイアハンターD」 の作品に漂う、独特の雰囲気……ちょうどよく言い表わせる言葉がでてこないのだけど、哀愁 という言葉が近いかな? そんな雰囲気が漂う作品だと思いました。
次は 『追跡者−幽剣抄2−』 です。
デイヴィッド エディングス,リー エディングス
早川書房 ¥ 714 (2009-03-05)
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129610位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
凍てつくような寒さのなか、長い峠にいくつもの砦を建設したトログ軍とマラヴィ国の騎馬兵をはじめとする連合軍は、押し寄せるヴラーの昆虫軍団を迎え撃った。
だが、斃しても斃しても、怖るべき数の昆虫たちが次々に襲いかかってくる。
一方神殿では、ヴラーの手先である巫女アルセヴァンによって乱心した姉神アラシアが、夢見人リラベスの殺害をくわだてるが…。(紹介文より)
〜感想〜
『高峰の決戦<ドラル国戦史7>』 で鷲鼻ソーガンとウサギがでっちあげた嘘の攻撃を信じた姉神アラシアは、意外なことにソーガンを信頼して自らも正気に戻り始めます。
鼻持ちならない態度はなくなり、神らしい威厳をかもし出すようになるのだけど、そんな時女の神官がアラシアに毒のある言葉を吹きこんで……。
アラシアは次の世代の神でもある ”夢見人” リラベスを殺そうとしてしまいます。
……が、その瞬間! 滅びたのはアラシア自身でした
”命” を奪うことが許されない神々がその掟を破ると、そのまま自らの破滅を招くことになってしまい、アラシアの姿は跡形もなく消滅
実は、女の神官はヴラーなるものが新たに生み出した人間そっくりの昆虫人で、相手を思い通りに操ることができる能力を持っていました。 そのことを知った妹神ゼラーナはソーガンたちにも教えるのだけど……。
何だか、ゼラーナたちもソーガンたちもアラシアが消滅したのは自業自得、と思うのか、あまり悲しんでいないのがちょっと可哀相でした
アラシアを失った神殿は大混乱の様相を帯びるのだけど、その騒ぎに乗じて ”金” を盗み出そうとするソーガンたちの姿に呆れるやら、感心するやら。 何だか複雑でした
今回は、最終巻ということもあってとうとうアーラの正体が明らかにされます。
そして、驚くことにアーラの夫のオマーゴもまた普通の人間ではなくて……大物は最後の最後に登場、なんでしょうかね?
最終的にはオマーゴ、長弓、アーラ、ウサギたちの手で決着がつけられることになるのだけど、少しあっけないような気もしました。 もう少し違う展開を期待していたのだけど、結局は神様が全てを終わらせちゃったのが物足りなくて残念でした〜。
さらに驚いたのは、最後の最後に神々が鷲鼻ソーガンやナラサン、長弓たち人間にしたこと。
時間を戻して、全てはなかったことにしちゃうのって……どうなんでしょ?
実際には長弓はヴラーなるものに殺された婚約者を取り戻し、幸せな結婚をしてめでたしめでたし、なんだけど、でも、何だかスッキリしない
鷲鼻ソーガンとナラサン司令官が育んだ友情もなかったことになっちゃうし……。
結局のところ、神様の視点で描かれた物語なので、こういう結末も仕方ないのかもしれませんね
デイヴィッド・エディングス,リー・エディングス
早川書房 ¥ 714 (2009-01-24)
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128411位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
“短い夏の国”で昆虫軍団を打ち破ったダレイネら兄弟神は、連合軍を率いて、ヴラーが狙う残されたただひとつの領土―姉神アラシアの“日の昇る国”へと向かった。
だが、眠りが近づくアラシアは乱心し、自らたてこもる神殿の安全しか頭にない。
そこで、トログ帝国軍とマラヴィ国の騎馬兵が長い峠に昆虫軍団を迎え撃つ砦を建設するあいだ、鷲鼻ソーガンが神殿でアラシアと取り巻きの神官たちを懐柔することになったが―。(紹介文より)
〜感想〜
『不死なる侵略者<ドラル国戦史6>』 で兄神ダレイネの領土からヴラーなるものの昆虫軍を撃退した兄弟姉妹神たち。
残るは、姉神アラシアの治める領土だけ。
とはいえ、今までの戦いにことごとく敗れたヴラーなるものの最後の攻撃は今まで以上に激しくなることは必至。気を引き締めて戦いに臨むことになるのだけど……。
今度守らなければいけない姉神アラシアは兄弟姉妹神たちからも人間たちからもすっかり嫌われてしまって、あまり士気は上がらないようで
そこで、鷲鼻ソーガンとナラサン司令官たちはある作戦をたてます。
アラシアを戦いから遠ざけようと。
そのやり方がなんとも愉快で、またもやニヤニヤしてしまいました
鷲鼻ソーガンって、本当に面白い人です
今回は、戦いのことよりもソーガン、ウサギがアラシアを遠ざけるために考え出すアレやコレやの作戦にワクワクさせられました(笑)
次はいよいよ戦いも大詰め。
最終巻 『新しき神々<ドラル国戦史8>』 です
デイヴィッド・エディングス,リー・エデイングス
早川書房 ¥ 714 (2008-11-07)
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108529位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
怖るべき不死なる侵略者―ヴラーの昆虫軍団は、刻一刻とダレイネの領土めざして近づいていた。
しかも、脅威はそれだけではなかった。
アザカン聖帝率いるアタザカン人も、ヴラーの手になる疫病をまき散らしながら迫っていたのだ!いっぽう、ようやくナラサン率いるトログ帝国軍が合流し、陣容を整えた防衛軍は、水晶谷に砦を建設し、敵を討つべく準備を整えていた。
だが、思いもかけぬ驚くべき力が介入したため…。(紹介文より)
〜感想〜
『水晶砦の攻防<ドラル国戦史5>』 でヴラーの昆虫軍団の狙いがダレイネの領土だということがわかり、迎え撃つために鷲鼻ローガンを始め仲間たちは行動を始めます。
そんな緊迫した状況の中でも、人間の仲間たちの会話は緊張感があまりなくて、思わずニヤリとさせられることが度々ありました
ただ、気になるのはダレイネをはじめとする古き神々の兄弟姉妹神たちに衰えが見え始めたこと。 そろそろ世代交代の時期が迫っていることから、時々頭に霞みがかかるようで(笑 )
かといって、次の世代の若き神々を目覚めさせるには危険が伴います。
結局、若き神々は ”夢見人” の状態のままで、ヴラーなるものの昆虫軍を戦わなければならないようです。
古き神々、夢見人(実は若き神々)、強大な力を持つ謎の人物(実はヴェルタンの領土の農夫オマーゴの妻アーラ)……皆が別人のふりをしていたり、騙されたふりをしていたり、と、読んでるうちにちょっと混乱しちゃうことも
オマケに皆が皆強大な力を持っているものだから、人としての常識(笑)ってどうだったっけ? とわからなくなることも(笑) でも、よく考えてみれば神様と直接話して冗談も言って、笑いあえる……恐れ多いですよね(笑)
なんて、そんなことを感じさせないのが気さくな古き神々、若き神々のいいところなんですけどね
なにはともあれ、今回も謎の人物アーラの手助けでヴラーの昆虫軍を撃退することができました。 アーラの正体を知っているのは長弓や、ゼラーナといった一部の人々なのだけど、この分だと近いうちに正体を明らかにする日は近そうです。
いったい、アーラとは何者なんでしょう?
気になります
次は 『高峰の決戦<ドラル国戦史7>』 です。
デイヴィッド・エディングス,リー・エディングス
早川書房 ¥ 714 (2008-09-05)
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115315位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
ヴェルタンの領地の峡谷において、昆虫人の大軍と、黄金に目のくらんだ教会軍はともに壊滅した。
だが勝利に酔いしれるまもなく、兄神ダレイネと姉神アラシアはみずからの領土に急ぎ帰った。
つぎにヴラーが狙うのは、ダレイネかアラシア、どちらかの領土しかなかったからだ。
鷲鼻ソーガン率いるマーグ国の海賊船団とマラヴィ国の騎馬兵はダレイネの領土へ、ナラサン率いるトログ帝国軍はアラシアの領土へと向かったが…。(紹介文より)
〜感想〜
『峡谷の昆虫人<ドラル国戦史4>』 で、ヴェルタンの領土に攻め込んできたヴラーなるものの昆虫軍を撃退した兄弟姉妹神たちだったのだけど、次に攻め込まれるのが兄神ダレイネの領土なのか姉神アラシアの領土なのかがわかりません。
そこで、マーグ国の海賊船団率いる鷲鼻ソーガンとトログ帝国軍は別行動をとることに。
ところが、姉神アラシアは神であることを鼻にかけ、人間に崇拝されるのが大好きで自分の国の取り巻きたちと同じように自分を崇拝するよう仲間たちにも求めます。
でも、そんなことを聞くようなやわな面々たちじゃありません
もちろんゼラーナ、ヴェルタン、ダレイネもそんなアラシアには呆れ顔。 とはいえ、いくら鼻つまみものでも家族に変わりはないことから、アラシアに道理を説こうとするのだけど……。
聞く耳を持たないアラシアは、自分を守るためにさらに呆れた行動をとります。
”夢見人” のリラベスが夢を見てヴラーなるものが次に狙うのはダレイネの領土だとわかるのだけど、兵士たちが自分の領土からいなくなることを怖れたアラシアは、そのことを隠そうとします。
でも、”夢見人” どうしはお互いにどんな夢を見たのかがわかることから、そんなアラシアの企みもばれてしまいます。さすがに兄弟姉妹神もそんなアラシアを庇う気にもなれず……。
……困った神様です
「神」 なんだから、怖いものなんてないだろう、と思ってしまうんですが、とにかく命を傷つけたり奪うことが禁忌とされているため、思い切ったことをできないんですよね。
力はあっても、好きなように使うことができない、というハンデがあるので、アラシアが脅えるのもわかるのだけど……。
逆に ”人間” の 鷲鼻ローガン、ナラサン司令官、長弓、ウサギ……といった仲間たちの逞しいこと! 彼らのふてぶてしさを見習えばいいのに、とちょっと思いました(笑)
そんなごたごたがありましたが、とりあえずヴラーなるものの次の狙い、ダレイネの領土を守るために戦いの準備をすることになります。 果たして今度は、どんな戦いぶりを見せてくれるのか?
ワクワクしながら、次の 『不死なる侵略者<ドラル国戦史6>』 へと続きます
デイヴィッド・エディングス,リー・エディングス
早川書房 ¥ 714 (2008-06-25)
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70567位
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あらすじ
峡谷をめざし攻めこんでくる怖るべき昆虫人の大軍に対して、猛将ナラサンひきいるトログ帝国軍は、堡塁を築き必死に防戦していた。
だがその時、敵船団襲撃のため出陣していたマーグ国の海賊トール船長から驚くべき知らせが届く。
峡谷に莫大な黄金があると思いこまされたアマー教会軍兵士なんと五十万人が、この地に押し寄せてくるというのだ!かたや昆虫人、かたや黄金に狂った教会軍…トログ帝国軍は絶体絶命の危機に―。(紹介文より)
〜感想〜
『神託の夢<ドラル国戦史3>』 に続く4作目です
ヴェルタンの領土でヴラーなるもの、の昆虫軍団と ”金” に目のくらんだトログ帝国の教会軍と二つの敵と戦うことになってしまった面々だったのだけど、鷲鼻船長ローガンの従兄弟たち、ナラセンの幼馴染の軍人仲間も合流して、緊迫した状況の中でも笑いが絶えないという、意外とのんびりした雰囲気になってます(笑)
長弓、ウサギ、ケセロも相変わらずの活躍。
”夢見人” の若い神々もこっそりと古き神々にばれないように色々と画策。
そして、前作で登場したヴェルタンの領土の住民達の中心人物オマーゴの妻アーラもまた不思議な行動を取り始め……。
いったい、アーラは何者なのか?
またまた、新たな謎が
全てを始めたのは古き神々の兄弟姉妹神だったのに、段々と事態は彼らの手を離れて動き出していってます(笑)
今回、ヴラーなるもの との戦いに決着をつけたのは意外な人物だったのだけど、どちらかというと古き神々のほうが好きなので、もっと活躍してほしいな、とちょっと残念でした。
古き神々は ”命” を自らの手で滅ぼすことが禁じられているので、やむを得ないのだけど何だか物足りなかったです。
でも、ちょっと面白かったことが……。
兄弟神はペットを持っていて、そのペットたちも戦いのお手伝い(笑)をしているのだけど、そのペットというのがダレイネのは小さい ”太陽” で、 ヴェルタンのは ”雷”
猫や犬のように甘える太陽や雷の様子が可愛らしかったです
次は 『水晶砦の攻防<ドラル国戦史5>』 です。
今度、ヴラーが狙うのは兄神ダレイネの領土か、それとも姉神アラシアの領土か?
どちらかわからないまま、二手に分かれる戦いに備えることになりそうです
デイヴィッド・エディングス,リー・エディングス
早川書房 ¥ 714 (2008-03-20)
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112328位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
ヴラーの巣は騒然としていた。
“日の没する国”めざして出陣した兵たちが全滅したとの知らせが届いたのだ!ヴラーはただちに“長い夏の国”に向けて進軍を命じた、人間の地をなんとしても手に入れるために。
一方、妹神ゼラーナの領土の防衛に成功したものの、夢見人アシャドの予言で、次に狙われているのが自分の領土であることを知った弟神ヴェルタンは、トログ帝国軍とマーグ国の海賊船団をひきいて南部へと向かったが―。(紹介文より)
〜感想〜
『蛇民の兵団<ドラル国戦史3>』 で、妹神ゼラーナが統治しているドラル国西部を守りきった神々たち。
ホッとしたのも束の間、ヴラーなるものの狙いが今度は弟神ヴェルタンが統治しているドラル国南部にむかったことが夢見人が見た夢によってわかります。
トログ帝国の軍司令官ナラサンとマーグ国の海賊団船長の鷲鼻たちはヴェルタンの領土を守るために新たに旅立つのだけど……。
段々と ”ヴラーなるもの” の正体が明らかにされてきてます。
どうやら、昆虫と同じ生態をもつ存在らしいのだけど、ただ、昆虫よりはるかに厄介な相手
ヴラーなるもの とは女王アリ、女王蜂のようなもので、ドラル国に攻めてきているのはすべて、女王の子供たち しかも、一度の産卵で何万匹もの兵士が誕生しちゃうんですから……。
さらには、戦いで敗れるたびに学んでいって弱点を補う新しいタイプの兵士に改良しちゃうというんだから、とんでもないです。
そんな強敵と戦うには、人間はちょっと頼りないような気もするんだけど、でも、流石は神々が選んだ人たちなだけあって、一味も二味も違う個性的な面々。
鷲鼻船長ローガン、軍司令官ナラセン、長弓を筆頭に、それぞれの領土から集まる戦士たちがまた面白い性格をしていて(笑)
やっぱり、エディングスの物語の魅力は多彩で個性的な登場人物だな、と思いました
今回の新たな登場人物は弟神ヴェルタンの治める領土の住民で農夫のオマーゴとその妻のアーラ。
ナラセンとローガンの協力のもと、ヴェルタンの土地の農民たちも戦いに参加することになるのだけど、その中心人物がオマーゴとアーラの二人。
これから頼りになる味方になりそうな感じです
なにはともあれ、ヴェルタンと兄弟神たち、ローガン、ナラセン、オマーゴたちは次の戦いに向けて着々と準備を整えていきます。 ところが、ヴラーなるもの とは別に何故かトログ帝国からも侵略軍
が現れます どうやら、ゼラーナたちが見せた報酬の ”金” を我が物にしようと、追放された兵士が連れてきたようなのだけど……。
どうやったら、二つの勢力の敵の攻撃を防ぎきることができるのか?
ここで、また”夢見人” が重要な役割を果たすことになります。 そして、4人の ”夢見人” たちは兄神ダレイネの封印をやすやすと破り、本来の自分たちの記憶を完全に取り戻してしまいます。
4人の”夢見人” たちは、今の4人の兄弟姉妹神たちと交代する役割の 若い神々でもありました。
予想外の展開に不安にかられるダレイネたちだったのだけど、そんな彼らの不安もまた見抜いている若い神々の”夢見人" たちは、当分の間はただの子供を装うことに。
ただ、実際に交代する時期が迫っていることもあって、今のダレイネたちは少しずつ記憶が曖昧になったり、戦争に集中できなくなったり、と、段々と衰えが見えてきていることも確かで……。
ヴラーなるもの たちとの戦いに支障をきたさないように、若い神々と協力者の人間達、がちょっと苦労することになりそうな感じです
そしてヴェルタンの領土を守る戦いは 次の 『峡谷の昆虫人<ドラル国戦史4>』 へと続きます
デイヴィッド エディングス,リー エディングス
早川書房 ¥ 714 (2007-12-14)
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93518位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
無限に襲いくるヴラーの家来たちに対抗すべく、ドラル国の兄弟姉妹神はそれぞれに、辺境から腕に覚えのある荒くれ者を呼び集めた。
西の妹神ゼラーナは金目当てのマーグの海賊団を、そして南の弟神ヴェルタンは落魄したトログ帝国軍を…そのころ静かな海岸の村ラタッシュの上流では、ヴラーの軍勢が峡谷を下って進軍しつつあった。
毒液を放つおびただしい数の異形の敵を、奇妙な混成軍は巧妙な布陣を敷いて迎え討つが…。(紹介文より)
〜感想〜
『四方を統べる神<ドラル国戦史1>』 に続く2作目です
世界の全てを我が物にしようと企む ”ヴラーなるもの” を滅ぼすために、ドラル国の兄弟姉妹神は ”金” を報酬に各地から腕に覚えのある者たちを集めました。
本作では、そうやって集められた協力者たちがそれぞれの人生を振り返りながら、ドラル国を守るための戦いの様子を語っています。
今回の語り手は女神ゼラーナが選んだマーグの海賊団の鍛冶屋ウサギ。
なんとも可愛い名前(笑)なのだけど、実際は抜け目なくて頭の切れる頼りがいのある人物。
ところが、当の本人はわざと鈍いふりをして周囲を欺いています。
なぜなら……そのほうが 楽 だから
そんな自分が気に入っていたウサギだったのだけど、船長の ”鷲鼻” がゼラーナの戦いに加わることを決めたときから、調子が狂ってきます。
同じくゼラーナに戦いに加わるよう口車に乗せられた(笑)、”長弓” に本当の姿を見抜かれてしまい、気が進まないながらも長弓とともに積極的に戦いに関わらざるを得なくなってしまいます。 そうして、長弓との友情も育まれていくのだけど、この長弓は過去に許婚をヴラーの家来に殺されてからすっかり人が変わってしまい孤独を好む孤高の人物。
そんなちょっと変わった長弓と不思議と気があうウサギ。
この二人がかわす軽口が面白かったです
そして、もう一つは司令官ナラサンが率いる兵士たち。
こちらは弟神ヴェルタンが選んだのだけど、同じく ”金” を報酬に集めたグループ。
ただ、トログ国民とマーグ国民は今ひとつ仲がよくなくて……
最初はどうなることかと思ったのだけど、意外と冷静な態度をとる”鷲鼻” にナラサンは、マーグ人に対する印象を修正します。 危惧したほどお互いの関係が悪くなることはなく、二つのグループは協力しながらヴラーなるものの家来たちとの戦いをくり広げていきます。
そして、ナラサンの部下のケセロが鷲鼻船長とナラサンとの間の連絡係をすることになるのだけど、ケセロもなかなかの切れ者で、長弓、ウサギとは気の合う仲間に
そうやって、違う国の者同士が心を許しあっていく様子が微笑ましいです
とにかくヴラーなるもの たちとの戦いをすることになった鷲鼻船長、ナラサンたち。
まずは、ゼラーナが統治するドラル国西部を守ることから始まります。
そして、忘れてはならないのが ”夢見人” の存在。
”命” を滅ぼすことを禁忌とされている神々と違って、”夢見人” は夢をみることによって現実の世界へ干渉することが許されていることから、大切な戦力として当てにされるのだけど、あまりにも強力な破壊力を目の当たりにしたゼラーナはすっかり怖気づいてしまい……。
どうやら ”夢見人” たちは神々が想像していたよりも力を持っているよう
これから先の戦いは、予断を許さない感じです
次は 『神託の夢<ドラル国戦史3>』 です。
デイヴィッド エディングス,リー エディングス
早川書房 ¥ 714 (2007-10-24)
Amazonランキング:
94935位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
兄弟姉妹神がそれぞれ四方を統べる異世界、ドラル国。
この地の平和は、悪しき存在“ヴラーなるもの”の侵略に脅かされていた。
やがて時は満ち、ドラルの西部を司る女神ゼラーナのもとに、生まれたばかりの赤ん坊が届けられた。
未来への警告を夢に見る子供たちの力を借りて、ヴラーの魔手からドラル国を守るための戦いが今、始まる―。(紹介文より)
前置き
大好きなエディングスの新シリーズが始まったのは知っていましたが、全巻が揃うまでは…と我慢してました 今年の3月に完結巻が出たので、一気に読むことに
今度のシリーズの主人公はなんと、神々
とはいえ、強大な力を持っていることを別にすれば、普通の人間と変わらない様子なので気軽に読んでいくことができました
全8巻シリーズの本作。 最後にはどんな結末が待っているのか? 楽しみです
〜感想〜
まずは、世界の始まりの説明を。
世界は神々が想像したことになっているのだけど、その神々にも創造の仕事はきつく疲れ果てていたそうです。(笑) そこで、若き神々が年長の神々と交代して創造の仕事を引き継ぎ、年長の神々は休息の眠りにつくことに。 そして、今度は若き神々が疲れた頃に年長の神々が目覚めて仕事を交代する、ということになったとのこと。
そうやって、世界は続いていくことになったのだけど、唯一眠りにつかなかった神が一人。その神はヴラーといい、世界の全てを手中に治めたいとの野望を抱き、他の神々を滅ぼそうとたくらみ始めます。そうして、自らの民を完璧な生き物として創りあげるために改良を繰り返し、着々と準備を進めることに。
そんな時、一人の預言者がヴラーの企みを阻止できるのは、”夢見人” と呼ばれる特別な存在だと言い出して、四人の兄弟姉妹神はその預言者の言葉が真実だと確信します。 同時のその”夢見人” の存在は全世界を一変させることに気づき深く懊悩するのだけど……。
そして、現在。
ドラル国を治めている四人の兄弟姉妹神がヴラーの企みを阻止するために行動を起こすことになります。兄弟姉妹神はドラル国の東西南北をそれぞれが統治していて、東は姉神のアラシア、西は妹神のゼラーナ、南は弟神のヴェルタン、そして北は兄神のダレイネが治めています。
ヴラーの企みを阻止するために最初に行動を起こしたのは兄弟姉妹神の長兄ダレイネ。
彼はある日、妹神ゼラーナの元へ女の赤ちゃんを連れてきて育てるように言いつけるます。その赤ちゃんは予言されていた ”夢見人”。
驚くゼラーナにヴラーの迫りくる侵略に対抗するために備えなければいけないと諭されて……。 人間がそれほど好きではなかったゼラーナも、赤ちゃんの愛らしさにたちまちメロメロに そうしてゼラーナは赤ちゃんをエレリアと名づけ育てることに。
さらに兄神のダレイネは弟神のヴェルタンには男の赤ん坊、 妹神アラシアには女の赤ん坊を託し、自らもまた男の赤ん坊を育てることにしたのです。
すくすくと育って赤ん坊たちに愛情を抱かずにはいられなくなったそれぞれの神々だったのだけど、実はこの”夢見人”の赤ん坊たちは次に交代する神々でもありました
通常なら現在の神々と次の神々が会う事はありません。 同時に二つの存在が居合わせるのは危険なことでもあったのだけど、ヴラーの脅威に立ち向かうためにはそんなことを言ってられない、ダレイネはと思い切った手段にでたようで ……大体不敵なダレイネが素敵でした
そうして、ダレイネが立てた計画のおかげで、それぞれの子供たちとゼラーナを始めとする今の神々たちは深い愛情で結ばれることに。 とはいえ、子供たち自身が自分たちの正体を自覚することがないように慎重にダレイネは記憶を消しています。
実際に交代する時期になったら、自然に記憶が戻るように操作しているということなのだけど、子供たちが成長するに従ってそんな手段にもほころびが見えるようになってしまい……。
どうやら、事は簡単にはいかないような様相になってきています
そんな状況の中でも、ヴラーに対する備えを怠るわけにはいきません。
”夢見人” として夢を見始めた子供たちとともに、ゼラーナ、ヴェルタン、ダレイネ、アラシアの四人の神々は戦闘準備を始めるのだけど……。
この四人の兄弟姉妹神は仲がよくて、会話を読んでいると思わず笑っちゃったりすることもあってかなり親しみやすい(笑)神々です
実際は神々の民が戦うことになるんですが、そのために協力するよう選んだ人間達がこれまた個性があって魅力的。
ゼラーナが選んだ ”長弓” と呼ばれる老熊族の若者は弓は絶対外さないという凄腕で、しかも頭も切れる。 彼にはヴラーの民に結婚式当日に花嫁を殺された過去があって、とにかくヴラーとその民を憎んでいます。 今回ゼラーナに協力する気になったのもそんな理由があったから。
そんな長弓に<ベルガリアード物語> のヘターを思い出しました(笑)
時々今までの作品の登場人物を連想させられることがあって、何だか嬉しかったです
次は 『蛇民の兵団<ドラル国戦史2>』 です。
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
反物屋の主が集金帰りに襲われて、三十両奪われた。その辻強盗は逃げる途中、船頭を刺殺していた。荒金菊之助と妻・志津は、従兄弟の臨時廻り同心横山秀蔵から頼まれ、殺された船頭の年端も行かない娘を預かる。だが、一向に埒が明かない下手人捜しに、菊之助は助として事件を追う。(紹介文より)
〜感想〜
『江戸橋慕情<研ぎ師人情始末9>』 に続く10作目です
思いがけず、殺された船頭の幼い娘を親戚が引き取りにくるまで預かることになった菊之介とお志津ですが、可愛らしい娘にすっかりめろめろ(笑) そろそろ二人に子供がいてもいいくらいなので、いい経験にはなったようです
ただ、やはり情が移ると別れは辛いものになります。
最後のほうでの別れの場面では、ちょっともらい泣きしそうになりました
今回は、菊之介の住んでいる部屋の前の住人を訪ねて若い男が現れるのだけど、この若い男にはある事情がありました。 少年の頃に母親を亡くした辛さから父親を責め、ノミで襲い掛かって傷つけて逃げ出したという過去を持っていたのです。 そして、今、自分も所帯をもつことになったことで、自分のしでかしたことに決着をつけようと、以前住んでいた部屋を訪ねてきたのだけど、そこにいたのは父親ではなく菊之介で……。
そんな事情を聞いた菊之介は若い男に協力して父親を探すことに。
自分のおかした罪を悔やみ続けた男が父親と和解する場面にまたもやもらい泣きしそうに なんと言ってもタイトルが ”人情始末” ですから、思わずもらい泣きしそうな場面がしょっちゅうあるんですよね 単に年をとって涙もろくなっただけ、というのもありますけど(笑)
いずれにしても、菊之介とお志津の人情味あふれるやりとりにはいつも温かい気持ちにさせられます それがこのシリーズのいいところなんでしょうね
次の 『濡れぎぬ<研ぎ師人情始末11>』 (H22.7.3 UPしました♪) はあいにく図書館の順番待ちなので、また時間をおいてから感想を載せさせていただきますね