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ヴァンパイア・キス(2)恋する棺桶/エレン・シュライバー
エレン・シュライバー
メディアファクトリー
¥ 1,050
(2009-09-16)
Amazonランキング: 162072位

JUGEMテーマ:読書


★★★☆(3.5/5)

あらすじ

16歳のレイヴンは、まるでヴァンパイアみたいなアレクサンダーと恋に落ちた。
でも、彼が突然姿を消した!なぜ?レイヴンはバスに飛び乗って、彼を探す旅に出る。(紹介文より)

〜感想〜

『ヴァンパイア・キス(1)転校生は吸血鬼』で、運命の恋人アレクサンダーに出会ったレイヴンだったのだけど、彼が本当のヴァンパイアだったことがわかり、アレクサンダーは 「愛しているから」 と書いた手紙を残して姿を消しました。 すっかり打ちのめされるレイヴンだったのだけど、親友のベッキーが何気なく言った一言で元気を取り戻します。

”恋する棺桶” というヴァンパイア映画(たぶん、実際の映画ではなくて架空の作品)をレイヴンとベッキーの二人で観ていた時に、あまりにも自分とアレクサンダーの関係に似すぎていて最後まで観続けることができなくて途中で止めてしまったのだけど、最後まで観たかったベッキーが、その後の展開がどうなるのかを知りたがります。

レイヴンは渋々「彼を捜しに行くの」 と教えると、自分も同じ事をすると言って、レイヴンも同じだよね!と断言。
そのベッキーの言葉を聞いて 「そうだよ!」 と気づいた(遅い )レイヴンは一転、元気になってレイヴンを探しに行こうと決意します。

まずは手がかりをつかむために、アレクサンダーの執事ジェームソンとつき合っていたルビーのもとへ。 するとジェームソンもやはりルビーとのデートをすっぽかして姿を消していたことがわかるのだけど、その時ルビーのもとへジェームソンからお詫びと許しをこう花束が届けられます。
そこで、すかさずレイヴンは配達してきた花屋を調べ、さらにもう一度アレクサンダーの屋敷の中に入り込んで家捜し(笑)をします。

すると 「彼がやってくる!」 と警告が書かれている手紙を発見。
アレクサンダーの行き先の見当をつけたレイヴンは彼のもとへと向かいます。 
幸いにもその場所にはレイヴンの叔母がいる町で、アレクサンダーを探すまで叔母の家に泊まることに。 そうして ”ヴァンパイア” に関係がありそうな場所を探すレイヴンだったのだけど、”棺桶クラブ”という店でアレクサンダーを知っているという青年と出会います。

彼はジャガーと名乗り、何かと思わせぶりな態度をとるのだけど、そのうちレイヴンはジャガーもアレクサンダーと同じヴァンパイアだということに気づきます。 さらには、ジャガーはアレクサンダーに恨みを持っていることがわかり……

レイヴンはアレクサンダーを危険にさらさないため急遽、町へ戻るのだけど、ジャガーはレイヴンを追ってきてしまいます。
そうして、レイヴンにつきまとい彼女をヴァンパイアにしようとして……絶体絶命の危機に陥るレイヴンだったのだけど、その時、愛しの(笑)アレクサンダーが現れます(お約束ですね 

アレクサンダーのおかげでジャガーの魔の手から逃れられたレイヴンだったのだけど、アレクサンダーに恨みを持つジャガーは執念深くレイヴンをつけねらいます。
そんなレイヴンを守るためアレクサンダーは彼女から離れることを諦め、自分の本当の気持ちに従うことに。

もともとレイヴンから離れたくなかったアレクサンダーなので、ジャガーが現れたのは歓迎できないものの、ある意味レイヴンのもとへ戻る理由を与えてくれたことになるのかも

で、このあとはアレクサンダーとジャガーのレイヴンの争奪戦(笑)が始まるわけですが、そもそも何故ジャガーはアレクサンダーを恨んでいるのか?
実はアレクサンダーには許婚がいました
その許婚がジャガーの双子の妹のルナだったのだけど、ルナはなんと人間として生まれてきて……。そこで、両親はアレクサンダーに聖なる墓地で儀式をして、ルナをヴァンパイアに変えてもらうことにしていたのだけど、でもそれは親同士が決めた事。
アレクサンダーは本当に一緒にいたいと思う人と巡り会いたい、と婚約を解消。

そのことをジャガーが恨みに思い、今復讐のために彼の前に現れたというわけです。
そして、アレクサンダーにとって何よりも辛いことはレイヴンを奪われること。 執拗にレイヴンを狙うジャガーを退けるために、レイヴンが立てた計画は……。

ここでタイトルの ”恋する棺桶” が意味を持ってきます。
この映画の内容はまさしく今のアレクサンダーとレイヴンの状態を同じもので、映画の中ではヒロインを邪悪なヴァンパイアから守るために、彼らの目の前でヒーローが彼女をヴァンパイアにする、というもの。
でも、実はそれは見せかけにすぎずに、実際はヒロインは人間のまま。
レイヴンはジャガーにも、映画と同じようにして騙せばいいと思いつきます。
そうして、レイヴンとアレクサンダーはまんまとジャガーを騙してとりあえず一安心……だったのだけど、その後、双子の妹のルナまで姿を現して
あろうことか、ルナはレイヴンの宿敵トレヴァーをヴァンパイアにしようと……

一難さって、また一難
ルナがどんな騒ぎを巻き起こすかは、次の 『ヴァンパイア・キス(3)ライバルはルーマニアから』 で。


 

| パラノーマル | 21:52 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
ヴァンパイア・キス(1)転校生は吸血鬼/エレン・シュライバー
エレン・シュライバー
メディアファクトリー
¥ 1,050
(2009-06-17)
Amazonランキング: 110205位

JUGEMテーマ:読書

★★★☆(4/5)

あらすじ

シャイでクールな彼の正体は、まさか!?16歳のレイヴンの夢は、ヴァンパイアになること。
いなか町では変わった子って思われてるけど、気にしない!ある日、幽霊屋敷に謎の少年が引っ越してきて…。(紹介文より)

〜感想〜

物心ついたときからヴァンパイアにあこがれていたレイヴン・マディソン。
16歳になった今もそれは変わらず、全身黒づくめに口紅も黒というゴシックファッションに身を包み、高校の中だけでなくダルズヴィルの町でも周囲からは浮いた存在。
元ヒッピーだった両親も今ではすっかり常識人に変わり、自分の娘レイヴンの趣味には戸惑うばかりで……。

家族の中でも浮いていることを知っているレイヴンは寂しい思いをしているのだけど、それでもヴァンパイア大好きな気持ちは変わらず、変人といわれようが、ばけものといわれようが我が道をいく姿勢は変わりません。

その姿は小気味いいほど

実際、ファッションとメイクはとんでもないけれど、レイヴンは可愛い顔をしていて、普通のメイクをしていれば彼女にぼ〜っとなる男の子もいて……。町の大地主の息子のトレヴァーは普段から何かとレイヴンにちょっかいをかけていたのだけど、ハロウィンの夜普通のメイクをして黒以外の服を着たレイヴンをみたときから、前以上にちょっかいをかけてくるようになります。

好きな女の子には意地悪をしたくなる、というやつらしくとにかくしつこい!
そんなトレヴァーにうんざりしているレイヴンだったのだけど、ダルズヴィルの町にちょっとした事件が起こります。
といっても、今まで空き家だったゴシック調のの屋敷に新しい住人が越してきたというありふれた出来事だったのだけど、ただ、普通の違っていたのは新しい住人が ”吸血鬼”のようだということ

そんな噂を聞いてレイヴンが黙っていられるはずもなく、どうしても本当のことを確かめずにいられなかったレイヴンは屋敷に忍び込むという手段に

……大胆ですね

忍び込んだレイヴンは屋敷の様子を探ってヴァンパイアらしい証拠を見つけようとするのだけど、その時屋敷の執事が戻ってきます。とっさに隠れて執事には見つからなかったレイヴンだったのだけど、ふ、と後ろに人の気配を感じます。振り返るとそこには屋敷に住む17歳の息子がたっていて……。

彼はレイヴンに無言のまま手を差し出し、その手には依然ハロウィンの時にレイヴンが執事に渡した指輪が。 その瞬間レイヴンは自分がずっと待ち望んでいた時がきたのだと気づきます。

「ほかのだれとも違うたった一人、自分とそっくりな誰かにめぐりあう」

その時なのだと。
でも、次の瞬間我に返ったレイヴンはその場を逃げ出してしまいます。
理由はともかく、不法侵入ですから

次の日、当の相手アレクサンダーの方からレイヴンに招待状が送られてきます。 
屋敷でディナーを一緒にすることになったレイヴンは期待する気持ちを抑えられません。
そうして、やっと面と向かって会ったアレクサンダーはやはり、想像していた通りすべてがレイヴンにぴったりくる人物で……。

アレクサンダーにとってもレイヴンは待ち続けていた理想の女の子で、お互いに夢中 になってしまいます。幸せいっぱいのレイヴンだったのだけど、そんな彼女の様子が気に入らないトレヴァーがアレクサンダーとの仲を割こうと密かに企みます。

そしてダンスパーティの夜、トレヴァーはアレクサンダーを傷つける言葉を投げかけ、その言葉によってアレクサンダーはレイヴンの彼に対する気持ちを信じなくなってしまいます。
せっかく出会ったただ一人の人を失ってしまったレイヴンは何とか、彼の許しを得ようとするのだけどアレクサンダーの心の傷は深くて……。
アレクサンダーをヴァンパイアだと思いこみ、彼の本当の姿を見ずにレイヴンが作り上げたイメージに恋をしたのだと思いこんだアレクサンダーは、そんな彼女に失望して会おうとはしません。

悲嘆にくれるレイヴンだったのだけど、そんな彼女を慰めて支える家族たちのおかげで、なんとか前向きに考えられるようになっていくのだけど、そんな時トレヴァーの親友だったはずのマットが声をかけてきて……。

ダンスパーティの夜のトレヴァーの卑怯な振る舞いにとうとう愛想をつかせたマットはレイヴンに励ましの言葉をかけてくれます。
そんなマットのおかげでレイヴンは少し元気を取り戻します。
その夜、ベッキーが突然訊ねてきて、今すぐ一緒にきて欲しいと言い出して、気が進まないながらも出かけたレイヴンを待っていたのは……。

アレクサンダーの屋敷での仮装パーティ
マットをはじめとするクラスメートたちや、アルバイト先の元上司、両親、といったたくさんの参加者たちをみて驚くレイヴン。
どうやら、マットと同じようにトレヴァーの卑劣さに気づいたクラスメートたちがレイヴンの味方になってくれたようです

喜ぶレイヴンだったのだけど、肝心のアレクサンダーの姿が見えないまま。 
そこへ執事のジェームソンが現れて屋敷の中へ招き入れてくれます。
そしてレイヴンはアレクサンダーの部屋へ向かい、静かにたたずむ彼に自分の気持ちを打ち明けて許しを乞うのだけど、アレクサンダーはとっくにレイヴンを許していました。

……結局のところは痴話喧嘩ってことになるんでしょうか

すっかり元通りのラブラブカップル(笑)に戻った二人だったのだけど、そこへ歓迎されざる客のトレヴァーが乗り込んできて……(やれやれ)。
でも、今度は皆がレイヴンとアレクサンダーの味方です。
誰もトレヴァーを相手にせず、彼はすごすごと退場することに。

やっとこれでめでたしめでたし、と思ったら最後の最後でとんでもない展開が待っていました。

アレクサンダーは普通の人間だということに落ち着いたはずが、実はやっぱりヴァンパイア で、そのことを知ったレイヴンは以前のように簡単に喜べなくなっています。
本当に、自分は家族や友人を捨ててヴァンパイアになることができるのか?
そんなふうに悩むのだけど、翌日アレクサンダーの屋敷を訪ねたレイヴンは、すでに彼が姿を消していることを知ります。

「愛しているから」  
そう書いた手紙だけを残して……

まさか、こうなるとは
このまま二人は別れてしまうのか?
気になるところですが、このあとは 次の 『ヴァンパイア・キス(2)恋する棺桶』 へ続きます。


 

| パラノーマル | 21:35 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
悪夢のエレベーター/木下 半太
木下 半太
幻冬舎
¥ 630
(2007-10)
Amazonランキング: 21499位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

後頭部の強烈な痛みで目を覚ますと、緊急停止したエレベーターに、ヤクザ、オカマ、自殺願望の女と閉じ込められていた。
浮気相手の部屋から出てきたばかりなのに大ピンチ!?しかも、三人には犯罪歴があることまで発覚。
精神的に追い詰められた密室で、ついに事件が起こる。
意外な黒幕は誰だ?(紹介文より)

前置き

映画化もされたことのある本作ですが、こちらは未鑑賞です
なので、勝手に若者向けのコメディっぽい内容なのかな、と想像したたんですが……全然違いました

〜感想〜

目が覚めたら、エレベーターの中に閉じこめられていた……悪夢ですね

自分のほかは、くたびれた様子の中年男性、ぬいぐるみを抱えたゴスロリファッションの若い女の子、どこかバッタを連想させる青年の3人がいて……。非常ボタンを押しても応答なし、大声で助けを呼んでも答えてくれる人はありません。

本作はエレベーターに閉じこめられた4人のうちの3人の視点から描かれた”悪夢”が語られる形式になっているのだけど、最初に語っているのは気絶していた小川という青年。

目覚めた彼は、とにかくエレベーターから脱出しようと必死になります。
というのも、エレベーターに閉じこめられる直前、妊娠している彼の妻から陣痛が始まったとの連絡を受けていたからなのだけど、あせる小川をよそに他の3人はのんびりした様子で……。
助けを呼ぶよう3人を説得する小川だったのだけど、やっぱり今一つ緊張感がない。
妻の陣痛が始まって戻るところだったと言って初めて、3人は協力して大声で助けを呼んでくれるのだけど、やはり助けは現れません。

いつ脱出できるかわからないまま、とりあえず、自己紹介しようと言い出したのは中年の男性。 
そうして彼は 「富永 悦太郎」 と名乗り、聞かれもしないのに趣味までぺらぺらしゃべり始めます。
どうもおせっかいやきの性格のようで、一人で仕切って他の人たちにも自己紹介をさせます。

バッタを想像させる青年は 「牧原 静夫」、若い女の子は 「カオル」 とだけ名乗ります。
そうして、エレベーターに閉じこめられたもの同士、打ち解け……ることはできない ながらも、お互いのことを少しずつ話すことになるのだけど、
”そもそもなぜ、このエレベーターに乗ることになったのか?”
が話題になって、カオルがいじめが原因で死ぬためにきた、と言い出したことから事態は妙〜な方向へと進んでいってしまいます。

「あたしの気持ちなんかわからない」

と言うカオルの言葉に牧原が 「わかります」 といやに自信満々に言い切ります。
なぜなら自分は ”超能力者” だからと言いだして……
そうして実際に、色々なことを当てて見せます。
すっかり皆は信じるのだけど、そのままの話の流れで富永が実は ”前科者” ということまでがわかります 途端に、引いてしまう3人だったのだけどど、突然、エレベーターの電気が消えて……。

パニック陥る4人だったのだけど、いち早く富永が力ずくで皆を落ち着かせます。
そうして、暗闇に対する恐怖を少しでも和らげようとお互いの 「秘密」 を打ち明けっこ しよう言い出します。
小川は嫌がるのだけど、そんな彼にはお構いなしに他の3人は秘密を打ち明け始まるのだけど、その”秘密”とは……

カオルは放火、富永は暴行、牧原は幼女誘拐、とそれぞれとんでもないことをしでかしていて……

小川は自分の秘密は打ち明けないですまそうとするのだけど、3人はどうしても話すように圧力をかけてきます。
なにしろ、とんでもない秘密を持っている3人ですから、ひょっとしたら小川を傷つけることも平気でするかもしれない、そんな恐怖もあって小川は自分が不倫をしていることを打ち明けざるを得なくなってしまいます。

さらには、このまま助けがこなければ死んでしまうという可能性にも気づかされて、小川が本当に愛しているのは妻だと言い残したほうがいい、とまですすめられてしまいます
小川がその気になったその時……なくしたと思っていた腕時計のアラームの音が。
さらには、エレベーターに乗る前に落としたと思っていた携帯も富永たちが持っていることがわかります。

いったい、これはどういうことなのか?
自分以外の3人はグルだったのか?
彼らの目的は何なのか!?

パニックに陥った小川は3人を問いつめるのだけど、その時富永が得体の知れない液体を含ませたハンカチを小川の顔に押し当てて……。

と、このあと語り手が牧原に変わり、富永、カオルたちの目的と正体が明らかにされていきます。 何となく、富永、牧原、カオルの3人が実はグルなんじゃないか、というのは読んでいると想像がつくのだけど、その後の展開がとんでもなかったです

あれよあれよ、と言う間に事態はだるま式に悪化していきます。
その様子はまさしくタイトル通りの ”悪夢” そのもの。

最後の最後で、うわ〜、怖(こわ)
と、思わず呟いてしまいました。
若者向けのコメディとは似ても似つかない 、怖い話でした




| みすてり | 19:51 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(6)−外科医当麻鉄彦(完)/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-04)
Amazonランキング: 4429位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

前人未到の脳死肝移植を成功させた当麻は、達成感に身を震わせた。
しかしそれは激しいバッシングの始まりでもあった。
院内の医師からの抗議、県警からの査問、肝移植研究会の除名勧告など予想外の出来事が起きる。
理解者だった島田院長も、近江大が医師派遣停止の通達をするや支え切れなくなる。
孤立を深めた当麻は、ついにある決断を下す―。(紹介文より)


〜感想〜

『孤高のメス(5)−外科医当麻鉄彦』 で、大川町長の脳死肝移植を成功させた当麻だったのだけど、極秘の手術を突き止めた新聞記者の上坂によって世間に公表されてしまいます。
近江大学の実川医師の生体肝移植でも大騒ぎだったのに、当麻が手がけたのはまだ日本では認められていない ”脳死肝移植”。

マスコミのバッシングはもちろんのこと、警察まで乗り出す事態に
それでも当麻はいつものごとく患者第一の姿勢を崩さず、マスコミのバッシングにも態度を変えません。
ところが、近江大学から派遣されている医師たちの妬みが一気に表面化し、島田院長は 「当麻をとるか、自分たちを取るか」 の二者択一を迫られます。
当麻の理解者で後押しをしてくれていた島田院長もマスコミの激しいバッシングと、近江大から医師を派遣するのをやめる、という脅しにとうとう当麻を庇いきれなくなってしまいます。

そこで、島田院長はとりあえず謝罪文を公表するように言うのだけど、当麻にしてみれば何故謝罪をしなければならないのか、とても納得のできるものではありません。

さらには、今後の甦生記念病院での医師としての治療行為にも制限がかけられる事態にもなりかねない。 それだけは当麻にはどうしても受け入れることができません。
当麻は甦生記念病院を去ることを決意します。

慌てたのは島田院長
「なにも、そこまで……」 と思っていたようなのだけど当麻の決意はかたく、引き止める島田院長に感謝しながらも、すでに当麻は去ることを決めていました。
最後には島田院長も当麻の決定を受け入れます。
そして当麻は以前から誘われていた今は亡き母峰子の知人だった台湾人の王(ワン)が設立した”高雄医院”で働くことにするのだけど……。

当麻のように素晴らしい医師を手放すなんて島田院長はバカなことをしたものです
近江大から派遣されてくる医師たちはプライドばかりが高くて、腕は二流という人物ばかり。
病院を経営する立場からすると頼らざるを得ない、というのは気の毒だとは思うのだけど、後々のことを考えると島田院長は判断を誤ったな、と思わずにはいられませんでした。

当麻が甦生記念病院を辞めることをしった病院スタッフたちの動揺は激しく、彼がやめるなら自分も……、というスタッフが何人か出てきます。
当麻の部下として勤務してきた矢野医師も彼と一緒に台湾へ行くことを決意。
……甦生記念病院が傾いていくのが目に見えるようで辛かったです
島田院長は良心的で尊敬できる人物なのに、これから先かなり苦労することになるような気がします。

一方、当麻は台湾へ行くことを決めたことを翔子に伝えていました。
肝移植手術の時に、”とりあえず” ということで婚約はしたものの、当麻にとっては嘘の婚約のようで納得できなかったらしく、一度解消して新たに自分の方から気持ちが決まったら申し込みたい、と正直な気持ちを話し、同時に今ままで話さなかった、亡くなった兄のこと、かつての婚約者武子のことを翔子に打ち明けます。

そんな当麻の話を聞いて翔子は感極まります。
武子のことを忘れない当麻でいてほしい、と。
……できた女性ですね

そうしてお互いの気持ちを確かめあい、当麻は翔子を残し台湾へと旅立ちます。
果たして台湾で当麻を待ち受けているものは?

『孤高のメス−神の手にはあらず(1)』 (全4巻) へと続きます。

ただ、感想はすぐには載せずしばらくはまた違う作品のを載せていく予定です
※載せました♪(H22年4月6日(火))


 
| さすぺんす | 21:33 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(5)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-03)
Amazonランキング: 8042位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

卜部大造が急死した。
すぐに後任の教授選が始まり実川も名乗りを上げる。
折しも、実川のもとに脳死肝移植の依頼が飛び込んだ。
成功すれば間違いなく教授の座を射止められるが、失敗すれば万事休すだ。
一方、当麻の身辺も慌ただしくなる。
翔子の父大川町長は肝硬変が進んで危篤に陥った。
当麻は肝臓移植が救命し得る最後の手段だと告げるが…。(紹介文より)

〜感想〜

『孤高のメス(4)−外科医当麻鉄彦』 で、実川の上司にあたる卜部教授と思いがけず少しだけ心を通わせた実川ですが、その後卜部教授が急死。

次の教授が誰になるのか?
近江大では熱い教授選が始まることになります。

一方、当麻のほうはというと……。
甦生記念病院に新たにホスピス病棟が誕生。
島田院長の熱意によって実現した病棟ですが、完成記念セレモニーでの演説によって周囲の人々もホスピス病棟が果たす役割に期待が膨らみます。

前作で当麻が手術をした蘭医師もこちらのホスピスで過ごすことになるのだけど、ホスピスの看護婦に一目ぼれしてしまいます。
そうなると、少しでも長生きしたいと思うのはやはり人情というもので……。
当麻に肝移植ができないものか、と訊ねるようになるのだけど、残念ながら願いむなしく亡くなってしまいます。

死後に蘭の妻から当麻は彼が書いた手紙を受け取るんですが、その手紙の内容に思わず泣きそうになりました。
人の死というものはやはりどうしようもなく悲しいものだと改めて思いました。

母親の峰子の死に続いて世代を超えて友人になった蘭医師の死。
当麻には辛いことが続いてしまいましたが、追い討ちをかけるかのように順調に交際を続けている翔子の父親が危篤状態に
当麻は肝移植でなら助けることができると言うのだけど、実川医師の生体肝移植の記憶はまだ新しく、島田院長はGOサインを出すことができません。
失敗すれば非難されることは必至。

しかも、今回当麻がやろうとしているのは ”脳死肝移植”
この時点ではまだ脳死は ”死” と法律では認められておらず、場合にはよっては ”殺人” の罪に問われることもありえます。
もちろん、世間に与える影響も計り知れません。

とはいえ、父親が助かるならどんなことをしても助けたい。
娘である翔子がそう思うのも無理はないことで……当麻に脳死肝移植を依頼します。
折りしも甦生記念病院の看護婦、浪子の恩師が事故で脳死状態になった息子をドナーとすることに同意して、他の人たちを助けてほしいと申し出てきて……。

最初は近江大学病院の実川に話を持っていったのだけど、実川は今ひとつ乗り気ではない様子。
そこで、浪子は当麻に恩師を紹介して彼女の望みを伝えます。
恩師は当麻の人柄に感銘をうけて、できれば彼に肝移植をお願いしたいと願います。

その後、実川医師が正式に断ったことから、当真は翔子の父親の肝移植をすることを決意。
当真の淡々としながらも、”患者を助けたい” という思いを受け入れた島田院長は全面的に彼のバックアップをすることに。
ただ、実川医師の時のような騒ぎは避けようと、極秘に手術をすることにします。
さらには、万が一もれた時のために翔子と当麻に”仮”の婚約までせてしまいます
フィアンセの父親を見殺しにできなかった。 と、理由があればまだマシ、という考えだったらしいのだけど、当麻はあまり気が進まなかったようです

とはいえ、手術をすることはもはや決定されました。
あとは実行あるのみ  手術が開始されます。

ところが、極秘だったはずの手術を実川医師の時にも関わった新聞記者が嗅ぎつけて……。
手術は成功したものの、マスコミに知られたことで大騒ぎになってしまいます。
果たして当麻の運命は?

次の 『孤高のメス(6)−外科医当麻鉄彦』 へ続きます。
ちなみに、”外科医当麻鉄彦” 編の完結巻になります。


| さすぺんす | 23:09 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(4)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-03)
Amazonランキング: 10635位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

実川は一躍マスコミの寵児となり、母親と一緒に映る幼児の元気な姿が新聞を賑わした。
だが喜びも束の間、容態が悪化していく。
この手術の成功に定年後のポストがかかった卜部教授は、最悪の結果となった場合、当麻の手術に原因があったと発表しろと実川に言い渡す。
折しも幼児の心臓が停止した。
果たして、この小さな命を救うことはできるのか(紹介文より)

〜感想〜


『孤高のメス(3)−外科医当麻鉄彦』 で近江大の実川の依頼により生体肝移植のドナーの手術を終えた当麻は、母親の危篤の報を受けて熊本へと急行するのだけど、たどり着いたときすでに母親は還らぬ人に。 一方、その頃無事に移植を終えた実川は周囲から惜しみない賞賛を浴びていて……。
実川との状況の対比がますます当麻の悲しみを強調しているようで、何とも心が痛みました

そのまま熊本に残って、峰子の葬儀をする当麻だったのだけど、葬儀のあと台湾人の王(ワン)文慶(ウエンチン)という人物が近づいてきます。
彼はかつて当麻の母峰子に助けられたという話をし始めて……。
そうして、話は王が現在建設中の病院のことへと移っていくのだけど、個人で建てるとは思えないほど規模の大きな病院だということがわかってきます。

峰子から当麻のことを聞いていた王は当麻に自分の病院で働かないか、と誘われるのだけど……。

とりあえず母親の葬儀を終えた当麻は湖西町へ戻り甦生記念病院での勤務に戻ります。
すると戻った当麻を前作で知り合った蘭(アララギ)医師が訪ねてくるのだけど、用件はなんともやりきれないものでした。

蘭自身が大腸癌になってしまったのです。検査の結果、すでに肝臓に転移していることがわかり、残念ながら完治は不可能で……
自らも医師の蘭はせめて一年持たせたいと、淡々と自分の望みを当麻に告げます。
……尊敬できる医師なのに、こんなことになるなんて、と悔しい思いを押さえられませんでした。

一方、生体感移植を成功させた実川にも暗雲が立ちこめ始めます。
患者の容態が少しずつ悪化の途をたどりはじめて……。
一転マスコミは実川のバッシングにまわります。
実川はなんとか患者を助けようとするのだけど、拒絶反応が起きてしまい手のほどこしようがなくなってしまいます。

上司の卜部は、母親の危篤のことで当麻が動揺し手術に不手際があったことにしろ、と言い出す始末。 さすがに実川はそんな恥知らずなことはしなかったけれど、卜部の態度には呆れるばかりでした。

ほとんどすべての責任を負わされた状態になった実川ですが、見苦しくいいわけをするわけでなく淡々と毎日を過ごしていく姿に潔さを感じました。
ただ、実川はこれからが踏ん張りどころです。 気の毒だけれど、しばらくは周囲から責められる状態が続きそうです。

そして当麻は……。
蘭医師の手術は成功して、本人の望み通り一年〜は持つ見込みで、とりあえずは一安心というところなのだけど、野本の部下の渡瀬医師が甦生記念病院を辞めることになり、またもや外科医が不足状態に。

あ、ちなみに野本医師も 『孤高のメス(2)−外科医当麻鉄彦』 で辞表をだして去っています。
その後どうなったのかは不明です

当麻も実川も生体肝移植を手がけたことで、一躍有名になってしまいましたが、これから先の二人にどんな影響を及ぼすことになるのか……それがわかるにはもう少し待たなければならないようです。

次は 『孤高のメス(5)−外科医当麻鉄彦』です。


 

| さすぺんす | 21:22 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(3)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-03)
Amazonランキング: 68178位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

実川の上司である卜部教授は、頑として生体肝移植を認めなかった。 だが定年後のポストに不安を覚えていた卜部は、手術が成功すれば有名国立病院の院長に推挙するというある人物との裏取引により態度を一変させる。
かくして幼児の手術にゴーサインが出され、極秘に本邦初の生体肝移植が始まる。
当麻も駆けつけるが、そのとき母危篤の知らせが……(紹介分より)

〜感想〜

『孤高のメス(2)−外科医当麻鉄彦』 で母親が脳腫瘍だと診断された当麻は地元の病院での治療は、かつてフィアンセを為すすべもなく亡くした経験から受け入れることができず、自らの職場である甦生記念病院での治療を望みます。

いくら当麻が優秀な外科医とはいえ脳外科は畑違い……少し自信なげな当麻が新鮮でした。 
やはり身内に対しては冷静なままでいるというのは難しいようです。
とりあえず、無事に母親の手術も終わり一息つけた当麻だったのだけど、肛門が専門のアララギ医院から紹介状をもった患者が送られてきて……。

今まで登場した主な医師たちはほとんどが間違っても命を預けたいとは思わないような、とんでもない人たちばかりでしたが、実川医師に続いて今回登場した蘭(アララギ)医師は当麻に似たところがあるような感じです

蘭医師が送ってきたのは大腸癌の疑いのある青年。
当麻の所見も同じで手術をすることになります。 蘭医師立ち会いのもと難しい手術をいつものように神業的なやり方で成功させるのだけど、そんな当麻の腕前を見て心の底から手放しで賞賛する蘭医師の姿が清々しかったです。

……やっぱり、医師というのはこういう人物でなくては!!
本シリーズの読みどころは、色々な病気の治療方法や手術方法が詳しく描かれているところですが、今回は肛門専門の医師ということで痔の治療方法が描かれていました。
どうしても恥ずかしさが先にたってしまう病気ではありますが、場合によっては大腸癌などの時もあるので、おかしいなと思ったら早めに治療に行ったほうがいいことがよくわかりました。 
蘭医師は当麻とも気があうようなので、これから先もつきあいが続きそうな気配がします

一方、のびのびになっていた実川医師の生体肝移植の問題が急展開を迎え、一転手術をする方向へと話が進んでいきます。
実川医師はかねてから打診していたように、当麻にドナーのほうの手術を受け持ってくれるよう依頼してきます。

もともと当麻が肝移植の技術を身につけたいと思ったのはフィアンセだった宮原武子を劇症肝炎で亡くしたことが理由でした。
この当麻のフィアンセの宮原武子が今一つ謎の人物だったんですが、当麻が彼女とどうやって知り合ったのか、どんなふうにお互いの気持ちを通わせるようになったのか、が少しずつ明らかにされています。
時代が少し前ということもあって、なんとも奥ゆかしい恋愛 が描かれているんですが、でも、当麻と武子がお互いを大切に想っている様子が伝わってきて、優しく温かな気持ちにさせられました。
当麻が10年たった今でも武子のことが忘れられないのもよくわかりました。

そんな過去があるだけに、当麻にとって肝移植手術はちょっと特別なものになっています。

とはいえ、少しずつ当麻の心が癒されていたことも確かなようで、前回お見合いをした大川翔子は当麻にとって少しずつ大切な存在になってきています。
武子の時と同じように奥ゆかしい恋愛の様子が微笑ましくて、暖かく見守りたいと思いました 当麻に想いを寄せている病院スタッフ京子や浪子には気の毒ですけどね

で、話は戻りますが(笑)近江大の卜部教授のゴーサインが出て、急遽生体肝移植をすることになり、当麻は実川教授の依頼通りドナーの肝臓摘出手術を受け持つことになります。

ただ、”肝移植”自体が日本ではほとんど成功例がないことから、極秘で行うことになるのだけど、実川をライバル視している長崎という医師が彼を陥れようとマスコミへ情報をリークしてしまいます。

そこから始まる大騒ぎ
はからずも当麻も巻き込まれることになるのだけど、とにかく自分のやるべきことをやるだけ、と相変わらずクールです

ところが、手術の前に母親峰子の容態が急変したという連絡が入ります。
心配でたまらなかったものの、ドナーの手術を止めるわけにはいかず、手術が終わり次第すぐ駆けつけることができるように、飛行機の手配をするよう病院のスタッフに頼み、気持ちを切り替えて手術に挑みます。

さすがの当麻も母親の身が心配で動揺を押さえきれず最悪の事態を迎えるのでは……、と心配だったんですが、そんな心配はあっさりと吹き飛ばしてくれました。
見事にドナーから肝臓の一部を摘出して、実川へ無事バトンタッチすることに成功します。
いつもの当麻なら実川の手術が終わるまで見守るのだけど、今回は実川の進めもあってドナーの手術が終わった時点で退出して母親の元へと急ぎます。

果たして当麻は母親の臨終に間に合うのか? 
次の 『孤高のメス(4)−外科医当麻鉄彦』 へ続きます。


| さすぺんす | 19:24 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(2)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-02)
Amazonランキング: 27888位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5) 

あらすじ

当麻の評判は日ごとに高まった。
そんな時、近江大の実川助教授から二歳の幼児の「肝臓移植」を手伝って欲しいと頼まれる。
一か八か、残された方法はそれだけだった。
快諾する当麻だが、抜け駆けは許さんとする他の外科医の妬み、手術の失敗を恐れる大学病院の保守的な壁にぶつかってしまう。
風前の灯となった生命を前に当麻達の苦闘が始まる。(紹介文より)


〜感想〜

 『孤高のメス(1)−外科医当麻鉄彦』 で、第二外科の野本の部下として勤務していた青木医師が十二指腸潰瘍の破裂で緊急に手術をすることになります。

青木も近江大学の医局の人間なので、内心当麻に師事したいと思っていても、そんな願いが叶うわけもなく、かなりのストレスがかかっていたようで……。
せめて野本が当麻の半分でも腕がよくて患者のことを思うような医師だったら良かったんですが、正直こんな人物を医師とは呼びたくない、といいたくなるような人物なので青木が倒れたのは無理もない、と思いました

結局すったもんだの末に青木は野本ではなく当麻に執刀してもらうことにするのだけど、野本はそんな青木の態度に腹を立てて、島田院長に代わりになる医師を近江大から送ってもらうよう頼みます。
そのまま青木は復帰させず大学に戻そうという魂胆なのだけど、彼の代わりにきた渡瀬という医師がこれまたハズレで……。

それでも、島田院長は渡瀬医師を気が進まないながらも受け入れざるを得ません。
そして回復した青木は近江大には戻りたがらず、なんとか甦生記念病院に残れないかと当麻に相談するのだけど、やはり大学とのしがらみで青木を残すことはできないと言われます。
そこで、当麻は自分がかつて学んだ関東医科大にいる恩師に青木を紹介することにするのだけど、あいにくと空きがなくとりあえず研修医という形で受け入れられます。
これで青木のことはひとまず安心。

とこrが渡瀬という新メンバーを迎えた外科は、そういうわけにもいかず……
野本と似たり寄ったりのいい加減な勤務態度にたちまち失望させられることになります。

そんな第二外科の医師とは大違いの当麻はいつものように淡々と自分のやるべきことを果たしていきます。
ある日病院のスタッフが事故で救急車で運びこまれるのだけど、患者の娘もまた看護婦で当麻の手術に立ち会いと申し出ます。
そして当麻の手術する姿を目の当たりにした患者の娘、浪子は甦生記念病院で働きたいと言い出して……。
当麻の手術は成功したものの、あまりにも怪我がひどすぎて残念ながら数日後に浪子の母親はなくなってしまうんですが、当麻のミスではないことはよくわかっています。

一番の理由はやもめになった父親の面倒を見ることなのだけど、当麻のそばで働きたい、という理由も少し入ってるんじゃないかな、と思います。
当麻に密かに思いを寄せる病院スタッフは何人かいますが、浪子もその一人になりそうな感じです

とにかく、いろんな患者さんが次から次へとやってきます。
それぞれの患者さんのことをすべて書くのは不可能ですが、そうやって当麻の元に訪れた患者さんたちの病状や、治療方法、手術の様子 が詳細に描かれているのが読みごたえがあってためになりました

今までのところ、当麻以外で尊敬できる医師はあまり出てきてはいませんでしたが、今回は近江大学病院の助教授を務める実川医師という人物が新たに登場しています。

この実川は野心的ではあるものの、外科医としての腕前は一流です。
患者に対してはビジネスライクな態度をとりますが、それは逆に自信の現れだと、患者さんには頼もしくうつるようで。
実際、当麻ほど患者さん第一ではないけれど、それでも十分信頼できる人物です。
そんな実川と当麻は初顔合わせをすることになるのだけど、実川は話題の人物の当麻とあって彼の医師としての並外れた才能に気づき、あっというまに同好の士として親しみを感じるようになります。

そうして実川は自分の抱いた疑問を当麻にぶつけます。
「なぜ、あなたほどの力量の持ち主が片田舎の民間の病院に引っ込んでいるのか?」 と。

その実川の問いに当麻は自分の胸のうちをあかします。
その話の途中で思いがけずかつて結婚を考えていた女性を劇症肝炎で亡くしたことも語られています。 飄々としてつかみ所のない当麻も恋愛をしたことがあるのか!! と、
ちょっと……いやかなり(笑)驚きました。

でも、そんな当麻の過去を知ったことで彼の医療に対する真摯な態度に納得するものがありました。兄とフィアンセという大切な人を二人も亡くした経験が今の外科医としての当麻を作ったんだな、と感慨深いものがありました。

そうして当麻と語り合った実川は、実は”生体肝移植”を考えていると打ち明け、実際に執刀する時には当麻にも手伝ってもらいたいと持ちかけます。
もちろん当麻が断るはずはありません。
その時には手伝うことを約束してその場をあとにします。

こんなふうに仕事ではかなり充実した毎日を過ごしている当麻ですが、私生活でも変化が訪れます。
甦生記念病院のある湖西町の大川町長が当麻の評判を聞いて自分の娘の婿にと思い立ったようで、島田院長のもとにお見合いの話をもってきます。
島田院長は当麻にそれとなく打診するのだけど、フィアンセを亡くしてすでに10年がたつものの、未だに彼女のことが心に残ってる当麻はそんな気持ちにはなかなかなれません。

でも、そんな当麻を島田院長は穏やかに説得。
当麻はとりあえず会ってみることにします。
そうして会った翔子は穏やかで清楚な女性で、澄んだ瞳でまっすぐ自分を見つめる彼女に当麻は心惹かれるものを感じて……。
どうやら、おめでたい成り行きになりそうな気配です

と、ほのぼのしたのもつかの間、突然当麻の叔母から彼の母親の峰子の様子がおかしいと連絡が入ります。 故郷の熊本にに飛んで帰った当麻だったのだけど、峰子を診断した医師から脳腫瘍だと告げられてしまいます
当麻は自分がそばで面倒を見ることができるように、峰子を甦生記念病院へ連れて戻るだけど……。

果たして峰子の治療は可能なのか? 
次の 『孤高のメス(3)−外科医当麻鉄彦』 へ続きます。

| さすぺんす | 18:38 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
孤高のメス(1)−外科医当麻鉄彦/大鐘 稔彦(おおがね なるひこ)
大鐘 稔彦
幻冬舎
¥ 600
(2007-02)
Amazonランキング: 6471位

JUGEMテーマ:読書

★★★☆(3.5/5)

あらすじ

当麻鉄彦は、大学病院を飛び出したアウトサイダーの医師。
国内外で腕を磨き一流の外科医となった彼は、琵琶湖のほとりの民間病院で難手術に挑み患者達の命を救っていく。
折しも、大量吐血して瀕死の状態となった「エホバの証人」の少女が担ぎ込まれる。
信条により両親は輸血を拒否。
一滴の輸血も許されない状況で、果たして手術は成功するのか。(紹介文より)

前置き

2月に開催された 【ゆうばり国際ファンタスティック映画祭】 の招待作品として上映された 堤 真一さん主演の 【孤高のメス】 は ”命の尊さ” がひしひしと伝わってくるとても素晴らしい作品でした。
そんなわけでどうしても原作を読んでみたくなり、手に取ってみたんですが……。
作者の 大鐘 稔彦(なるひこ)さん自身、医師でいらっしゃるということで手術に関する文章はかなりリアルで、まるでその場にいるかのように感じられました。

で、感想はというと……ちょっと微妙〜でした
なにが微妙〜かというのは、これから載せる感想で(笑)


〜感想〜

医師を目指していた兄が地方の病院の誤診により亡くなり、当麻は兄の志を引継いで医師になることを決意。 大学病院で研修を終えた当麻は将来の地域医療の充実を目指し、外科以外の分野にも対応できる医師を目指して研鑽をつんでいきます。

そして、先輩にあたる島田が院長をつとめる甦生記念病院を訪ねるのだけど、ちょうど外科医に欠員があったことから、当麻を迎える方向で話が進むのだけど、少し前に島田は普段から他の課にも医師を派遣してもらっている近江大学病院に外科医の派遣を依頼していました。

実際に紹介された医師の野本は人格的に尊敬できず、外科医としての腕も今ひとつだったことから島田は彼を断り、当麻を採用したいと思うのだけど、大学病院とのしがらみあって仕方なく野本医師も受け入れる事になります。

ただ、当麻のほうが外科医としての腕は段違いに上なことから、第一外科、第二外科、とわけてそれぞれの課の長とすることを苦肉の策として実施することに。 ところが、プライドだけは人一倍高い野本はそれが気に入らず……。

当麻自身は地位には興味がなく、ただ医師として患者の治療ができればそれでいい、という態度なのだけど、野本にしてみればそんな当麻の超然とした態度がこれまた気に入らない。 とはいえ、すでに当麻が甦生記念病院で勤務するのはき待ったこと。 とりあえず二つの外科、二人の長がいる新体制で外科はスタートすることになります。

外科医としての当麻の腕はとにかく並外れていて、他の医師では手に負えないような難しい症状の患者でも当麻は真摯な態度で果敢に手術に挑んでいきます。
そんな当麻の態度に感銘を受ける医療スタッフたちなのだけど、近江大学から来ている医師たちは妬む気持ちを抑え切れません。
そのくせ自分がミスした手術の尻拭いを当麻に押し付ける始末で……
その無責任さには呆れてしまいました

例えば胆石の患者さんの手術をしたときに、いざ開いてみたら初期の癌が発見されたとしても自分の手に負えない症状の場合はそのまま手をつけずに閉じて、患者さんにも家族にもそのことを伝えず医学の専門用語交えた説明で適当にごまかしてしまったりとか、手術中のミスが原因で患者さんが亡くなっても知らん顔とか……あげればキリがなくて、病院に行くのが怖ろしくなるほどでした。 
自分の手に負えなければ対処できるほかの医師を紹介するとか、方法はいくつかあるはずなのに

さらには大学病院の教授というのは手術の経験の有無よりも、どれだけたくさんの論文を発表したかで、なることができる。 ……って信じられます
プライドと見栄ばかりは一人前で、肝心の 「人の命を救う」 ことは二の次三の次で、大事なのは出世のことだけ。

そんな医師たちの中で、患者のことを考えて行動すると 「出る杭は打たれる」 ことになっちゃうんですから、もう本当にとんでもない世界です。 
それだけに当麻の患者に対する姿勢には救われる思いがしました。

”医師” というのは本来なら当麻のような人格者でなければいけないと思うのだけど、逆に彼のような医師のほうが珍しいんですから救いようがありません。
もし、自分が患者の立場になったとしたら
そんなふうに想像した時、当麻のような医師にかかりたいと絶対に思うはずなんだけど……。

もちろん、患者のことを思い真摯な態度で治療にとりかかる医師もいることはいるんですが、そういう医師をどうやって見分ければいいのか?
現実の世界でも難しいように思いました。

前置きで 「ちょっと微妙〜」 と書いたのは、こういった次第です。
なんといっても、作者の大鐘氏自身が医師ですからリアリティがありすぎるんですよね

幸いにも甦生記念病院の島田院長は良心的な人物で患者のためになることを考えて、さらには大学病院にすぐ患者を搬送するのではなく、自分の病院でも難しい手術ができるようになる医療体制を整えることを理想としています。
そのこともあって、島田院長は当麻のよき理解者で協力者になってくれるのだけど、困るのは大学病院から派遣されてきているほかの医師たちとのしがらみ。

……自分の病院なのに、思うように経営できないなんて辛いことです。
それでも理想をかなえようと、時に妥協しながらも少しずつ良い環境にしようと頑張る姿に感心しました。

なにはともあれ、当麻という傑出した外科医を迎えたことで甦生記念病院に大きな変化が訪れることは避けられないようです。
これから、当麻がどんな患者さんたちと出会っていくのか、甦生記念病院がどんなふうにふうに変化していくのか、先の展開が楽しみです

次は 『孤高のメス(2)−外科医当麻鉄彦』 です。


 

| さすぺんす | 20:57 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
新任少尉、出撃!<海軍士官クリス・ロングナイフ1>/マイク・シェパード
マイク・シェパード
早川書房
¥ 1,050
(2009-12-10)
Amazonランキング: 103419位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

海軍少尉、クリス・ロングイナフ。
父はウォードヘブン星の首相、祖父は財界の支配者という著名な政治家一家の娘でありながら、政略結婚をもくろむ両親に反発し、海軍に入隊。
士官学校を優秀な成績で卒業したのち配属されたのが、カミカゼ級戦闘宇宙鑑タイフーン号だった。 新任少尉としての初任務は、誘拐された少女の奪還。
勇猛な海兵隊員を率い上陸用強襲艇で降下するも、そこには誘拐犯の恐るべき策略が待ち受けていた!(紹介分より)

前置き

あとがきから得た知識なんですが、作者のマイク・シェパードはマイク・モスコーという名前でSF作家としてデビューしていたそうです。
この時の作品は紀元前4000年前のタイムトラベルものだったそうで、残念ながら売れ行きは芳しくなかったとのこと。

次の作品は編集者の助言に従って300年後のミリタリーSF作品にしたところ、まずまずの売り上げだったようで……。
でもやっぱり十分ではなかったらしく、再度編集者の提案(というか次の作品を出版するための条件)で、名義の変更を受け入れて、マイク・シェパードと名義を変更。
そして、発表したのが本シリーズです。

幸い、こちらのシリーズは評判がよく、マイク・シェパード人気がブレイクして、現在では本シリーズは7作目まで出版されているとか。

実際に、本作品を読んでみて納得しました。  ……面白いんですよ〜
というわけで、感想です(笑)

〜感想〜

数百の惑星に人類が植民している未来。
ジャンプポイントと呼ばれる、異空間通路を使って惑星間を比較的短い時間で行き来できるようになっています。 
そして、それらの惑星は地球を中心とした ”人類協会” という連邦制でまとまっているのだけど、地球から離れた星域では一部独立しようとする動きがあって……。

その動きが活発なのがリム聖域に”ウォードヘヴン” という惑星。 本作のヒロインは、この”ウォードヘブン”に事実上君臨している名家のお嬢様なのだけど、お嬢様本人はそんな自分の家系に反発を感じています。
そして、お嬢様は海軍へと入隊する道を選ぶのだけど……。

お嬢様の名前はクリス・ロングナイフ。
海軍の訓練を乗り越えて、少尉として戦闘宇宙鑑タイフーン号へと赴任した彼女は、早速実践へとかり出されることになります。
任務は誘拐された少女を無事に救出すること。
士官学校で親友になったトム・リー・チン・リェン少尉を右腕としてクリスは初めての任務へ向かうのだけど……。

実はクリスには幼い頃に弟のエディを誘拐されて殺された、という悲しい過去がありました
その過去はクリスにとって深い心の傷として今でも残っています。
それだけに、今回の少女救出作戦はクリスにとっては決してミスの許されないもの。

ところが、救出に向かう途中で乗っている船の操縦が効かなくなり、初っぱなからピンチに
幸いにもクリスの見事な操縦の腕前のおかげで墜落は免れて、なんとか誘拐犯一味が立てこもっている場所の近くで着陸することに成功。
気を取り直して、救出作戦に取りかかろうとするのだけど考えていた以上に犯人一味の装備が最新鋭のものだということがわかります。

それでも、クリスは持ち前の機転を効かせて当初予定していた計画の代案 ”プランB” を実行にうつして見事に少女を無事に救出。
奇しくも少女の名前もエディスと、弟のエディと似た名前で、少女を救えたことでクリスの心は少しだけ癒されます。この時、クリスは泣いてしまうんですが、一緒になってもらい泣きしそうになりました。

なにはともあれトラブルはあったものの、見事に初任務を終えたクリスでしたが、誘拐犯一味にはどこか不審なものがあって……。
気になったクリスは犯人一味のリーダーが身につけていた電子機器を手に入れ、コンピューターに詳しい伯母に調べてもらうことに。

すると、残っていたデータから犯人一味はクリスを殺そうとしていることが判明。
いったい、誰がクリスの命をねらっているのか?
そして、その理由は?

どうやら”ロングナイフ家の一員”であることが、原因のようなのだけど、真相を突き止める暇もなく次の任務が与えられて……。
ところが、またもや事故に見せかけてクリスは命を狙われることに。
伯母のトゥルーの推測から、大体の犯人の目星がつくのだけど、でもやはり今一つ理由がわからない。

そうこうするうちに、地球とリム聖域との関係が険悪になり、”人類協会” が分裂するという危機が訪れます。 
地球と、リム聖域との戦争が始まるかというところまで事態が進んでしまうのだけど、クリスは自分の命を狙っている人物が関わっているのでは? と、思いあたります。

「何かがおかしい」
そう感じたクリスは攻撃命令を出す艦長をとめようとするのだけど……。

新米兵士のクリスが一つずつ任務を果たして、部下たちの信頼と忠誠を得て成長していく様子にわくわくしました
そして彼女を狙う敵の思惑を絶妙なタイミングでかわしていく姿は爽快でした♪

ただ、とりあえず今回は敵の計画を事前にくい止めることができましたが、相手は自由の身のまま。
これからも、クリスに対してよからぬことを仕掛けてきそうな感じです。
そんな相手とどう渡り合っていくのか?
これからのクリスの活躍と成長ぶりが楽しみです

ちなみに、マイク・モスコー名義で出版されたミリタリーSFというのは、どうやらクリスの曾祖父たちが活躍した話のようです。 残念ながら翻訳はされていないようですが、クリスの活躍する本シリーズが売れれば、そのうちこちらのほうも翻訳されるんじゃないかな、と、ちょっと期待してます

 

| SF | 18:54 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark


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