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黒き狩人と夜空の瞳<サイ=チェンジリングシリーズ1>/ナリーニ・シン
ナリーニ・シン
扶桑社
¥ 980
(2009-06-27)
Amazonランキング: 87127位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

感情を抹消した超能力者と動物に変身する種族が共存する世界。
特殊能力の証しである夜空の瞳を持つサッシャは、豊かな情感の持ち主だが、必死にそれを隠して生きている。
彼女が共同事業を行なう豹チェンジリングのルーカスは、サイによる連続殺人を止めるべく、サッシャに探りを入れてくる。
敵対する関係ながら、惹かれあう2人。
だが、殺人犯が新たな事件を起こし、情勢は緊迫する。
一触即発の危機に、サッシャは決死の作戦に身を投じる覚悟をするが―(紹介文より)

前置き

『青の瞳をもつ天使』 でちらっと触れましたが、作者のナリーニ・シンさんのファンになったのはこの作品がきっかけです まず、本シリーズのおおざっぱな説明をば

舞台となるのは
超能力種族 ”サイ”、動物に姿を変える ”チェンジリング”、超能力もなく姿を変えることもない ”ヒューマン”  の3つの種族が共存する世界です。 
ちなみに、”チェンジリング” と言えば、”妖精の取替え子” が有名ですが、本作では動物に姿を変えることのできる種族のことを言っています。

”サイ” は予知能力、念動力、テレパシー等々多彩な能力を持っている種族で、実質的に世界の経済界を支配しています。 
ただ、このサイという種族は過去に凶暴な殺人者 を数多く生み出したことから、”感情” をすべて排除する「サイレンス・プロトコル」という計画を実施。
この計画は効果をあげ、感情を取り除いたことによって、サイは ”暴力” からは解放されることになりました。
そうして、彼らを動かすのは ”論理” になるのだけど、変わりに喜びも悲しみも感じることがない冷えきった種族となってしまいます

一方、動物に姿を変える ”チェンジリング” は自然を守り群れの仲間を愛し、感情を露わにすることをおそれません。
そんなチェンジリングをサイは ”下等な動物” と見下しているのだけど、そんなサイの気持ちを彼らはお見通し。
逆に、サイたちの思っている通りに振る舞って油断させ、サイの支配から逃れようと着々と計画を進めています。 ただ、チェンジリングたちは肉体的にすぐれ、ちょっとした超能力も持ってはいるものの、やはりサイとの全面的な戦争では多大な犠牲を出すことは必至。 なので力で対抗するだけではなく、先の展開をしっかりと見据えて行動しています。

そして、”ヒューマン”
…… 本シリーズではちょっと影が薄いんですが(笑)、チェンジリングのよき協力者と
して芸術を愛し自然を守る手助けを色々しているようです。 

そうして、サイの支配にほころびが見え始めてきた今、ある一人のサイの女性がチェンジリングの男性と出会い、この二人の出会いが今までの世界を変えるきっかけになっていきます。 
と、いうことで(笑)本作のヒロイン ”サイ” のサッシャ・ダンカン と ”チェンジリング” のルーカス・ハンター の物語の感想です


〜感想〜

ヒロインのサッシャはサイの中でも ”特級能力者”(カーディナル) と呼ばれる特別な存在。
カーディナルを見分けるのは、神秘的な夜空の瞳で、言葉のとおり黒い瞳の中に数個の白い星を散りばめたようになっています。

カーディナルには普通のサイよりも、特別な力が備わっていて、たいていは ”評議会” のメンバーとして活躍することになります。
”評議会” というのはサイ社会を統べる機関でメンバーたちはいずれも強力な力の持ち主ばかり。
サイ社会にとって "評議会” は絶対的なもので ”法を越えた存在” でもあります。

サッシャの母親のニキータは評議会のメンバーで、サイの中では権力をふるう側にいます。カーディナルであるサッシャも通常なら評議会に加わるか、他の重要な地位についてもおかしくないのだけど、残念ながらサッシャのカーディナルとしての能力は顕在化せず、宙ぶらりんの立場になっています。

とはいえ、サイ社会では ”家族” 単位での行動が基本となっているので、評議員の母親ニキータの助手としてちゃんと仕事をしています。
もっとも ”家族” といっても血がつながっているという事実だけで、親子としての情はもちろんありません。 それがサイでは当たり前のこと。
……なのだけど、実はサッシャには誰にも言えない秘密がありました。
それは、彼女には ”感情” があるということ

サイの社会では子供の頃から感情を排除するプログラム<サイレンス>が施されるのだけど、このプログラムが終了するのは16歳頃。 その後、2年ほどは観察期間のような経てプログラムは完了することになっています。 ただ、このプログラムに適応できなかったサイは……”更正処置” を受けることになります。 この処置を受けるとよくて涎をたらして廃人のようになるか、悪ければ簡単な作業ができる程度の知能しか持たず、ただ人形のように生きるだけ

サッシャが感情を持っていることが知られてしまったら 更正処置 から逃れることはできません。
幼い頃から自分の特殊さを自覚していたサッシャは他のサイに見破られることがない強固な”シールド” を築くことができるものの、だんだんとそのシールドでも抑えきれないほど感情がわき出てくるようになっています。 
そんな時、母親のニキータから ”チェンジリング” との仕事をするよう言われます。
そうしてサッシャは<豹>チェンジリングの群れ <ダークリバー> のアルファ(リーダー)ルーカス・ハンターと、出会うのだけど……。

ルーカスには隠された目的がありました。
それは群の仲間の一人を惨殺 した犯人を突き止めること。
ルーカスには他のチェンジリングにはない能力があって、その力で犯人が ”サイ” であることを確信していました。
そこで、謎に包まれたサイ社会の情報を探るために、仕事を隠れ蓑にしようと思いついたという次第。

ところが、サッシャに会った途端ルーカスは不思議な気持ちにおそわれます。
”何かが違う” サッシャの雰囲気に自分でも驚くほど惹きつけられて……。

一方、サッシャもまたルーカスには何故かいつも以上に感情をかき立てられることに気づきます。でも、それはサッシャにとってはとても危険なこと。
なんとか、ルーカスとは距離を置こうといつも以上に ”サイらしく” 振る舞うのだけど、ルーカスはサッシャの微妙な感情の揺れを察知します。

とはいえ、”サイは感情を持たない” のが常識。 
自分の感覚を最初は サイの策略 なのでは? と疑います。
でも、サッシャと一緒に行動すればするほど、自分の感覚が間違っていないことを確信するようになります。 

そしてサッシャもまた、ルーカスによって様々な感情を味わうことに。
二人はお互いの気持ちを抑えきれなくなっていきます。

でも、そんな二人の間に立ちはだかるのは ”サイの殺人者”
ルーカスのサイに対する不信感と憎しみがサッシャを傷つけてしまいます。
さらに、”感情” が隠しきれない状態になってしまい……

自分はサイとして ”壊れている” と思っているサッシャは更正処置に送られることになるのは間近だと覚悟を決めます。
そして、その前に自分に ”生きること” を教えてくれたルーカスや<ダークリバー>の人々に恩返しをしようと心に決めます。
どうせなら、彼らの役にたって死のう、と。

でも、ルーカスがそんなことを認めるはずがありません。 
自分の心に正直になったルーカスはサッシャが自分の ”伴侶” だと認め、サッシャをなにが何でも生かし続けようとするのだけど……。

サッシャが少しずつ感情を露わにしていく様子は、まるで子供が少しずつ成長していくのをみているような感じでした。
そんなサッシャをなだめすかしたり、時にあやしながら自分のものにしようと企む(笑)ルーカスの姿にニヤニヤしちゃいました

ルーカスを守る ”兵衛”(センチネル)と呼ばれる<ダークリバー>の個性豊かな面々も魅力的で、彼らがサッシャを受け入れる様子は感動的でした 最後のほうではサッシャが乗り越えなければいけない最大の困難が待ち受けているんですが、サッシャを絶対に手放そうとはしなかったルーカスの頑固さが素敵でした

”サイ” と ”チェンジリング”

通常なら決して心を通わせることのない二つの種族ですが、サッシャとルーカスが最後に見いだした ”事実” がこの先二つの種族(特にサイ)の運命を大きく変えることになりそうです。 なにはともあれ、今回の事件を通してサッシャは ”カーディナル” としての自分の能力を知ることができました。
そして、サッシャの能力は かけがえのない贈り物 でもあるので、この先のシリーズ中でもしょっちゅう登場してくれそうな感じです

次の 『冷たい瞳が燃えるとき<サイ=チェンジリングシリーズ2』 は ルーカスのセンチネルのヴォーンと、サイの予知能力者フェイスの物語です。 ルーカスの親友で<ダークリバー>の中では少しアウトロー的な存在のヴォーンがどんなふうにヒロインにメロメロ(笑)になるのか……楽しみです




 

| パラノーマル | 23:09 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
青の瞳をもつ天使/ナリーニ・シン
ナリーニ シン,Nalini Singh
早川書房
¥ 987
(2010-03-05)
Amazonランキング: 203424位

JUGEMテーマ:読書

★★★★★(5/5)

あらすじ

エレナは腕利きヴァンパイア・ハンター。
逃げだしたヴァンパイアをつかまえて、主人である天使のもとへ連れ戻すのが仕事だ。
その彼女に、世界を支配する大天使の一人、美しく冷酷な戦士として知られるラファエルから、これまでになく危険な仕事の依頼がくる。
追う相手は殺人鬼と化した大天使の一人だという。
エレナには仕事を断わることも、失敗も許されない。
大天使ラファエルと共に死と隣り合わせの数日を過ごすうち、エレナは彼の禁じられた魅力にとらわれていく…。(紹介文より)

〜感想〜

もう、すべてがツボ!(笑)
作者のナリーニ・シンさんの作品を知ったのは ハーレクインデイザイア ”シークにさらわれて” が最初だったのだけど、この作品の時は普通に面白かっただけで特に 好き とまでは思いませんでした。

ところが、その後扶桑社ロマンスから出版された 『黒き狩人と夜空の瞳』 <サイ=チェンジリングシリーズ> を読んで、印象は一変。
……お・も・し・ろ・いーっ  すっかりファンになってしまって、早く続きが読みたいと待ち遠しくなりました。
そうして、第二弾 『冷たい瞳が燃えるとき』 が出て速攻手に入れたんですが、ほとんど同時期に本作も発売されていたのを発見。
ろくにあらすじも読まず、同じく即座に購入してしまいました(笑)
嬉しいことに期待は裏切られず、想像以上に面白くて……こちらも早く続きが読みたくてたまりませんでした。

で、どこがそんなに面白いのかというと……。
まずは、一風変わった舞台設定。

天使、ヴァンパイアが当たり前の存在として描かれていて、世界を統べているのが ”十人衆” と呼ばれる10人の ”大天使” たち。
この大天使たちはそれぞれの領土を受け持ち、領土に住んでいるヴァンパイア、人間たちを支配しています。
そんな大天使たちの性格は様々。
残酷だったり、芸術の才能を持っていたり、慈悲深かったり、それぞれ違う個性を持っているんですが、共通しているのは ”強大な力を持つ存在” だということ。

その次に力を持っているのが 天使 → ヴァンパイア の順なんですが、ヴァンパイアは天使が人間を作り変えることで生まれます。
そうして、ヴァンパイアになった元人間は 100年間の間自分を作り出した天使に仕えることになるのだけど、それが嫌で逃げ出すこともしょっちゅう(笑)

そんなヴァンパイアを捕まえるのが ”ヴァンパイア・ハンター”
本作のヒロインのエレナです
基本的には人間は種として一番下の地位にいるのだけど、ヴァンパイア・ハンターを統轄する”ギルド” を組織して、ヴァンパイアにはそれなりに対抗できるようになっています。

でも、どうやっても敵わないのは ”大天使”
大天使にとって人間は蟻のようなもので……よくても ”おもちゃ” 扱いがせいぜい
逆らえば、 ”死” が待っている、というかそれ以前に逆らうことすら考えられないといったほうがいいかもしれません。

ところが、本作のヒロインのエレナはそんな大天使の一人 ”ラファエル” に逆らいます

始まりは、ラファエルからの依頼。
ヴァンパイア・ハンターの中でも一番の腕利きのエレナに、正気を失った大天使 ”ウラム” を追跡してほしいという依頼だったのだけど、最初はそういったこともエレナには伝えず、ただ 「捕まえろ」 というだけ。

これじゃあ、仕事にとっかかろうにもらちがあきません。
エレナが不満を抱くのも当然なのだけど、ラファエルはお構いなし。
彼の冷酷非情さを怖れながらも、果敢に立ち向かって行くエレナの姿に思わず拍手したくなりました(笑)

ラファエルもそんなエレナを面白いと思ったらしく、いつもと違う態度をとるようになります。 ”自分のおもちゃ” だと独占欲を抱くようになり……(って、おもちゃって呼ばれるのは嫌な感じですが)、少しずつエレナにたいしては冷酷さを発揮できなくなっていきます。
でも、そんなラファエルの変化は彼自身にとって命取りになりかねない事態を招くことに。 
”不死” の存在のはずが、傷を負ってもすぐに治癒しなくなってしまい……
”不死性” を失う前にエレナを殺すべきか? それとも生かしておくべきか?
ラファエルは悩むようになるのだけど、正気を失った大天使を捕えるためにはエレナの存在が不可欠なことから、とりあえずはそのままの状態を続ける事に。

一方、エレナも冷酷なラファエルを恐れながらも、ふと見せる ”人間らしさ” に惹かれていくようになります。 自分の錯覚にすぎない、と言い聞かせながらもとうとうラファエルに対する思いを抑えきれなくなってしまい……二人は恋人同士に。

ここまでの、二人の衝突する様子とか駆け引きの様子が面白かったです
圧倒的な力の差があることを知りながら、一歩も引かないエレナが素敵でした♪ ラファエルが好きになるのも納得

とはいえ、これでめでたしめでたし、というわけにはいきません。
ウラムを捕えて滅ぼさなければ人間にとっては地獄が待っています。 ラファエルとエレナはウラムを追いつめて行くのだけど、追跡中にエレナが逆に捕らわれてしまい……。

エレナを助け出そうと必死になるラファエルの姿にドキドキしっぱなしでした
冷酷非情なラファエルがエレナと出会った事で ”ちょっぴり” 人間らしくなっていく様子にロマンス心(笑)をくすぐられるというか……

瀕死の重傷のエレナがラファエルに 「ほんの少しだけ人間でいてね」
って言った時には胸にぐぐぐっときました(笑)
同じく瀕死の重傷のラファエルが 「もしこれが死なら、ギルド・ハンター、むこうで会おう」 
って台詞にはさらにぐぐぐぅ〜っときました。
そうしてウラムとの死闘の末に、二人が最終的に迎えた結末には……思わずニヤリ 
そうそう、やっぱりこうでなくっちゃ! と嬉しくなりました♪

多分、次は違う人物が主人公になるのだとは思うけれど、エレナの過去に起きた出来事の謎が完全には明かされてなかったり、ラファエルたちに訪れた変化がどう進展していくのか、とか気になることは結構あるのでこれからもラファエルとエレナは中心人物として顔を出していくような気がします
というか、そうなることを期待してます(笑)

ラファエルに自らの意思で仕え、彼を守るためならなんでもする、という 3人のヴァンパイアと4人の天使で構成されている ”ザ・セブン” の存在も気になるところです。
今回はセクシーな(笑)最年長のヴァンパイアのドミトリ、最年少のヴェノム、天使のジェイソン、イリウムと何人か登場してましたが、残りの3人が顔を出してくれるのも待ち遠しいです
早く次が読みたーい


| パラノーマル | 09:36 | comments(4) | trackbacks(0)|- pookmark
ルーンの子供たち<DEMONIC5>/全 民熙(ジョン・ミンヒ)
ジョン ミンヒ
宙出版
¥ 1,785
(2008-03)
Amazonランキング: 168666位

JUGEMテーマ:読書

★★★★☆(4.5/5)

長きに渡り繰り広げられたジョシュアの最後の戦いが始るデモニック・ジョシュアと人形ジョシュアの運命は…!?(紹介文より)

〜感想〜

『ルーンの子供たち<DEMONIC4>』 で、もう一人のジョシュアを作ったウィザードの手がかりを求めてネニャフル学院を訪れたジョシュアだったのだけど、その彼のもとに ”人形が目覚めた” との連絡が入ります。
すぐ戻れとの指示を受けて家に帰ったジョシュアだったのだけど、今度は学院に戻れ、とジュスピアンに言われて……呆気にとられるジョシュアにジュスピアンは ”人形師” が近づいていることを知らされます。 
影響を避けるために、もう一人のジョシュアを一緒に連れて戻れ、と再度言われてジョシュアは ”彼” と話し合うことにするのだけど……。
もう一人のジョシュアの痛々しい姿にちょっともらい泣きしそうになりました

一方、捕らわれの身になったランジエは……。
彼の身を案じる仲間によって、助けられようとしていました。
ただ、その助けというのはヒスファニエの力添えを得ること。
もともとはテオと組んでジョシュアを排除しようとした相手にヒスファニエは複雑な気持ちを抱きます。
実際、ジョシュアを愛しすぎているヒスファニエは彼の頼みを断ろうとするのだけど、計算ずくではなく純粋にランジエの身を案じての説得に、渋々ながらも心を動かされてしまいます。
そうして、ヒスファニエはランジエを助けることに。
……人と人との関係って、どう変わっていくのかわからないものですね
でもだからこそ、面白いとも言えます

話は戻ってジョシュアともう一人のジョシュアは、二人揃ってネニャフル学院へ入学することになりました。 もう一人のジョシュアはカルディと名乗ることになります。
とはいえ、二人揃って人前に出ることはできないのでジョシュアが授業に出ている間はカルディは部屋に閉じこもる、ということになっています。
……何だか気の毒ですね

マキシミンも戸惑ってしまい、カルディにはどうしても平静な気持ちで接することはできません。 どちらも親友だ、とすぐに順応できるほど器用じゃないところがマキシミンのいいところでもありますが、やっぱりカルディが気の毒でした

でも、そんなカルディにほんの少しだけ救いがもたらされます。
それは、マキシミン、ジョシュアとルームメイトになったボリス・ジンネマン(待ってました笑) の存在。 『ルーンの子供たち<冬の剣>』 の主人公だったボリスとその友人ルシアンがジョシュアとマキシミンのルームメイトとして登場して、何かとジョシュアたちの手助けをすることになります。

特にボリスは色々な経験をしてきただけに、魔術のことや、人形のこと、果ては願いの鏡のことまで知っています。
ただ、そういった自分の経験を他の人間に詳しく話すことはできないんですが、カルディのことはすぐに ”人形” だと気づき、自分が出会った人形のことを話して彼を慰めます。
そういったことを淡々とするんですが、そんな態度でも優しさを感じられました。
それはカルディも同じだったらしく、ボリスといることで安らぎを感じるようになります。

ジョシュアもまたそんなボリスに興味を持ち、何かと質問したがるんですが答えられない質問が結構多くて  「あいつ、いったい何者」 と驚くマキシミンが面白かったです。

そんなふうに懐かしい面々も加わって、クライマックスに向けて事態は一気に進んでいきます。
結局カルディが迎えた結末は悲しいものになってしまいましたが、それでも彼が最後に見せた姿には感動させられました。
もっと、違う道があったらよかったのに……そう思わずにはいられませんでした

そうして、ジョシュア、マキシミン、リチェは、再び ”夕焼け島” のアナローズのもとへ旅立ちます。 彼女との約束を果たすために。
そして、その旅は ”約束の人々” との誓いも同時に果たすことになります。

これで ”デモニック” ジョシュアの冒険の旅は終わりました。
ちょっと切ないけれど、これでよかったんだ、と、そんなふうに納得のできる結末でした。

そして、最後に登場するランジエ。
思わせぶりですが、ひょっとして次の主人公は彼?

あとがきでは本シリーズの中心人物たちが二十代になってからの話が予定されているとのことでした。 誰が主人公になるにせよ、お馴染みの面々が顔を出してくれることは確かなようです
ただ、執筆の時期はずっとにあとになるかもしれない、とも書かれているので、気長に待たなければいけないようです



 
| ファンタジー | 19:43 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
ルーンの子供たち<DEMONIC4>/全 民熙(ジョン・ミンヒ)
ジョン ミンヒ
宙出版
¥ 1,890
(2008-01)
Amazonランキング: 193808位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

ジョシュアは義兄テオによって生み出された分身の本体を見つけ出す為、夕焼け島にたどりつき、ひとりの女性と出会った。
アナローズ―かつてデモニック・イカボーンを愛した偉大なるウィザード…。
一方、アルニム家を手中に収めようと画策しているテオは「民衆の友」からの支援が縮小されたことに焦りを感じていた。
このままでは全てが失敗に終わってしまう…。
テオは最後の賭けにでようとしていた。
ジョシュアの戦いはクライマックスへ。(紹介文より)


〜感想〜

『ルーンの子供たち<DEMONIC3>』 で、夕焼け島へ辿り着いたジョシュアとマキシミンは、過去のウィザードのアナローズと出会いました。
死んでいるのに死んでいない状態……彼女は何故、そうなってしまったのか?
それは、”悪の武具” を封印するという役目を果たすためだったのだけど、彼女が目覚めているということは、封印が解かれたということでもあって……。

その原因となったのは、もう一人のジョシュアを作ったウィザードの存在。
ジョシュアはウィザードの正体を突き止めて滅ぼすことを約束します。 そうして、夕焼け島を後にしたジョシュアとマキシミンだったのだけど……。

もう一人のジョシュアとの対決を始める前に、またもや殺し屋の<仕事人>が現れてます。
……流石にしぶとい
船の上で襲われて危機に陥るジョシュアたち。
すると、新たな船が姿を現して助けに入ってくれます。
その船に乗っていたのは……大叔父のヒスファニエ(いいとこ持ってきますね 笑)
思えば、マキシミンが 「何か気になる」 とヒスファニエのもとから一人探りに出たときから、全く連絡無し状態でした(笑  )
痺れを切らしたヒスファニエが出てきたのも無理ないですね(笑)

ヒスファニエのおかげで、やっと<仕事人>をやっつけることができてホッと一安心というところなんですが、次はもう一人のジョシュアとの対決が待っています。
いくら、魔法で作られた存在とは言っても彼もまた ”ジョシュア” であることに変わりはなくて……彼になりすましたまま母親と再会したジョシュアは、母親ともう一人のジョシュアが上手くやっていたことを知って複雑な気持ちになります。

そのまま、今回の陰謀を企んだ張本人、イブノアの夫で義理の兄テオと対面を果たします。
最初はジョシュアをもう一人のジョシュア(ああ、ややこしい) と思い込んでいたテオだったのだけど、途中で本物のほうだと気づきます。
でも、何故かうろたえることもなく余裕のある態度で……。
それもそのはず、すでにもう一人のジョシュアに父親のアルニムを殺すよう手配済みだったのです

父親の元へ駆けつけたジョシュアだったのだけど、彼の姿を見たもう一人のジョシュアは彼に短刀を向けて……。

何故、テオはジョシュアをここまで憎んでいたのか?
今ひとつ、動機がはっきりしてなかったんですが最後の最後で自分の気持ちを明かしています。
……彼がしたことは許せることではないけれど、でも、何だか気の毒だと思ってしまいました。 切ない結末にちょっとだけ

とりあえず、ジョシュアを殺そうという計画は解決となりました。
が、二人のジョシュアは昏睡状態に陥ったまま。
心配するマキシミンたちだったのだけど、幽霊のケルスニティが死にかけているジョシュアを持ちこたえさせていることがわかり、ひとまず見守ることに。

そうして、少し落ち着いたある日一人の老人が訪ねてきます。
その老人とは……空飛ぶ船を貸してくれた変わり者のウィザードのジュスピアン(笑)
約束を守ることを要求するためにやってきたようなのだけど、二人のジョシュアの置かれている状況に興味津々のジュスピアンはしばらくそのまま居座ることになります

そうしてほぼ1年たったある日、ジョシュアは目覚めるのだけど色々と変わったことがありました。
例えば、幽霊のケルスニティが姿を見せなくなったこと。
何かがおかしいと思いながらも、それ以上に気になるのはもう一人の自分のこと。
いったい、彼をどうすればいいのか?
今では、彼を殺すことはできません。 
そこで、とにかく彼を作り上げたウィザードの手がかりを求めて、ネニャフル学院を訪れることを考えるのだけど、そこはマキシミンがジュスピアンと約束した学院でもあります。
マキシミンとジュスピアンの娘ティチエルも加わって3人で学院へ行くことに。
リチェとは、しばらくの間お別れとなるのだけど、きっとすぐにまた合流することになるんじゃないかな、と期待してます

そうそう、ジョシュアたちとは別に影で色々と暗躍(笑)していたランジエですが、今回ちょっと困ったことになっています。 『ルーンの子供たち<冬の剣>』 で彼につきまとっていた貴族の令嬢シルビエットがまたもや登場して、自分のものになるよう執拗に迫ります。
そんなシルビエットに目をつけていた反乱鎮圧軍の兵士が現れて、ランジエを捕えてしまいます。
……彼がどんな目に合わされるのか、想像すると怖くなりました

ジョシュア、マキシミン、リチェ、ランジエ。
彼らがそれぞれどんな結末を迎える事になるのか……いよいよ次の 
『ルーンの子供たち<DEMONIC5>』 で、完結です。



 
| ファンタジー | 17:52 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
ルーンの子供たち<DEMONIC3>全 民熙(ジョン・ミンヒ)
ジョン ミンヒ
宙出版
¥ 1,995
(2007-11)
Amazonランキング: 150169位

JUGEMテーマ:読書

★★★☆(3.5/5)

あらすじ

「仕事人」により腕に重症を負ったリチェ。
治療もできない状況の中、マキシミンとジョシュアはとある島に到着する。
誰もいない島、なすすべがないふたり。
意識を覚まさないリチェにジョシュアはひとつの決断をする。
しかしそれは非常に危険な賭けであった。
一方、共和国の復興に向け、慎重に行動を進めるランジエ・ローゼンクランツ。
アルニム家への接近を試みる彼の思惑とは…。(紹介文より)



〜感想〜


『ルーンの子供たち<DEMONIC2>』 で殺し屋の<仕事人>から逃れたジョシュアたちでしたが、彼に肩の骨を折られたリチェの容態は悪くなるばかり。

そんなリチェの様子を見ている二人は生きた心地がしません
特にジョシュアは自分のせいだと自責の念にかられます。
そんなジョシュアをたしなめるマキシミン。
「人の人生を自分中心に解釈するな。 結果を生み出す原因は一つや二つじゃないんだ」
と。
このへん、マキシミンは現実的というか客観的というか……場合によっては冷たい、とも感じられるほどなんですが、逆にジョシュアには彼のようにはっきりきっぱり言うことが必要なのかもしれません。
……でもやっぱり、ちょっとジョシュアが可哀想でしたが

とはいってもリチェのことが心配なのはマキシミンも同じ。
やっと島にたどり着いたものの、津波の被害にあったのか住民は一人もおらず……。
とりあえず、島を回って役に立ちそうなものを探すのだけど、そうしているうちにリチェが目を覚まします。 ところが、声が出すことができなくなっていて……。

怪我をしたのは肩なのに、なぜ声がでないのか?

マキシミンは霊がリチェの声をでないようにしたのでは、と推測します。
ジョシュアの友達の幽霊ケルスニティは呼んでも姿を現さなくなっていて、代わりにウィザードの霊コルネードを呼び出すことにするのだけど……。

リチェの声を取り戻してはくれたものの、ジョシュアの体を乗っ取ってしまいます。
そこへマキシミンが現れて、物怖じすることなくコルネードと堂々と渡り合う姿がかっこよかったです

とはいえ、マキシミンに魔術は使えません。
口では勝てた(笑)もののコルネードをジョシュアの体から追い出すことができません。
その時、ケルスニティが現れます。
どうやらケルスニティは力のある存在らしく、コルネードを追い出してくれます。 ただ、コルネードとケルスニティの会話から、ジョシュア自身……というより ”アルニム” と幽霊たちとの深い関わりがあることがわかります。

ケルスニティは何故か、そのことをジョシュアには詳しく言おうとはしなかったのだけど、ジョシュア自身が知らずにはいられなくなったことから、過去に幽霊たちと先祖のイカボーンが交わした約束のことを打ち明け始めます。 
そうして知らされた事実はジョシュアが滅びた魔法王国カナポリの子孫で、先祖のイカボーンが今は幽霊となってしまった人々を、移住船団が向かっていた北の大地へ連れていく、という約束をしたというもの。
その人々のことを ”約束の人々” と言います。

ケルスニティはイカボーンに協力していた仲間の一人でもありました。
そして、もう一人のウィザード、アナローズの3人で約束の人々の願いを叶えようとしたのだけど、イカボーンとアナローズが恋に落ちた時から事態は悲劇へと向かうことに。

約束の人々が二人の仲を認めず、引き裂こうと企んで……結果としてイカボーンは彼らとの約束を果たせず、人々もまた命を失うことになってしまいました。 そんな過去を忘れることができず、”約束の人々” はさまよい続ける幽霊となってしまったのだけど、そこへ現れたのが霊媒としてけた外れの才能を持つジョシュア。
イカボーンの子孫でもある彼に ”約束” を果たしてもらうことを望みます。

その望みを叶えるためには ”願いの鏡” を見つけなければいけないのだけど……。
ジョシュアは彼らの望みを叶えたい、と思うようになります。
とはいっても、すぎに実現できるようなことではありません。
まずは、最初の目的のペリウィンクル島へ向かう旅を続けます。

そうして、ペリウィンクル島へたどりついたジョシュアたちだったのだけど、もう一人のジョシュアの本体となった痕跡はどこにも見あたりませんでした。 その変わりに、新たな謎を発見してしまいます。イカボーンが納められているはずの棺の中は空っぽ
では、もう本体に使われたのはイカボーンなのか?
ジョシュアは詳しく調べ始めることにするのだけど、そんな彼の前に幽霊のケルスニティが一人の(人間の 笑)少女を連れてきます。

少女の名は アウレリエ・フォン・”アルニム” 
彼女はイカボーンとアナローズの子孫で、一族に受け継がれる悲しい歴史を語り始めます。彼女の一族ではデモニックとしての性質を持つものは白痴しか生まれないのだと。 姉のイブノアも白痴だったことから心を痛めるジョシュア。思いがけない話を聞かされたジョシュアだったのだけど、彼女の話を聞いてイカボーンの埋葬場所に見当をつけることができます。

その場所とは、アナローズがイカボーンと別れて一人暮らしていた ”夕焼け島”
ジョシュアとマキシミンは、二人で向かうことにするのだけど……。

またもや、ひと騒動あります
幽霊船に出会ったり、嵐に見舞われたり
そうして、たどり着いた夕焼け島で、見つけたのは……イカボーンの埋葬場所ではなくて、アナローズ本人 呆然とするマキシミンをよそにジョシュアは平然とアナローズの名前を呼んで……。

次の 『ルーンの子供たち<DEMONIC4>』 に続きます



 

| ファンタジー | 20:57 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
ルーンの子供たち<DEMONIC2>/全 民熙(ジョン・ミンヒ)
ジョン・ミンヒ
宙出版
¥ 1,995
(2007-10-24)
Amazonランキング: 129299位

JUGEMテーマ:読書


★★★☆(3.5/5)

あらすじ

謎の暗殺者「仕事人」に命を狙われたジョシュア。
マキシミン、リチェの助けで命を救われたジョシュアは、もうひとりの自分の存在をマキシミンの口から聞くこととなる。
暗殺者の追跡から逃げるため、リチェの父の知人であるウィザードを訪ねた3人はそこでドッペルゲンガーの存在を知ることとなった。
ジョシュアはもうひとりの自分を確認し消滅させるため、故郷ペリウィンクルへと向かう決心をした。
3人の少年少女の波乱に満ちた旅が始る。(紹介文より)

〜感想〜

『ルーンの子供たち<DEMONIC1>』 で、殺し屋<仕事人>から逃れて、変わり者のウィザードの元へたどり着いたジョシュアたちだったのだけど、”変わり者”だけあって、どうも話が通じません 話を聞きもしないで、ジョシュアたちにジャガイモの皮むきをいいつけて(笑)自分は姿を消してしまいます(やれやれ 

ウィザードが姿を現す気になるまで、とりあえず彼の家で暮らすことにするのだけど、ジョシュアとマキシミンは元からの親友同士なので、一緒に暮らすことにそれほど支障はないのだけれど、問題は巻き込まれてしまったお針子のリチェ。 
地味ながらも、地に足をついた暮らしをしていたのに、ジョシュアたちに関わったせいで殺し屋に追われ、幽霊と言葉を交わし、変わり者ウィザードにまで関わることになってしまって……

しかも、なぜ、こんなことになったのか?
ジョシュアたちからの詳しい説明は一切、なし これじゃあ、怒るな、という方が無理。
リチェはジョシュアたちに説明を求めるのだけど、すべてを説明するには事情が込み入っていることから、必要なことだけを聞かせる二人……というか、説明するのはマキシミンなのだけど、彼にとっては大事なのはジョシュアなので、自分でも自覚のないままリチェに対しては、彼女を軽んじるような態度をとります。

……マキシミンはいい青年なんですけど、なんといってもジョシュアが手が掛かりすぎるものだから、他の人に気持ちを向ける余裕がないんですよね
そんな二人と関わってしまったリチェは気の毒としか言いようがないですが、嫌でも行動をともにしなければなりません。
一人で逃げたにしても、殺し屋に見つかればあっさり殺されてしまうわけですから…… そうして、数日を暮らすうちにやっとウィザードが姿を現します。
ところが彼はジョシュアたちの話を聞く前に自分の名前を当てろ、と言い出して……。

「おじさんの名前は、エルベルク・ジュスピアンでしょ」

とあっさり答えるリチェ(笑)
当たり前ですよね、父親の友達だって知ってるんですから
その答えを聞いてやっとウィザードは友人がジョシュアたちを連れてきたことがわかるのだけど、やっぱり偏屈ものに変わりはないようで……どことなくユーモラスな会話が面白かったです

なにはともあれ、やっと話を聞いてもらえることになったジョシュアたちは、もう一人のジョシュアのことを説明します。
するとジュスピアンは今は滅びた魔法王国 ”カナポリ”の魔法人形だと教えてくれるのだけど、もう一人のジョシュアを消すためには、彼を作るもとになった ”本体” を壊さなければいけないことがわかります。

でも、本体をすぐ見つかる場所に置いておくはずはありません。
するとジュスピアンは本体を作るときには”血族” の死体が必要だとさらにくわしく説明してくれます。
そこでジョシュアは、アルニム家のデモニックたちが代々眠る場所、ペリウィンクルのことを思い出すのだけど、アノラマードの南の地のどこかにある、ということしか知らなくて……。

するとジュスピアンが意外な申し出をします。ペリウィンクルへ行くために自分が作った空飛ぶ船を貸してやる、と。
ただ、そのための交換条件がマキシミンが弟子になってネニャフル学院で魔法を学ぶというもの。
気が進まないマキシミンだったのだけど、今は贅沢をいっていられません。
ジュスピアンの申し出を受けて、空飛ぶ船でペリウィンクルへ向かうことに。

ところが、残念ながら、……やっぱりというべきか(笑)、順調な旅にはなりませんでした。途中で船の一部が壊れて普通の船と同じように海の上を航海しなければいけなくなったり、デモニックの ”霊媒”としての能力が強くなって、友人の幽霊ケルスニティ以外の幽霊にまで話しかけられるようになったり、お金を稼がなければいけなくなって、ジョシュアが再び舞台俳優として公演することになったり……。

その様子は楽しいと言ってもいいくらいだったんですが、そんな時間は長くは続きません。殺し屋の<仕事人>が追いつき、リチェが誘拐されてしまいます。
彼女を取り戻すためにジョシュアは、霊を自分に乗り移らせて人間離れした力を駆使して<仕事人>を退けることに成功します。

ところが、ジョシュア本人はその時のことを覚えておらず……。
リチェも<仕事人>によって肩の骨が折れるという重傷を負ってしまいます。
すぐにも医者に見せたいところではあるけれど、海の上ではどうすることもできず……近くの島へ着くまでしばらく航海を続けることに。

なにはともあれ、一時的なものではあるけれどジョシュアたちの身は安全になりました。
少し一息つけそうな感じです

次は 『ルーンの子供たち<DEMONIC3>』 です。



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ルーンの子供たち<DEMONIC1>/全 民熙(ジョン・ミンヒ)
ジョン ミンヒ
宙出版
¥ 1,995
(2007-08-29)
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★★★☆(3.5/5)

デモニック・ジョシュアの孤独な人生は、マキシミンとの出会いにより新しい人生を歩み始めた。
少年ジョシュアの数奇な運命を描くシリーズ第2部。(紹介文より)

〜感想〜

『ルーンの子供たち』シリーズの第二部の始まりです。
第一部の 『ルーンの子供たち<冬の剣>』 ではボリス・ジンネマンが主人公でしたが、本作はアノラマード王国の貴族で、”デモニック”と呼ばれる少年ジョシュア・フォン・アルニムが主人公です。

でも、”デモニック”ってなに

生まれると同時に言葉を話し、一歳になる前に文字を読み、五歳になればそこら中にある本をすべて暗記してしまうといわれる天才的な存在ー”(紹介分より)

と、いうことらしいです
そんな天才的な存在のジョシュアは周囲からは浮いた存在で、ジョシュア本人も何をやっても楽しいとは思わず、ただ ”才能だけ” があることに自分自身嫌気がさしています。
アルニム家にはだいたい3〜4世代ごとにデモニックと呼ばれる存在が生まれるのだけど、初代のデモニック以外は全員早死にをしたり、正気を失ったりと、平穏に一生を終えた者はいません

父親のアルニムはジョシュアのことを心配しているのだけど、デモニックではない彼はジョシュアの気持ちを本当に理解することはできず、力になってあげることができません。 
そこで、アルニムはもう一人の ”デモニック” の存在を思い出します。
大叔父の ヒスファニエ・フォン・アルニムもまたデモニックで、隠遁生活をしているのだけど、アルニムは彼の元へジョシュアを預けることに。

そうして一人大叔父のもとへ向かったジョシュアだったのだけど、いざ家にたどり着いてみるとヒスファニエの姿はどこにもなく、代わりにいたのは近所に住んでいる少年 マキシミン・リフクネ。 
彼はたくさんの弟妹を抱えているのだけど、毎日の食料をあるときは川で魚を捕まえ、ある時は盗み、と、たくましく(笑)生きています。

大叔父はいつまでたっても姿を現さず、ジョシュアは一人で暮らす術を学んでいかなくてはならなくなるんだけど、マキシミンはそんなジョシュアのよき先生になってくれます。
”デモニック” であっても、魚を一人で捕まえることもできず、毎日の食料を手に入れる手段もなく……ジョシュアはただの ”不器用な少年” としてマキシミンには ”馬鹿”呼ばわりまでされてしまいます

でも、そんなマキシミンとの出会いがジョシュアを変えていくことに。
そうしてしばらくたったある日、マキシミンが村の少年に犬をけしかけられて大けがをする事件がおきます。 その時、ジョシュアは ”デモニック” としての行動をとってしまい、村の住民たちから激しく攻められることになるのだけど、そんなジョシュアを一人の老人が助けてくれます。

その老人こそが大叔父のヒスファニエだったのだけど、彼はわざとジョシュアをしばらくの間一人にしていたようで……。
どうも、こっそり観察してたみたい?
なにはともあれ、ヒスファニエのおかげで騒ぎは収まります。
そうしてヒスファニエ、マキシミンとの生活が始まるのだけど……。

2年後。
父親のアルニムから戻ってくるように言われるときがやってきます。
すぐに戻るつもりだったジョシュアだったのだけど、姉のイブノアが殺されるという事件が起きて、すっかり状況が変わってしまいます。 
しかも、本当に狙われたのはジョシュアだったことがわかります
アルニムとヒスファニエはジョシュアを殺そうとした犯人を探して報復するために、ある計画をたてるのだけど……。

いずれにしても、ジョシュアがマキシミンの元に戻ることはなく、離ればなれのまま5年の月日が流れます。 その間、ジョシュアには幽霊の友達ができたり、偽名を使って舞台俳優になったり、と意外と忙しい毎日を過ごしていたのだけど、実はジョシュアの知らないところで彼を亡き者にしようとする陰謀が動き始めていました。

そのことに気づいたのは、離れた場所にいたマキシミン。
数年ぶりに、ジョシュアと再会するために屋敷に招待されたマキシミンは、ジョシュアの態度にどこか腑に落ちないものを感じます。
ジョシュアとの会話の中で、彼が覚えていない、出来事があったのだけど、”デモニック” であるジョシュアが ”覚えていない” というのはあり得ないこと。

「何かがおかしい」 

と確信したマキシミンは、状況を見極めるために調べることに。
そうして、調べるうちにジョシュアが別の場所にいることを突き止めます。
しかも、彼を殺そうとしている人物までいて……
マキシミンはジョシュアを助けるために、彼のもとへ向かうのだけど……。

一方、本物のジョシュアのほうはまさかそんなことになっているとは夢にも思わず、マキシミンが彼の前に現れた時、素直に喜びます。 殺し屋に狙われていて事態は結構深刻なんですが、マキシミンとジョシュアの暢気なやりとりにニヤニヤしてしまいました

とりあえず再会を果たしたマキシミンとジョシュア、そしてなぜかジョシュアたちに関わることになってしまったお針子のリチェ、最後にジョシュアの幽霊の友達のケルスを加えた逃亡の旅が始まります。 ジョシュアを殺そうとしているのは誰なのか? もう一人のジョシュアはいったいなんなのか? 
殺し屋の手を逃れて、リチェの父親の友人でもあるウィザードのもとへと向かうのだけど……。

ジョシュアが感じている ”デモニック” としての孤独や苦しみを癒す存在がマキシミンでもあるのだけど、これから先事態はますます大変になっていくようなので、最後までマキシミンがジョシュアを支えていってくれればいいな、と思いました。

とにかく、ジョシュアの冒険は始まったばかり。 
最後にどんな結末が待っているのか?
まだ予想できないですが、わくわくします

次は 『ルーンの子供たち<DEMONIC2>』 です。


 

| ファンタジー | 21:35 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
風と琴/高草 洋子
高草 洋子
地湧社
¥ 1,365
(2010-02)
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JUGEMテーマ:読書
 
★★★★(4/5)

あらすじ

生まれてすぐ病気になった紫乃は足が不自由でした。
そんな紫乃も年ごろになり、やさしい若者宗太郎を好きになります。
しかし、母親の志津はそれが許せず…。(紹介文より)

〜感想〜

前作 『びんぼう神様さま』 の続編にあたります。
と、いっても前作に登場した ”厄病神” が関わっているというだけで、内容は独立しているのでこちらを先に読んでも全然オッケーです

前回は ”びんぼう神” の視点から描かれた物語でしたが、今回は ”厄病神” に取り憑かれた娘、紫乃と母親の志津が母子ゆえに突き当たる葛藤を通して、”幸せ” とは何なのか? を見つける物語になっています。

豪商の娘として生まれた紫乃は、容姿にも恵まれ人に羨まれる立場でしたが、そんな紫乃に ”疫病神” が取り憑きます。
その時から紫乃は高熱を出し、命はとりとめたものの下半身が麻痺して立てなくなってしまいます。 それでも、母親の志津も父親も変わらず紫乃を可愛がっていたのだけど、ある日志津は近所の子供たちが紫乃のことを揶揄している歌を聞いてしまいます。

気位の高い志津は 自分の娘が馬鹿にされている ことが我慢できず、そんな世間の人たちを見返してやろうと、幼いときから紫乃にたくさんの習い事をさせるようになり、いつしか ”紫乃のため” ではなく、 ”自分のため” に紫乃の教育に力を入れるようになり……

そうとは知らない紫乃は母親の気持ちを重荷に感じるようになるのだけど、”自分のため” を思えばこそ、厳しくしているんだ、と言い聞かせ、いつしか自分の本当の気持ちを抑えるようになっていきます。
そんな紫乃の唯一の楽しみは 琴をひくこと。
自分が感じた気持ちを自由に表現できることに喜びを感じるようになります。
そして、父親と奉公人の優しい若者宗太郎が旅に出たときに、経験した楽しいあれこれを聞くうちに紫乃の琴の腕はぐんぐん上達していきます。

紫乃の上達振りに満足するお志津。
ところが、紫乃が宗太郎に恋心を抱いていると思った志津は宗太郎を店から追い出してしまいます。
悲しみに暮れる紫乃にさらに疫病神が追い討ちをかけて……
病に倒れた紫乃は、美しかった顔があばただらけになり目も見えなくなってしまいます
(…いくら疫病神でもやりすぎ!

そんな辛い目にあいながらも逆に両親を慰める紫乃のけな気さにもらい泣きしそうになりました 
娘のことを思うがゆえの厳しさが、いつしか娘の気持ちをないがしろにすることになり、助けるどころか逆に悲しませる結果になってしまったことにやっと気づく志津。
そうして、志津は紫乃のために母親としてある行動に出るのだけど……。

このあたりから、紫乃に対する母親としての愛情が痛いほど伝わってきて結構切なかったです。 そして志津の愛情をしっかりと受け止めた紫乃の姿に感動せずにはいられませんでした
そうして、苦しみを乗り越えた紫乃は ”幸せ” を見つけます。
すると、疫病神が 「これで俺の役目も終わった」 と呟いて……。
紫乃の身体に奇跡が起こります。
あばたが消え、目が見えるようになり、一人で立ち上がっていました。

最後は温かい気持ちになれて、同時に ”幸せ” について考えさせられる作品でした



| ふぁんたじぃー | 20:05 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
ルーンの子供たち<冬の剣3−夜明けを選べ>/全 民熙(ジョン・ミンヒ)
ジョン ミンヒ
宙出版
¥ 2,100
(2006-04-28)
Amazonランキング: 85110位

JUGEMテーマ:読書

★★★★☆(4.5/5)

あらすじ

「月の島」での生活はボリスに安息と共に宿命ともいえる戦いの糸も手繰り寄せていた。
忍び寄るウインタラーを狙う新たな刺客。
運命に足掻き、苦しみ、それでも生き抜いてきたボリスのすべての運命に終止符が打たれる。(紹介文より)


〜感想〜

『ルーンの子供たち<冬の子供たち2ー消えることのない血』 で、イェーフネンの遺体が発見されてしまいましたが、その直後スノーガードとともに塵となって消えてしまいました。 そして、あたりには傭兵たちの悲鳴が響きわたったんですが……ところ変わってボリスのいる月の島から本作は始まります 

剣術大会の優勝者に授けられる”シルバースカル” を島に持ち帰ったことによって、ボリスは新たな名前をつけられます。
月の島に着いた時には ”ダフネン”(月桂樹)という名前を与えられ、今度は ”フラカン”(備える者)という名前になります。 この名前はもとはいにしえの王国の爵位の名前で、とても名誉ある名前でもあります。ボリスにとってはそれほど意味のない名前で、優勝したことよりもナウプリオンの名誉を高めたことのほうが嬉しかったようです ボリスとナウプリオンの、親友でもあり親子のようでもある様子がなんとも微笑ましくて、ほのぼのした気持ちになりました

ところが、ある日そんな平和な日常が壊されることになります。
ボリスの友人といえるジリスが死にかけ、犯人は島の少年たちだとわかっているものの、証拠がないために罰することができません。 そこでボリスは友人になった幽霊の少年エンディミオンに、死にかけているジリスを助けてくれるよう頼みます。
するとエンディミオンは大人の幽霊に頼まなければならない、と言い、ボリスは大人の幽霊に会うことになるのだけど……。

このあたりから、なにやら不穏な雰囲気が漂い始めてきて……。
とりあえず、ボリスのおかげでジリスは助かり、犯人の少年たちも罰せられることになったのだけど、ボリスにとって後味のよくない結末になりました。 その後、島の儀式に参加することになるボリスだったのだけど、この時にまたもやとんでもない出来事が起きてしまいます。

以前から、ボリスに何かとちょっかいをかけていたリリオペが儀式の時にボリスに花を差しだすのだけど、重要な儀式だと知っていたボリスは彼女の立場を考えてとりあえず受け取ります。 するとリリオペは「花を受け取った彼は私の婚約者であることを宣告しました」  と言い出して……。

驚くボリスだったのだけど、リリオペの目を見て最初から謀られていたことに気づきます。
そこで、ボリスは儀式の花が何を意味するのかを知らなかったから、同意できない、と率直に言うのだけれど、儀式を司っている摂政は 「承諾するのだ」 と強要しようとします。

それでも受け入れることができない、と拒絶するボリスに、今度はリリオペがイソレットのことを持ち出して彼女を侮辱します。 その瞬間ボリスはリリオペの頬を強打してしまい…… 
ボリスにとってイソレットは密かに愛している女性。
そのイソレットを侮辱されてボリスが黙っていられるはずがありません。
そうして、ボリスはリリオペを拒絶するために巡礼者になることを断念します。

そして、巡礼者にならないボリスに残された道は月の島からの追放という悲しいものでした
島の掟に従い、島をでた後は二度と戻ることはできません。 それはナウプリオンとイソレットとの永遠の別れを意味します。 過去の過酷な経験からボリスは人に心を許すことのできない人間になっていましたが、そんな彼が心を許し愛するようになった二人と別れなければいけないなんてひどすぎます。 ……別れの場面には思わずもらい泣きしそうになりました

そうして、悲しい別れをした後島をでたボリスはウィンタラーの謎を突き止めるために荒れ地(聖地)へと旅をすることにします。 聖地へ苦労してたどり着いたボリスはウィンタラーを鍛えた鍛冶張本人出会うことができるのだけど、ボリスの問いの答えは…… 「その剣を捨てろ」  (……おいおい )

そんな簡単な答えにすぐ納得できるわけありません。
それでも、気をとりなおして今度はボリスへの終着とスノーガードを身につけていたために、死ぬこともいきることもできなくなった兄イェーフネンを安らかに眠らせるためにはどうしたらいいのか、を尋ねるのだけど、今度もあっさりと 「おまえが死ねばいい」 と一言。 (……あのね )

あきれてしまうんですが、あくまでも真面目なボリスは 「それ以外に方法はないのですか」 と真剣に質問します。 すると、鍛冶は流石に表情が変わって逆に質問してきます。
「そうするつもりがあるのか、兄を安らかに眠らせるために死ぬつもりか」 と。

その問いをじっくりと考えたボリスは 「それ以外に方法がなければそうします」 と答えるのだけど、その答えを聞いた鍛冶はやっとボリスの前に姿を現すことに。 そうして、鍛冶はやっとウィンタラーについて詳しい話を聞かせはじめます。
そのうちに、ボリスは自分にウィンタラーを抑える力がないと気づかされ、鍛冶はウィンタラーを自分に返すように言い出すのだけど、ボリスは 「できない」 と断ります。
ボリスの固い決意の前に言葉を失う鍛冶だったのだけど、長い沈黙のあとに一言 
「ならば不死身の存在となるがよい」

そして、ボリスに不死の命を与えようとするのだけど、ボリスはまたもや断ります。
なぜなら、長く生きすぎると感情を失ってしまうから、と。 
そのボリスの言葉を聞いて鍛冶はまた新たな質問を投げかけて……そうやってボリスと鍛冶が会話をかわすうちに、とうとう鍛冶はボリスがウィンタラーを持つことを認めます。
そうして、ウィンタラーを鍛えなおしてくれることになるのだけど、そうすることによって兄イェーフネンの魂も安らぎを得ることになると教えられます。

今のイェーフネンはボリスに対する執着がスノーガードに宿り、近づく者を皆殺しにする存在になってしまっているのだけど、ウィンタラーが鍛えられることによってスノーガーッドは力を失い、イェーフネンの魂は解放されることになります。 
ただ、そうなるとボリスがイェーフネンに会うことはできません。
そう知りながら、ボリスは兄の魂が安らぐことを望みます。

……やっぱり、イェーフネンとボリスの兄弟愛には泣けます

そしてボリスは鍛えられたウィンタラーを手に ”願いの鏡” を通ってどこともしれない場所へ向かいます。 鏡がボリスを運んだ場所は……イェーフネンを失って荒野をさまよっていた12歳のボリスに初めて優しくしてくれた女性トーニャの働いている酒場。

ボリスはしばらくその場所で暮らすことにします。
すると、ある日裕福な商人ロリアニ・カルツの妻ドメリンから、息子を見守る友人になってほしい、と頼まれます。 わがままいっぱいに育ってしまった息子を人生の先輩として叱ってほしい、と。

ところが、こんないい話をボリスはあっさり断ってしまいます。
……相変わらず淡泊というか

それからしばらくたって、市に出かけたボリスはそこで開催されたオークションで思いがけない品物を見つけます。 それは、イェーフネンが持ち歩いていた母親の遺品の鏡。
死の直前、ボリスのために身を切る思いで売り払ったものでした。 取り戻したい と思うボリスだったのだけど、残念ながら高すぎてとても手がでません。 すると、その時ボリスのもとにドメリンの使いが現れて……。

ボリスのために鏡を競り落としてくれます。
もちろん、交換条件は息子の友人として側にいること。 ボリスは再びアノラマードの裕福な一家に雇われることに。 ただ、前回と違っていたのはウィンターボトムキットを狙っているのでもなく、ボリスの命を狙っているわけでもない、善良な一家だということ。

息子はルシアンといって、屈託なくて脳天期で……何とも憎めない少年。
ボリスとは全く正反対の性格なのだけど、かえってそのことがボリスには新鮮なようで、自分でも意外なほどルシアンのことが気になってしまいます。

同じ年なのに、ボリスより幼い感じのルシアンはまるで弟のよう(笑)
ルシアンに振り回されるボリスの姿が面白かったです

一方、ルシアンにとってもボリスは今までに会ったことのないタイプの友人。
戸惑いながらも、自分とは全然違うボリスを気に入り頼りにするようになります。

ボリスとルシアン。
タイプは全然違うけれどお互いにいい影響を与えあっていけそうな感じです
そうして平和な毎日を送ることになるボリスだったのだけど、ある日意外な人物と再会することに。
その人物とは、かつてボリスがベルノア伯爵のもとから逃げるのを助けてくれたランジエ。 今では印象が変わったランジエは以前に彼が熱く語っていた理想を実現するために、活動していることを話すのだけど、その活動に協力しないか、とボリスに持ちかけてきます。

「もう一度その命をぼくに預けることはできないか?」 と。

ランジエの理想を認めながらも、自分の生き方との違いを感じずにはいられません。
協力したいと思いながらも、ランジエの申し出を断ります。 ランジエも薄々ボリスのそんな答えを予想していたらしく、残念がりながらも潔く受け入れます。 そうして、二人の道は再び離れていくことに。
一つの出会いに一区切りついた感じでした。

その後、もう一つの再会が用意されていました。今度の相手は……イソレット。
もう二度と会うことはできないと思っていたイソレットに再会したことで、すっかり度を失ってしまうボリスだったのだけど、彼女が会いに来たのは悲しい知らせを伝える為でした

その知らせとはナウプリオンが死にかけているというもの
過去に怪物に負わされた傷が原因でした。 治すことができるのは怪物の”赤き心臓”のみ。
ボリスはナウプリオンの最期を看取るために島に戻りたいと言うのだけど、それはやはり許されないこと。
悲しみに包まれたまま、ボリスはイソレットを為すすべもなく見送ることになります。

でも、実はこのときボリスはある決意を胸に秘めていました。
そうして、ボリスはルシアンに別れを告げ、すべての始まりである故郷のトラバチェス共和国へと向かいます。 かつて兄イェーフネンに傷を負わせた怪物 ”エメラ湖の亡霊” を倒して ”赤き心臓” を手に入れるために。

そうして長かったボリスの旅もついに終わりを迎えます。
とはいっても、今回の結末は一つの区切りにしかすぎず、新たな旅の始まりでもあるんじゃないかな、と思ったりもします。
一つの決着をつけ、ルシアンのもとに戻ったボリスは彼とともに”ネニャフル” という学院で学ぶことになるのだけど……どうも平穏な学院生活を送るのは無理なような気が(笑)

なにはともあれ、ボリスの物語はとりあえずこれでひと段落です。 
最後の希望を抱かせる結末に暖かい気持ちになれました  
この次の物語は 『ルーンの子供たち<DEMONIC1>』 になりますが、どうやらボリス、ランジエ等々も登場するようです うれしいですね♪



 

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ルーンの子供たち<冬の剣2−消えることのない血>/全 民熙(ジョン・ミンヒ)
ジョン・ミンヒ
宙出版
¥ 2,310
(2006-03-23)
Amazonランキング: 183019位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

唯一信頼できる剣の師匠と共に、新たな場所で生きぬくことを決めたボリス。
しかし、運命はまだボリスを苦しめるのか…!?ボリスに立ちはだかる新たなる敵!そしてウインタラーの秘密とは…!?(紹介文より)

〜感想〜

『ルーンの子供たち<冬の剣1>』 で、剣の師匠イシルダー(ウォルナット)と再会したボリスは、一緒に旅をすることになりました。
目的地はとくにあてはなく、イシルダーの行くままついていっていたのだけど、ある日、泊まった宿でイシルダーの弟と会います。 弟の姿を見て何故かこわばるイシルダー。
席を外したボリスだったのだけど……。

弟の目的はイシルダーを彼の故郷 ”月の島”へ連れ戻すこと。
最初から、そのことはわかっていたイシルダーだったのだけど、戻るとしたらボリスとは別れなければなりません。
どうやらイシルダーは故郷の ”月の島”では、重要な地位についているらしく、彼の帰りを島の人々が待ちわびているようで……。
それでも、ボリスと離れたくないというイシルダーの気持ちを聞いた弟は一つだけ方法がある、と言います。

ボリスを島へ一緒に連れていき、 ”見習い巡礼者” として入門させるというもの。
それを聞いたイシルダーはそれだけはさせられない、と拒絶します。 見習い巡礼者になれば ”一生、鎖につなぐことになってしまうから” と。

その時、二人の話を立ち聞きしていた(あらあら )ボリスが会話に加わります。
「自分も連れていってほしい」 と。
イシルダーと一緒に旅をしているうちに、いつの間にかボリスにとって彼は兄のイェーフネン以外でただ一人 ”信じられる存在” になっていたのです。

そんなイシルダーと離れることは考えられなくなっていたボリスは彼と共に月の島で暮らす決心をするのだけど、イシルダーの気持ちはちょっと複雑 
本当にボリスのことを思うなら、ここで別れるのが彼の為、と思いつつも、やはりボリスと一緒にいたい、という気持ちを抑えきれず、結局ボリスを島へ連れていくことに。
そのかわり、何があってもボリスを守る、と堅く決意するイシルダーだったのだけど……。

”月の島” に着いたイシルダーはまずボリスを ”見習い巡礼者” として認めさせるために島の重要なことを決定する役目を担っている長老の元へと連れていきます。 それぞれ、”杖の司祭” ”メダルの司祭” ”剣の司祭” と呼ばれる3人の人物が長老と呼ばれているのだけれど、そのうちの ”剣の司祭” は、なんとイシルダーその人

そして、再度名前が ”ナウプリオン” と変わります
どうやら、今度こそ本当の名前のようです

”ナウプリオン”(航海するもの) は3人の司祭の中でも一番、重要な役割を担っているらしく、そんなイシルダーに選ばれたボリスは、最初から注目の的で何かと騒動に巻き込まれることになってしまいます。 その度にナウプリオンがボリスを守ってくれるのだけど、ナウプリオンの弟子になることを夢見ていた島の少年ヘクトルはボリスを妬み、彼を陥れようとよからぬ企みを張り巡らせます。

かと思えば、逆にボリスを気に入って彼に何かとつきまとう少女リリアドがいたりもして、なんだかちょっと青春してる(笑)感じで微笑ましい場面もありました とはいえ、ボリス自身はそんなリリアドをほとんど相手にはしてなくて、イソリッドというナウプリオンとなにやら曰くありげな女性のほうが気になってます。 

”月の島” でボリスは色々な出来事を経験することになります。
エンディミオンという少年の幽霊と知り合いになったり、イソリッドを愛するようになったり、ウィンタラーの不思議な力によって訳のわかんない(笑)状況に追い込まれたり、剣術大会に出場して優勝したり、と大忙し その間、ずっとナウプリオンがボリスを見守っています。
ナウプリオンは心配しすぎで生きた心地しなかっただろうな〜、と同情してしまいました(笑)

ボリスも大変な目に遭ってるんですが、イェーフネンを失ってから初めて ”幸せらしきもの” を感じられたんじゃないかな、と思います。
できることなら、このままナウプリオンに見守られて年相応の少年らしく暮らしていけるといいな、と願わずにはいられませんでした。

とはいえ、残念ながら未だにブラッド叔父の追っ手はボリスを探しています。
その追っ手の一味がボリスがイェーフネンを埋葬した場所をとうとう突き止めるのだけど、土の中には生前とほとんど変わらないイェーフネンの姿が
おびえながらも、ウィンターボトムキットの一つであるスノーガードをイェーフネンの体からはずそうとするのだけど、触れた途端に塵となって消えてしまいます。

その直後、周囲から不気味なうなり声が。
そしてしばらく後、傭兵たちの悲鳴があたりに響きわたり……

そのまま次の 『ルーンの子供たち<冬の剣3ー夜明けを選べ』 に続きます


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