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サンドラ・フォレスター,篠原 レイコ
ソフトバンク クリエイティブ ¥ 1,680 (2005-11-30)
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930967位
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★★★★(4/5)
あらすじ
学校に風変わりな転校生がやってきた。
全身白ずくめの謎の少女。
まるですべての秘密を知っているかのような口ぶりで、あきらかにベアトリスに敵意をもっている。
見たことがないほどの美人だ。
いったこの子はだれなの?どうしてなにもかも知っているの?まさか、正体は―!
春休みになって出発するのはベイリウィック王国の三つめの領域。
東にある海竜の入江。
水の支配する極限の地で、ベアトリスと仲間たちをおそう、偶然とは思えない事故の連続。
あやしい人たちにかこまれて、町の住民に嫌われて、仲間はみんなケガをして、大好きな魔法アドバイザーのペリグリンまで罪をきせられて、いったいどうやって“さいはて島”にわたればいいの?魔物の海をのりこえる方法なんてあるの?そしてあかされるブロムウィッチ王のおどろくべき真実とは。(紹介文より)
〜感想〜
『ベアトリス・ベイリーの冒険(2) マンティコアと霧の沼』 で、呪いを解いたベアトリスに 「こちらからお前のところへ行く」 と気になる捨て台詞を残して消えた邪悪な魔法使いダリー・ランプでしたが、人間界のベアトリスたちが通っている学校に全身白ずくめの謎の少女ミランダが転校してきます。
ベアトリスたちが魔法使いであることや、呪いを解いた冒険の旅のことも知っているように振る舞い、ベアトリスにはあからさまな敵意を見せるミランダ。
ひょっとした彼女がダリー・ランプなのか?
警戒したベアトリスたちはミランダを避けるのだけど、ある日オリーの両親が開催したパーティに姿を現して……。やはりミランダも魔法使いで、少し前まで魔法界で暮らしていたことがわかります。 それでも、やはりうさんくさいことに変わりはなく避け続けるベアトリスたちだったのだけど、審議会から再び試験が言い渡されて次の場所へ行くと何故かそこにミランダの姿が
いったい何故?
不思議に思うベアトリスたちだったのだけど、実はミランダはベアトリスと同じベイリウィックの一族の一人だということがわかります。
ミランダはベアトリスに嫉妬して、自分のほうが上手くできる、と思い込み、何かと絡んできます。 さらには、正体のわからない相手の妨害もあって……。
ベアトリスが呪いを解放したことで逆に迷惑を受けることになった人々から、敵意を向けられたり、正体不明の相手から妨害工作をうけたり、と今まで以上に苦労しています。
そんな中で支えあうベアトリスと仲間たちの姿が微笑ましかったです
さらには、思いがけずベアトリスとダリー・ランプとの意外な関わりが明かされていて、このことがこの先のベアトリスの冒険にどんな影響を及ぼすのか……ちょっと気になるところです。
今回は今まで以上に苦労させられたベアトリスと仲間たちでしたが、敵に見えたミランダの意外な助けがあったり、ベアトリスの父親の親戚のおばさんの助けがあったり、と他のベイリウィック一族の活躍のおかげで、3人目のエイルサ王女の呪いも解くことができました
次の 『ベアトリス・ベイリーの冒険(4) 猛禽ドルードと血の山脈』 では、いよいよ最後の王女を救う冒険になります。
サンドラ・フォレスター,篠原 レイコ
ソフトバンククリエイティブ ¥ 1,680 (2005-09-29)
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
冬の森の冒険から早2ヶ月、すっかりクリスマス気分の街で、ベアトリスと仲間たちはあいかわらずの大騒動をまきおこす。
ようやくやってきた魔法使い審議会の理事たち。
次の冒険は土の支配する南の領域。
おそろしい狼男のひそむ霧を通りぬけ、怪物マンティコアに見はられたイニス姫を救うのだ。
ベアトリスたちが魔法アドバイザーのペリグリンにつれて行かれたのは、ともしび村という魔法使いの村だった。
ともしび村にお母さんのおばさんがいる?お母さんは魔法界に住んでいたの?どうして私に隠していたの?お母さん、わたし絶対に帰ってくるから!
はたしてベアトリスたちは無事に人間界にもどれるのか。(紹介文より)
〜感想〜
『ベアトリス・ベイリーの冒険(1) ドラゴンと冬の森』 で、邪悪な魔法使いダリー・ランプの呪いを解いて、ローナ王女を解放したベアトリスと仲間たちでしたが、二ヵ月後のクリスマスシーズンに再び魔法使い審議会から試験を言い渡されます。
次にベアトリスたちが解放しなければいけないのは、南の領域に閉じ込められているイニス王女。 狼男が周囲にひそみ、怪物マンティコアに見張られているイニス王女をどうやって助けるのか?
ベアトリスと仲間たちのお手並み拝見です
今回は、ベアトリスのお母さんの思いがけない過去が明かされています。
人間界に住む<革新派>のはずのお母さんが、昔は<伝統派>と同じように魔法界に住んでいたことを知らされて、ベアトリスは驚きます。
何故、内緒にしていたのか?
不思議に思うベアトリスだったのだけど、まずはイニス王女を救うのが先決。
ともしび村でおばさんたちの世話になりながら、どうやって助けたらいいのか仲間たちと周囲の状況を調べて行きます。
そうするうちに、ベアトリスの母親と何やら過去にいきさつがあり敵意を向けていたザンという男が、ベアトリスに協力してくれることになります。
どうやら、ベアトリスのことが気に入ったようで……。
ザンの協力で狼男の潜む霧を通り抜けて、マンティコアの見張るイニス王女の閉じ込められているコテージまでたどり着きます。
マンティコアに見つかってしまったベアトリスたちは、ともしび村の魔法使いからもらった魔よけの石を握りしめて、勇気を呼び起こしマンティコアを撃退します。
ところが、ホッとしたのも束の間……またもやダリー・ランプが姿を現して……。
ダリー・ランプはいつも、別人の姿をとってベアトリスたちのすぐ近くに潜んでいるのだけど、最後のほうで変身をといて姿を現します。
この時まで、いったい誰がダリー・ランプなのか? 正体を推理するのが楽しみの一つでもあります
今回も、ベアトリスたちの身近にいた人物に変身していたダリー・ランプは、解放の呪文を唱えようとしたベアトリスの前に現れて邪魔をするのだけど、隙をみてベアトリスはこっそりと呪文を唱え始めます。 気づいたダリー・ランプはなりふり構わず止めようとするのだけど、今回もベアトリスは何とか最後まで呪文を唱えることに成功
二度までもベアトリスに負けてしまったダリー・ランプは、「今度はこちらからお前のところに行ってやる」 と捨て台詞を残して姿を消します。
なにはともあれ、今回も呪いを解くことができたベアトリスと仲間たちですが、次の冒険は苦労することになりそうな感じです
次は 『ベアトリス・ベイリーの冒険(3) 大蛇ヒスフィットと海竜の入り江』 です。
サンドラ・フォレスター
ソフトバンククリエイティブ ¥ 1,680 (2005-09-29)
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794313位
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
人間界に住むやせっぽちで赤毛の女の子、ベアトリス・ベイリー。
ちょっとした天気をあやつる魔法しか使えない未熟な魔法使いだけど、お父さんやお母さん、それに猫のトンガラシと楽しく暮らしている。
そんなベアトリスも今日で12歳。
仲のいい友達や家族と一緒に誕生日を祝っていたところ、とつぜんやってきた魔法使い審議会の理事長から、とんでもない試練を言い渡されてしまった。
かつて魔法界で繁栄していたベイリウィック王国を邪悪な魔法で封じ込めたダリー・ランプの呪文を打ち消し、とらわれている善き魔術師ブロムウィッチと4人の姫を解放しろというのだ。
ブロムウィッチはベアトリスの祖先で、ベイリー家に伝わる魔法の歴史書によれば、彼らを助けることができるのはベアトリスただ一人。
そしてベアトリスと仲間3人+1匹の冒険が始まった。(紹介文より)
〜感想〜
人間界に住む<革新派>の魔法使い、ベイリー一家。
一人娘のベアトリスが12歳の誕生日を迎えたとき、魔法界の<伝統派>から受ける認定試験で、思いがけない試練を言い渡されてしまいます。
通常なら、<一般魔法使い> か <上級魔法使い> かのどちらかを認定されるはずなのに、いったいどうして?
不思議に思うベアトリスだったのだけど、実はベアトリスの一族はかつては魔法界で繁栄していたベイリウィック王国を治めていてブロムウィッチの末裔。
<伝統派>の理事会は、代々のベイリウィック家の最年長の女子には、今も邪悪な魔法使いダリー・ランプによって囚われているブロムウィッチ王と4人の王女たちの呪いを解く義務があると聞かされて……。
<一般魔法使い> で十分だと思っていたベアトリスにしてみれば、とんだ災難
ところが、幼馴染みのテディは<上級魔法使い>になることが夢で、ベアトリスを手伝って試練が成功すればその夢が叶うかもしれない可能性があります。
他の二人の幼馴染みサイラス、オリーもテディほどではないものの同じく冒険の旅に出るのに大乗り気。
張本人のベアトリスが一番やる気がない(笑)んですが、断ることができず渋々ながらも試練を受けることに。
そうして、ベアトリスと相棒の飼い猫トンガラシ、テディ、サイラス、オリーの4人と1匹の冒険がはじまるのだけど……。
仲間たちも魔法はあまり得意ではなく、失敗しないで使える魔法はそれぞれ一つだけ。
ベアトリスが唯一失敗しないで使えるのは天気を操る魔法。
テディは潜んでいる危険を探知する魔法。
サイラスは10cmほどまで小さくなる魔法。
オリーは、水を沸騰させる魔法。
と、これで本当に大丈夫なのかな?
と、心配になるのだけど、見事なチームワークと臨機応変さを発揮して邪悪な魔法使いダリー・ランプが張り巡らせた罠をくぐり抜けていきます。
そうして、ブロムウィッチ王の娘の一人、ローナ王女が閉じ込められている小屋までたどり着きます。あとは何とかして番人をしているドラゴンの目を盗んでローナ王女の前で解放の呪文を唱えるだけ。
ドラゴンが小屋をつぶそうとする中で恐怖に怯えながらもベアトリスは呪文を唱え続けます。 ところが、途中でドラゴンの姿が人間の姿に変わり始め……なんと邪悪な魔法使いのダリー・ランプその人が現れます。
ベアトリスを嘲り彼女を打ちのめそうとするのだけど、そこで諦めるベアトリスではありません。 何とかダリー・ランプから逃げながら、途中で止まった解放の呪文を再び唱え始めます。 そうして、とうとう呪文を最後まで唱えたその時……冬に閉ざされていたベイリウィック王国が春の息吹を取り戻します。
ベアトリスに負けたことが信じられないダリー・ランプは 「これで終わったわけではないぞ」 と捨て台詞を残すのだけど、そのまま姿を消してしまいます。
こうして、見事に試練を果たしたベアトリスだったのだけど、まだ3人の王女とブロムウィッチ王が残っています。
もう、こりごり
と、思いながらも今回の冒険でダリー・ランプのもたらした悲劇を目の当たりにしたベアトリスは、途中で投げ出すことができないと感じている自分に気づき、ローナ王女に残りの王女たちも救い出すことを約束します。
そうして、戻ったベアトリスたちを待ち受けていたのはすでに結果を知っている審議会の理事長たちとベアトリスたちを応援してくれていた魔法使い達。
お祝いムードの中で、ベアトリスは理事長からまだ一つ目の試験が終わっただけ、と釘をさされ、魔法使いとしての認定も、おあずけ状態に
不公平だと思いながらも、テディ、サイラス、オリーたちと魔法使いたちのパーティに参加するうちに、運命に逆らうのはやめよう、と、次に理事会から指示がきたら精いっぱい魔法をとくために頑張ろう、と不思議と静かな気持ちでベアトリスは決心することができます。
大変なことをやり遂げたのに、全然自惚れることもなく自然体のままのベアトリスに感心しました テディ、サイラス、オリー、飼い猫のトンガラシといった、仲間たちとのチームワークのよい活躍ぶりが面白かったです
次は 『ベアトリス・ベイリーの冒険(2) マンティコアと霧の沼』 です。
吉野匠
徳間書店 ¥ 900 (2010-04-16)
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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
この戦いを終わりにできる兆しが見えてきた。
しかし、移住するために必要な力を持つキーパーが次々に失踪していることをドレイクが確認する。
そんな中、天人たちはジャスリンが身を隠している“水晶宮”に侵入を試みる。
魔法封じの結界が強力なため派手な侵入となったが、誰も天人たちを追ってこない。
不審に思った星空がある部屋の扉を開けた。
そこには信じられない光景が…。
「おにいちゃん、愛してる!きっとまた逢おうね。
絶対だよっ」ふたつの世界の運命は天人に託された!(紹介文より)
〜感想〜
『三千世界の星空(3)−あの娘の武器はデンジャラス!』 に続く4作目、完結巻です。
異世界に飛ぶことができるキーパーとして、すっかり能力を使いこなせるようになった星空(そら)によって、地球以外の世界にもキーパーは飛べることがわかります。
なのに、何故ローラン世界の大神官のグローサーは、「地球にしか移住できない」 と人々に嘘をついて騙しているのか?
グローサーの目的がどうであれ、天人(たかひと)たちはローラン世界と地球との争いを阻止するため、ローラン国の王ジャスリンに真実を話して和解の道を探そうとするのだけど、そんな天人たちの計画をグローサーが黙って見ているはずもなく……。
そうこうするうちに、事態は急変。
異世界の存在を知った地球世界の人々はパニックに陥り、たちまちのうちに荒廃の道を辿ります。 天人たちは一刻も早くローラン世界で決着をつけようとするのだけど、グローサーに先手を打たれてジャスリンが殺されてしまいます。
そうして、天人たちは王殺しの犯人として濡れ衣を着せられて……。
とんでもなく嫌な性格をしていたジャスリンだったけれど、国民にとっては絶対的な存在。 そのジャスリンを殺した天人たちは復讐に燃える兵士達に追い込まれ絶体絶命のピンチに
その時、ユイが天人を抱え込み、ロレーヌ、星空が力をあわせて二人を脱出させます。
星空、ユイ、ロレーヌの3人は天人を巡る恋敵ではあるけれど、一番大事なのはやっぱり天人。 3人は天人を守るために彼に内緒で計画を立てていたようで……。
もちろん天人にしてみれば、受け入れることができません。
とはいっても、どうすることもできず……星空とロレーヌが囚われの身に
影が薄かったように思えた大神官のグローサーだったのだけど、意外と強敵(笑)で、天人たちは結構苦労させられてます。 しかも、戦える大神官でもあるようで…… ”越えた” 状態の天人とも堂々と戦いをくり広げてくれます。
天人たちがどうやってグローサーをやっつけるのか?
最後のほうで、くり広げられる作戦に思わずニヤリ
天人の ”ヒーロー” としての力が爆発して、圧倒的な勝利を迎える。
……というふうにならなかったのは物足りなかったですが、でもローラン世界と地球世界の人々が協力し合って平和を手に入れる、という結末はよかったと思います
色々ありましたが、とりあえず天人と星空は地球世界での日常を取り戻すことができました。 あとは二人だけの甘い生活を送る……というふうにはもちろんいきません(笑)
ユイ、ロレーヌも天人を追って地球世界で暮らすことになってしまったし、謎の秘密組織の影村とのつきあいも続くようで……天人と星空の未来はまだまだ波乱万丈のようです
あらすじ
伊賀一の忍び、無門は西国からさらってきた侍大将の娘、お国の尻に敷かれ、忍び働きを怠けていた。
主から示された百文の小銭欲しさに二年ぶりに敵の伊賀者を殺める。
そこには「天正伊賀の乱」に導く謀略が張り巡らされていた。(紹介文より)
前置き
『小太郎の左腕』 『のぼうの城』 で、何となく気に入って全作品を読もう、と思ったんですが、残念なことに、現時点では本作も含めて3冊だけのようでした。
でも、それぞれが違った雰囲気で面白くて読み応えがありました
次の作品も早く出るといいな〜、と思います
〜感想〜
ひと口に伊賀一族といっても複数の一族が集まった集団で、戦いをくり広げていたのだけど、そのうちの一つの一族の中でも腕利きの忍びの ”無門” は、報酬に釣られて敵の頭の次男を倒します。
その直後、敵が戦いをしかけてきたことを知らせる鐘の音が鳴り響きます。
伊賀以外の者が戦いを仕掛けてきた時は、それまでの争いをやめて一致団結して戦いに挑むのが決まりで、無門もあっさりと今倒した相手の兄に気安く話しかけます。
伊賀一族そのものが、”情” を持ち合わせておらず、親子、兄弟、夫婦といった関係でも特別な愛情を抱くことはありません。
大事なのは ”銭” だけ
報酬がもらえるなら平気で同じ一族も手にかけるし、目的のためには我が子だろうと操って捨て駒にするという、なんとも非情な一族なのだけど、ただ一人例外がいました。
それは無門が手にかけた他の一族の忍びの兄で、一族の後継ぎ平兵衛という人物。
非情な一族の中で唯一、情を持ち合わせて弟を殺されたことに憤りを感じるのだけど、そんな平兵衛の気持ちを誰も理解することができません。
無門も何故、平兵衛が怒るのかがさっぱりわからなくて腕は立つけど ”変なヤツ” と不思議がるばかり。
「この者どもは人間ではない」
そう、伊賀一族を見限った平兵衛は敵のもとにはしり、伊賀そのものを滅ぼそうと決心します。
一方、無門は西国から攫ってきたお姫様のお国の機嫌をとるために、さらなる報酬を手に入れるためにはどうすればいいか、で頭を悩ませることになります。
”情” を持っていないはずの無門ですが、何故かお国だけは頭があがらず尻に敷かれっぱなし(笑) 「不自由はさせないから」 というくどき文句で攫ってきたものの、お国が認めてくれるほどの報酬を手に入れるのはなかなか難しいようで……。
稼ぎがない無門は、家に入れてもらうこともできません
伊賀一族の中で一番の腕利き忍びなのに、お国には頭があがらない様子が微笑ましくて可笑しかったです
そんな無門にしてみれば、今回の戦は報酬を手に入れるチャンス。
渋々ながらも、とりあえず(笑)働き始めるのだけど……。
実は、そんな無門と平兵衛の行動は伊賀一族の頭たちが立てた計画のうち。
無門と平兵衛の性格と状況を利用して、本人たちも気づかないうちに操られることになってしまいます。
ところが、頭たちすらも予想しない事態が起こり、戦いの行方はとんでもない混乱状態に そんな状況の中で無門と平兵衛はそれぞれの、戦いをくり広げて行くことになるのだけど、無門にとってはとにかく ”お国が一番” なので、戦うにしてもどこか手抜き(笑)
一人だけ、のほほんとしている姿はちょっと小憎らしいくらい
でも、そんな無門に最後の最後でとんでもないしっぺ返しが待っています。
それは……お国の死
無門の強さを本当には理解していなかったお国が、危機に陥った(ように見えた)無門を助けようとあることをするのだけど、逆にその場で殺されることになってしまいます。
そうしてお国を失った無門は初めて 「おのれらは人間ではない」 と言った平兵衛の気持ちを理解することになるのだけど……。
正直、こんなにきつい性格のお国のどこがいいのかな?
と不思議に思っていたのだけど、最後のほうでお国が無門に見せた優しい姿に思わずじ〜んとしてしまいました。
できれば、無門とお国の二人で生き残ってほしかった……無門の忍としての強さにワクワクさせられたけれど、なんとも切ない結末でした
★★★★(4/5)
あらすじ
昼はマイアミ・デイド郡警察で働く鑑識チームの好青年。
しかしながら、夜は血に飢えた連続殺人鬼―それがデクスター・モーガンの人知れぬ日常だ。
獲物は自分と同じ冷酷な殺人者たち。
だが彼の二重生活は、ある奇妙な事件を機に思わぬ方向へと転がりだす。
被害者は全身を切り刻まれて、生きたまま放置されたヒスパニック男性。
あまりの凄惨な現場にだれもが戦慄するなか、デクスターだけは見たこともない手口に好奇心をおぼえ、“公私”ともに犯人を追いはじめる。
やがて捜査関係者と犯人の意外なつながりが浮上し、第二・第三の被害者が…。(紹介文より)
前置き
本作は海外ではTVドラマにもなっている人気作品で、すでにシーズン4まで制作されているとか。
私もシーズン2まで観ましたが、これが……面白い
シーズン1は、大体原作をもとにしているんですが微妙〜にストーリーが違っています。 シーズン2ではほとんどオリジナルストーリーに
とはいうものの、デクスターというキャラそのものはいい味を出してて、なかなか魅力的
道徳観のあるシリアルキラーという異色のヒーロー、デクスター。
不思議な魅力についつい引きこまれてしまい、すっかりファンになってしまいました
〜感想〜
『デクスター幼き者への挽歌』 に続く2作目です♪
前作では、幼い頃に自分に起きた凄惨な出来事を思い出し、同じくシリアルキラーになっていた実の兄と再会。 実の兄がデボラをデクスターと一緒に殺そうとしたものの、際どいところでデクスターは”殺す衝動” を抑えて、”妹” を守ることを選びました。
そうして、兄は去りデボラはデクスターの本当の姿を知ることになったのだけど、デクスターが殺すのは法律ではさばけない悪事を働いている凶悪な犯罪者たちだけ、ということもうすうす察して、デクスターを受け入れます。
そうして、しばらくは平穏な日々が戻ってきたかと思ったのだけど、 ”類は友を呼ぶ” ということわざのとおり、かつてスナイパーとして活動し、人を殺したことのあるドークス刑事はデクスターにどこか油断できないものを感じ取ります。
そうして、デクスターの尻尾をつかもうと毎日尾行し始めて……
デクスターにしてみれば大迷惑。
折りしも、自分の中の”闇の獣” が騒ぎ出し、次の獲物を狩りに行きたい衝動に駆られるのだけど、ドークス刑事がついてくるせいで、迂闊な行動ができません。
そうして、デクスターは愛すべき一般市民(笑)を装うため、ガールフレンドのリタの家を毎日訪れるという作戦にでるのだけど、いつのまにやら、そんな ”普通” の生活が気にいってきて……
このまま、普通の人間になれるのかも?
なんて、一瞬思う場面もあるのだけど、もちろんデクスターには無理(笑)
段々と、”闇の獣” を抑えるのが辛くなってきます。
とはいえ、義理の父親のハリーから叩き込まれた ”ハリーの掟” はデクスターにとっては絶対で、辛抱強くドークス刑事が諦めるのを待ち続けます。
そうこうするうちに、両手両足が切断されて胴体だけにされながらも生きている人間が発見されるという事件が発生。 芸術的ともいえるやり口にたちまちデクスターは魅せられてしまいます。
……こういうところはやっぱり、シリアルキラーです
あまりにも尋常でない事件に流石の警察も恐怖に襲われるのだけど、ドークス刑事は犯人に心当たりがあるようで、一人の捜査官に連絡をとり彼が事件の指揮を取る事になります。
デボラは、彼の補佐として捜査に加わることに。
そうして、いつものごとくデクスターに協力を求めるデボラだったのだけど、ドークス刑事に付きまとわれているデクスターにしてみれば、それどころじゃないというのが本音。 それでも、やはり可愛い妹の頼みを断ることができず、ちょっとしたヒントを与えたりするのだけど、捜査の指揮をとっていた刑事が犯人の手に落ちてしまいます
彼と恋人同士になっていたデボラはほとんど半狂乱になって、なんとか彼を探し出してくれるようデクスターに頼み込むのだけど……。
”感情がない”
と、自分で言っているデクスターですが、人としての道徳観をしっかりとハリーに叩き込まれているので、デボラに対しては兄としての義務感をしっかりと持っています。 そしてほんの少しだけ愛着のようなものも感じているのかも? 自分から愛情をかえすことはできないけれど、デボラの愛情を失うのは嫌(笑)みたいで、デボラから頼みごとをされると断ることが出来ない様子が微笑ましかったです
(……でも、微笑ましいシリアルキラーって、どうなんでしょ?)
とりあえず、デボラの頼みを聞き入れて探し始めるデクスターだったのだけど、ふと悪巧みを思いつきます。 犯人を知っているドークスにも協力してもらい、彼を囮として犯人をおびき出そう、と
そして、ドークスが犯人を捕まえてデボラの恋人の行方がわかればもうけもの、最悪もし、ドークスが犯人を捕まえることが出来ず逆に捕まったとしても、それはそれでデクスターにとっての邪魔者が
消えるという嬉しい事態になるだけ。
……ちゃっかりしてますね
もちろんそんなデクスターの思惑をしっかり見抜いているデボラはいい顔をしません。 仕方なくデクスターは作戦が成功するように努力するのだけど……。
なんというか、デクスターのキャラってどうしても憎めないところがあって、ついつい、仕方ないなぁ、と苦笑して許してしまう自分が怖かったです
そうそう、怖いといえば……今回はデクスターにとって思いがけない喜びが待ってしました。
それは……ガールフレンドのリタの二人の子供たち。
リタとデクスターはちょっとした誤解から婚約することになって、デクスターはかなり困ってしまうのだけど、そんな気持ちを吹き飛ばす出来事が起こります。
リタの子供たちコーディとアスターは父親から虐待を受けていて心に深い傷を負っています。 そのことを知っているデクスターは子供たちにはことのほか優しく接していたのだけど、ある日、コーディを釣りに連れて行ったとき……デクスターは嬉々として魚にナイフを突きたてているコーディの姿を見ることに。
その姿に、ふと過去の自分と重なるところがあって、デクスターは ”もしかして?” と疑問を抱くようになります。
そうして、機会を見計らって確かめたデクスターは二人の子供が自分と同じだと確信。
リタとの婚約を続けられるかどうか悩んでいたデクスターは、コーディとアスターの二人の ”父親” になるためなら耐えられる、とすっかり観念するのだけど……。
リタに対してずいぶん失礼な気がしますが、義務感からとはいえ彼女に優しく接して大事にしている努力は認めてあげてもいいかもしれません
なにはともあれ、思いがけず自分と同じ子供たちを見出したデクスターは、かつて自分がハリーから教えを受けたように、コーディとアスターにも同じように教育を始める楽しみができました。
……でも、これって常識で考えればとんでもない状況なんですが、”ハリーの掟” を破らない限り善良な人々に手をかけることがない、とわかっているので少しだけ安心できるのかも?
とにもかくにも、とんでもないヒーローのデクスターの活躍は、まだ続いていくのは確かのようなので、彼が ”ハリーの掟” を決して踏み外すことのないよう信じたいと思います
★★★★(4/5)
あらすじ
中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。
西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。
喜びも希望も、もちろん幸せも…。
その後のまいの物語「渡りの一日」併録。(紹介文より)
〜感想〜
学校へ行くのが嫌になってしまったまいは母親の勧めで、しばらく祖母の家で過ごすことになります。もともとおばあちゃんのことが大好きだったまいは、多少の不安を覚えながらも、一緒に暮らすうちに本当に心の底からおばあちゃんのことが好きになっていくのだけど、そのおばあちゃんからまいは意外なことを教えられます。
自分の家系は”魔女”の家系だと
まいは、自分も魔女の能力を磨きたいとおばあちゃんに修行させてもらうことにするのだけど、修行で大事なことは ”何でも自分で決める” ということ。
そして決めたことは最後までやり遂げるように心がけるということで、まいはそうできるように精神を鍛えようと頑張ります。
そうして祖母と過ごす穏やかな時間のおかげで、少しずつ癒されていくまいだったのだけど、近所に住んでいる一人の感じの悪い男性が祖母との間に諍いを起こしてしまいます。
まいにとって、その男性は自分に嫌な思いをさせる不愉快な人物なのだけど、そんなふうに ”決め付ける” のはよくない、と祖母にたしなめられてまいはつい反発してしまいます。
そうして、仲直りする間もなく気まずいまま、まいは両親の家へと戻っていくのだけど……。
その後、祖母に悪いと思いながらも自分から連絡することもなく、一度も会わないまま祖母が亡くなったとの知らせが入り……
祖母とまいの心温まる交流にほのぼのした気持ちになるんですが、ちょっとほろ苦い思いをする場面も それでも、祖母の包み込むような優しさにまいと一緒に癒される作品でした
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
王子稲荷に見守られるのんきな商店街にある日現れたあやしい店、陰陽屋。
店主とアルバイトのへっぽこコンビがお悩み解決いたします。(紹介文より)
前置き
『警視庁幽霊係』 シリーズの天野頌子さんの作品です。
ちょっと雰囲気が違っていて、面白かったです♪
〜感想〜
主人公は中学3年生の男の子、沢崎 瞬太と、ある日突然商店街に現れたうさんくさい陰陽屋のコンビなんですが、この二人の始めての出会いはあまりいいものではありませんでした。
夫がリストラにあいなかなか再就職ができず悩んでいた母親のみどりが、ちょっとした好奇心から安倍祥明(あべのしょうめい)と名乗る怪しげな陰陽屋に占ってもらおう、としたのだけど、実は瞬太自身が妖狐ということもあって、すぐに祥明がインチキだということを見破ります。
ところが、インチキだと言われても全然こたえず、逆に瞬太をからかっていいようにあしらってしまいます。 大抵はそんな態度に怒ると思いますが、瞬太の母親のみどりは逆に本当のことを言ってもらったことに感謝する始末。
「どこまで前向きなんだ、母さん」
そう呟く瞬太に 「ほんとにね」 と思わず同意してしまいました(笑)
が、みどりはさらに瞬太が祥明にくってかかったことで恐縮して謝ります。 すると祥明は瞬太をアルバイトとして雇うと言い出して……。
こうして、インチキ陰陽師と中学生のへっぽこ妖狐のコンビが誕生。
相談に訪れる人たちの問題を解決していくことになります。
この祥明、ちょっとインチキとばかりも言えない雰囲気があって、どんな秘密があるんだろう? と興味津々でした
妖狐の瞬太もまだまだ子供という感じで、一生懸命になっている姿は可愛かったです。
本人は、自分が妖狐ということをうまく隠しているつもりなのに、周囲の人々には実はバレバレというのも面白かったです
周囲の人たちが、そんな瞬太に騙されたふりをしているのも微笑ましくて……。
ほのぼのした気持ちにさせてくれる作品でした
★★★★(4/5)
あらすじ
主人公のジェベルは、やせっぽちの少年だ。
彼の住む町では、死刑執行人がとても名誉ある地位にある。
ジェベルは父のあとを継いで死刑執行人になるため、奴隷のテル・ヒサニと試練の旅に出かける…。
ジェベルと奴隷テル・ヒサニの試練の旅は続く。
危険な旅、苦難の道。
はたして日の神サッバ・エイドの元にたどりつけるのか、非情に徹して無敵の力を得ることができるのか…。勇気とは、愛とは、友情とはなにか!?(紹介文より)
〜感想〜
町長の次に ”死刑執行人” が名誉のある地位で人々からの尊敬を一身に集めているという、ちょっと変わった町ワディ。
ワディの町では ”強さ” が重視されていて、死刑執行人の次には戦に優れた戦士が憧れの対象になっています。 その他の商人や教師などは軽んじられているのだけど、死刑執行人の息子であるジェベルは、残念ながら戦士になるには体格に恵まれずやせっぽちのまま
それでも、 ”死刑執行人” の息子という人々から注目されている立場から、父親の跡を継ぐか、それが無理でもせめて戦士になりたい、と希望を持っています。
ところが、ある日父親が死刑を実行したあとで、二人の兄に一年後の競技会で優勝したほうに跡を継がせると町中の人々がいる前で公表します。
自分の名前が言われなかったことで、ジェベルは町中の人々の前で恥をかかされてしまうことに。 そうして、ジェベルは恥辱を抱えてこれから先の人生を生きて行かなければいけない、と絶望に駆られるのだけど、そんなジェベルを慰めてくれたのが幼馴染のバスティーナ。
バスティーナは、奴隷が処刑されるたびに悲しみ涙を流すという心優しい少女。 でも、そんな優しさはワディの町では理解されず、ジェベルも幼馴染としてそれなりに大事に思ってはいるものの、バスティーナのことを変わってると思っています。
ジェベルはバスティーナの慰めを受け入れず、自分も一年後の競技会に出場すると言いはるのだけど、どう頑張ってもジェベルが優勝することはありえません。
バスティーナは必死にジェベルを思いとどまらせようとするのだけど、つい、口を滑らせて失言をしてしまいます。
「火の神サッバ・エイドだって、あなたを強くすることはできない」 と。
ところが、この一言でジェベルは逆に希望を見出すことになります。
火の神サッバ・エイドの ”試練の旅” を成功させて ”無敵の力” を授けてもらえばいい、と。
”火の神サッバ・エイド” とはワディの町で崇められている神で、この神がいる北の果てツバイガート山まで自力で歩いてたどり着くと、”無敵の力” を授けられるという言い伝えがあるのだけど、実際に成功した人間はほとんどいません。
それだけ危険な旅なのだけど、ジェベルにとってはそれだけの危険をおかすだけの価値があります。
必死に止めるバスティーナをよそにジェベルは、決心を固め旅に出るための準備を始めます。
ところが、初っ端から困った問題がでてきます。
この ”試練の旅” には最後に自分の変わりに、火の神サッバ・エイドに命を捧げて犠牲をはらう存在が不可欠なのだけど、ジェベルには変わりに犠牲を払ってくれる友人も奴隷もいません。 そこで、奴隷を探すことにするのだけど……。
ワディの町では身分の高いジェベルはそもそも奴隷たちの住む地域になじみがなく、どうやって探し出していいのかもわかりません。 それでも、とりあえず奴隷たちのいる地域に行くと父親の友人とばったり遭遇。 自分が ”試練の旅” に出るために奴隷を探していることを打ち明けると、父親の友人は心当たりがあると言って、一人の奴隷のもとへジェベルを連れて行きます。
その奴隷はテル・ヒサニといい、奴隷らしくなく教養がありジェベルにたいしても卑屈な態度は見せません。 そのことがジェベルには気に入らないのだけど、テル・ヒサニは妻と子供たちが自由になることと引きかえにジェベルの変わりに犠牲になることを承知します。
そうして、ジェベルと奴隷のテル・ヒサニの ”試練の旅” が始まるのだけど……。
身分を鼻にかけるジェベルと奴隷のテル・ヒサニの関係は良好とはいえず……ワディの町をそれまで出たことのないジェベルにとってはすべてが慣れないことばかり。
逆にテル・ヒサニは他の国のことも知っていて、なるべくジェベルを危険から遠ざけようとするのだけど、「奴隷の言うこと」 なんか聞けるか、とジェベルは反抗します。
そんなジェベルの態度を軽蔑しながらもテル・ヒサニは家族の自由のために、黙々と自分の役目を果たそうとするのだけど、そんな彼の態度がまたジェベルには癪にさわります。
そんな二人ですが、旅の途中で様々な危険にあうことで少しずつ信頼し始めるように。 生まれ育ったワディの町以外の習慣や住民を知ることで、ジェベルはワディの町の特殊さを段々と認識するようになるのだけど、生まれた時から教え込まれた習慣や考え方を捨てるのはやはり難しく、テル・ヒサニに対しても友情を感じるようになりながら、そんな自分の変化を受け入れることがなかなかできません。
そうこうするうちにテル・ヒサニとはぐれ、ジェベル自身が奴隷の立場に置かれる羽目になって……
傲慢で同情心を持たず、奴隷を同じ人間だと思っていなかったジェベルが ”試練の旅” に出る事で、少しずつ変化して成長していく姿が頼もしかったです。
奴隷のテル・ニサニとの友情を育んでいく様子には温かい気持ちになりました。
でも、二人が友情を深めていくたびに、旅の終りに待ち受けている運命が意識されて……ジェベルは、本当にテル・ヒサニを犠牲にするのか?
気になって仕方なかったんですが、いざその時がきたときジェベルが選んだのは……。
思わずもらい泣きしそうになりました
テル・ヒサニの友情とジェベル自身の思いやりの心のおかげで、火の神 サッバ・エイドはジェベルに ”無敵の力” を授けてくれました。
”試練の旅” の本当の意味を知らされたジェベルは自分の ”無敵の力” を人々のために役立てることを決意します。
そうして、ワディの町に戻ったジェベルはある行動に出るのだけど……。
”試練の旅” に出た最初の頃とは段違いに成長したジェベルの姿に感動しました ほとんどの人間が自分の敵という状況の中で、意志を貫いてくじけなかったジェベルは偉かったです
六道 慧
光文社 ¥ 660 (2010-04-08)
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★★★★(4/5)
あらすじ
老中首座・松平信明の策謀と、姿を見せぬ大藩の思惑。
幕府御算用者の生田数之進が潜入した信濃国藤吉藩は、三派に分かれた御家騒動の渦中にあった。
座敷牢に押し込められた前藩主・折原忠晴が守っているものは何か?そして、敵方に廻った竹馬の友との対決の行方は?(紹介文より)
〜感想〜
『護国の剣−御算用日記(10)』 に続く11作目です♪
今回の潜入先は藤吉藩。
前藩主が河豚の毒に当たって 藩主の座を退き、後を継いだのは弟という状況の中での潜入になるのだけど、いざ潜入してみると事態は思っていたよりも複雑で……。
前藩主は座敷牢に押し込められてはいるものの、ある程度行動の自由がありさらには忠臣も側に控えています。
弟の現藩主とは仲が悪いとの噂が流れているのだけど、数之進はその噂の真偽が怪しいことを見抜きます。 前藩主と現藩主と言葉をかわすうちに、数之進はどうやら二人は協力して藤吉藩を狙う老中松平信明の策謀を阻もうとしているらしいことがわかってきます。
そんな二人の人柄に敬服した数之進はなんとか、二人の計画を成功させようと親友の一角と行動し始めるのだけど……。
困ったことに、国許で数之進のかつての親友だった男がこともあろうに松平の手先として先に潜入していて、何かと数之進に絡んできます。
実は、この親友は数之進の許婚も無理やり奪ったという、とんでもない男なのだけど、何故だか数之進に対して対抗心を燃やし、とにかくやりこめようとむきになっています。
本当なら、数之進のほうが怒る立場なのに……何故?
実際、数之進は今でも許婚だった女性のことを忘れておらず、ひどいやり方で自分から許婚を奪った男のことも恨んでいます。
それでも、私情をはさんではならない、と気持ちを抑えて御算用者としての役目を果たそうとするのだけど、どうしても相手のほうは数之進をほうっておくことができないようで……。
今回は思いがけず数之進の、ほろ苦い過去が明かされています。
底抜けのお人よし、のような数之進にこんな過去があったとなんて……と、読んでいてちょっと切なくなりましたが、優しく真っ直ぐな人柄はそんなことがあっても変わらないままなんだな、と嬉しい気持ちにもなりました。
数之進にとっては気持ちに区切りをつける節目にもなったと思うので、これから先は彼に想いをよせるお世津と幸せになる方向にいくといいな、と思います
少しほろ苦い結末でしたが、数之進をさりげなく支える一角の友情のおかげでほんのり温かい気持ちで読み終えることができました
次は 『甚を去る−御算用日記(12)』 です。