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つかまえてたもれ<姫様お忍び事件帖1>/沖田 正午
JUGEMテーマ:読書

★★★☆(3.5/5)

あらすじ

「芋侍のにいちゃん、可愛いねえちゃん半刻ほど貸せよ」武州槻山藩主から休みをもらって江戸に出た小坂亀治郎は、道を尋ねてごろつきに囲まれた。
怪しい侍から助けてやったお鶴ちゃんが、なぜか旅の道連れになってしまい、吉原遊びを断念したばかりだった。
武州訛りで風采の上がらぬ亀治郎とお鶴ちゃんの、心がほっこり爆笑珍道中の始まり始まり。(紹介文より)

〜感想〜

見かけは冴えないけれど、剣の腕前は一流という勘定方の小坂亀治郎は、偶然のなりゆきで藩主の共侍として江戸まで護衛をすることになります。 無事に役目を果たした亀治郎は、藩主からねぎらいの言葉をかけられ、7日に休日を与えられます。
亀治郎にとっては、初めての江戸。 そこで、もし江戸に来られることがあったら、ぜひ行きたいと前から思っていた 「吉原」 に行くことに。(やれやれ 笑

ところが、なんといっても慣れない場所で勝手がつかめず、おまけにこの亀治郎、田舎者丸だしといった風情で……。スリにお金をすられたのにも気づかず、腹ごしらえをして支払いをする時になって、初めてわかるという始末。
もちろん、店の者は怒ります。 もめ事になりそうになったその時、「きゃーっ」 という若い娘の悲鳴が聞こえてきて、亀治郎はとっさに助けに走ります。

すると若い娘が数人の侍に取り囲まれて無理矢理つれて行かれそうになっていて……。 亀治郎は娘を助けようとするのだけど、なんといってもみかけが冴えないので、相手は端からなめた態度。

でも、そんな相手を見事な身のこなしで撃退して、亀治郎はあっというまに娘を助け出します。 そうして、その場を立ち去ろうとするのだけど、なぜか娘が亀治郎の後をついてきて……。
お鶴という名前のその娘を放っておくこともできず、「吉原」 に行くことをあきらめて(笑)、成り行きで一緒に行動することに。 そうして、とりあえずご飯を食べようと茶屋に入るのだけど、またもや若い娘の悲鳴が

お鶴の時と同じように助けにいく亀治郎だったのだけど、今度の娘は 「よけいなことをして」 と逆に迷惑がる始末。 すっかりおもしろくなくなった亀治郎はさっさとお鶴の待っている茶屋へ戻ります。
すると、亀治郎とお鶴の関係を誤解して、冷たい視線で見ていた茶屋の客の老人二人が、誤解していたことに気づいて、態度を和らげて気さくに話しかけてきます。

実は、この老人二人は…… 『子連れ用心棒シリーズ』 の主人公竜之介の用心棒仕事を紹介したり、何かと力になっていた口入れ屋の主、善六とその友達の渡世人だった徳五郎
懐かしい二人の姿に嬉しくなりました 用心棒シリーズの時から20年という年月が過ぎていて、すでに二人は隠居の身ではあるのだけれど、亀治郎とお鶴の曰くありげな様子に興味を持ったことで、元気を取り戻していきます。

その後、亀治郎が助けた二人目の娘、お秋が自分から近づいてきて、行方のわからない姉を探すのを手伝ってほしいと言い出して……。
どうやら、亀治郎にきつい態度をとったのには理由があったらしく、お秋の話を聞くことに。
そうして、亀治郎、お鶴、お秋は善六の家に集まってお互いの話をすることにするのだけど……。

お鶴の正体がわかってびっくり なんとご三郷の姫君で…… 亀治郎も田舎者とはいえ武士に変わりはなく、とんでもない相手と関わりになってしまったと青くなってしまいます。
下手したら、切腹という事態にもなりかねないことに思い当たった亀治郎はお城に戻るよういい聞かせるのだけど、お鶴は戻れば顔をあわせたこともない相手の嫁入りしなければなりません。 それが嫌で逃げ出したからには、素直にうん、と言うわけもなく……。
困り果てながらも、結局お鶴を無理矢理戻すことはできず、とりあえず、亀治郎たちはお秋の姉を探し出す手伝いをすることに。

お姫様のお鶴に振り回される亀治郎たちがおもしろかったです
亀治郎もいざというときには度胸が据わっていて、かっこよかったです
一番おもしろかったのは亀治郎のなまり(笑) お秋の姉を誘拐した一味もなまってて、亀治郎との対決場面で 「〜だべ」 とお互いに国元の言葉で言い合ってたので、緊張感があまりなかったのがおかしかったです

なにはともあれ、亀治郎たちの活躍で無事にお秋の姉を助けることができました。 
でも、まだお鶴は家に戻ろうとはしていないし、亀治郎の休日も残っているので……もう一騒動くらいはありそうな気がします
次は 『それみたことか<姫様お忍び事件帖2>』 です。(H23年7月6日(水)UPしました♪)




 

| 時代 | 21:37 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
極北のハンター(上下)/ジェイムズ・バイロン・ハギンズ
ジェイムズ・バイロン ハギンズ
早川書房
---
(2000-05)
Amazonランキング: 670634位

ジェイムズ・バイロン ハギンズ
早川書房
---
(2000-05)
Amazonランキング: 636735位

JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

莫大な財産を持つ富豪にして、自然を知り尽くした男、ハンター。
山中で密かに暮らす彼のもとにある日、謎の男たちが訪ねてきた。 アラスカで正体不明の巨獣が出現し、米軍施設の警備にあたる兵士たちを惨殺した。 その巨獣を抹殺するために力を貸してほしいというのだ。
ハンターは唯一の友である大狼を連れてアラスカへ赴く。 そこで彼は戦闘のプロたちから成る精鋭部隊と合流、巨獣を追って森林の奥に踏み込んでいくが……(紹介文より)

前置き

作者のジェイムズ・バイロンさんの作品は何気なく手にとった 『凶獣リヴァイアサン』 (上下)を読んだのが初めてだったんですが、この作品で主人公が遺伝子操作によって生み出された怪物との死闘を繰り広げる中で、見せてくれた勇気、友人との友情や愛情、奇跡に感動しました。
きっと、ほかの作品も面白いに違いない! と探してみたら 『極北のハンター』 と 『殺戮者カイン』 の2作品があったので、まずは本作を読んでみることに♪

〜感想〜

訓練された兵士たちをまたたくまに全滅させた 正体不明の ”獣” を見つけだして抹殺する作戦に参加することになった、ナサニエル・ハンター。 彼は、すぐれたトラッカー(追跡者)で、山中で迷子になった子供を探し出したり、絶滅したと思われていた動物を見つけだしたり、果ては医療に役立つ数種の植物を発見したり、とその能力は測り知れない人物。
しかも、その発見によって大富豪になりながらも、贅沢に浸ることなく相変わらず普段は山中で生活していて……。
そばにいるのは大狼のゴーストだけ。

そんなハンターが、なぜ今回の依頼を引き受けたかというと、その”獣” が今も移動を続けてその先々で同じように殺戮を繰り返すことを聞かされたからなのだけど、実はこの話にはとんでもない裏があって……。 途中で戦闘のプロフェッショナルたちと合流したハンターは、”獣”の残した跡を追って彼らを導くのだけど、そんな彼らを ”獣”もまた待ち受けていて逆に襲いかかってきます。
しかも、その”獣” の戦闘能力はあまりにも高く、ハンターたちは最初の戦闘でとんでもない恐怖にさらされることになります

いったい、この”獣”はどんな生き物なのか? どんな習性を持ち、どこに弱点があるのか? 知能はどこまであるのか? 
とにかく、なにもわからないまま、ハンターのトラッカーとしての優れた能力と知識をたよりに、狩る側から狩られる側へと追いやられたチームは生き残りをかけて死闘を繰り広げることになります。

そうしてハンターは普段は抑えている戦士としての本能を全開にして、獣と渡り合うことになるのだけど、この二人(?)の戦いがものすごい
ハンターに出会うまでは無敵だった”獣”は、自分を傷つけたハンターを激しく憎んで執拗に彼を殺そうとするのだけど、その度にハンターはある時は一人で()、またある時は友人の大狼のゴースト、仲間たちと協力しあって撃退するのだけど、その凄まじい攻防には手に汗握りながら読んでました
命がけの戦いの中でチームの一員で狙撃手の女性とのロマンスなんかもあったり、CIAの絡んだ陰謀があったり、と盛りだくさん(笑)なストーリーにすっかり引き込まれました。

最後にどちらが勝つのか?
生き残るのは誰なのか?

最後の最後まで気が抜けないスリルあふれる作品でした



| アドベンチャー | 21:52 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
顔のない敵/石持 浅海
石持 浅海
光文社
¥ 900
(2006-08-22)
Amazonランキング: 649431位

JUGEMテーマ:読書

★★★☆(3.5/5)

あらすじ

1993年、夏。
カンボジア、バッタンバン州。
地雷除去NGOのスタッフ・坂田洋は、同僚のアネット・マクヒューと、対人地雷の除去作業をつづけていた。
突然の爆発音が、カンボジアの荒れ地に轟く。
誰かが、地雷を踏んだのだ!現地に駆けつけた坂田とアネットは、頭部を半分吹き飛ばされたチュオン・トックの無惨な死体に、言葉を失った。
チュオンは、なぜ、地雷除去のすんでいない立入禁止区域に踏み入ったのか?そして、これは、純然たる事故なのか?坂田の推理が地雷禍に苦しむカンボジアの哀しい「現実」を明らかにする―。(紹介文より)


〜感想〜

本作は ”対人地雷” をテーマにした短編集になります。
地雷除去のNGOスタッフの坂田の話から始まって、それぞれの短編の登場人物たちが微妙につながっている設定が面白かったです

ほかの短編で登場した人物が、次の短編では主人公になっていたり、逆にわき役になっていたり、といった違いによって登場人物たちに深みが出てたように思いました。
”地雷” というのは、一般の民間人には馴染みのないものですが、地雷の恐ろしさと、その近くで暮らさざるを得ない人々の苦悩が伝わってくる作品でした。




| みすてり | 23:20 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
夏季限定トロピカルパフェ事件/米澤 穂信
JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。
賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。
諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を!そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!?(紹介文より)

〜感想〜

『春季限定いちごタルト事件』 に続く2作目です。 
前作で、小鳩くんが以前は自分の知っていることは何でも口にだし、自分の知らないことを他人が知っていれば憎まれ口に負け惜しみ、というなんとも小賢しい性格の ”狐” で、小山内さんが自分に危害を加える相手を容赦なく徹底的にたたきつぶすことが大好きな性格の ”狼” だったことがわかりました。

一見、内気でおとなしそうな小山内さんが、まさかそんな性格だったとは……かなり意外でした が、前回はついつい以前の性格を抑えきれず、小鳩くんも小山内さんも”小市民”とはほど遠い行動をとってしまいました。
反省した二人は、気持ちを新たに”小市民の星”(笑)を目指そうとするのだけど……。

小山内さんが、不振な行動をとり始めます。 
何かがおかしい、と感じながら理由がわからない小鳩くんだったのだけど、そんなある日小山内さんが誘拐されてしまいます

心配する小鳩くんだったのだけど、同時に不思議とわくわくする自分を自覚して、自己嫌悪に。
とはいえ、そんな小鳩くんの以前の小賢しさが役立つことも確か。 小山内さんが監禁されている場所を持ち前の推理力で突き止めて、非常事態の時に唯一頼りにできる小学生のころの友人にも協力してもらって小山内さんを助けにいく小鳩くんだったのだけど……。

実は、この誘拐事件を仕組んだのは……なんと小山内さん自身
もちろん理由があって、小鳩くんもそのことはすぐにわかるのだけど、でも、小山内さんを助け出したあとでどうしても自分の考えを確かめずにはいられなくなってしまって……。

結局は、そのことで小鳩くんと小山内さんの協力関係は終わりをむかえることになってしまいます
 結論として、小鳩くんも小山内さんも自分の本当の性格を抑えることができない、ということをお互いに自覚することに。 そうなれば、二人がそばにいる理由がなくなります。 
そうして、小鳩くんと小山内さんは離ればなれに。

結構、いいコンビだったのでこの展開は残念でした。 
このあと、二人は元に戻ることはないのか? 気になります。。。



 

| みすてり | 20:53 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
春季限定いちごタルト事件/米澤 穂信
米澤 穂信
東京創元社
¥ 609
(2004-12-18)
Amazonランキング: 35672位

JUGEMテーマ:読書

★★★☆(3.5/5)

あらすじ

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。
きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。
それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。
名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?(紹介文より)

前置き

映画 【インシテミル 7日間のデスゲーム】 を観て、面白かったので原作者の米澤穂信さんに興味を持ちました
結構、作品数があってどれから読むか迷ったんですが、可愛いイラストに引かれて本シリーズを読むことに。 でも、読んでみると意外とほろ苦い内容で……。 
そんな意外性が面白かったです

〜感想〜

主人公は、小鳩君と小山内さんという二人の男女。 二人は共通の目的を持っていて、その目的をかなえるためにお互いの存在を利用する協定のようなものを結んでいます。 
その共通の目的というのは……

”めざせ、小市民”(笑)

目立たず出しゃばらず、ただただ慎ましく小市民として生きたいと願っている小鳩くんと小山内さんなのだけど、でも、なぜそんなふうに思っているのか? 数編の短編で話は進んでいくのだけど、その理由がなかなかあかされないので、読んでいても謎ときよりも、そちらのほうが気になって気になって(笑)

今の小鳩くんも小山内さんも地味でおとなしい印象ではあるのだけど、謎ときをしていくうちに、どうやら以前はそんな印象とは正反対の性格をしていたことが少しずつわかってきます。 そして、そんなクセのある性格が災いして、過去に手ひどく傷ついたようです。 
二人が小市民を目指すようになったのは、そういったいきさつがあったことが明かされるのだけど、小山内さんの正体が予想外なもので……ちょっとびっくりしました(笑) 小鳩くんのほうは、話が進むうちになんとなくわかったので、それほど驚きはなかったんですけどね

ただ、そんな二人の努力もむなしく、やはり性格というのはなかなか簡単には変えられないようで、以前の自分たちについ戻ってしまうことも 果たして二人は ”小市民” になることができるのか? 本作で反省しつつ、次の 『夏期限定トロピカルパフェ事件』 に続きます 
ちなみに、この可愛い(?)タイトルは、小山内さんが大好きなスイーツからきてます




| みすてり | 22:57 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
凶鳥の如き忌むもの<刀城言耶シリーズ2>/三津田 信三
JUGEMテーマ:読書

★★★☆(3.5/5)

あらすじ

〜感想〜


『厭魅(まじもの)の如き憑くもの<刀城言耶シリーズ1>』 に続く2作目です。 
怪異譚を求めて世界中を旅する刀城言耶は知人から瀬戸内にあるある島で密かに行われる<鳥人の儀>と呼ばれる儀式の立会人として参加することになります。

とはいっても、実際にどんなことをするのか? 
儀式の内容は秘められたまま。 
島の住人3人と儀式を行う巫女の弟、言耶と同じく外部から来た女学生、それぞれが儀式の見届け役となるのだけど……儀式の直後に密室だったはずの場所から姿を消してしまいます。

数年前に起きた先代の巫女の謎の失踪事件と同じように……

いったい、どうやって姿を消したのか? 巫女は無事なのか? 
刀城言耶は、一緒に儀式に立ち会っていた島の人たちと、謎を突き止めようとするのだけど、そのうちの一人が姿を消してしまい……。 謎は深まっていくばかり

今回は ”鳥女” という化け物が関わってくるのだけど、本当に鳥女の仕業なのか? それとも人間の仕業なのか? 前回と同じように、最後の最後まで区別がつきません  刀城言耶の推理を読んでるうちに、結局どうなの と、じれったくなっちゃいました(笑)

そうして言耶が突き止めた真相はというと……。
う〜ん……ちょっと、違う方向に行っちゃったような? 
今一つ収まりがよくなかったような気がしました。

とはいえ、得体の知れない怖さはひしひしと伝わってきたので、そういうところは素直に楽しめる作品でした




 

| みすてり | 21:42 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
厭魅(まじもの)の如き憑くもの<刀城言耶シリーズ1>/三津田 信三
三津田 信三
講談社
¥ 950
(2009-03-13)
Amazonランキング: 52951位

JUGEMテーマ:読書
 
★★★(3/5)

あらすじ

憑き物筋の「黒の家」と「白の家」の対立、「神隠しに遭った」ように消える子供たち、生霊を見て憑かれたと病む少女、厭魅が出たと噂する村人たち、死んだ姉が還って来たと怯える妹、忌み山を侵し恐怖の体験をした少年、得体の知れぬ何かに尾けられる巫女―。
そして「僕」が遭遇した、恐るべき怪死を遂げてゆく人々と謎の数々…。(紹介文より)


〜感想〜

怪奇小説家の刀城言耶は、小説のネタを求めて各地の ”怪異譚”を集めていたのだけど、そのうちに小説のため、というよりも ”怪異譚”そのものを集めるのが目的になってしまいます。 今では、とにかく自分の知らない話、聞いたことのない話に目がなくて、初めて聞く話には態度が豹変する始末 その変わりようには周囲の人々も思わず引いちゃうほど(笑)

そんな言耶が訪れた村では、さぎり という名の巫女がいて、得体の知れないものに憑かれた人から憑きものを落とす役割をになっているのだけど、そういった怪しいモノの中でも一番おそれられているが ”厭魅”(まじもの)

ある日、その”厭魅”が現れたのでは? 
と危惧するほどの異様な殺人事件が起こり始めます。しかも、その犯人は巫女のさぎりとしか思えない状況で……  図らずも巻き込まれる形になった言耶は、謎を突き止めようとするのだけど……。

犯人が人間なのか、それとも本当に人外のナニカなのか?
判断がつかない曖昧さと、なんともいえないおどろおどろしい気味悪さがいい味だしてました

ただ、登場人物たちの名前が……同じ名前の人物がたくさんいたり、読みづらい文字が使われているのは、ちょっと困りました 時代が終戦後ん十年くらいのようなので、名前が古めかしいのは仕方ないにしても、うめ、とか ちよ とか、そんな覚えやすい名前にしてほしいな〜、なんてちらっと思ったり(笑)

本シリーズは怪異譚を集める小説家の刀城言耶が探偵役ですが、民族学なんかもでてきたりするので、雰囲気としては京極夏彦さんの 『巷説百物語シリーズ』 と 北森鴻さんの 『連城那智シリーズ』 を足したような感じだったのだけど、独特のおどろおどろしさ、というか思わず背筋がぞっとするような、気味悪さは格別なので、2作品とはまた違った面白さを味わえる作品でした

次は 『凶鳥の如き忌むもの<刀城言耶シリーズ2>』 です。


| みすてり | 19:18 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
ミストクローク−霧の羽衣(3) 永遠(とわ)の大地/ブランドン・サンダースン
JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

“西領”の王ヨーメンに囚われたヴィン。
金属が尽き絶体絶命の彼女の前に、“破壊”神が姿を現し世界への疑念をあおる。
そしてコロス軍を率いてファドレクス・シティを包囲するエレンドは決断を迫られる―霧の正体とは、コロスやカンドラ、テリス族はなんのために存在するのか、ヴィンとエレンドが導く“破壊”神と“保存”神の争いの行方は?(紹介文より)

〜感想〜

『ミストクローク−霧の羽衣(2) 古からの声』 に続く3作目、シリーズ完結巻です。
本シリーズもとうとう完結と思うと、寂しい気がしますが同時にすべての謎が明らかにされるという、期待感のほうが大きかったです

さて、前作でエレンドに敵対しているヨーメンに囚われてしまったヴィンでしたが、そんなヴィンの前に ”破壊神” が姿を現します 
すべてのものごとが破壊神の計画通りに進み、今や世界は破滅に向かい始めています。 そんなことから破壊神はヴィンの前で得意げな態度をみせるのだけど、でも、そんな態度の中に隠された ”怯え” のようなものがあることにヴィンは気づきます。
破壊神は何を恐れているのか? 最終的に何が目的なのか?
ヴィンは突き止めようとします。

一方、ヴィンを奪われてしまったエレンドはとうとう前向きな希望を抱くことに疲れ、一人絶望に刈られるのだけど、その時 ”意志をもった霧” が側によってきてエレンドに何かを伝えようとします。 明確な意思の疎通はできなかったものの、まだ世界を破滅から救うためにできることがあることを確信したエレンドは再び、戦う意思を取り戻します。

そして、別の場所で戦っていたセイズド、スプークたちもまた、何者かによって自分たちが操られていた事に気づき、ヴィンへそのことを伝えようとするのだけど、破壊神の手先になってしまったマーシュ(ケルシャーの兄)によって使者は殺されてしまいます。
ただ、まだかすかにマーシュ自身の意思が残っていて、この時にマーシュが使者から得た情報が最終的にヴィンを助けることになります。

そうやって、それぞれが世界の破滅を止めようと戦っているなかで、ヴィンは一人破壊神に立ち向かうことになるのだけど、破壊神の手先の尋問官たちの強さには敵わず、今まさに殺されようとしたその時、止めをさそうとしていたマーシュがヴィンのつけている鉄でできたイヤリングをもぎとります。

それこそがスプークがヴィンに知らせたかったことで、破壊神はほんのわずかでも鉄があればその人物の意識に入り込み操ることができる、という秘密だったのです。

ほんのわずかながら自分の意思を取り戻したマーシュが、土壇場でそのことを思い出して助けようとしたことでヴィンは破壊神の影響から解放され、周囲の霧を体に取り込んで ”保存神” の力を使うことができるようになります。
”破壊” しようとする破壊神に対して ”保存” しようとする保存神との戦いはヴィンが受け継ぐことになりました。
そうして、今までとは逆に今度はヴィンが尋問官たちを追いつめて次々に倒していき、最後にマーシュ一人が残されます。

やはり、ケルシャーの兄でかつての仲間だったマーシュを殺すことはできず、ヴィンは彼をそのまま見逃します。 そして、自由になったヴィンはエレンドの元へ戻り、囚われていた間に探り出した破壊神の目的と弱点を利用して倒そうと計画を立てるのだけど……。

もう、とにかく今までの謎のすべてが一気に明らかにされていくので、その勢いには圧倒されました 閉じ込められていた ”強大な力” は実は ”破壊神” だったとか、その存在を抑えつけていたのが ”霧” に潜んでいた ”保存神” だったとか、 ”支配王” が実は本当に人々のために一人孤独な戦いを続けていたとか、等々。

……そうだったのか
というような驚きが結構ありました

そして、なんといっても最大の驚きは……
ヴィンとエレンドの運命。

そういう結末か
と、びっくりするやら悲しいやらで。
ストーリー的には納得できるけれど、感情的には納得できませんでした。
壮大なストーリーと斬新な世界観で楽しませてくれただけに、個人的には最後はちょっと残念でした

なにはともあれ本シリーズはこれで終りですが、解説からの情報では作者のブランドンさんは数百年後の話を考えられているとか。 セイズド、テンスーン、(多分)マーシュが再登場することはあるかもしれないそうです。 ただ、やはりヴィンとエレンドが再登場するのはないということで……残念

本シリーズは素晴らしい作品でしたが、どちらかというと 『エラントリス−鎖された都の物語』(上下) のほうが好みかも





 
| ファンタジー | 20:47 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
ミストクローク−霧の羽衣(2) 古からの声/ブランドン・サンダースン
ブランドン・サンダースン
早川書房
¥ 987
(2010-11-24)
Amazonランキング: 25369位

JUGEMテーマ:読書

★★★☆(3.5/5)

あらすじ

解き放たれた“破壊”神が、人々を戦わせ世界を破滅に導いている。
隠された貯蔵庫を探し求めるエレンドとヴィンは“西領”ファドレクス・シティの舞踏会で、街の支配者ヨーメンと対峙する。
いっぽう“北領”のウルトーは、ケルシャーを崇拝する“同志市民”クェリオンが支配していた。
貯蔵庫を探してこの街に来たセイズドとブリーズは、先に潜入していたスプークと合流するが?!(紹介文より)

〜感想〜

『ミストクローク−霧の羽衣(1) 新たな救い手』 に続く2作目です。

ヴィンたちが ”支配王” を倒してから、エレンドを王とは認めない貴族たちと戦いになったり、霧が人々を殺すようになったり、と、平和になるどころか逆に世界は混乱の度合いを深めていってしまいました。
解決策を模索するエレンドとヴィンたちは世界の破滅を防ごうと ”即位の泉”に封印されていた ”力” を解放したものの、その力の正体は破滅に導こうとする ”破壊神”で

エレンドとヴィンと仲間たちは、”破壊紳”を止める方法を求めて”支配王”が、人々が生き残れるように残した、食料を保管した貯蔵庫や、破壊神を滅ぼすための手がかりを追っていきます。 ところが、必要な情報がある街はエレンドとヴィンを憎んでいる貴族ヨーメンが支配していて、エレンドの要求をはねつけます。
戦わざるを得ない状況になるのだけど、ヨーメンのヴィンに対する憎しみは、想像以上で……
ヴィンはヨーメンの狡猾な罠にはまり、囚われの身に。

一方、北領のウルトーに派遣されたセイズドとブリーズたちは、ケルシャーを崇拝して貴族たちを殺している”同志市民”クェリオンを排除して、支配王が残した貯蔵庫を手に入れようとしているのだけど、なかなか思うようにいきません。
そんな時、先に潜入していたスプークが、”炎の生き残り”としてウルトーの住民たちから英雄視されていることがわかります。
不器用な少年から、いつの間にか自信にあふれた青年に変わっていたスプークの姿に、不思議な思いを抱くセイズドだったのだけど……。

本シリーズもいよいよクライマックスにむけて、謎が次々にあかされています。
”支配王” がなにを考えていたのか、”破壊神” とは何なのか、”合金術” の秘密は 等々、今まで謎だったことが解き明かされていくごとに、「そうだったのか」 とびっくりするやら、感心するやら  今回、ヴィンが囚われの身になってしまったので、次回はエレンドの活躍が見られるかも と期待してます

次はいよいよシリーズ最終巻 『ミストクローク−霧の羽衣(3) 永遠)とわ)の大地』 です。



 

| ファンタジー | 21:23 | comments(0) | trackbacks(0)|- pookmark
ミストクローク−霧の羽衣(1) 新たな救い手/ブランドン・サンダースン
JUGEMテーマ:読書

★★★★(4/5)

あらすじ

支配王亡きあと混乱し、戦の果てに飢えた帝国を救うため、予言をたよりに「即位の泉」を発見したヴィン。
だが、彼女が解放した力は悪しきものだった…。
それから一年が過ぎ、新皇帝にして霧の落とし子となったエレンドはヴィンとともに帝国全土を旅していた。
街や人々を獣人軍の襲撃から、そして「深き闇」こと霧から守るため―(紹介文より)

〜感想〜

『ミストボーン−霧の落とし子』 『ミストスピリット−霧のうつし身』 と続いた本シリーズも、とうとう最終章となりました。 すべての謎が解き明かされた時、ヴィンとエレンドたちはどうなるのか? ……ドキドキします

”ミストクローク”で、いよいよシリーズは完結になるわけですが、相変わらず問題は山積み  ”ミストボーン” で、”霧の落とし子”として目覚めたヴィンが ”支配王” を倒したまではよかったけれど、反乱のリーダー、ケルシャーは命を落とすし、奴隷に同情していた貴族のエレンドが新たな王として即位して民衆を導くことになったけれど、ほかの貴族たちの抵抗にあって、退位に追い込まれてしまうし……

なにもかもがうまくいかなくなってしまい、ヴィンたちは最初の頃のように希望を抱き続けることができなくなってしまっています。そんな状況を打開するための手段を得ようと力が封じ込められているという<即位の泉>へ旅をするヴィンとエレンドだったのだけど、そこで待ち受けていたのは長い間泉のそばに封じられていた ”悪しき力”で、ヴィンははからずもその力を説き放つことになってしまいます

一方、エレンドは<即位の泉>の場所で 霧にひそむ”ナニカ”によって死にかけたものの、そのことがきっかけで彼もまた ”霧の落とし子” として目覚めることに。 そうして、再び王位についたエレンドと彼の妻となったヴィンは人々を守るための戦いに身を投じていくのだけど……。

すっかりたくましくなったエレンドの姿にちょっとびっくり(笑)
人に命令するのも、苦手だったはずなのに強引に命令に従わせるようになってました。 もっとも、そうならなければ次から次へと降り懸かってくる困難に立ち向かえないっていう切実な理由があるから仕方ないことなんですけどね

彼もまた ”霧の落とし子” になったことでヴィンはだいぶん楽になったようです。相変わらず甘いところは残っているけれど、少なくとも一緒に戦うことができるので、エレンドの身を案じる気持ちに変わりはないものの、前ほど過保護(笑)ではなくなっています。

前昨で解き放たれた”悪しき力”の謎や、人々を殺すようになってしまった”霧”の謎を突き止めて、ヴィンたちが人々をどうやって助けていくのか? 先行きが楽しみです♪
次は 『ミストクローク−霧の羽衣(2) 古からの声』 です。




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