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★★★☆(3.5/5)
あらすじ
美貌の著述家・龍緋比古(りゅうあきひこ)のもとに一通の手紙が届いた。送り主は青森の寒村に住む女子高生。そこには、百年に一度行われるという「御還り祭」なる妖しき儀式と、不安が綴られていた。ある疑念を抱いた龍は一路東北へ向かった。一方、龍の不可解な行動に胸騒ぎを覚えた秘書の柚ノ木透子(ゆのきとうこ)とメイドのライラも後を追った。だが、龍たちを待ち受けていたのは、人外の妖物と、吸血鬼「御還り様」を中心とする村の異端者抹殺の歴史だった…!(紹介文より)
〜感想〜
『龍の黙示録』 に続く2作目です。
前作で、透子の記憶を消して時間を戻す()という荒技を披露してくれた龍緋比古でしたが、そんな龍の力も透子にはきかなかったようで……しっかり龍緋比古のことを思い出して、以前と同じアシスタントとして龍の家に住み込むことに(笑)
さすが透子です
メイドのライラは龍の血を与えられた唯一の魔物で、最初は透子のことを敵視していたものの、今ではすっかり彼女のことが気に入っています。 龍が透子に惹かれていることも、薄々感じていてちょっとだけ嫉妬を覚えながらも、そんな龍の態度をじれったいとも思っていて……。 透子にとっては小姑(笑)になるのかな、と思いますが、幸いにも気に入ってくれたので頼りになる味方になりそうな感じです。
そうして肝心の張本人の透子はというと……。
あいにく、恋に関してはとんでもなく鈍感のようで、龍が自分に好意を持ってくれていることにも気づいていません ……まあ、透子らしいといえば言えますね。微笑ましいことは確かです(笑)
そんなある日、龍が突然姿を消します。
「一週間ほど留守にします」 といった簡単な置き手紙を残して。
それを見てライラは大騒ぎ。
どうやら、龍の態度がおかしいことに気づいていて、何かが彼の身に起きたと思っていたらしく、龍の後を追おう、と透子に言い出して……。
あいにく、ライラほど龍の態度を把握していない透子は今一つ乗り気になれないのだけど、事前に龍を訪ねてこようとした正体不明の男の存在や、曰くありげな手紙のことを知ってとりあえずライラとともに龍の後を追うことに。 そうして龍の足取りをつかもうと調べるうちに、イエス・キリストの息子だという存在が関わっていることがわかってくるのだけど……。
龍にとってはイエス・キリストは唯一無二の特別な存在。
そんな彼の息子と名乗っている相手と龍が出会ったら……
不安に駆られるのだけど、そんな二人の前に不思議な力を持つ子供が現れます。 どうやら龍のことも透子たちのことも知っているようなのだけど……。
まだまだ龍のことが、わからない透子ではあるのだけど、後ろ向きな考えにとらわれそうになった龍をびしばし叱りつける姿が素敵でした
今回の出来事をとおして、龍という存在の孤独や哀しみに触れた透子は、自分が彼に抱く気持ちを自覚することになります。
その気持ちが同情なのか、愛なのか はっきりするには、まだ少し時間がかかるようです
次は 『唯一の神の御名<龍の黙示録3>』 です。
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
保険会社を馘になり、職を探す柚ノ木透子は、秘書の仕事を紹介された。
雇主の名は龍緋比古。
美術評論や翻訳を手がけ、オカルト分野では有名な著述家だという。
明治期にも同名の人物がいることから、「龍は吸血鬼だ」と先輩から脅される透子。
が、白皙の美貌を持つ彼に気味悪さを覚えつつも、鎌倉の古びた館に通うことになった。
一方、東京では吸血鬼都市伝説が蔓延、行方不明者が続出していた。
まさか彼が関係している?やがて透子の周囲に起こった変事…。
果たして龍の正体は。(紹介文より)
〜感想〜
保険会社をクビになった柚ノ木透子は、かけもちしていたアルバイト先のマネージャーから、作家の龍緋比古の秘書の仕事を紹介されます。 父親が残した借金のせいで、迷惑をかけた幼なじみの年下の友人の翠に返済するためにお金を貯めている透子は、とりあえず面接を受けることに。
ところが、面接に行ってみると自分は募集していない、と言われて どうやら紹介したマネージャーは龍緋比古には敵にあたる人物の仲間らしく、透子は知らないうちに道具として利用されたことがわかります。 自分自身にも腹を立てながら、その場を去ろうとする透子だったのだけど、なぜか龍緋比古自身が彼女を引き留めて……。 そうして、自分でもよくわからないままなぜか龍緋比古のアシスタントとして働くことになります。
仕事自体はそれほど大変ではないものの、雇い主はどこかうさんくさくて(笑)
そんなある日、龍が突然泊まりがけで外出してしまいます。
一人で家を預かることに不安を訴えるメイドのライラの願いを聞いてその日だけ透子は、龍の家に泊まることにするのだけど、その夜得体の知れない獣に襲われる羽目に 何とか撃退した透子だったのだけど、その獣はメイドのライラの姿に変わっていって……
現実場慣れした出来事に何がなにやら
そこへ透子に龍緋比古の仕事を紹介したマネージャーが姿を現して事情を説明すると言うのだけど、信用できない透子は断ります。すると、さらに新たな人物が。 それは、透子の唯一大事に思っている幼なじみの翠の友人の女性。最初からその女性に不穏な気配を感じていた透子は翠の身を案じて、ライラを安全は家に運び込んでから、彼女たちの後をついていくことにするのだけど……。
そこで知らされたのは龍緋比古の驚くべき正体。
なんと、彼は ”神の子”イエス・キリストの血を与えられた不死の存在なのだと すぐには信じることができなかったものの、信じざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。
龍緋比古の元々の正体は魔物だったのだけど、飢えに苦しむ彼の心を感じ取った赤ん坊の頃のイエス・キリストが哀れんで自ら進んで血を与えたことから、飢えることもなく、太陽の光にも焼かれず永遠に生き続ける存在となりました。
血を与えられた時から、血肉を備えることになった龍は、その時からいつもイエス・キリストのそばにいるようになるのだけど……磔にされるその時に彼自身から助けないように言われてしまいます。
そうして、龍は最後まで見守り続けることしかできなかったのだけど、彼の隙をついて魔物たちがイエスの血をかすめ取ってしまいます。
魔物たちはそれぞれ力をつけることになるのだけど、イエスの意思を無視して ”盗みとった” ことで、得た力は不自然なものとなってしまいます。
飢えに苦しむことになったり、太陽の光を浴びられなくなったり、と症状は様々。
そこで、魔物たちは ”完全” な状態の龍から血を奪って自分たちも同じ存在になろうと彼を付け狙うようになります。
今回、透子を罠にはめたのもそういった存在で、龍自身とも顔見知り
そんな争いに巻き込まれてしまった透子にしてみればいい迷惑なのだけど、どうしてどうして、なかなかの戦いっぷりに惚れ惚れさせられました そんな凛々しくて男らしい(笑)、透子に龍も惹かれずにはいられなかったようで……まだ恋愛にまでは発展してませんが、これから先の二人の関係がどうなっていくのか楽しみです
イエス・キリストの血を受けた不死の存在という設定が面白かったですが、何となく 【ドラキュリア】 を思い出しました。 こちらはユダがヴァンパイアっていう設定でしたけど、ちょっと似てますよね?
次は 『東日流妖異変<龍の黙示録2>』 です。
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
年老いた母を厄介払いしようとした男に報復を試みた、人ならざるモノ。
大切な人のため、そのモノが下した決断は(『姥捨て山』)。
酒に飲まれ、重大な過ちを犯した男。
大切な部下を、大事な友を失ってなお悪あがきを続ける彼を待つ結末とは(『打金磚』)。
自らの欲求の赴くまま、女をだまし、人を欺き、快楽を愛した男がたどり着いた思念世界は(『ドン・ジュアン』)。(紹介文より)
〜感想〜
『蛟堂報復禄4』 に続く5作目です♪
今回は3話収録されてます。
第一話 ”姥捨て山”
第二話 ”打金せん”
第三話 ”ドン・ジュアン”
本シリーズは、広く知られている昔話やおとぎ話をベースに、みずち堂の主の三輪辰史が、依頼を受けて”報復”するというものですが、必ずしも物語どおりの結末を迎えるというわけではありません。 報復する側、される側 のそれぞれがとる行動によって救われたり、恐怖のどん底につき落とされたりします。
そんなふうにどちらに転ぶかわからないところがいつもながら面白いです
それと辰史の、極悪ぶりも(笑)
第一話では、辰史の恋人、天月比奈の運送会社の社員、十間あきらがゴミ捨て場からしょうきの人形を拾ってきたことから、事件が始まります。
この、あきらは比奈に密かに想いを寄せていることもあって、辰史にはどうしてもいい感情を持つことができないのだけど、今回は思いがけず手助けをしてもらうことになって、ほんの少しだけ(笑)辰史に対する気持ちが和らぐことになります。
ちょっと意地っ張りのあきらの態度は、なんだか微笑ましかったです
第二話は光武帝が皇帝として君臨していた後漢の初めの中国の創作話をベースにしています。 お酒に酔った皇帝が皇后に乗せられて、功臣を皆殺しにしてしまうのだけど、部下の一人が皇帝に抗議して最後には金せんで自分の頭に打ちつけて自殺したことで、やっと目が覚める、という話
すごく大ざっぱに省略しました(笑)
この話は、辰史の大学時代の知人が登場してるのだけど、学生時代の時も辰史って今と同じ性格だったんだな〜、と。
……わかってはいたけれど、しみじみと実感しました(笑)
第三話では、好き勝手に生きて最後は地獄へ堕ちたドン・ジュアンそのままのような青年が報復される話しです。 でも、そんな彼を最後まで見捨てずに助けようとする恋人がいて……。
彼女の一途でどこまでも優しい姿にホロリとさせられました でも、そんな彼女の気持ちに救われた気持ちになりながらも、結局は変わらないことを選んだ主人公の青年の姿が悲しかったです。
この話には辰史とは仲の悪い兄、丑雄も関わってきて、比奈と鉢合わせする場面があるんですが、辰史を守ろうとしていつになく攻撃的な比奈の姿が新鮮でした。 丑雄も悪い人ではないのだけど、自分だけが正しい、みたいな、ちょっと押しつけがましいところがありますそうして、比奈に対しても彼女の存在を否定するような言葉を面と向かって投げつけて……。
今までは丑雄のことはそれほど嫌じゃなかったんですが、今回のことですっかり嫌いになりました 綺麗事を言いながら、結局は自分が受け入れられないものはすべて ”悪” と決めつけるだけの人なんだな、と
丑雄が比奈の存在を知ったことで、ひょっとしたらこれから先ひと騒動あるかも まあ、もしそうなったとしても辰史の極悪な性格で乗り越えていけるとは思いますが(笑)
次は 『蛟堂報復録6』 です。
★★★★(4/5)
あらすじ
雑誌モデルとして活躍し、可愛いと言われ慣れている女子高生。
自分は「特別な存在」だと信じる彼女が求めた、自らにふさわしい「特別」な相手は(『サロメ』)。
なによりも大切なのは、金。
そのためなら夫も娘も捨てる、非情で強欲な女。
周囲から恨みを買い続けた彼女の最期は(『かえる取りの女』)。(紹介文より)
〜感想〜
『蛟堂報復録3』 に続く4作目です。
今回は、辰史の大好きな(笑)祖父の友人真田さんの孫娘、優香が関わってくるのだけど、この孫娘がと〜ってもワガママ! ”自分は人とは違う特別な人間だ” との思いこみから、辰史こそが自分にふさわしい恋人だと勝手に決めつけてつきまとってきます。
もちろん、辰史にしてみればいい迷惑。比奈という大切な恋人がいるので、まったく相手にはしません。でも、優香は何で自分が相手にされないのかがわからなくて……。
段々、辰史を恨めしく思うようになっていきます。 そうして、思いがけない偶然で辰史の報復堂の主人としての仕事に巻き込まれることになるのだけど……。
今回は珍しく、ちょ〜っとだけ振り回されている辰史の姿がおかしかったです。 でも、結局は辰史の傍若無人ぶりのほうが勝っちゃってたんですけどね
大好きな祖父の友人の孫娘ということで、辰史なりに、手心は加えたようでしたが……辰史をよく知らない人間にはわからない優しさでした(笑)
意外と損な性格してるのかも?
とにかく、本シリーズを読んでいると辰史は本当におじいさんを尊敬してて大好きなんだな、というのが伝わってくるんですが、今一つどんな人柄だったのかははっきりとは語られていませんでした。
でも、今回は辰史がまだ修行中で祖父が健在だった頃の話も描かれていて、やっとどんな人柄だったのかがわかってきました。
辰史が素直に祖父を慕っている姿が可愛らしくて
辰史の意外な顔を見られて楽しかったです
次は 『蛟堂報復録5』 です。
★★★(3/5)
あらすじ
継母に疎まれている彼女は悪夢に苦しめられていた。
それは、過去にあった実母の死の記憶。
やがて、その夢に隠された真実を知ったとき(『ヘンゼルとグレーテル』)。
誘拐された我が子の身を案じる母親。
警察の捜査も進展せず、時間だけが過ぎていった。
あるとき、母親の前に不思議な男が現れ、和歌を伝える。
その和歌が示す意味とは(『隅田川』)。
報復屋三輪辰史が晴らせぬ恨みを引き受ける。(紹介文より)
〜感想〜
『蛟堂報復録2』 に続く3作目です♪
今回は、辰史(ときふみ)の甥の友人、瑠璃也がほのかに想いをよせている少女、美樹が蛟堂のお客さんになります。
美樹は悪夢にうなされるようになるのだけど、その夢はいつも同じ。
それは、幼い頃に亡くなった母親を助けられなかった場面で……。
ただ、罪悪感の他に ”何か” ひっかかるものがあります。 それが一体なんなのか?
美樹が思い出したとき……報復堂が関わってくることになるのだけど、相変わらず辰史はやる気なさそうで(笑)
でも、今まで読んでいてわかってきたのは、結局、辰史がするのは道を示すことで選ぶのはあくまでも依頼人たちなんですよね。 報復をするかしないか、相手を許すか許さないか。 すべて依頼人次第。
辰史のそっけない態度を兄の丑雄は責めるけれど、結局は辰史の態度は公平なんじゃないのかな、と思ったりしました。
次は 『蛟堂報復録4』 です。
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
日々に疲れた女は弱いものをいたぶることでしか心を満たすことができなかった。
だが、その密かな愉悦は何者かに知られており―『ジーキル博士とハイド氏』。
親友に裏切られた少年は、報復を依頼する。
しかし、友人として築き上げた過去までも偽りだったのだろうか―『泣いた赤鬼』。
跡継ぎ問題でもめる骨董店。
複雑にからみあう人間関係の中、化け猫の呪いが甦る―『怪猫騒動』。
報復にかかわる妖しく哀しい人間模様を描いた怪異物語。(紹介文より)
〜感想〜
『蛟堂報復録1』 に続く2作目です。
「地獄の沙汰も金次第。業を背負う覚悟と金があるのなら、その恨み、蛟堂に預けてみませんか? 悪いようには致しません。一週間以内に、必ずや片を付けてみせましょう」
そんなキャッチコピー(?) を掲げて裏で報復を請け負っている蛟堂の主人、三輪 辰史ですが、お金 が全てで他人のことには興味がない薄情な性格……のように思っていたら、今回はちょっと違っているようで……。
今回、恋人の比奈が関わる事件の話を読んでみると、実は普通の人間よりはよっぽど純粋らしいことがわかってきて……。 もちろん比奈の恋人の贔屓目ということも多少はあるとは思いますが(笑)、二人の恋愛事情を通して辰史の意外な優しさや、愛情深さが伝わってきてなんとも微笑ましかったです
物語としては、報復を依頼せざるを得ないほど追いつめられた人々がくり広げる人間ドラマには、悲しくなったり、腹がたったり、ちょっとホロリ としたり……時々は、「わかる」 と共感することも。
結構、感情に訴えるところのある作品でした。
次は 『蛟堂報復録3』 です。
あらすじ
「地獄の沙汰も金次第。業を背負う覚悟と金があるのなら、その恨み、蛟堂に預けてみませんか? 悪いようには致しません。一週間以内に、必ずや片を付けてみせましょう」。結婚詐欺師は物語の世界に取り込まれ、大蛇と化した女に追われる。女の怨念は深く悲しい――「清姫」の他2編収録。報復屋を営む陰陽道の天才、三輪辰史が遭遇する怪異幻想譚。(紹介文より)
〜感想〜
”地獄の沙汰も金次第”
そんな言葉が口癖のみずち堂の主人、三輪辰史は恨みを晴らしたい、という人の代わりに報復をする ”報復屋”。
とにかく、”お金が一番” で、依頼人の感情はお構いなし。
報復をする方法はちょっと変わっていて、依頼人の状況に合った物語をおとぎ話や、小説、童話等から選び出し、対象の人物を物語の中に取り込みます。
そうして、一度だけ対象者に逃げ道を与えるのだけど、その方法もやっぱり ”お金を払う” こと(笑)
……性格に難あり、という感じですが逃げ道を与えるだけましなのかも?
今回、辰史が選んだのは
”清姫” ”ピノッキオ” ”赫夜姫(かぐやひめ)”
それぞれの物語をうまく生かした報復のやり方が面白かったです。
特に面白かったのは ”赫夜姫” で、辰史の恋人の比奈が巻き込まれてしまい、いつもの冷静さが崩れてあたふたする辰史の姿が可愛かったです
次は 『蛟堂報復録2』 です。
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
膵臓ガンで余命6ヶ月―。
“生きているうちにしか出来ないことは何か”死を告知されたソル電機の創業社長日向貞則は社員の梶間晴征に、自分を殺させる最期を選んだ。
彼には自分を殺す動機がある。
殺人を遂行させた後、殺人犯とさせない形で―。
幹部候補を対象にした、保養所での“お見合い研修”に梶間以下、4人の若手社員を招集。
日向の思惑通り、舞台と仕掛けは調った。
あとは、梶間が動いてくれるのを待つだけだった。
だが、ゲストとして招いた一人の女性の出現が、「計画」に微妙な齟齬をきたしはじめた…。(紹介文より)
〜感想〜
『扉は閉ざされたまま』 に続く連作です
といっても本作の主人公は前作とは別の人物なんですが、でも ”彼女” が再登場してます
余命数ヶ月と告げられた、会社社長の日向は社員の梶間に自分を殺させようと思いつきます なぜなら、梶間には日向を殺すだけの動機があり、日向にとって特別な存在でもあったからなのだけど、周到にたてたはずの計画が一人の ”ゲスト” によって狂いが生じていきます。
日向がたてた計画は、優秀な社員を選び出して会社の保養所で行う ”お見合い研修” に梶間を参加させて、自分を殺せる機会を与えること。 ただ、その研修には部外者が数人ゲストとして招かれて、研修に参加した社員たちには気づかれないように”縁結び”の役割をはたすことになっています。 今回、ゲストとして招かれたのは、日向の甥でもある安東省吾とその婚約者の国枝真理子、そして碓氷優佳の3人。
そう、『そして、扉は閉ざされた』の登場人物たちです。 優佳と伏見がその後どうなったのか? ちょっとだけ事情が語られているのが嬉しかったです
今回伏見は急な用事で参加したのは優佳だけになってしまったのだけど、その前の時は二人で参加して日向とも知り合いになっていたようです。その時の伏見の印象を日向は 「彼女の尻に敷かれているようだ」 と言っていて……やっぱりそうか、とちょっとおかしかったです。
前作で見事な推理を披露していた優佳ですが、今回もやっぱり日向のたてた計画を見抜き、彼女は密かに日向の計画を阻止しようと行動します。
一方、梶間も日向を殺す機会を伺っていたのだけど、優佳の言葉や行動によってなかなか実行に移すことができません。
そうやって優佳は梶間を牽制し、その間に日向に直接自分の推理を話にいくのだけど……。
今回も、犯人も動機も全てが明らかにされていて、実際に殺人事件が起きるまで、の経緯が書かれています。
そして、とうとう最後に梶間が日向の元へ向かうのだけど、その前に優佳と話したことで日向は抵抗せずに黙って殺されるのではなく、全てが終わったときに疑いをもたれないためには本気で抵抗しなければいけないことに気づきます。
そうして梶間が実際に自分の元を訪れた時、日向のとった行動は
と、いうところで、終わってしまうんです
え〜っ、いったいどうなったの
梶間が目的を果たしたのか、日向が生き残ったのか それとも、相打ちになったのか
最初のほうで、事件が起こったことはすでに語られていたのだけど、”誰が” 被害者なのかは明言されていませんでした。
すごく、気になる結末でした
★★★★(4/5)
あらすじ
日本最古の大学・足利学校で学問を修めた勘助は、その後、駿河国で囚われの身となったまま齢四十を超え、無為の時を過ごしていた。
預かる軍配もなく、仕えるべき主君にも巡り合えず、焦燥だけがつのる日々…そんな折、武田信虎による実子・晴信(のちの信玄)暗殺計画に加担させられることになる。
命を賭けた一世一代の大芝居、学友たちとの再会を経て、「あの男」がいよいよ歴史の表舞台へ―。(紹介文より)
〜感想〜
『早雲の軍配者』 に続く ”軍配者シリーズ” 2作目です
前作の主人公は北条早雲によってその才能を見いだされ、北条の軍配者として成長していく風摩小太郎でした。
本作では不思議な縁でその小太郎とともに足利学校で学び固く友情を結ぶことになった四郎左改め山本勘助が主人公になっています。
勘助の夢は、いつか軍配者として風摩小太郎と、もう一人の友人曾我冬之助と戦場で思う存分腕を振るって戦うこと。
その夢のために、自分を軍配者として受け入れてくれる主を捜す旅にでるのだけど、残念なことに誰も勘助を受け入れようとはしません。
それというのも、才能はあるものの勘助の容貌は病や怪我によって損なわれていて……。勘助自身を知ろうとせず、容姿をみただけで門前払いするものがほとんど
でも、足利学校で学んだ同輩の紹介でやっとチャンスをつかむことができます。
ところが、これまた運の悪いことに勘助に恨みを持つ人物が主の側近にいて、勘助はそのまま囚われの身に
そうして、6年の年月を囚われの身のまま無駄に過ごすことになるのだけど、ある日、一人の武士が勘助に近づいてきます。
その武士は武田信虎といって、かつて勘助が軍配者として士官を願った人物でした。
今では信虎は息子の武田晴信と忠臣たちによって追放された身の上なのだけど、なんとしてでも主君の座に返り咲こうとしていることから、勘助に目をつけたようなのだけど……。
信虎が勘助にもちかけてきた計画は、晴信を亡き者にする、というもの
そうすれば、自らが主君の座に戻り勘助を軍配者として召しかかえる、というのだけど、もし晴信の暗殺に成功したとしても、生きて帰れるはずはありません。
かといって、このままずっと囚われの身でいるというわけにもいかず……。
勘助は信虎の計画に乗るしかない、と決心するのだけど、そんな時思いがけない事態が起こり、勘助は命がけで逃げ出さなければいけなくなります。
そうして、なんとか逃げ延びた勘助だったのだけど、傷を負いぼろぼろに。
身も心もすっかり弱ってしまった勘助は、とうとう夢を諦めて小太郎の元へ身を寄せることを決めます。
そうして、小太郎を訪ねるのだけど、着いたときにはほとんど瀕死状態で……。
小太郎の親身な看病のおかげで回復した勘助は、変わらない友情を惜しみなく与えてくれる小太郎の優しさに癒されていくのだけど、逆にその居心地によさに甘えたくないと思うようになります。 やはり、軍配者になる夢を諦めず小太郎たちと戦いたい、という、自分の気持ちに改めて気づきます。そうして、小太郎に感謝しながらも再び勘助は旅立つことに。
まずは足利学校へ戻り、しばらく骨休めをするのだけど、恩師が勘助の事情を聞いて驚くべき助言をします。
武田信虎の計画通り、晴信を暗殺しに行けばいい、と
最初は驚く勘助だったのだけど、いちかばちかと腹をくくり武田晴信のもとへを訪ねます。彼なりのある計画を胸に秘めて……。
そうして、勘助は賭に勝ちました
晴信には最初から正直に信虎の計画を打ち明け、その上で自分に殺意はないこと、本当に軍配者として仕えたいということを伝えると、なんと晴信は勘助をその場で軍配者として迎えてくれます。
信虎は晴信のことをけなしていたけれど、実際に会った晴信は想像とは全然違っていて、勘助の容貌を嫌がることもなく、そのままの勘助を受け入れてくれます。
そんな晴信の器の大きさに勘助は感動し、心から仕えるようになっていきます。
こうして山本勘助(四郎左)は齢四十四歳になってやっと夢を叶えるための第一歩を踏み出すことになります。
とにかく、勘助は辛い目にばかりあっていたので、やっと晴信の軍配者になれたときは本当にホッとしました
性格にクセのある勘助ですが、晴信の軍配者になったことで、小太郎と冬之助以外にも彼の良さをわかってくれる人たちが増えていく様子は読んでいて嬉しかったです
小太郎とはまた違ったタイプの軍配者ですが、その違いを面白いと思いました
なにはともあれ、勘助の夢を叶えるために舞台は整い始めました。
あとは曾我冬之助次第、というところですが、彼もなかなか主君に恵まれず苦労しています。
一度は、全てを諦めて死を覚悟するところまで追いつめられてしまうのだけど、それを助けたのが勘助。
「お前なんか嫌いだ、だけど友達だ。 それでいいじゃないか」(本文より)
そんなふうにお互いに言い合いながら、敵味方の立場を越えて見せる友情に感動しました
次はいよいよシリーズ完結。
『謙信の軍配者』 (H24年2月13日 UPしました♪) 曾我冬之助が主人公になります。 ……多分、小太郎、勘助、冬之助の戦いが始まると思いますが、わくわくするような、やめてほしいような複雑な気持ちになりそうです
沖田 正午
徳間書店 ¥ 660 (2010-12-03)
Amazonランキング:
185620位
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★★★★(4/5)
あらすじ
なんだかんだ言って結婚したくない鶴姫は、遊びたいさかり。
お忍びで町家に出没しては、危ない事件に首を突っ込んできた。
下手人はわらわがつかまえる、と姫が宣言すれば、家臣は、みな一様に大きくうなずいて見せるものの、内心は「しゃしゃり出た!」と思っていた。
こうなったら、芋侍…否、ぶ男でも剣は滅法強い、勇猛果敢な亀治郎だけが頼り。(紹介文より)
〜感想〜
『それみたことか<姫様お忍び事件帖2>』 に続く3作目です。
前作で結婚相手に気に入られた鶴姫でしたが、本人にしてみればありがた迷惑(笑) 避けられないことは重々わかってはいても、結婚したくないことに変わりはありません。
そうこうするうちに、祝言をあげる日が3日後に迫ったある日、結婚相手が病気になったとの知らせが届いて……
祝言は延期。
喜ぶ鶴姫だったのだけど、奥方御用人の吉本から、見舞いにいってはどうか、と進められます。 これ幸いとまた江戸で楽しくすごそうと計画をたてるのだけど、困るのは鶴姫の警護としてそばに仕えている家臣たち。
出向ということで一時的に鶴姫の警護についている亀治郎、清水家の護衛役の海原、酒井、大木の四人はまたもや苦労することになります
とはいっても、亀治郎だけは鶴姫に対しても言いにくいことでも、すっぱり口に出して諫めることもできるので、ある程度は鶴姫の暴走にストップをかけることができるのが救いです
でもまあ、基本的に亀治郎も結局は鶴姫に甘いんですけどね
そうして、町娘に姿を変えて再び江戸の町へと戻った鶴姫一行だったのだけど、侍女のお松の両親が何者かに襲われて大けがをしたことから、騒動が始まります。 鶴姫が黙って見逃すはずはなく、亀治郎たちは犯人を捜し出すことになります。 以前にも何かと助けになってくれた元口入れ屋の主人の善六、元侠各の徳五郎も加わって、犯人の手がかりを追っていくのだけど、なかなか犯人にたどり着けません。
鶴姫が江戸にいられるのは数日だけ。
限られた日数で、なんとか犯人を見つけだしたいと思う亀治郎たちだったのだけど、鶴姫たちが一時的に住んでいるお寺に一人の武士がお墓参りに訪れたことで事態はますます複雑になっていきます
そのお墓参りに現れた武士は、善六がまだ口入れ屋を営んでいた頃に、”子連れ用心棒” として活躍していた竜之介の甥、鉄太郎の成長した姿ということがわかって…… 間の悪いことに善六と徳五郎と顔を合わせることなく、鉄太郎は去ってしまった後
善六たちから詳しい事情( 『子連れ用心棒シリーズ』 の感想はコチラです) を聞かされた亀治郎たちはもらい泣き そして鶴姫はひとこと。 「連れてきておやり」 (笑)
”鶴の一声” で、護衛たちはまたもや苦労することになりました
しかも、どうやら鉄太郎は厄介ごとに巻き込まれているようで……。
亀治郎をはじめ、護衛の家臣たちが鶴姫に振り回される様子が面白かったです
でも、鶴姫が無理をいうのはいつでも他の人を助けるため。そんな鶴姫の優しさにほのぼのと暖かな気持ちになりました
本シリーズは、今回の結末の感じではこれで終わりのようにも思えるんですが、ひょっとしたらまた鶴姫がお駄々(笑)を言って、亀治郎たちが活躍する……なんてこともあるのかもしれません。 いずれにしても、もう少し鶴姫たちの話を読んでみたい、そう思わせる楽しい作品でした
そうそう、 『子連れ用心棒シリーズ』 の、主人公だった竜之介のその後の成り行きがわかったのは嬉しい驚きでした。こういうちょっとしたことが結構楽しいですよね