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キース トムスン
新潮社 ¥ 620 (2010-09-29)
Amazonランキング:
377870位
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キース トムスン
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あらすじ
父がスパイだった?それも辣腕?競馬狂いで借金まみれのチャーリーは、金目当てで認知症の父を引き取ってから次々と奇怪な出来事に見舞われる。
尾行、誘拐未遂、自宅爆破に謎の殺し屋の出現。
あげく殺人犯に仕立てられ逃げ回る羽目に…。
父は普通の営業マンではなかった?疑念は募る。
普段のアルツハイマーの気配も見せす、鮮やかに危機を切り抜ける父の姿を見るたびに―。(紹介文より)
〜感想〜
競馬狂のチャーリーは、借金がかさんで返すあてもなくギャングに痛めつけられる運命が待ち構えていたのだけど、そんな時にアルツハイマー病に冒された父親のドラモンドについてケースワーカーから連絡を受けます。父親とは疎遠になっていたことから、最初は無視しようとするものの、後見人になると父親の財産を使うことができることを知って、引き受けることに。
ところが父親と一緒に暮らし始めた途端、次から次へと周囲に不可解な出来事が起こり始めて……
家は爆破され、正体不明の人物に命を狙われて追われる羽目に。
何が何やらさっぱり??? のチャーリーだったのだけど、銃を持った殺し屋相手にアルツハイマーのはずのドラモンドの態度が豹変。
目にも留まらぬ早業で反撃して殺し屋を返り討ちにします。
洗濯機のセールスマンのはずの父親の姿とのギャップに戸惑うチャーリーだったのだけど、執拗に追ってくる殺し屋たちから逃げるうちに父親の本当の姿は腕利きのスパイだったことがわかります。 残念ながら、アルツハイマーというのは本当のことで、危機をすりぬけたあとは元のぼ〜っとした態度に戻ってしまうのだけど、チャーリーの身に危険が及ぶと何故か意識がはっきりするようで……。
ドラモンドはどんな危険な状態からでもチャーリーを守り続けます。
でもいったい何故、父親の命が狙われるのか
チャーリーを守るとき以外は、記憶がはっきりせず理由を突き止めようにもどこから手をつけてよいのやら
それでも、とにかくドラモンドと協力して追っ手をかわして逃亡劇を続けるチャーリーだったのだけど、敵を逆に捕らえて質問したりドラモンドの知識を頼りに手がかりを追ううちに少しずつ事情がわかってきます。
そうして、ドラモンドと一緒にピンチをくぐりぬけるたびにチャーリーはしずつ父親に対しての愛情を取り戻していくのだけど……。
……アルツハイマーのスパイって、いったい
と、思わずにはいられなかったのだけど、これが意外と面白くて最初から最後まで一気に読んじゃいました。 時々、正気にはなるものの、いつそうなるのかはチャーリーにはわからず、結構苦労するのだけど、それでもどこか危機感のないドラモンドとチャーリーのやりとりが笑えました
どちらかというと、人生に失敗した人物、
というイメージが強かったチャーリーが、実はなかなかしっかりしていて、父親思いの愛情深い息子というふうに変わっていく様子は微笑ましくて、チャーリーとドラモンドが不器用ながらみせる父子愛にはほのぼのしました
最後まで、チャーリーとドラモンドの2人が助かるのかどうかわからず、ハラハラドキドキさせられましたが、ありがたいことにスッキリした気持ちになれる結末でした
最後の最後で+1名が仲間に加わったので、次は3人の活躍が楽しめるのではないかと思います♪ 次の巻も出版されることを願って
★★★★(4/5)
あらすじ
曾我冬之助は新たに宇佐美姓を名乗り、若き長尾景虎(上杉謙信)の軍配者となる。
しかし実際に戦況を支配していたのは「毘沙門天の化身」景虎その人だった。
常識外れの発想で勝ち続ける天才・景虎に、足利学校の兵法は通用するのか?冬之助の旧友・山本勘助が率いる武田軍との攻防が続く―。(紹介文より)
〜感想〜
『信玄の軍配者<軍配者シリーズ2>』 に続く3作目、完結巻です。
『早雲の軍配者』 では北条の軍配者、風摩小太郎、 『信玄の軍配者』 では武田の軍配者、山本勘介(四郎左) が主人公でそれぞれがいかにして軍配者になっていったか、が語られていました。
本作はそんな2人の旧友にしてライバルでもある、曽我冬之助が主人公です。
山本勘介によって命永らえることになった冬之助は ”足利学校” で共に学んだ直江のつてで、長尾景虎(のちの上杉謙信)もとで ”宇佐美”と名前を変え軍配者として生きることに。
いつの日か、軍配者として思う存分、勘介と小太郎と戦うことが生涯の目標となるのだけど、生憎と主君の景虎は冬之助の軍配者としての知恵も計画も必要としないほどの戦上手。
しかも、戦いのセオリーが通用せず、まさか と思うような時でも勝ったりします。
自分の軍配者としての補佐は必要ないのでは、と思う冬之助だったのだけど、”天は二物を与えず” という言葉もあるとおり、景虎は戦のこと以外になるとさっぱりで……
なので、領民たちの不満を理解できず謀反を起こされたりすることも。
しかも、景虎本人はあくまでも ”義” を大事にして清廉潔白な人物なので、家臣たちが戦の褒美を欲しがったりする気持ちを理解することができません。
逆に、欲をあからさまにする家臣たちに憤り軽蔑し、自分の志が伝わらないことに絶望してしまいます。 そうして、いよいよすべてに嫌気がさした景虎は ”出家する” と宣言します
慌てたのは家臣たち。
最初は、脅し だとのん気にかまえていたものの、あいにくと景虎は本気です。 そうして、「新しい主君を選べ」 と家臣たちに告げた景虎は、数ヶ月待って本当に姿を消してしまいます。 流石に家臣たちも真剣になり、なんとか景虎に戻ってもらおうと自分たちの行いを改めて、景虎に懇願してやっと戻ってもらえることに。
その間、冬之助は家臣たちの景虎という人物に対する理解力のなさに呆れながら傍観していたのだけど、戻ってきた景虎は以前の迷いをなくし人間的にも成長したようで、さらに戦では信じられない強さを発揮することになります。そんな景虎に敬服した冬之助は改めて彼についていこう、と気持ちをかためるのだけど……。
本シリーズは小太郎、四郎左、冬之助 の三人が軍配者として成長していく様子を読むのが面白いんですが、同時に彼らがそれぞれ仕える主君たちの違いを比べるのも楽しみの一つかな、と思います。 でも、どうも私は今回の主君の長尾景虎は好きになれないというか……。
確かに清廉潔白で利己的な思いはこれっぽっちもない人物ではあるのだけれど、でも、自分のものさしだけで ”良い” ”悪い” を決め付けているような気がして
そんな景虎にしてみれば、”究極の悪” が武田晴信(信玄)となるようで、とにかく ”晴信憎し” の一念で戦い続けているような感じです
個人的な好みでいえば、景虎よりも晴信のほうが人間らしく思えてしまうので、困ったことに景虎が勝ってもあんまり嬉しくなかったり
冬之助にしても、景虎が戦いに強いのであまり見せ場がなくて。。。
信玄の軍配者の山本勘介(四郎左)のほうが存在感があったような気がします。
本シリーズのそれぞれの巻で活躍した、小太郎、勘介、冬之助でしたが、でも、全編をとおして一番印象が強かったのは山本勘介でした。 実は、彼こそが影の主人公だったんじゃないのかな、と思ったり。
それだけ勘助の生き方は胸に残るもので、最後は彼の運命の切なさに涙せずにはいられませんでした
十代の頃に出会い、それぞれ紆余曲折を経て軍配者になった3人が迎えた結末は、切なくて哀しいものでした。 ただ、3人がお互いに対して抱いていた友情はかけがえのないだったんだな、ということはしっかり伝わってきて、哀しさのなかにも不思議な清清しさが残る作品でした。
天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。
嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かう!(紹介文より)
〜感想〜
地元の名士がお正月明けに螺旋階段の下で遺体で発見され、捜査の責任者の上山警部は酔って階段から落ちた “転落死” だと予想するのだけど、でも検視の結果はなんと “墜落死”
事故ではなく、“殺人” の可能性が出てきたことで、神山警部は “犯行現場” を探すのだけど、いくら探しても痕跡は見当たらず……。
残念なことに手がかりもつかめず、そのまま捜査は縮小されてほとんど迷宮入り状態に
それから数ヵ月後、被害者の未亡人と遠い親戚だった神山警部の部下、相馬刑事は未亡人に招待されて再び殺人が起きた別荘へ足を運ぶことになります。
でも、この相馬刑事。。。事件のことはすでに頭の隅に片付けてしまい、本当に純粋に休暇を楽しむ気まんまんで
同じく未亡人に招待されたこれまた親戚の女探偵が美人だったことから、事件のことよりも彼女のことのほうが気になって仕方ありません(笑)
未亡人の望みはやはり夫の死の真相を突き止めることで、親戚の女探偵に調べるよう依頼するのだけど、招待客たちの1人がまたもや謎めいた状況で殺されてしまい……
相馬刑事は女探偵と一緒に事件を調べ始めるのだけど、ふ、と我に返ります。
自分は刑事として事件を調べにきたのではなく、あくまでも “休暇を楽しむために” きたのだと(笑)
そして我に返った相馬刑事は、じりじりと女探偵の方に手を回そうと……
おいおいおい、 と言いたくなりますが、でもその我に返り方(笑)が、なんともいい間合いというか……愛嬌があって思わず笑ってしまいました
東川さんの作品って、こういうキャラクターのコミカルなところが魅力の一つですが、本作でもその魅力が満載の楽しい作品でした♪ ちょっと意表をつく ”墜落死” の真相も面白かったです
あらすじ
寛永十九(一六四二)年の春、天下泰平のお江戸は活気あふれる下町の貧乏長屋に、ひとりの少年が現われた。
寅太郎という名の少年は植木職人の仕事を手伝いひっそりと暮らしはじめるが、彼は大きな使命を抱えた島原の乱の生き残りだった。
それは、主・天草四郎の復活と理想の国造りを成し遂げること。
そのためには、徳川幕府を裏で操る怪僧・天海が持ち去った七つの“聖遺物”を奪い返さなければならない。
だが、幕府は闇の精鋭“閻羅衆”を率いて、大がかりな切支丹狩りを進めていた―。
異能の忍びたちの秘術を尽くした死闘の行方は?(紹介文より)
〜感想〜
天草四郎 といえば “島原の乱”
……くらいしか思い浮かびません(笑)が、でもそんな乏しい知識しかなくても十分楽しめる内容になってました。
天草四郎の復活に備えて、“種” を受け継いだ1人の少年を巡って、切支丹の生き残りと彼らを排除しようとする幕府との間で繰り広げられる攻防が描かれているのだけど、その戦い方が幻想的で面白かったです
戦いだけでなくて、正体を隠して暮らす少年と、その少年を養子として引き取った植木職人の庄吉と女房のたまとの、ぎこちないながらも少しずつ親子らしくなっていって、心を通わせるも感動的でした。
ストーリーとしては、一段落ついてはいるんですが、私の勝手な印象では続編があってもいいかな、という感じです。
ひょっとしたら、そのうち続編が出ることもあるかもしれません
あらすじ
タクシードライバーの磐田速人は、ある日「入日村」という村に迷い込む。
そこは、河童や天狗などの妖たちが闊歩する不思議な村だった。
村で出会った少女・彩葉は、ここは現世とあの世との狭間に漂っている場所だという。
また、黄泉の国へと続く坂を上り切れずに、さまよう魂が増えているというのだ。
現世に戻れなくなった速人は、彩葉と共に魂の「未練」を解く仕事を始める羽目に…。(紹介文より)
〜感想〜
不景気の影響で会社の経営を続けることができず、タクシー運転手になった磐田速人は苦しい生活を送っていたのだけど、ある日とうとう妻が娘を連れて実家に帰ってしまいます。 まだ仕事の途中だった速人はショックを受けながらもとりあえず会社に戻ろうとするのだけど、何故か道に迷ってしまい見覚えのない場所で不思議な経験をすることに
会社に戻ってみると自分の知らない間に1日時間が過ぎていて……。
何が何やらわからない速人だったのだけど、会社からは謹慎1週間を言い渡されてしまいます。
妻子も実家に帰ってしまっていて、すっかり落ち込む速人はまだそれほど生活が苦しくなかった頃に家族3人で出かけた湖に向かい、楽しかった思い出を思いだしてまだ頑張れる、と気持ちを奮い立たせます。
そうして湖を後にしようとしたそのとき、足を滑らせて……湖の中に落ちてしまいます。ふと意識をとりもどしてみると、なぜかタクシーを運転している自分に気づきます。
不思議なことにちゃんとお客さんまで乗っていて……
いったい、何が起きたのか
混乱する速人だったのだけど、お客さんのほうが速人のことを知っているようで、お客さんの案内するままタクシーを運転していくと、たどり着いたのは ”入日村”(いりひむら)という村。 訳の分からないまま戸惑う速人に今西彩葉という少女が話しかけてきて、とりあえず詳しい話は明日だと言い、そのまま速人は彩葉の家で休むことに。
そうして翌朝、速人は彩葉に連れられて村長のところにいくのだけど、そこでこれまた信じられない話を聞かされます。
速人が今いる入日村は ”あの世とこの世の間に漂う浮島のようなもの” であの世とこの世を結ぶ ”黄泉坂” の間で未練を残して永遠にさまようことになる魂 ”マヨイダマ”を救うためのちょうどいい中継点になっている、と
……はぁ
って感じですよね(笑)
さらに村長は信じられない話を続けます。
村の住人は肉体がないので、うつし世まで行けないけれど、肉体のある速人ならうつし世と入日村を行き来できて、迷っている魂を救うことができる。
村の住人でただ一人肉体を保っている彩葉と一緒に手伝ったほしい、と。
……はぁ(笑)
たちの悪い冗談だとしか思えない速人だったのだけど、嫌でも信じざるを得ない出来事が次から次へと突きつけられてきます。
自分の名前も ”ナトリ” という妖怪にとられてしまい、すぐには現実の世界に戻れないこともあって、とりあえず速人は彩葉と一緒に未練を残して黄泉坂を上れない魂を助ける仕事をすることに。
そうして、速人と彩葉が出会う魂たちと繰り広げるちょっとホロリとくる人間ドラマがよかったです 同時に速人は現実に戻るために、彼なりに動き始めるのだけど、入日村の中でも何やら不穏な動きが出始めて……。
速人は名前を取り戻して家族のいる現実へ戻ることができるのか
彩葉と入日村の行く末は
ほのぼのした話だと思っていたら、陰謀があったり、ホロリ とくる悲しい出来事があったり、と読みごたえのある内容でした。
最後は、しんみりしちゃいますが同時に頑張んなきゃ、と前向きな気持ちにさせてくれる心に残る作品でした