一定期間更新がないため広告を表示しています
西尾 維新
講談社 ¥ 1,155 (2007-06-05)
Amazonランキング:
85655位
|
絶対凍土の地、蝦夷の踊山を彷徨う無刀の剣士・鑢七花と美貌の奇策士・とがめの前に姿を現したのは、天真爛漫な少女、凍空こなゆき―!吹きすさぶ豪雪と疾風のなか、七花が絶体絶命の危機に!!追い詰められた真庭忍軍の切り札と、とがめを狙う謎の第三勢力の蠢動やいかに!?(紹介文より)
〜感想〜
『刀語 第五話<賊刀・鎧>』 に続く6作目です。
前作で、初めて七花は相手を殺さずに倒すという経験をしましたが、そうしたことによって七花自身の心に少しずつ変化が起きはじめます。
あくまでも自分の持ち主である奇策士とがめの ”刀” として感情の入る余地のない戦いをしてきた七花が、とがめの指示に従いながらも自分でも考えて判断するようになってきて……。
本作は、そんな七花の変化が最初に表面化する話になっています。
今回の刀は ”双刀・鎚(かなづち)”。
”双” の言葉から2刀なのかな、と想像していたら、全然違っていて実際の形は棍棒のに似ていて……。しかも、その重さは異常なくらいでとがめはもちろん、七花でも持ち上げることができません
”鎚” の持ち主は、極寒の地に住んでいる ”凍空一族” という人々だったのだけど、とがめと七花が遭難しながら(笑)も、たどり着いたときには村は雪崩によって壊滅し、生き残ったのは二人を助けてくれた ”凍空こなゆき”という少女だけ、という予想外の事態が待ち受けていました。 しかも、こなゆきは遭難していたとがめと七花を助けてくれた命の恩人でもあります
まずは、交渉から、ということでとがめがこなゆきに ”鎚” のことを訪ねると、ある村人がそんなようなのを持っていたということを思い出して、よかった探してきてあげる、と、あっさり承知してくれます。
こんなに簡単でいいのか……、と思うとがめと七花だったのだけど、”鎚”を持って帰ってきたこなゆきは、「自分と戦って勝ったら渡す」 と言い出して……
今回、七花が戦う相手のこなゆきは今までと違って、ど素人なだけに逆に七花は苦戦することになります。 思いがけない動きをするこなゆきに七花はどう戦っていいのか戸惑ってしまい、なんと初めての怪我と敗北を味わうことに
しかも、こなゆきから 「ごめん、こんなに弱いと思わなかった」(笑)とまでは言われてしまいます
いったい、どうやってこなゆきに勝って”鎚”を手に入れるか考える七花だったのだけど、とがめは戦わなくてもいい、と言い出します。どうやらこなゆきが勝負を持ちかけたのは、ただ、突然一人ぼっちになって寂しくて七花ととがめに少しでも長く一緒にいてほしかったから、だったようで……。
実際、こなゆきも七花に怪我をさせてしまったことで罪悪感に襲われ、素直に謝って”鎚”を渡そうと考えるのだけど、その時、七花ととがめの因縁の相手 ”真庭忍軍” の忍の1人、狂犬(けふけん)が仲間を倒された復讐を果そうと姿を現し、怪しげな術でこなゆきの体を乗っ取ってしまいます
そんなこなゆき(中身は忍の狂犬)を前に、とがめは苦い思いをかみ締めることになります。驚異的な身体能力を持っているとはいえ、こなゆきは肉親や近しい人を亡くして寂しがっている少女で、しかも七花ととがめの命を救ってくれた恩人でもあるわけで……。
「こなゆきを殺せるか?」 と問うとがめに 「ああ」 とあっさり応える七花。
七花にも苦い思いを抱きながらもそれ以外に方法はないと、とがめは結局七花にこなゆきを「殺せ」と命じるのだけど、ところが七花は意外な行動に。
虚刀流の奥義の1つを使って、狂犬だけを倒しこなゆきを元に戻すという離れ業をやってのけます。
どうやら自分なりに、こなゆきを助けられないかを考えたようで……。
ずいぶんと人間らしくなったな、と感慨深いものがありました
とがめも、そんな七花の行動に驚きながらも感心するのだけど、でも、また別の懸念が湧いてくることに。 それは、結果的に七花がとがめの命令に従わなかったということ。
段々、人間らしくなってくる七花の変化がこれから先の旅にいい結果をもたらすのかどうか 予想がつかなくなってきてます。
なので、この先はとがめの奇策士としての腕の見せ所ってことになりそうです
なにはともあれ、四季崎の作った完成形変体刀の6本目GET(もう、使わない? 笑)です
次は七花の姉、”天才”七実との対決が待つ 『刀語 第七話<悪刀・鐚(びた)>』 に続きます。
西尾 維新
講談社 ¥ 1,155 (2007-05-08)
Amazonランキング:
37665位
|
〜感想〜
『刀語 第四話<薄刀・針>』 に続く5作目です。
前作では七花の姉の七実が真庭忍軍との戦いで活躍している間に、”最強の剣士” 錆から ”薄刀・針” をちゃっかり手に入れていた(笑)七花ととがめでしたが、錆を倒したことによって七花は ”最強の剣士” の名も受け継ぐことになりました。
もっとも、姉の七実の強さを知っている七花にしてみれば、そんな名称もあまり意味はないようです
ただ、その名前につられて七花に挑戦してくる者も現われて……もちろん七花が負けるわけはないんですが、あまりにもあっさり相手を殺してしまう七花を見て、とがめは危惧を覚えることになります。
七花自身、自分をとがめの ”刀” として認識しているので、相手を倒すことに何の感情を持つことがありません。 なので、 『刀語 第三話<千刀・鍛>』 の時も、持ち主の女の敦賀もためらうことなくあっさり殺してしまっています。
それがたとえ子供だったとしても、七花は同じようにしたことでしょう。
そんな七花のことをとがめは危ぶみ、今回はある実験をすることにします。
今回の刀 ”賊刀・鎧” の持ち主は海賊でもある校倉という男で、何故か住民たちには人気がある人物。 そんな人物を倒せばたとえ刀を手に入れたとしても、無事に脱出することはできません。 そこで、とがめは七花に今度の相手は 「殺さずに倒せ」 と言うのだけど、ところがその言葉を七花は誤解してしまいます。
というのも、校倉が自分から七花ととがめの元を訪れて ”決闘しよう” と申し出て、校倉が勝ったら、とがめが欲しい、と言い出したからで……
そうして、自分が七花に代わって刀集めをしながらとがめを守るということらしいのだけど、もちろん七花がそれを聞いて面白いはずはありません。
ずっと、無人島で姉と父親との3人だけで暮らしていた七花は、感情的にはまだまだ幼いところがあるものの、とがめに惚れていることは確か。
なのに、とがめは校倉の申し出をすぐには断らず考えてしまって……。
七花は自覚のないまま、つい、とがめに意地悪をしたりもするのだけど、逆にそうしたほうがとがめの目的のためになるのかもしれな、とも思ったり。
このへんがけな気というか、可愛いいんですよね
って、それはさておき、とがめの 「殺さないで倒せ」 という言葉を、自分が負けてもかまわない、というふうに受け取ってしまいます。 とがめは校倉が自分に代わってもいいと考えてる、と思い込んで、七花はいつものようにやる気を出すことができなくなってしまって
実際は、とがめはあくまでも ”刀” としてしか動けない七花のことを気に掛けて、そういうことを言ったのだけど、感情的に幼い七花にそこまで察するのは無理がありました
そうして、いつものキレをなくした七花は校倉に負けそうになるのだけど、その時、とがめが七花に渇を入れます。
すると、たちまち元気を取り戻した(現金ですね )七花は今までの不調はどこへやら
校倉を見事に倒します。もちろん、殺さずに
そうして、”賊刀・鎧” を手に入れた七花ととがめは、校倉の約束どおり無事にその地を後にするのだけど……。
校倉がちょっとした意趣返しをして、実際の目的地ではなく遥か遠い地、蝦夷へと向う船に七花ととがめを乗せたことは二人は知らないまま(笑)
果たして蝦夷で二人を待ち受けているものは
次の 『刀語 第六話<双刀・鎚(かなづち)>』 に続きます
西尾 維新
講談社 ¥ 1,155 (2007-04-03)
Amazonランキング:
78536位
|
★★★☆(3.5/5)
あらすじ
「そいつを倒せば、俺が日本最強になれるってことだろう?」
“日本最強”の堕剣士・錆白兵から叩きつけられた挑戦状!無刀の剣士・鑢七花と奇策士・とがめは、薄刀『針』を所有する錆から、その刀と、日本最強の称号を奪い取ることはできるのか――?伝説の刀鍛冶・四季崎記紀が完成させた“刀”は12本――残るは9本!刀語、第4話の対戦相手は、日本最強の称号をほしいままにする錆白兵!(紹介文より)
〜感想〜
『刀語 第三話<千刀・鍛(つるぎ)>』 に続く4作目です。
順調に伝説の刀工師、四季崎の完成形変体刀12本のうち3本までに手に入れた七花ととがめでしたが、このまま次の4本目……というふうにはいかず、七花の姉の七実が大活躍する話になっています
病弱な七実がいったいどんな活躍を
と思われるかもしれないですが、実は七実はとんでもない人物で……。
とがめを裏切った真庭忍軍にはそれぞれ”組”があって、首領がいるのだけどそのうちの一つ ”虫組” の忍びがとがめと七花から”刀”を奪うために、七実を人質にしようと思いつきます。
そうして、虫組の3人は七花たちが暮らしていた無人島、不承島へと乗り込むのだけど、でも、これが彼らの運のつきでした。
確かに七実は病弱ではあるのだけど、でも実はとんでもなく ”強い” 人間で、その強さを恐れた父親の判断で ”虚刀流” を継ぐのは七花だと決めたほど
そんな事情を知らない真庭忍軍”虫組”の3人は、最初から七実を侮ってしまいます。
そうして、七実を浚おうとまずは最初の1人蝶蝶が襲い掛かるのだけど、一瞬のうちに返り討ちにあい……気づけば木にくくりつけられていた、という次第。
それでもまだ、七実を甘く見た蝶蝶は隙を見て反撃しようとするのだけど、そんな彼の抵抗もむなしく七実は圧倒的な強さで蝶蝶を倒します。
……はかなげな外見と病弱な体を抱えながら、この強さってどうなの
あまりにも強すぎて、逆に虫組の忍びたちが気の毒になるほどでした
いったい、七実って何者
という疑問には彼女の回想シーンで解決するんですが、それにしても強すぎる……。
今回は七実の強さにただただ感嘆させられました
ただ、真庭忍軍と戦ったことで好奇心を刺激されたらしく、どうやら七実は七実で刀集めに関わっていきそうな感じです。
ひょっとしたら、七花と対決するなんてこともあるのかも
そうそう、肝心の主役二人、七花ととがめは何をしていたのかというと…… とがめを裏切った ”最強の剣士”、錆白兵との戦いを繰り広げていたようです(笑)
ようです、っていうのは、最後のほう数ページで七花ととがめが交わす内容で、わかったからなのだけど、かなりの苦戦だったことは確かです
おまけに、錆は最期に ”虚刀流” について謎めいた言葉も残していたみたいなので、そのへんの謎についてもちょっと気になるところです。
なにはともあれ、そうしていつの間にか?(笑)4本目の刀 ”薄刀・針” を手に入れた七花ととがめは、次の刀 ”賊刀・鎧” を求めて旅を続けます。
次はどんな戦いになるのやら
『刀語 第五話<賊刀・鎧>』 に続きます
★★★☆(3.5/4)
あらすじ
〜感想〜
前作、 『刀語 第二話<斬刀・鈍>』 に続く3作目です。
今回のとがめと七花の目当ては ”千刀・つるぎ”
持ち主は出雲にある三途神社の長、敦賀という人物
1本目は「決して折れも曲がりもしない頑丈さ」
2本目は「一刀両断にできないものは世界に存在しないという切れ味」
そして今回の3本目は、「圧倒的な数量」
……千本で1本という千刀はまったく同じつくりをした千本の刀、だというものなんですから驚きです
そして、”千刀” を守っているのは ”黒巫女” と呼ばれる千人(!)の巫女たち。いくら七花でも千人と戦うというのはさすがに辛いものがありますが、実際の持ち主はあくまでも敦賀なので、彼女と交渉すればいい、ととがめはあっさり言うのだけど……。
実際に会った敦賀は結構あっさりとがめと七花のことを受け入れるのだけど、彼女にも彼女なりの事情があるようで簡単に ”千刀” を渡してはくれません。
やはり、敦賀と戦うことになる七花だったのだけど、とがめは彼女の事情や気持ちを知ったことで複雑な気持ちを抱くことになります。
ただ、七花は相変わらずとがめの ”道具” として何の疑問も思いを抱くこともなく、敦賀との戦いに臨み、あっさり彼女を倒して ”千刀” を手に入れて……七花もとがめも無事で、目的を果たすことができたことはよかったのだけど、どうも七花のこだわりのなさすぎるところが心配というか、気になります
私情にとらわれず、どんな相手だろうとためらうことなく戦うことができる。
それは戦いをする上では、長所といえるのだろうとは思うけれど……。
これから先の戦いを切り抜けるために、今のままの七花で勝ち続けることができるのか ちょっと心配です。
とはいえ、とにかく3本目の ”千刀” を手に入れたとがめと七花。
次の刀は ”薄刀・針 ” 『刀語 第四話<薄刀・針>』 に続きます。